孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

フィリピン  民族主義に走らず、中国との南シナ海共同資源探査を進めるドゥテルテ大統領

2018-11-27 23:14:02 | 東南アジア

(「習氏を「くまのプーさん」、ドゥテルテ比大統領を親友の子ぶた「ピグレット」に見立てた画像が#XiJinPoohのハッシュタグをつけて拡散され、ソーシャルメディアをにぎわせている。」【11月21日 朝日】ということで、ドゥテルテ大統領の対中国協調姿勢には批判も多いようですが・・・)

【健康不安説が絶えないドゥテルテ大統領】
最近、フィリピン・ドゥテルテ大統領が推し進める麻薬絡みの「超法規的殺人」の話に関するニュースは目にしませんが、単にメディアがこの話題に飽きてしまっただけなのか、実態としてひと頃よりペースが落ちているのか・・・よく知りません。

代わりに目にするのは、ドゥテルテ大統領の健康不安に関するもの。

****フィリピン大統領、検査でがん見つからず=内務相代理****
10月9日、フィリピンのアノ内務相代理は、ドゥテルテ大統領(73)が病院で検査を受けたことに関して、がんは見つからなかったと明らかにした。

大統領が前週に公式行事を2回欠席したため、健康状態について懸念が広がっていた。(後略)【10月9日 ロイター】
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****ドゥテルテ比大統領に健康不安説 73歳、支持に影響も****
フィリピンのドゥテルテ大統領(73)に健康不安説が浮上している。過去にも複数の持病があると明かしていたが、がん検査を受けたことを今月公表し、臆測が強まった。


世論調査では高齢のドゥテルテ氏の健康状態を懸念する人の割合が半数を超え、盤石な国内支持にも影響を与えかねない。
 
「3週間前、内視鏡検査を受けた。結果を待っているが、がんならがんとはっきり言う」。ドゥテルテ氏は今月4日の演説で突然こう明かし、「苦痛を長引かせたくない」としてがんが進行していれば治療しないと述べた。【10月25日 共同】
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ガンかどうかはともかく、お疲れのようではあります。

****ドゥテルテ比大統領、「仮眠」でASEAN会議欠席 記者質問に「何が悪い?」****
フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は14日、シンガポールで行われた東南アジア諸国連合関連首脳会議において自身が出席を予定していた会議のいくつかを欠席し、フィリピン大統領府は「仮眠」が原因だったと釈明した。

ドゥテルテ大統領が出席しているASEAN関連首脳会議には安倍晋三首相のほかロシアのウラジーミル・プーチン大統領、中国の李克強首相、米国のマイク・ペンス副大統領らも参加。

しかしドゥテルテ氏は14日、出席予定だった11会議中4会議と、シンガポールのリー・シェンロン首相主催の夕食会を欠席した。

ドゥテルテ氏は15日朝、会議の会場に到着すると記者の質問に対し、「仮眠の何が悪い?」と反論。十分に休めたかと問われると、「まだ足りないが、残りの日程を耐えるには十分」と答えた。

フィリピン大統領府はドゥテルテ氏がいくつかの会議に出ていないことが明らかになるやいなや声明を発表し、同氏が前夜3時間しか寝ていなかったと釈明。

同大統領府のサルバドール・パネロ報道官は、「大統領は睡眠不足解消のため仮眠を取った」と述べ、「大統領がいくつかの会議を欠席したことで、大騒ぎとなっている場所もある」と認めた。ただ、欠席は「臆測を生んでいる健康問題とは一切関係がないと国民に保証する」と強調した。【11月15日 AFP】AFPBB News
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「仮眠の何が悪い?」・・・・私も夜の睡眠時間が短めな分を昼寝で補っていますが、大事な会議を「仮眠」で欠席したら、やはり問題でしょう。

73歳・・・まだ、そんなに老け込む歳ではないようにも。93歳のマレーシア・マハティール首相は別格としても、フィリピンでもイメルダ夫人などお元気そうです。

****89歳イメルダ夫人、知事選出馬へ 故マルコス氏の妻***
独裁で知られたフィリピンの故マルコス元大統領の妻で、下院議員のイメルダ・マルコス氏(89)が16日、来年5月の中間選挙(上院の半数と下院、地方選)で、北部ルソン島の北イロコス州知事選に立候補を表明した。
 
イメルダ氏は、1986年の市民革命でマルコス氏とともに追放され、大量の靴のコレクションが「独裁者の搾取の象徴」として世界に知られた。今回の州知事選への出馬は、マルコス家の影響力の健在ぶりを示しているといえそうだ。
 
中間選挙は、大統領の6年の任期折り返しの年に実施される。北イロコス州はマルコス元大統領の出身地で、州知事は2010年から長女のアイミー・マルコス氏が務めている。

16日には、母親に知事職を譲る代わりに、自らは上院選にくら替えして立候補すると表明。地元メディアに、「地方政治のベテランとして、地方の声を中央に届ける」と意気込みを述べた。
 
マルコス家では、長男のフェルディナンド(通称ボンボン)氏が上院議員で、16年には副大統領選に出馬した。今回の北イロコス州の副知事選には、地方議員を務める孫のマシュー氏も立候補する。当選すれば、元大統領の妻、娘と息子、孫が3世代にわたって政界に進出する形となる。
 
マルコス政権下の戒厳令では多くの国民が弾圧され、国内では今も反マルコスの感情が残る一方、フェルディナンド氏の大統領待望論もあるほど、根強い支持がある。

南部ミンダナオ島が地盤のドゥテルテ大統領は、北部ルソン島での支持を集める思惑からマルコス家と緊密な関係にあるとされ、これがマルコス家の「復権」の背景にあるとも指摘されている。【10月18日 朝日】
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元気なイメルダ夫人がフィリピンにとっていいことかどうかはわかりませんが・・・・。

ドゥテルテ大統領は、過去にオートバイの事故で脊髄を痛めたために、がんや慢性疾患の患者に処方されることが多いフェンタニル(合成オピオイド)の貼り薬をよく使用していたことを公表しており、医師の処方量を超えて「乱用」していたことも知られています。まあ、見るからに不健康そうな表情・動きではあります。

【最近の支持率は?“就任以来最大の落ち込み”とも】
でもって、強硬な麻薬対策は国民受けはよく、高い支持率を誇ったドゥテルテ大統領の最近の支持率はどうなっているのか?・・・検索すると、ここ数か月の調査で「就任以来最低」とか「最大の落ち込み」といった記事がある一方で、「政権発足いら最高を記録」といった記事もあり、よくわかりません。

しかも、同時期に真逆の調査結果が出たりすることもあるようです。

****ドゥテルテ大統領の支持率 異なる調査会社で真逆の結果に****
フィリピンの民間調査会社SWSが7月に公表したドゥテルテ大統領に関する支持率調査では、就任以来最低の支持率であったことが明らかになったが、同調査会社と競う『パルス・エイシア(PAR)』社が7月13日に発表した同様調査では全く反対の数字が出て、この種の調査の信頼性が疑われる結果となった。

SWSの大統領支持率では5ポイント下がった65%であったが、PRAの大統領支持率は8ポイントも上昇する88%となった。
   
SWSもPRAも同時期にほぼ同じ人数を対象に調査をしているが、この真逆の結果は政権側の世論調査誘導があったのではないかと問題になっている。
   
フィリピンは世論調査の好きな国で、特に政治動向は頻繁に各種の調査が行われるが、自陣営に有利な結果を出すために依頼をする例もあって、金次第でどうにもなるとも指摘されている。
    
またフィリピンの世論調査方法は、無作為に選んだ人間を対象に対面で調査しているが、選ぶ段階で何らかの手が加えられ、しかも設問が依頼した側に有利なように誘導されているとの指摘もある。
   
実際、調査員と称する人物によると、調査対象者の答えと反対の書き換えをしたり、最初から調査員が設問に書き込んで調査対象者のサインだけをもらうことあったとの証言もある。(中略)

今回のフィリピンの2大調査会社の相反する結果について、大統領側はSWS調査に付いては批判を重ねたが、PASについては至極もっとも、満足するコメントを出している。(後略)【7月17日 DIGIMA NEWS】
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“フィリピンのように何でもありの国では信頼性が低い”【同上】という前提で、ここのところはインフレで支持率は落ち込んでいるとも報じられています。

****比大統領支持率が就任以来最大の落ち込み、インフレ原因か=世論調査****
民間調査機関パルス・アジアが今月実施した世論調査で、フィリピンのドゥテルテ大統領支持率が第3・四半期に就任以来最大の落ち込みを記録した。

調査は25日に発表されたもので、投票可能な年齢に達したフィリピン人1800人を対象に実施。その結果、ドゥテルテ大統領を評価するとの回答の割合は13ポイント低下して75%となった。
大統領の人格への「信頼感」は15ポイント低下し、72%となった。

ロケ大統領報道官は定例記者会見で、大統領は支持率に動揺しておらず、仕事に集中していると説明。「われわれは(支持率)には影響されない。これでも大変な高支持率だと思う」と述べた。

支持率低下の原因について同報道官は、コメの価格上昇により、他の分野における政府への評価が相殺されたとし、インフレ加速が原因になった可能性があると指摘した。【9月26日 ロイター】
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確かに“これでも大変な高支持率”ではあります。

【国際的司法判断という強力なカードを持ちながらも、中国との共同資源探査へ】
そうしたなかで、ドゥテルテ大統領は中国との協調姿勢を続けており、南シナ海でも中国との共同資源探査を行うとしています。

****中国 習主席 フィリピン訪問 南シナ海での共同資源探査で覚書****
中国の習近平国家主席は、フィリピンを訪問してドゥテルテ大統領と会談し、両首脳は、中国がフィリピンのインフラ整備を支援することで合意したほか、以前は領有権争いを繰り広げた南シナ海での共同資源探査に関する覚書を交わしました。(中略)

この中で両首脳は、マニラとルソン島南部を結ぶフィリピン国有鉄道の再建や、マニラ首都圏に水を供給するダムの建設など、インフラ整備を中心に、29件の経済支援に関する合意文書に署名しました。

さらに、これまで領有権を争ってきた南シナ海で、石油や天然ガスを共同で探査することに関する覚書を交わしました。ただ、この覚書の詳しい内容は明らかになっておらず、また法的な拘束力はないということです。

フィリピンはおととし、南シナ海をめぐって中国が主張する管轄権を全面的に否定する国際的な仲裁裁判の判断を勝ち取っています。

しかし、ドゥテルテ大統領はこの判断を棚上げすることで、中国から経済支援を引き出して資源開発やインフラ整備を進めたい考えです。

一方の中国も、南シナ海問題で最も強硬姿勢だったフィリピンを取り込みたい立場で、双方の利害が一致した形です。(後略)【11月20日 NHK】
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もともと、中国との共同資源探査は2005年当時、アロヨ元大統領が胡錦涛主席との間で進めていた路線ですが、アキノ前大統領時代に否定されました。

中国企業からの収賄疑惑がつきまとうアロヨ氏は大統領在任中の選挙法違反や汚職で逮捕されましたが、ドゥテルテ政権となった2016年年に約4年ぶりに釈放され、その後、公式訪中するなどし、今年7月に下院議長に就任して復権しています。【10月21日 産経より】

今回も、中国側はこの親中アロヨ氏の人脈を活用したようです。

ただ、このドゥテルテ大統領の対中国協調路線は、国内的には不評なようです。

****中国寄り政策に非難集中、フィリピンのドゥテルテ大統領****
(中略)そうした意味で、今回の中国の習国家主席のフィリピン訪問は双方の利害を一致させただけでなく、今月末にアルゼンチンで開催されるG20での米中首脳会談前に、南シナ海での中国のプレゼンスを強調できる大きな成果と、「中国は大歓迎」している。
 
しかし、その期待通り、事態は進みそうにない。
 
「フィリピンは、中国に騙された」
フィリピンの外交問題研究家、ヘーダリアン氏は、習国家主席の訪問前に、そう中国を非難し、ドゥテルテ大統領の対中政策を批判した。
 
2016年10月、同大統領は北京訪問時、中国の習国家主席と会談し、27件の協定に署名。
中国は港湾、鉄道、採鉱、エネルギーなどのインフラ整備などに対する150億ドルに上る直接投資、さらに90億ドルの低利融資など、支援規模総額240億ドルを約束した。
 
しかし、2年が過ぎた今でも、投資プロジェクトは殆ど、実施されていない。(中略)

そうしたなかドゥテルテ氏は、中国による軍事拠点化を批判することも、中国に中国の主権主張を退けた仲裁裁判所判決を受諾するよう圧力をかけることも拒み、結局、中国の軍事拠点である人工島の建設を“後押し”する結果を招いてしまった。
 
さらに、中国が爆撃機をフィリピンが領有権を主張する場所に着陸させ、南沙諸島のサンディ・ケイで存在感を誇示した時も、ドゥテルテ氏は強硬な対応を示さなかった。
 
この軟弱な姿勢に、中国に服従していると国内で批判の声が高まり、ドゥテルテ氏に対し、南シナ海問題で強硬姿勢で臨むよう圧力がかかっている。
 
今回の習国家主席の歴史的なフィリピン訪問でも、国内のメディアも、国民もドゥテルテの対中政策に疑問を呈し、非難した。(中略)
 
習国家主席訪問直前に実施された世論調査では、「南シナ海での中国のインフラや軍事拠点開発に反対」が84%、「中国が違法占拠する領土を奪回すべき」が87%で、そのため「海軍を中心としたフィリピンの軍事力拡大が不可欠」が86%にも達した。(中略)
 
さらに、フィリピン人の中国に対する信頼度は、ドゥテルテ氏の大統領就任前の最低水準を更新し、一方、米国への信頼度は高まっている。
 
ドゥテルテ氏は、中国からの経済財政援助によるインフラ開発で高い支持率を維持したいところだが、このままでは中国からの援助は、現実どころか「虚構」の泡と化し、南シナ海の深海に消えてなくなるだろうう。
 
米国の戦略国際問題研究所のポーリング研究員は、フィリピンと中国の関係改善に伴う恩恵は、両国政府が目指す「大きな規模からは程遠い」と強調。
 
中国が表明する融資や支援は、プロジェクト実施には結びつかず、貿易や投資パートナーとしても中国は、他国に大きく出遅れると分析している。(後略)【11月26日 末永 恵氏 JP Press】
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もっとも、“国内のメディアも、国民もドゥテルテの対中政策に疑問を呈し、非難した”とは言っても、国民大多数はそうしたことには殆ど関心はなく、ようするに国内の景気がよくなれば歓迎、そうでなければ反対・・・といったところではないでしょうか。

そうであるにしても、国内的に批判が多いなかで、しかも、国際的司法判断という強力なカードを持ちながらも、あえて対中国批判に走らず、共同資源探査を進めるドゥテルテ大統領の政治姿勢は評価すべきことであるのかも。(単にアメリカ嫌いの隠れ共産主義シンパというだけかもしれませんが)

民族主義を鼓舞することで政権求心力を高めようとする政治家が多い中では稀有の存在かも。

ただ、日中の東シナ海における共同探査の経緯を見ると、中国の共同探査への姿勢を信用していいのか・・・という話はありますが。

中国が本当に“共同”姿勢を守るのであれば、互いに権利を主張しあってぶつかるよりは、共同で・・・というのは賢明な方策です。

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