孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  危機的レベルの大気汚染に高まる国内批判 地方・中央政府が対策に乗り出す動きも

2016-12-26 22:09:30 | 中国

(河南省林州市にある中学校で、19日に運動場で行われた実力テストの様子 【12月23日 Record China】
私が住んでいる町は、川に近いせいで、冬の朝は朝霧でこんな感じになりますが・・・・)

責任回避の「気象災害」認識
中国の殺人的な大気汚染はもはや“恒例化”し、冬を迎えるこの時期の年中行事とも化していますが、今年はとりわけひどかったようです。

****中国、例年以上に深刻な大気汚染、各地で最悪レベルの「赤色警報****
2016年12月23日、今冬の中国では各地で例年以上の深刻な大気汚染が発生している。

北京では16日から21日まで、4段階のうち最悪レベルの「赤色警報」が今年初めて発令された。日本では大きく報じられないが、インドの大気汚染も深刻。急速に工業化が進み、経済発展する国に共通の悩みでもある。

中国の大気汚染に関する警報は、上から「赤」「オレンジ」「黄色」「青色」の4段階。「赤色警報」下の北京の一部では、発がん性が指摘される微小粒子状物質(PM2.5)の濃度が1立方メートル当たり、300マイクロ・グラム(日本の環境基準は35マイクロ・グラム)を超えた。

中国メディアによると、北京周辺では「赤色警報」に伴い、石油プラント、冶金工場、セメント工場、火力発電所、インスタントラーメン工場など1200カ所の工場に操業停止、減産が命じられた。

屋外での建築工事も強制的に停止。期間中、車の交通量を半分近くに減らすため、車のナンバーの末尾が日によって偶数か奇数のどちらかしか走ることができない措置が取られたほか、日本人学校を含むほとんどの幼稚園や小中学校が休校となった。

北京以外でも、天津市、河北省石家荘市、山西省太原市、山東省徳州市、河南省鄭州市など22都市が「赤色警報」を発令。河南省平頂山市、山西省呂梁市、山東省済南市など18都市が1レベル下の「オレンジ警報」となった。

中国当局も大気汚染対策には、ほとんどお手上げの状態。北京市政府は対策の一環として「北京市気象災害防治条例」の制定を進めているが、大気汚染を「気象災害」と規定しているため、専門家から「汚染物質の排出という人為的責任を看過しかねないミスリードではないか」との批判を招いている。

香港メディアは「大気汚染の改善には今後1兆7500億元(約29兆円)規模の投資が必要との試算もある」とも報じている。(後略)【12月23日 Record China】
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“国際エネルギー機関(IEA)が今年発表した報告によると、中国では毎年、大気汚染が原因で120万人が早死し、平均寿命を2年以上押し下げているという。”【12月26日 ロイター】ということです。

こうした“数字”の意味合いは慎重に評価する必要はありますが、いずれにしても住民健康に多大な悪影響を及ぼすものであることは間違いなく、かつての日本の公害問題がそうであったように、“中国当局も大気汚染対策には、ほとんどお手上げの状態”では済まされない問題です。

なお、中国当局の“名誉”のために付記すれば、大気汚染の深刻化は中国だけの問題ではなく、インドなどは中国よりひどい・・・とも言われています。(だから、中国当局の責任が軽減される話ではありませんが)

“今年5月に世界保健機関(WHO)が公表したデータによると、ニューデリーのPM2.5の年間平均濃度は世界約3000都市のうち11番目に高く、北京の約1.4倍に上った。濃度が高い20都市のうち、最悪だったのはイランの都市ザーボルだが、インドは半数の10都市を占め、中国(4都市)やサウジアラビア(3都市)を大きく上回っている。”【12月23日 Record China】

深刻な大気汚染に関しては、連日のように“笑える話”“笑い事ではすまない話”が報じられています。

“笑える”方では、「ネタ」なのか「ガチ」なのかわからない下記のような話も。

****大気汚染スモッグがひどい中国、高速鉄道内に空気清浄機持ち込む市民がついに出現!?****
中国では今月に入って北京など北部地域を中心に大気汚染が深刻なレベルとなっている。スモッグに視界が遮られ、高速道路や空港の閉鎖なども起こっている。

健康被害から身を守るため、市民たちはこぞってマスクや空気清浄機を購入しているようだ。できれば空気清浄機を持ち歩いて出かけたいと思っているかもしれない。

中国メディア・駆動之家は20日、大気汚染が深刻化する中で、ある市民が高速鉄道の車両内に空気清浄機を持ち込んで運転させている様子が、このほどネット上で公開されて話題を集めていいることを報じた。(後略)【12月24日 Searchina】
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高速鉄道なので、コンセントは座席下にあるそうです。
ただ、動画に写っている空気清浄機のメーカーについて、“27日に自動車などの座席に取り付け可能な小型のポータブル空気清浄機を発売する予定であることから、宣伝のための話題作りではないかとの声が中国国内のネット上で出ている。”とも

“笑い事ではすまない”方では、大気汚染が深刻な日に、休校指示を無視したうえに、あろうことか屋外でテストを行った中学校(冒頭画像でみると、ちょっと引いてしまいます)の話が報じられています。

****大気汚染を無視して運動場でテスト強行した中学校、校長が停職処分に****
2016年12月22日、新京報によると、大気汚染が深刻な日に屋外でテストを行ったとして物議を醸した中国河南省の中学校校長に対し、停職処分が下されたことが明らかになった。

この学校は同省林州市にある中学校で、19日に運動場で行われた実力テストには約480人が参加した。

市教育体育局の責任者によると、同局は大気汚染で最も警戒レベルの高い「赤色警報」が発令されたことを受け、学校や幼稚園に19日正午からの休校、休園を通達。警報解除まで再開しないよう指示を出していたが、問題の学校はこの日の午後にもテストを行っていた。

学校が指示に従わなかった理由について、この責任者は「途中で止めて試験内容が漏えいすることを恐れた」と説明しており、屋外で実施されたことに関しては「カンニングを防げると考えたのだろう」。同局はこの問題に対する調査チームを立ち上げ、状況把握を進めている。【12月23日 Record China】
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さすがにこれは中国でも“一体何を考えているんだ!”ということになったようです。

官製メディアも異例の政権批判を行うなど、高まる批判
当然の話として、無策の当局に対する批判は強まっており、当局・共産党指導部としても、もはやうやむやにはできないレベルに達しています。

****中国の大気汚染で地方政府を提訴 「有効な措置とらず」と弁護士ら、官製メディアも異例の政権批判****  
深刻な大気汚染が広がる中国で、事態の改善に向けた有効な措置を取れない当局へのいらだちが国民の間で高まっている。16日夜から21日にかけて今年初めて最高レベルの「赤色警報」を発令した北京市をはじめ、中国北部の広い範囲が有害物質を含んだ濃霧に覆われた。
 
21日には河北省の石家荘などで、大気汚染の指数(AQI)が上限値の500に達し針が振り切れる「爆表」と呼ばれる状態となった。北京でも戸外活動を避けるべきだとされる「重大汚染」の状態が続いた。
 
中国北部の都市では工場の操業停止や学校の休校措置がとられたほか、高速道路の閉鎖が相次ぐなど物流にも影響。市場に集まる野菜の量が通常の2割以上減少し、価格が高騰するなど市民生活への影響に不満が高まりつつある。
 
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(英語版)によると、「大気汚染への有効な措置をとる義務を怠った」などとして5人の弁護士が20日までに北京、天津両市と河北省の各地方政府を相手取り、精神的苦痛への見舞金9999元(約16万円)やマスク代、謝罪広告などを求めて提訴した。
 
中国共産主義青年団機関紙「中国青年報」は21日付のコラムで、「大気汚染の根源を突き止め、産業構造を調整する決断を下すべきだ。生産停止や自動車の運行制限ばかりに頼るのは責任ある態度ではない」と異例の政権批判を展開した。【12月21日 産経】
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****われわれは製品を国外に輸出し、汚染を自国に残している 貿易における環境面の「赤字」を清算せよ! =中国メディア****
今月に入って北京など中国北部を中心に発生している深刻な大気汚染は、急速な発展と引き換えに出現した環境汚染の凄まじさを改めて痛感させる出来事となった。

大きなダメージを受けた環境を改善しながら安定した経済成長を実現できなければ、中国にかかった「もや」が晴れることはない。中国メディア・澎湃新聞は20日、「われわれは製品を国外に輸出し、汚染を国内に残している」とする記事を掲載した。

記事は、ある国や地域における経済・貿易の構造は、空気の質と関係があるとし「空気の質が悪い段階において、輸出するのは工業製品であり、輸入するのは原材料だ。空気の質が良い段階になると状況は大きく変化する。工業製品を輸入して、サービス産業を輸出するようになるのだ」と説明。そして、貿易は物理的、経済的な指標に限らず、環境の指標を用いて衡量することができるのであると論じた。

そのうえで、近年における中国の貿易は、経済的には大きな黒字となっているものの、環境という視点に立てば「ひどい赤字であり、貿易によって引き起こされる汚染はますます多くなっているのである」と指摘。「言い換えれば、われわれは製品を国外に輸出して、汚染を国内に残しているのだ」としている。

そして、中国は現在その発展政策と貿易政策について反省しなければならないと主張。発展政策についてはすでに多くの反省が行われてきたものの「貿易に対する反省は不十分であり、環境政策となるとさらに反省が必要だ」と訴えた。(後略)【12月26日 Searchina】
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政権への信頼をかけて、対策に乗り出す地方政府・中央政府
この状態を放置していては国民の政権批判にもつながりかねない状況で、地方政府・中央政府とも、対策に乗り出す動きも報じられています。

****中国河北省、2017年は汚染対策強化へ****
中国北部で前週、大気汚染が深刻化したことを受け、河北省は対策を強化する方針を明らかにした。
同省は公式ウェブサイトで24日、2017年を転換の年にすると表明した。

また河北省の張慶偉省長は、汚染の抑制に向けて「科学的精度」の向上に取り組む意向を示した。

河北省の8都市は前週、深刻なスモッグを受けて「赤色警報」を発令したが、省内の複数の鉄鋼メーカーが運転を停止していないとして、環境保護省から批判を浴びていた。

張省長は26日、河北省が産業やエネルギーの構造を見直すに当たり、「トップレベルでの計画立案」をより適切に行う必要があると述べた。

公式ウェブサイトによると、スモッグの大きな要因となっている石炭の直接燃焼などの問題についても、河北省政府はより具体的な対策をまとめる方針だ。【12月26日 ロイター】
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“北京周辺では「赤色警報」に伴い、石油プラント、冶金工場、セメント工場、火力発電所、インスタントラーメン工場など1200カ所の工場に操業停止、減産が命じられた”といは言っても、地方政府と企業の癒着で骨抜きにされる現状も想像されます。

省レベルでも、そのあたりの厳正な運用が求められていますが、大気汚染は一部の地域、一つの都市だけでは対策は不可能で、地域の協調が必要とされます。

****大気汚染対策のカギは自治体の協調、地域全体で汚染削減に取り組み****
2016年12月22日、環球網は記事「大気汚染対策として中国各地で汚染排出削減を実施」を掲載した。

中国各地で深刻な大気汚染が観測される中、中国環境保護部は各地に工場の操業停止、乗用車の使用制限など汚染排出物削減で協力するよう要請した。また健康被害を避けるため、学校を休校する措置も求められている。

汚染物質は自治体を越えて移動し拡散するだけに、一部の地域、一つの都市だけでは対策は不可能だ。多くの自治体が協調することが対策の成否を握る。

環境保護部の要請に応じ、中国の各自治体は排出削減に取り組んでいる。河北省邯鄲市では違法に汚染物質を排出していたとして企業経営者11人が拘束された。【12月26日 Record China】
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中央政府レベルでも「環境保護税」を導入して、これまで以上に厳しく環境保全に取り組む動きがあるようです。

****中国、環境保護税導入へ 汚染排出企業向け、車は対象外*****
中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)常務委員会は25日、「環境保護税」を導入するための法案を議決した。2018年1月から、企業の排気や排水に対して課税する。深刻な大気汚染などの環境問題に対応するため、約10年越しで立法化にこぎ着けた。
 
新法は、大気や水の汚染物質、ゴミ、騒音を出している企業に対して、その量に応じて税金を課す。各地方ごとに重点的に食い止めたい汚染の種類を判断し、税額を最大10倍まで厳しくすることもできるとした。
 
中国には環境汚染に対する課徴金制度はあったが、地方政府によっては徴収体制が十分に整っておらず、汚染を食い止める効果が不十分だった。課税対象にすることで実効性が高まるとの見方がある一方、自動車の排気や農薬などは課税対象外とされ、全人代の委員などからも「範囲が不十分」との指摘が出ている。
 
課税方式は07年ごろから検討されてきたが、企業の収益が落ちることへの配慮などから議論が進んでこなかった。北京の大気汚染が国際的に注目を集めるなど、改善の見られない汚染への国民の不満が高まる中で導入が決まった。【12月26日 朝日】
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住民生活を厳しく管理する共産党政権らしい施策としては、汚染がひどい大都市の人口制限という施策もあります。
ただ、これまでもうまく機能しておらず、共産党政権といえど実現困難な対策です。(政府方針に反して北京などに人口が集中するところに、地域格差などの中国社会の問題・矛盾が表れているとも言えます)

逆に強権的に行うと、新たな別問題を惹起するものでもあり、慎重な運用が必要とされます。

****中国・北京市の5地区が人口抑制計画、大気汚染対策=メディア****
中国の首都、北京市の5地区が、今後数年間に人口の上限を設定したり減らす計画を発表した。地元メディアが21日伝えた。

北京は、ここ1週間に大気汚染について最高度の「赤色警報」を発令している北部24都市のうちの一つ。各都市では工場が操業を停止したり交通規制が敷かれている。

22日の北京市は、「赤色警報」が解除されたが、冬の間は暖房用燃料需要が高い状態が続くため、再びスモッグが深刻化する可能性がある。

報道によると、北京中心部の東城区は、いわゆる永住資格がある住民の数を2020年までに76万2000人と、2016年の目標より11万5000人少なくする計画。西城区は5年以内に110万人に抑えることを目指している。

大興区と順義区は、それぞれ170万人、130万人以下にする計画。石景山区は来年の人口をほぼ変わらずの61万6000人にしようとしているという。

北京市の人口は、1998年から約60%増加し現在、約2200万人。数年前に人口を500万人減らす構想を打ち出したが、2016─20年の5カ年計画で断念した。

それでも、政府指導部が大都市シンドロームと呼ぶ状況の是正を目指し、2020年までに2300万人以下に抑える方針を示している。【12月22日 ロイター】
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こうした施策で、来年の冬は大気汚染という“年中行事”が消える・・・・のでしょうか?
先述のように、この状態を放置していては国民の政権批判にもつながりかねない状況ですから、共産党指導部としても本腰を入れざるを得ないのではないでしょうか。

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