孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

キューバ  米経済制裁で困窮する市民生活 ソ連崩壊時の「特別な時代」再来の懸念

2019-09-16 21:57:51 | ラテンアメリカ

(米国の経済制裁を受けて燃料不足に陥っているキューバの首都ハバナで、燃料を買うためにガソリンスタンドに並ぶ人々(2019年9月12日撮影)【9月13日 AFP】)

 

【改革路線を進めるも、強化される米制裁で苦境は深刻化】

国際的に今最大の関心事は、サウジ石油施設への攻撃にイランがどのように関与しているのか、今後の関係国の対応はどうなるのか、それに伴い原油価格・供給量など日本への影響はどうなるのか・・・といった問題ですが、例によってアメリカが「イランがやった」と騒いでいる一方で、どういう訳か、当事者のサウジアラビアのコメントがないという状況で、「どうなるのか、様子を見てみよう」といったところです。

 

でもって、今日はキューバの話。改革路線を進める社会主義国キューバは今年2月に憲法を改正しました。

 

****キューバ、私有財産認める 憲法改正、社会主義は維持****

キューバの選挙管理当局は25日、24日に実施した憲法改正を問う国民投票で、約87%の賛成多数で新憲法が承認されたと発表した。

 

ラウル・カストロ政権では、経済発展のために小規模な自営業を認めるなど一部で市場経済が導入されたが、今後は、私有財産が国民の権利として正式に認められる。共産党の一党支配や社会主義体制は維持される。

 

選管当局の発表によると、投票率は約90%で、賛成が約87%、反対は約9%だった。

 

新憲法では大統領職や首相職を設ける。任期を定め、政治の透明性を確保したり、権力を分散させたりする狙いとみられる。

 

1959年キューバ革命を指導した故フィデル・カストロ氏や弟のラウル・カストロ氏(87)ら革命世代が高齢化したキューバでは、カストロ後を見据えた体制づくりが進められてきた。国家元首にあたる国家評議会議長の昨年4月のディアスカネル氏(58)への交代や、今回の憲法改正もその一環。

 

ラウル氏主導の改正草案では、婚姻関係について「男女の合意」を「個人の合意」とし、同性婚を容認するとしていた。だが、国民が反発。昨年12月、国会にあたる人民権力全国会議は条文を修正し、同性婚規定は削除された。法律などで対応するという。【2月26日 朝日】

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しかし、関係緩和に動いたオバマ前政権から一転して、アメリカ・トランプ政権のキューバ制裁は厳しさを増し、また、同盟国ベネズエラの混乱もあって、市民生活は困難な状況に陥っています。

 

****キューバ、食料など配給の対象が拡大 米制裁響く****

キューバ政府は12日までに、食料や基本的な洗浄・衛生製品を対象にした新たな配給を開始すると発表した。

 

米国の経済制裁の強化や同盟国であるベネズエラで進む経済危機が主因となっている。ベネズエラがキューバに供給してきた原油の量はここ数カ月間しぼんでいるという。

 

キューバの国営サイト「キューバ・ディベート」は10日、鶏肉、卵、ソーセージや洗浄・衛生製品の購入は今後規制されると伝えた。国内ではここ数週間、商品払底への不満が噴出し、鶏肉など入手が困難な商品の販売時には国営市場でけんかも起きていた。

 

キューバ政府は、物資不足はベネズエラのマドゥロ政権への支援を理由に米国がキューバに科す締め付け策が原因と主張している。

 

トランプ米政権は今年4月、キューバやベネズエラ、ニカラグア3カ国に対する新たな制裁を発表。この中には、キューバ革命後に資産を接収された米国民が、その資産を利用して活動する外国企業を相手取って損害賠償訴訟を起こすことを認めることも含まれた。

 

こうした訴訟を可能にする法律は1996年に成立したが、実際の行使に踏み切ったのはトランプ政権が最初となった。同法は5月2日に発効したが、同日には早速、最初の訴訟が起きた。

 

一方、キューバで多額の投資活動を進めるカナダや欧州連合(EU)加盟国は反発している。【5月12日 CNN】

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アメリカ政府が接収資産を巡る訴訟を解禁したことで、外国企業の投資や貿易が減る恐れが出てきたことで、キューバ経済は一掃の苦境に直面しています。

 

こうした厳しい環境に耐えられず、アメリカなどへ向けた国外流出の動きも加速しており、混乱も起きていることが報じられています。

 

****キューバ、米制裁で苦境一段と 国外流出も加速 ****

(中略)生活環境が厳しさを増す中で、国民流出の動きは加速している。国交回復を受け、キューバ移民が米に上陸すれば滞在を認めてきた特別措置を米が2017年にやめると流出は大幅に減少したが、今年は急激な増加に転じている。

 

米税関・国境取締局(CBP)によると、18年10月~19年4月までの7カ月間で、米メキシコ国境を越えて不法に米入りしたキューバ人は1万910人と前年度(17年10月~18年9月)の通年実績をすでに5割上回る。地元メディアによると米テキサス州エルパソに接するシウダフアレスには現在も4千人以上のキューバ人が米入りを目指して滞在している。

 

「米の制裁で必要な物資の輸入が難しくなっている」。4月中旬に開かれた人民権力全国会議(国会)でディアスカネル国家評議会議長は演説で米を批判すると同時に、苦境を認めた。

 

ヒル経済企画相は「ベルトを締めろ」と国民に厳しい生活にも耐えていくように求めたが、食料を求める長い列、そして次々と国を去る人を見る限り、国民の限界は徐々に近づいているようだ。【5月18日 日経】

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トランプ政権はキューバへの圧力を緩める気配はありません。あわよくば、社会主義体制の崩壊・体制転換を・・・という期待でしょう。

 

****米、1962年の対キューバ禁輸措置をさらに延長****

ドナルド・トランプ米国大統領は、1962年に発行されたキューバに対する禁輸措置をさらに1年延期する大統領令に署名した。

 

ホワイトハウスは、「対キューバの権限施行を1年延期することは、アメリカの国益に合致すると、ここに決定する」という声明を発表している。

 

2018年末、アメリカはベネズエラ、キューバ、ニカラグアを「三大圧政」と称し、三カ国に対し制裁を課した。ワシントンはこれら反民主主義体制と闘うことを約束、その後2019年になり、ベネズエラのマドゥロ大統領支持するキューバに対し、新たな制裁を拡大してきた。(後略)【9月14日 Sputnik】

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【ソ連崩壊後の「特別な時代」への逆戻りの懸念も】

キューバでは深刻な燃料不足が起きており、ソ連崩壊後の「特別な時代」への逆戻りも懸念されています。

 

****米制裁でキューバに燃料危機、GSに大行列 緊縮時代の再来に懸念も****

キューバの国家元首ミゲル・ディアスカネル国家評議会議長が、米国の制裁により燃料不足や停電が起きるとの見通しを国民に示したことを受けて、首都ハバナでは12日、ガソリンスタンドや公共交通機関で大行列が発生した。

 

今回の燃料危機は直ちに、ソ連崩壊後の「特別な時代」の極端な緊縮財政に逆戻りする懸念を呼び起こした。

 

ディアスカネル氏は11日夜のテレビ演説で、「ディーゼル燃料が入手しにくい」ため、交通機関や発電、物流に影響が出るだろうと述べた。さらに、キューバへの輸入燃料の到着は10日を最後に途絶えており、燃料危機は次のタンカーが到着予定となっている14日まで続くとの見通しを示した。

 

米財務省は、ベネズエラ産原油をキューバに輸送する多数の企業に制裁。こうした米国の対応について、ディアスカネル氏は「キューバに対するこれまで以上に大きな侵害行為」と非難した。

 

ディアスカネル氏は国民の懸念を払拭(ふっしょく)するため、燃料不足が1990年代の「特別な時代」の再来を意味するわけではないと訴えた。「特別な時代」には、緊縮財政により物資不足がまん延し、栄養失調やそれに関連する病気が発生。約4万5000人が米国をはじめとする国外に脱出した。

 

■デジャブ

しかし、国民は早くとも14日までは燃料を補給できないとの知らせに動揺。ディアスカネル氏の言葉に耳を貸さず、テレビ演説が終わって数分もたたないうちに、大勢がガソリンスタンドに殺到した。

 

ディアスカネル氏は10月には「比較的正常な状態」に戻すと確約。経済の多角化に成功し、現在の主要貿易相手は欧州連合となっているので、キューバは「特別な時代」の頃よりも強い国になっていると強調した。 【9月13日 AFP】

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【「助け合いの社会」にもとげとげしさが】

キューバ国内の市民生活の実情については、あまり報道がありませんが、今年6月当時の状況について下記レポートが。

 

「苦しいけど、キューバらしい明るさも」と言うべきか、あるいは、「キューバらしく明るいけど、苦しい」と言うべきか・・・・

 

****トップス1枚が月給相当 「バブルはじけた」キューバの現実****

今や世界でも数少ない社会主義国として、独自の文化を育んできた。慢性的なモノ不足のなか、明るさを失わないキューバの人々の心も揺れている。AERA 2019年9月16日号に掲載された記事を紹介する。

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 バスを待つとき。アイスクリーム店に入るとき。キューバ人は並ぶことに慣れている。

「エル・ウルティモ?」(列の最後の人は誰?)
キューバを旅行するとき、「便利なスペイン語表現は?」と聞いて、教えてもらったのがこの言葉だった。キューバにおいてモノ不足は日常だ。しかし今年5月、首都ハバナの知人男性から、Facebookを通じて届いたメッセージは切実だった。

「1日並んでも、料理の油が買えない。1990年代のような深刻な事態になるのでは」

店の棚から生活必需品が消え、配給でまかないきれない鶏肉も値段がはね上がったという。食料自給率が20〜30%といわれるキューバでは、輸入に頼る品が突然入手できなくなるのは珍しいことではない。

 

だが今回のモノ不足はソビエト連邦崩壊後、「草を食べてしのいだ」と言われたほどの危機を連想させる。そんな不安が書かれていた。

キューバはどうなるのか。6月、現地に飛んだ。

豆売りの呼び声を真似する子どもたち。道端のサッカー少年たちにゲキを飛ばす父母。若者の笑い声につられてはねる犬。体形をアピールするワンピースで闊歩する女性や、葉巻をふかしながら通行人を見つめる高齢の男性。どこからか陽気な音楽が鳴り、色とりどりのクラシックカーが走り抜ける。

夏祭りのように騒がしい、元気いっぱいなハバナの下町コミュニティー。これぞ、キューバだ。悲愴感は感じられない。

それでも、やはりモノ不足は深刻だった。市場では真っ赤なマンゴーが積み上がっているが、肉などの輸入品を売るスーパーは空っぽの棚が目立つ。街の中心部にも異変が起きていた。

「オバマバブルがはじけた」
今回メッセージをくれた30代の男性はこう嘆いた。ウェーターをするレストランの店内は2年前は大にぎわいだったのに、今は客もまばら、生バンドの演奏も心なしか哀愁を帯びている。広場には赤やピンクに輝く「アメ車」のオープンカーが並んでいた。ハバナを1周できるタクシーだが、客がおらず、置物のようだ。

オバマ前米大統領がキューバと国交を回復したのは2015年。経済制裁の緩和を進め、キューバを訪れるアメリカ人が増えた。先んじて、キューバでは自営業が一部許可されたこともあり、レストランや観光タクシーの開業が相次いだ。

ところが、この動きに「待った」をかけたのが、17年に就任したトランプ米大統領だ。アメリカからの渡航条件を引き締め、今年6月にはクルーズ船の寄港を禁じた。オバマバブルに期待していた人々の夢ははじけた。

キューバの経済システムは改革のただなかにあり、今回のモノ不足が経済制裁と直結しているかはわからない。一方、キューバの社会で「お金」の存在感が増しているのは確かだ。

そもそもキューバは、「シェアエコノミー」に近い社会だ。教育や医療は無料で、配給もある。クラシックカーは市民の乗り合いタクシーだし、住まいもほぼ無料で与えられる。稼げばそれだけ税金も高くなるが、ローンなどの「借金」もない。

「革命後の理想は助け合う社会。政治も宗教も、人を助けることを一番大事にしてきた」
アフリカの民俗信仰とカトリックが融合したキューバの宗教「サンテリア」の聖職者(ババラオ)で60代のヘススさんはこう話す。

「キューバの医療が世界に誇れる水準になったのは国内外で困った人を助けるため。宗教者も相談に乗ってサポートする」

隣の家で砂糖がなくなれば、差し出す。食事に困っている人がいれば食べさせる。だが、そんな助け合いの社会が変わってきたという指摘も多かった。

たとえばキューバでは女の子が15歳になると、大人の仲間入りを祝う。娘にドレスを着せ、豪華なパーティーを開く親は、「立派なプレゼントを用意できる人のみ、招待することがある」(観光業、30代男性)という。

「現地のペソ(CUP)で買えるものは安く、外国人用の通貨(CUC、兌換ペソ)でしか買えないものは驚くほど高い」
こう話すのは30代の銀行員女性だ。キューバは二重通貨制で現地ペソと兌換ペソの価値の差が25倍ある。彼女の収入の多くは、兌換ペソ払いの洋服とネット接続代に消える。

このとき着ていた、腕にレースをあしらったトップスは「メキシコに行った人から27CUC(約2900円)で買った」という。キューバ人の平均的な月給に相当する金額だ。

昨年末から使えるようになった、携帯電話のネット接続は1GBのデータ量で10CUC(約1100円)もする。
「私の婚約者は愛があれば結婚式はいらないと言うけれど、ウェディングドレスを着てパーティーもしたい。お金と時間がかかりそうだけど……」

医療と教育、最低限の物資は手に入るが、それ以上を望むとお金がかかる。だが給料は上がらない。こうした社会に不満を持ち海外移住を考える人もいる。

大学教授の助手をする20代男性はアメリカに移住し、自分の力を試し、稼ぎたいと語る。
「学校で革命家チェ・ゲバラの信念である『搾取をしない』大切さを教えられた。その結果、工場の経営もままならずこのシャツも靴も、輸入品。キューバは自分たちで何もつくれない」 そう言って肩をすくめた。

一方で民泊経営をする地方出身の50代男性は、キューバの変化に期待していると話す。
「子どものころ、フィデル・カストロ政権が冷蔵庫など電化製品を支給してくれてその優しさが心にしみた。アメリカに支配されないよう社会主義を保つのは大変だけど、政府はみんなのためにがんばっている」

男性は最近、ビジネススクールに通い始めた。経理やマーケティングなどを学び、「稼いだお金を投資に回すのも大事とわかった」。半年間教授とマンツーマンで学んだが、授業料は安い。教育への援助を惜しまないのがキューバらしいという。

若い世代にも、今のキューバを支持する人はいる。趣味は日本のアニメという自営業の20代男性も、「仕事ばかりで終わる人生は嫌。好きなことに時間を注げるキューバがいい」と話す。

海外でも絶大な人気を誇る伝説のバンド「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」でも活躍したジャズピアニストのロランド・ルナさん(41)は、海外に滞在した時期もあったが、今はキューバで暮らす。

「家族、友達、そして景色と記憶。音楽と同じくらい、深く愛しているものがここにはある」【9月16日 斉藤真紀子氏 AERAdot.】 
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上記レポートは6月当時のものですが、現在は前出【9月13日 AFP】にあるように、1990年代の「特別な時代」の再来が懸念される、更に深刻な状況になっていると推測されます。

 

“隣の家で砂糖がなくなれば、差し出す。食事に困っている人がいれば食べさせる。そんな助け合いの社会”も、“入手が困難な商品の販売時には国営市場でけんかも起きていた”【前出 CNN】といったとげとげしい社会に変わりつつあるようにも。

 

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