孤帆の遠影碧空に尽き

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マレーシア  進む巨大汚職疑惑の「幕引き」 アンワル氏、議会多数派獲得として政権を要求

2020-09-27 22:31:02 | 東南アジア

(23日のアンワル元副首相(右)の会見には、妻のワンアジザ前副首相(左)も同席した。【9月23日 日経】)

 

【進む汚職疑惑「1MDB」の幕引き】

マレーシア最大の汚職疑惑「1MDB」をめぐる捜査は、疑惑がナジブ氏失脚、マハティール政権誕生の基盤となったように、マレーシア政治と表裏の関係にあります。

 

マハティール政権のもとでナジブ元首相は逮捕され有罪とされましたが、マハティール前首相の辞任、ムヒディン現首相のナジブ氏勢力との連立によって、この国家ぐるみの巨大汚職捜査の幕引きが図られていることは、7月28日ブログ“マレーシア 1MDB疑惑でナジブ元首相有罪に しかし、全体としては「幕引き」が進む動き”でも取り上げました。

 

*****1MDB疑惑****

1マレーシア・デベロップメント・ブルハドとは、2008年マレーシアで設立されたソブリン・ウエルス・ファンド。略称は1MDB。エネルギー・不動産・観光・アグリビジネス銘柄を保有する。

 

国内産業の振興・多角化を建前とする資金洗浄が行われた。2015年7月2日ウォール・ストリート・ジャーナルが、ファンドからナジブ・ラザク(マレーシア第6代首相)の個人口座へおよそ7億ドルが振り込まれた公文書記録を報じた。

 

本国当局だけでなくオフショア市場のある各国の金融当局までもが、翌8月のパナマ文書を利用してファンド資金の行方をグローバルに捜査した。欧米言語による媒体が次々と不正を追及していった。

 

事件の規模は年内にたちまち拡大し、国際金融市場においてクリアストリーム事件以来の醜聞となった(1MDB scandal)。1MDBは創設と運営から債務不履行と政治的解決に至るまで、一貫してマレーシア経済を機関化する道具であった。【ウィキペディア】

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汚職に関与されたとされる米ゴールドマン・サックスとも「手打ち」が進行しているようです。

 

****ゴールドマン、マレーシア政府に1MDB巡り25億ドル支払う-関係者****

ゴールドマン・サックス・グループがマレーシア政府に25億ドル(約2650億円)を支払った。政府系投資会社1マレーシア・デベロップメント(1MDB)を巡る資金不正流用問題の決着に向けた合意の一環。事情に詳しい関係者が明らかにした。

  

同政府はこの資金をエスクロー(第三者預託)口座を通じて27日に受け取った。関係者が非公開情報だとして匿名を条件に語った。

 

関係者によれば、ゴールドマンからの資金は2022、23両年に償還を迎える35億ドルの債券を含め1MDBの債務返済に充てられる。マレーシア財務省とゴールドマンの担当者はコメント要請にすぐには応じなかった。【8月26日 Bloomberg】

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****マレーシア検察、1MDB巡りゴールドマン起訴取り下げ=国営通信****

マレーシアの検察当局は4日、マレーシア政府系ファンド「1MDB」の巨額汚職事件を巡り、約65億ドルの起債で投資家を誤解させた罪に問われていた米ゴールドマン・サックスの子会社3社への起訴を取り下げた。国営ベルナマ通信が報じた。

 

ゴールドマンは7月、同事件でマレーシア政府と和解金39億ドルの支払いで合意したと発表。

 

米司法省は1MDBから2009─14年の期間に45億ドルの資金が不正流用されたと推定しており、ゴールドマンが調達に関わった資金が含まれる。

 

起訴された子会社はロンドン、香港、シンガポールにある。3社は2月に無罪を主張しており、ゴールドマンは一貫して不正を否定している。

同社の弁護団と検察からコメントは得られていない。

 

同汚職事件を巡り、クアラルンプールの裁判所は7月、ナジブ元首相に職権乱用罪で12年の禁錮刑を言い渡している。ナジブ被告は無罪を一貫して主張している。【9月3日 ロイター】

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本来は、カネを返しておしまい・・・ではなく、資金不正流用の詳細を明らかにし、関与した者の責任を追及すべき問題ですが・・・

 

「幕引き」が進められる背景には、コロナ禍で国民は「1MDB」どころではないといった事情もあるのかも。

 

マハティール前首相が辞任してから、ナジブ氏以外の関係者については起訴取り下げが続いています。

 

【アンワル氏が多数派を形成したと政権を要求】

なお、有罪とされたナジブ元首相が属する統一マレー国民組織(UMNO)は3月に就任したムヒディン首相が率いる与党連合の一角として権力の座に復活しています。

ナジブ元首相有罪判決によって国民のムヒディン首相への信頼感が強まる一方でUMNOが中核政党である与党連合の結束は弱まる可能性がある【7月28日 ロイターより】というあたりが関係しているのか・・・ムヒディン政権は大きく揺れているようです。

 

まず、ムヒディン首相に政権を追われたような形にもなったマハティール前首相は復帰をあきらめたようです。

さすがに95歳ですから・・・・

 

****マハティール氏が引退表明 マレーシア前首相、95歳****

マレーシアのマハティール前首相(95)は24日、首都クアラルンプール近郊で共同通信のインタビューに応じ「次期総選挙には出馬しない」として、下院議員を引退する意向を示した。2月の首相辞任後、不出馬を明言したのは初めて。側近によると高齢が理由だが、政治活動は続ける方針。

 

マハティール氏は1981年から22年間、同国の首相を務め、強い指導力でカリスマ性を示した。日本や韓国を手本とする「ルックイースト(東方)政策」を推進し、来日100回を超えるほどの親日家としても知られる。【9月24日 共同】

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一方、マハティール氏からの禅譲が約束されていたアンワル元副首相が、野党に加え、UMNOの一部議員も取り込んだ多数派工作に成功したとして、ムヒディン首相からの政権奪取を表明しています。

 

 

****マレーシア野党指導者アンワル氏、議会で多数派確保 新政権目指す****

マレーシアの野党指導者で元副首相のアンワル・イブラヒム氏は23日、議会で「強力な多数派」を確保したと述べ、新政権の樹立を目指す考えを表明した。

アンワル氏は記者会見で「ムヒディン首相の政権が崩壊したことを意味する」と主張した。

首相就任は国王の同意が必要になる。アンワル氏は国王に謁見を求めていると述べた。

同氏は「5─6席ではなく、もっと多くの支持を得ている」と主張。具体的な数字は明かさなかったが、連邦議会下院(定数222)の3分の2近くの支持があると述べた。

さらに「国を運営し救うためには強力で安定した政府が必要だ」と強調した。

ムヒディン政権は3月、政治的混乱の末に誕生した。

ムヒディン首相の議会内での支持はかろうじて過半数を上回る程度で、政権基盤強化のため選挙に打って出るのではとの憶測が広がっていた。

首相府はコメント要請に応じていない。【9月23日 ロイター】

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しかし、議会で多数派を形成した者に組閣を命じる国王が病気入院で、アンワル氏は拝謁もできないとのこと。

 

****マレーシア国王は病院に、首相任命巡り1週間は拝謁は許されず****

 マレーシアのアブドラ国王は、病院の観察下にあり1週間は誰にも拝謁を許すことはない。王宮関係者が25日明らかにした。

国王はほぼ儀礼的役割を担っているだけだが、議会での多数派を得ていると判断すれば首相を任命することができる。

マレーシアの野党指導者であるアンワル元副首相は23日、議会で多数派を得たとし、新政権の樹立を目指す考えを表明した。

アンワル氏は22日に国王との謁見を予定していたが、体調不良で国王が病院に運ばれたため取りやめとなっていた。【9月25日 ロイター】

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この国王入院が全くの健康上の問題なのか、政権交代という政局絡みの背景があるのかは知りません。

 

当然ながら、ムヒディン首相は自分が合法的首相だと主張しています。

 

****ムヒディン氏「私が合法的に首相」と訴え****

ムヒディン首相は9月23日、「議会の3分の2を掌握」とした野党・人民正義党(PKR)のアンワル・イブラヒム総裁の発言を受け、「(議員数を)証明するまでは国民連盟(PN)政権は強固のままで、私は合法的な首相だ」との声明を発表した。

 

必要な手続きを通さない発言は単なる主張にすぎないとも述べ、詳細を明らかにするようアンワル氏に求めた。

 

一方で、与党・統一マレー人国民組織(UMNO)のアフマド・ザヒド総裁は同日、同党内でアンワル氏を支持する議員が「多数いる」と認めた。

 

すでに議員名と議員数も把握しているもようで「各議員のアンワル氏支持を止めることはできない。意思を尊重する」として容認する発言もした。  

 

与党の他の政党は現政権の支持を表明しているが、UMNOが与党内では最多の議員数を確保しており、政権崩壊が現実味を帯びてきたようだ。【9月24日 M-Town】 

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国民のムヒディン政権支持率では、8月時点の調査で69%と高い水準を保っていることが報告されています。

国民の多数を占めるマレー系住民の支持はまだ高いようです。【9月4日 NNA ASIAより】

 

今後の政局がどうなるのかは不透明ですが、個人的には、これまで(イスラム社会ならではの)同性愛疑惑という「政治的」捜査で投獄を繰り返し政権に手が届かなかったアンワル氏に、一度は政権の座を任せたいという思いはあります。

 

ただ、アンワル氏は与党に対抗する立場で、華人など少数派民族の支持を背景にしてきましたので、既得権益を維持したい多数派マレー系住民の支持は薄く、マレー系住民を支持基盤とするUMNOの一部議員も取り込んで政権についても、マレー系とその他の間のバランスで厳しい政権運営も予想されます。

 

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