孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラエル  トランプ大統領と一蓮托生のネタニヤフ首相 来月17日に再選挙

2019-08-22 22:27:58 | 中東情勢

(トランプ米大統領やプーチン露大統領と握手するネタニヤフ首相の「外交力」をアピールする与党陣営=7月、テルアビブ(ロイター)【8月19日 産経】)

 

【トランプ大統領 民主党を支持するユダヤ系米国人はイスラエルやユダヤ民族に対する「不忠者だ」】

アメリカ・トランプ大統領が中東パレスチナ政策において、中立的な立場を捨てて、露骨にイスラエル寄りの姿勢を示していることは周知のところです。

 

背景には、宗教右派のキリスト教福音派へのアピールがあると解されています。

 

****福音派****

(中略)基本的には聖書の教えどおりに生きることに価値を置くため、旧約聖書の一節を「神がイスラエルをユダヤ人に与えた」と解釈し「世界が終末を迎えるとき、エルサレムの地にキリストが再来する」などとする。

トランプ大統領自身はその遍歴や生活態度から深い信仰心を有しているとは思われていないが、選挙公約に米大使館のエルサレム移転などを掲げ、当選後まもなくエルサレムをイスラエルの首都と認めるとしたのは、有力な支持層である福音派への配慮だとされる。【「知恵蔵」】

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では、アメリカのユダヤ人社会は・・・と言えば、共和党より民主党への支持が大きいとされています。

 

トランプ大統領としてはユダヤ人社会の民主党支持が、「こんなにイスラエル・ユダヤ人のためにいろいろ配慮しているのに・・・」と、お気に召さないようです。

 

****民主党支持のユダヤ系は「不忠」 トランプ大統領が批判****

来年の米大統領選で再選を目指すトランプ大統領は21日、ユダヤ人国家イスラエル寄りの政策をアピールした上で、対立する民主党を支持するユダヤ系米国人はイスラエルやユダヤ民族に対する「不忠者だ」と批判した。

 

伝統的な民主党支持層とされるユダヤ系に離反と自身への支持を迫る狙いがあるが、反発も強い。

 

トランプ氏は「他のどんな大統領よりもイスラエルに対し偉大なことをやってきた」と自賛し、国際的に認められていないエルサレムの首都認定や、エルサレムへの米大使館移転、イスラエルが占領するゴラン高原の主権認定などの“実績”を強調した。【8月22日 共同】

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まあ、気持ちは推測できますが、 “「不忠者」・・・そこまで言うかな・・・”という感も。

むしろ、恩着せがましさへの反発の方が大きいようにも思うのですが。

 

とにかく、トランプ大統領がなりふりかまわず再選に向けてすべてのエネルギーを注いでいることだけは確かです。

(国際社会に大きな影響を有するアメリカの政策決定が、トランプ再選の観点から決まるというのも、困った問題ではあります。もともと政治はそういったものでもありますが、そこを隠そうとしないところがトランプ流でもあります。)

 

【接戦が予想されているイスラエル再選挙】

一方、トランプ大統領が支援するイスラエル・ネタニヤフ首相も、連立交渉が失敗したことで来月17日に再選挙が控えており、こちらももアメリカ次期大統領選挙同様、接戦が予想されています。

 

****イスラエル再選挙まで1カ月 ネタニヤフ首相の続投が焦点****

イスラエルで国会(一院制、定数120)の再選挙が行われる9月17日まで1カ月を切った。ネタニヤフ首相が続投を決めるかが、最大の焦点だ。

 

世論調査では同氏率いる右派・宗教勢力と中道・左派勢力の接戦が予想されている。選挙の結果はトランプ米政権が策定中の包括的な中東和平案や対イラン包囲網など、国際政治にも影響を与えそうだ。

 

イスラエルでは4月の総選挙で右派・宗教勢力が勝利したものの、ネタニヤフ氏が主導した政権樹立のための連立交渉が決裂し、再選挙に持ち込まれた。

 

最新の世論調査では、ネタニヤフ氏率いる右派の与党「リクード」と、野党勢力を牽引する中道政党連合「青と白」がともに30議席前後を獲得する見込み。右派・宗教勢力も中道・左派勢力も過半数に届かない可能性が指摘されている。

 

4月の総選挙後の連立交渉では、5議席を獲得したリーベルマン前国防相の極右政党「わが家イスラエル」が、ユダヤ教超正統派の若者に対する徴兵免除の撤廃を求めて超正統派の政党と対立、連立入りを拒否した。

 

「わが家」は今回も同様の姿勢を取るとみられ、これがネタニヤフ氏の続投を阻むハードルとなっている形だ。前回選と同じくパレスチナ問題は主要な争点には浮上していない。

 

ネタニヤフ氏の首相在任期間は7月、通算で13年4カ月余りに達し、「建国の父」と称されるベングリオン初代首相を超え、史上最長となった。パレスチナやイランに対する強硬姿勢が自国の安全保障に敏感な右派の支持を集めてきた。

 

ただ、イスラエル検察は収賄罪などでネタニヤフ氏を訴追する方針を示しており、10月にも同氏の事情聴取を行う見通しとされる。首相の座を維持できなければ、政治生命の危機に追い込まれる可能性がある。

 

トランプ米政権は4月の選挙に先立ち、イスラエルが1967年に占領したシリア南部のゴラン高原に対するイスラエルの主権を承認するなど、ネタニヤフ氏を側面から支援した。米政権の動向も選挙戦の行方を左右しそうだ。【8月19日 産経】

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前回選挙では、トランプ大統領の親イスラエル政策がネタニヤフ首相の追い風になったと言われていますが、今回はどうでしょうか?

 

【トランプ追随、一蓮托生のネタニヤフ首相】

いずれにしても、ネタニヤフ首相はトランプ大統領との二人三脚というか、一蓮托生を選択しています。

 

そのことを如実に示したのが、トランプ大統領と敵対する民主党下院議員2名について、トランプ大統領の“要請”によって、イスラエル入国を禁止した案件でした。

 

****トランプに逆らえない「お友達」ネタニヤフの命運****

イスラエル首相が米民主党議員2人を入国禁止に トランプからの圧力に屈した決断は危険な賭け

 

米民主党のラシダ・タリーブ、イルハン・オマル両下院議員が15日、イスラエル政府から同国への入国禁止を言い渡された。

 

イスラエルを批判したからではない。2人がトランプ米大統領の「敵」だからだ。

 

パレスチナ系のクリープとソマリア難民のオマルはトランプが「国へ帰れ」と名指しして物議を醸した非白人系女性下院議員4人組、通称「スクワッド」のうちの2人。

 

イスラエル政府は当初、両議員の訪問を認める方針だったが、トランプは「入国を許せばイスラエルは大変な弱さを示すことになる」とツイートで警告。イスラエル政府は当然のことながら、その日のうちに入国禁止を発表した。

 

イスラエルのネタニヤフ首相にとって、トランプからの支持は最優先事項。約1ヵ月後の9月17日に総選挙を控え、トランプの機嫌を損ねる事態は何としてでも避けたい。

 

ネタニヤフはこの決定を、2人がイスラエルのパレスチナ政策に対する抗議運動(英語の頭文字からBDS運動と呼ばれる)を支持しているからだと説明した。

 

確かにイスラエルは、BDS運動を支持する外国人の入国を法律で禁じている。タリーブとオマルはBDSの支持者だが、ロン・ダーマー駐米イスラエル大使が「米議会への敬意を表し」入国を許可すると発表したばかりだったことを考えれば、トランプの一声で方針転換したことは明らかだ。

 

この法律は17年に制定され、過去にはノーベル賞を受賞したアメリカ・フレンズ奉什団なども「ブラックリスト」入りしている。ヘブライ大学で学ぼうとしていたパレスチナ系アメリカ人がBDS支持者と見なされ国外退去を命じられたこともある(のちに撤回)。

 

ただ、イスラエル政府は時に柔軟性も見せてきた。当初は2議員の入国を受け入れるつもりだったのがその証しだ。

 

トランプ追従は命取りか

今回はそこにトランプが唐突に介入したわけだが、その政治的意図は明らかだ。何としてでもアメリカ初の女性ムスリム議員の2人を民主党の「顔」に仕立て上げ、同党が「反イスラエル」であるという印象を植え付ける。そうして自らの支持層である右派やキリスト教福音派にアピールし、ユダヤ人の民主党離れを狙っているのだろう。

 

 

このトランプのもくろみに同調するのは、イスラエルにとって危険度が大きい。かつてアメリカは超党派的にイスラエルを全面支持してきたが、最近の民主党はイスラエル政府、とりわけネタニヤフに批判的だし、イスラエルに対するアメリカの立場は今まで以上に党派的に割れつつある。

 

イスラエルのある外交官は地元紙ヤー・レツに、2議員の入国拒否は民主党との関係を傷つけ、「政権の座に返り咲いたとき、民主党はこの件を忘れはしないだろう」と語った。

 

強力な米ユダヤ系ロビー団体で中立的立場の維持に腐心してきた米・イスラエル広報委員会でさえ、今回の入国禁止には失望を表明した。

 

今回の問題の大部分はネタニヤフ白身が招いたものだ。トランプ政権誕生のはるか以前から彼は共和党寄りで、形だけは民主党も尊重する立場だった。民主党が政権を取れば関係改善に動くっもりだろうが、今回の件はそれを大いに難しくした。

 

ネタニヤフは今や、民主党とイスラエルの間にくさびを打ち込むことに夢中のトランプと一蓮托生にならざるを得ないが、それが吉と出るか、凶と出るか。【8月27日号 Newsweek日本語版】

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今回の入国禁止措置は、その後二転三転しました。

 

イスラエル政府は16日、入国を拒否すると発表した2人の米議員のうち、パレスチナ系のクリープ氏は人道的観点から「訪問中はイスラエルに対するボイコットを呼び掛けない」という条件で入国を認めると表明。クリープ議員はパレスチナに住む祖母との面会を理由に訪問許可を求めていました。

 

しかし、これが祖母に会える最後の機会となるかもしれないクリープ議員はいったんは了承したものの、数時間後に「このような圧制的な条件の下で祖母を訪ねることは、私が信じるすべてのもの──人種差別、圧制、偏見との闘いに反するものだと判断した」と表明、イスラエルの占領下にあるパレスチナ自治区ヨルダン川西岸に住む祖母の訪問を中止するとしています。【8月17日 AFPより】

 

ネタニヤフ首相のトランプ追随が吉と出るか、凶と出るか・・・わかりませんが、結果は今後のパレスチナ情勢にも影響します。

 

【トランプ大統領の「世紀の取引」公表はイスラエル再選挙後になる模様】

パレスチナの状況は、相変わらず緊張が続いています。

 

****エルサレム聖地でイスラエル治安部隊とパレスチナ人ら衝突、祝日重なり緊張高まる****

中東エルサレムの旧市街にあるユダヤ教とイスラム教、双方の聖地で11日、イスラエルの治安部隊と礼拝に訪れていたパレスチナ人やイスラム教徒らが衝突し、赤新月社によるとパレスチナ人61人が負傷、うち15人が病院に搬送された。イスラエルの警察当局は、警官4人が負傷したと発表している。

 

AFP特派員によると、ユダヤ教徒が「神殿の丘」と呼ぶ聖地にあるイスラム教の礼拝所「アルアクサ・モスク」の敷地内でパレスチナ人の抗議デモが激化し、イスラエル警察が音響弾を発射した。

 

警察は、パレスチナ人らが石などを治安部隊に対して投げ付け、警官4人が負傷したため、暴徒を解散させる手段を取ったと説明。7人を逮捕したとしている。

 

11日はちょうどイスラム教とユダヤ教の祝日が重なり、聖地には双方の信者が大勢訪れて緊張が高まっていた。

 

緊張緩和のため警察は当初、11日のユダヤ教徒による聖地訪問を禁止していた。しかし、イスラム教徒らがユダヤ教徒の立ち入りが許可される事態を懸念して抗議を開始。その後、警察との衝突に発展した。

 

イスラエル軍によると、この日はパレスチナ自治区ガザ地区とイスラエルの境界付近でも、パレスチナ人がイスラエル兵を銃撃し、反撃を受けて死亡する事件が起きた。ガザ境界ではこの数日間に同様の事件が相次いでおり、今回で3件目。 【8月12日 AFP】

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かねてより、トランプ大統領はパレスチナに関する「世紀の取引」を打ち出すとしてきましたが、ネタニヤフ首相の再選挙勝利の支障にならないよう、選挙後に公表を延期しています。

 

****中東和平案、公表はイスラエル総選挙後の公算大=米大統領****

トランプ米大統領は18日、クシュナー大統領上級顧問が策定した中東和平案の公表について、9月17日のイスラエル総選挙後まで待つ公算が大きいと述べた。

クシュナー氏は、中東地域の和平実現に向けた、500億ドル規模のパレスチナ、ヨルダン、エジプト、レバノン向け経済開発プランの主な立案者。【8月19日 ロイター】

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選挙中には出さないとうことは、多少はイスラエルに譲歩を求める内容なのでしょうか。

 

ただ、イスラエル寄りを鮮明にしているトランプ大統領の「世紀の取引」にパレスチナ側が応じる可能性は低いと思われます。

 

また、イスラエルにおいてはどんな政権が生まれても、パレスチナに対する厳しい姿勢は基本的には変わりません。

 

しかし、そうは言っても、トランプ政権と一蓮托生で2国共存を否定するネタニヤフ政権が続くのか、新政権に交代するのか・・・その結果によっては、入植地問題などのイスラエルの現行パレスチナ政策、トランプ大統領のパレスチナへの姿勢も変わってきます。

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