孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフリカ社会に根深い呪術  アルビノ殺害・遺体売買 「魔女」との糾弾

2015-01-26 22:45:56 | アフリカ

(その異なる外見から、呪術で用いるために体の一部や生命が狙われるアルビノの人々 “flickr”より By STham882 https://www.flickr.com/photos/59703305@N04/6324388462/in/photolist-3381J8-8BihP7-8afZ78-7AgzDr-oiG2S-3te6AA-3t9yE6-4tuSB5-gZ6HoA-a5AoBd-2n3pBb-6rnsMq-5wCjP9-9RSnAz-9RSoui-SqpCW-4S2hvb-btcZaY-mQB976-9RVg7q-9RVgz3-9RVgLh-CjoZZ-dQCrLt-9Sb7iU-9S81xR-9SbgDG-9Sb2W5-9S81ok-9Sb4VC-9S815Z-9SaURU-9RVgqo-73TUuc-AQRqe-q1hM1t-7NCeN5-gZ8m9g-Y33kK-a4tLmB-fDNNDv-2tCoHW-8szz68-hF2hAY-f2h84f-pQQEQ-GYc3h-aCS9mo-9gso8C-9gt4Mo)

【「野生の思考」 現代の先進国でも日常的に存在
まじない、呪い、お祓い、祈祷、占い・・・「呪術」とは何か? 未開社会に特有の荒唐無稽なものか?
昔、文化人類学で学んだ記憶があります。

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人類学者サー・ジェームズ・ジョージ・フレイザーは、『金枝篇』において、文化進化主義の観点から、呪術と宗教を切り分け、呪術には行為と結果の因果関係や観念の合理的体系が存在し、呪術を宗教ではなく科学の前段階として捉えた。(中略)

レヴィ=ストロースは、思考様式の比較という観点から、呪術をひとつの思考様式としてみなした。

科学のような学術的・明確な概念によって対象を分析するような思考方式に対して、そのような条件が揃っていない環境では、思考する人は、とりあえず知っている記号・言葉・シンボルを組み立ててゆき、ものごとの理解を探るものであり、そのように探らざるを得ない、とした。

そして、仮に前者(科学的な思考)を「栽培種の思考」と呼ぶとすれば、後者は「野生の思考」と呼ぶことができる、とした。

「野生の思考」は、素人が「あり合わせの材料でする工作」(ブリコラージュ)のようなものであり、このような思考方式は、いわゆる"未開社会"だけに見られるものでもなく、現代の先進国でも日常的にはそのような思考方法を採っていることを指摘し、それまでの自文化中心主義的な説明を根底から批判した。【ウィキペディア】
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少なくとも、現代の先進国でも日常的に見られる類のものであることは間違いなく、人間の思考・行動に深く根ざすものであるようには思えます。

アルビノの遺体が880万円
ただ、その影響には社会によって大きな差があります。
なかにはおぞましいものも存在します。

これまでも何回か取り上げてきたアフリカで広く見られる、アルビノ(先天性色素欠乏症)の体を用いた呪術は、そのためにアルビノの人々を殺害し、その遺体を売買するという事態をもたしています。

2013年6月7日ブログ「パプア・ニューギニア 頻発する「魔女狩り」 近年強まる魔術信仰」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130607
2011年8月24日ブログ「アフリカ “まじない”“魔女”など呪術的なものに関する暴力」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110824 など

タンザニア政府は、こうしたアルビノ殺害・遺体売買を根絶するため、呪術師を禁止したそうです。

****タンザニア政府、呪術師を禁止 急増するアルビノ殺害の抑止に****
タンザニア当局は、アルビノ(先天性色素欠乏症)の人々が殺害される事件の急増を抑えるため、呪術師を禁止した。当局者が14日、述べた。

アルビノの人々の体の一部は呪術で用いられるために同国などで売買されている。(中略)

国連の専門家によると、東アフリカの国々では2000年以降、少なくとも74人のアルビノの人々が殺害されている。2009年に殺害事件が急増したことを受けて、政府当局はアルビノの子どもたちを児童養護施設に入所させる措置をとった。

タンザニアでは、アルビノの人々の体の一部は約600ドル(約7万円)で売買される。全身の遺体であれば7万5000ドル(約880万円)という。貧困にあえぐタンザニアでは破格の高値で取引されている。

タンザニア政府は、呪術師の禁止措置と合わせ、殺害をなくすための教育キャンペーンも開始した。この禁止措置には、ハーブなどを使って病気を治療する伝統的な治療師は含まれていない。【1月15日 AFP】
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遺体が880万円という、アフリカ社会にあっては法外な価格で取引されるような「需要」があるなかでは、なかなか難しいところがあるようにも思えます。

【「魔女」と糾弾し、その財産を奪う
アルビノと並んで「呪術」の犠牲になりやすいのが「魔女」です。

****魔女と呪術の殺人、タンザニアに根深い迷信****
少年を殺したのはハイエナだった。だが、それは年老いた4人の女性たちの仕業とされた。村人たちは山刀で女性たちに斬りつけ、遺体に火を放った──野獣に呪文をかけたと糾弾して。(中略)

タンザニアでは、「魔女」だと糾弾されて殺害される人々が毎年数百人に上る。シャドラックさんの母親がそうだったように、多くの犠牲者は高齢で、弱く、のけ者にされた女性たちだ。

一方で、財産を所有する女性たちも、財産目当ての親族たちに魔女だと糾弾されて殺害されることがある。

黒魔術を使ったと責められて殺される人たちがいる一方で、逆に「呪術師」たちに殺害される人々もいる──大勢のアルビノ(先天性色素欠乏症)の人々が殺害され、切断された体の一部が呪文をかける際に使われている。

国連(UN)による非難を受け、タンザニア政府は今月、アルビノの人々の殺害を抑止するための取り締まりを約束した。

だが人権活動家らは、ただの口約束に終わる可能性も高いと懸念している。というのも、過去に政府が行ってきた対策はどれも、深く根付いた迷信に対してほとんど効果がなかったからだ。

「年を取るのが不安だ」と、50歳になったシャドラックさんは語る。
母の墓に行くにはいつも、母が住んでいた、黒焦げのがれきになった家の前を通らなければならない。「私の母を殺した人々が、私のことをどう思っているのか、私は分からない」とシャドラックさんは述べた。「もしかしたら私も殺されるかもしれない」

■国民の93%が呪術信じる
タンザニアの人権団体によると、2013年に報告された「魔女」絡みの殺人は765件だった。だが実際には、はるかに多くの人が殺害されているだろうと警告する。

法と人権センターのポール・ミコンゴティ氏は「死者数は報告された件数しか集計していない」と語る。「我々が把握できていない人数が非常に多い」

目が充血していただけで「呪術」を使うしるしとみなされることさえある。だが、煙の上がるたき火で何十年間も調理をしていれば、目の充血はごくありふれたことだ。

一方、国連の専門家によると、2000年以降に殺害されたアルビノの人々は、少なくとも74人に上る。アルビノの人の遺体は7万5000ドル(約900万円)もの値段で売買されることがある。これは貧しいタンザニアの人々にとって大変な金額だ。

観測筋によると、10月の総選挙を前にアルビノの人々に対する攻撃が増えている。政治家や支援者たちが幸運を求めて呪術師たちのもとへ通うからだという。

タンザニア国民4900万人の宗教は、イスラム教、キリスト教、伝統宗教でほぼ均等に分かれている。だが一方で、米調査機関ピュー・リサーチ・センターの2010年の調査によると、呪術を信じる人は国民の93%に上り、調査したアフリカ19か国の中で抜きんでた割合だった。

■「私の財産を奪うためだった」
タンザニアの法律は女性にも平等に相続権を認めているが、これに反対している人も多い。活動家らによると、財産を奪い取ろうとする親族から魔女だと糾弾されることもあるという。

「男性は独占することを好む。そして姉妹たちが抵抗し始めると、彼女たちの財産──ウシや農地など──を得る唯一の手段は、『この女は魔女だ』と糾弾することだと考えるようになる」と、高齢者の権利擁護団体ヘルプエージのフラビアン・ビファンディム氏は説明する。「それで姉妹たちの死は正当化され、財産は自動的に男性のものとなる」

小さな村マグに住む女性、マゲ・ベンゲさんは5年前、両親を殺害するために呪文を唱えたと糾弾され、襲撃された。男たちはベンゲさんを山刀で斬り、放置して死なせようとした。「それは私の相続財産、ウシ、農地のためだった」と語るベンゲさんは、もしも自分が呪術を使えたのなら、自分の身を守ったはずだと言い添えた。

ベンゲさんの顔は傷だらけになった。今でもベンゲさんを襲った男たちの何人かが、自由の身で村を歩いているのを見かけるという。「男たちは私を痛めつけ、私の財産を奪った。かつては自分で農地を耕作できたのに今、私は物乞いだ」

■治療師の役割
政府による呪術の禁止には、薬草などを使って病気の治療をする伝統的な治療師(ヒーラー)は含まれていない。政府の調査によれば、国民の3分の2が治療師を利用しているという。

小さな小屋の中、伝統的なヒーラーのハナ・マゾヤさんは呪術師のふりをする悪質な人々がいると警告を発した。「もしも(呪術師が)患者に対して『あなたは誰かに呪術をかけられた』と言えば、2人の間の衝突を作り出すことになる。そこから殺人が起きる」と、黒く長い羽の冠をかぶったマゾヤさんは語った。

マゾヤさんは未来を予知することができるという。だが、自分を導く精霊たちは魔女を糾弾するという危険な行為には手を出さないと語る。「私の精霊たちは、魔女たちのことは知らない」とマゾヤさんは述べた。【1月24日 AFP】
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『この女は魔女だ』と糾弾することで、その財産を奪う・・・呪術を欲望実現のために都合よく利用している実態もあるようです。

ケニアでも 死者の蘇生 「真実の薬」】
あまり日本と馴染みがないタンザニアとか、未開のジャングルのイメージがあるコンゴや中央アフリカなどであれば、そういうこともあるかも・・・という感もありますが、タンザニアの北に位置するケニアでも事情はあまり変わらないようです。

ケニアは経済的には“工業化は他のアフリカ諸国と比べると比較的進んでおり、特に製造業の発展が著しい”“独立以来資本主義体制を堅持し、東アフリカではもっとも経済の発達した国となった”という国で、政治的にも、2007年12月の大統領選挙に伴う大混乱で評価を下げたものの、それまではアフリカにあって民主主義を実現した数少ない国のひとつと見られていました。

最近では、ソマリアのイスラム過激派「アルシャバブ」によるテロへの対策が喫緊の課題となっています。

****テロ対策法巡り議会大混乱 ケニア****
イスラム過激派のテロが続く東アフリカのケニアでは、テロの取締りを強化するためだとして議会で与党側が治安維持関連法の改正案を採決しようとしたところ、野党側が「人権侵害を引き起こす」として猛反発し議場が一時、大混乱となりました。

ケニアの国民議会では18日、テロの取締りを強化するため容疑者を起訴しないまま長期間、拘束することを認める治安維持関連法の改正案の採決が行われました。

この際、野党側は十分な審議を求めましたが与党側はそれを振り切って採決を行おうとしたため、野党側が猛反発して副議長の女性に水をかけたり本や文書を投げたりしたほか、議員どうしによる乱闘も起きて議場が一時、大混乱となりました。

結局、法案は可決されましたが、野党側は「政府による人権侵害を引き起こす」として反発しています。(後略)【12月19日 NHK】
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テロ取締まりと人権侵害の問題・・・日本でも、欧米でもありそうな議論です。
しかし、その一方で、呪術を巡る殺人や事件も報じられる社会でもあり、上記のような人権を巡る審議との落差を感じます。

****ケニアの呪術師、死者蘇生に失敗 村人ら激怒****
ケニアの村で8日、呪術師が死者の蘇生に失敗し、その理由として「疲れたから」と言ったことから待ちわびていた村人たちが1日を無駄したと激怒した。

9日のケニア紙スターによると、同国南東部クワレ地区の村人たちは8日、死者蘇生が行われると知り、「奇跡」を目撃すべく歌を歌いダンスをしながら呪術師のサミュエル・カヌンドゥさんのもとへ向かった。

呪術師が儀式を始める前、村の長老ヌダロ・コトタさんは、「死者蘇生など今まで見たこともなかったから、直接見てみたかった」と話した。

呪術師は集まった村人たちに対して、これまでに5人の死者を蘇生させたと自慢し、2013年10月に死亡した男性をその日の日没までによみがえらせると約束した。

しかし死者はよみがえらず、呪術師は「疲れたから」と言って村人たちに待つよう要請。同紙によると村人たちは激怒し「本当のことを言え。私たちの1日を無駄にするべきではなかった」と呪術師に詰め寄ったという。

しかし、同紙によると死亡した男性の遺族は、男性が「魔術師に殺され、バナナの木の下に遺体を隠されたため」、蘇生が難しくなったのだと思うと話しているという。【1月11日 AFP】
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****疑い晴らすため「呪術師」の薬飲んで死亡、ケニア****
ケニアのある村で、本を盗んだとされるスクールバスの運転手が、疑いを晴らすために「呪術師」と称する女性が醸造して作った「真実の薬」を飲んだところ死亡したことから、村人の間で激しい抗議が起きている。

20日の報道によると、事件はケニア南西部のキシイで起きた。同地の学校で教科書が盗まれたことをうけ、学校側が盗んだ人物を探し出すために「呪術師」を呼んだ。

地元の警察署長は地元紙デーリー・ネーションに「33歳の運転手は無実を証明するために、『混合物』を飲むことをあえて自ら申し出た。飲んだ途端に意識を失い死亡した」と語った。

この事件に激怒起した村人たちは学校運営側に報復しようと、スクールバスや副校長の家に放火した。【1月20日 AFP】
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冒頭で触れたように、呪術を未開社会に特有のものと考えることは誤りでしょう。
ただ、経済成長著しいとされるアフリカ社会の上記のような一端は、現代日本に暮らす人間からするとなかなか理解しがたいものがあるのも正直な感想です。
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