孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

北朝鮮  社会の実態を垣間見せるいくつかのトピックス

2019-08-15 23:14:31 | 東アジア

(【8月13日 デイリーNKジャパン】 バスを待つピョンヤン市民・・・でしょうか)

 

【貧しくて自分の家すら買えない人ですら、携帯電話は欠かせない】

北朝鮮の話。と言っても、やれ「短距離弾道ミサイルがどうこう」とか「日本批判がどうこう」、あるいは「強制収容所みたいな存在がどうこう」といった話ではなく(その類は大手メディアが毎日詳しく扱っていますので)、実態がよくわらない「不思議の国」の実情に関するもの。

 

それも、ピョンヤンの特権階層と地方農民・一般市民との格差がどうこうといった話ではなく(そこも気になるところですが、全体を総合的に把握できるような情報が少ないので)、「フーン、北朝鮮でね・・・」といった断片的なトピックスから、最近目についたものをいくつか。

 

「不思議の国」の実相の「一面」が垣間見えるかも。

 

****「革命的な恋愛」はもう古い…北朝鮮で流行る「出会い系ビジネス」****

北朝鮮で利用されている携帯電話の数は、500万台とも600万台とも言われる。

 

1人で複数台持っている人もいると思われ、KT南北協力タスクフォースチーム長イ・ジョンジン氏の推計によると、ユーザー数は450万人に達する。つまり全人口の2割近くが携帯電話を利用している計算になる。

 

そんな中で携帯電話を利用した新しいビジネスが続々と登場している。例えば、注文を受けて食事や品物をデリバリーするビジネスはその典型だが、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきたものは、出会い系サービスだ。

 

北朝鮮では1980年代ごろから恋愛結婚が一般化しているが、見合い結婚も行われている。トンジュ(金主、新興富裕層)と権力層を結びつけるこんなお見合いビジネスも存在する。

 

そして、顧客の理想に基づいて相手を探す日本の結婚情報サービスと似たビジネスが、携帯電話を使って行われているという。

 

利用にあたって必要となるのは「チョナ・トン」と呼ばれるものだ。直訳すると「電話・お金」という意味になるが、携帯電話の通話料金をプリペイドでチャージし、それを他のユーザーとやり取りするという形のサービスで、送金ともキャッシュレス決済とも言える。(中略)

 

出会いを求める人はまず、「チョナ・トン」をチャージし、それを前払いで仲介業者に送金する。その後、容貌、健康状態、職業、家柄、財力など相手に求める条件を通知文(携帯メール)で業者に知らせる。

 

業者は、それに応じて相手の個人情報リストを送信する。料金は30ドル(約3190円)からで、相手に求める条件に応じて異なるという。

 

かつての北朝鮮では、恋愛と結婚など私生活においても、朝鮮労働党や政府が理想とする家族のイメージが重視され、職場が相手を紹介することがよくあった。

 

しかし、2014年に脱北した両江道(リャンガンド)出身の脱北者は、「もはや党が求める『革命的な出会い』や『革命的な家庭』などの概念は、若者たちに通じない」として、次のように説明した。

 

「若い男女の出会いを仲介するビジネスとして登場したのは、恋愛観が自由になった今の北朝鮮社会を反映したものだ。恋愛結婚が増えていることも同じ文脈で読み取れる」

 

気軽に出会いと別れを繰り返す最近の若者にとっては、携帯電話を使ったサービスは都合がいいようだ。一方で、携帯電話すら持っていない若者は、出会いの対象から除外されてしまう。「食事を抜いてでも携帯電話を買う」のは、生き残るための投資でもある。

 

北朝鮮においても、恋愛や結婚に貧富の格差が確実に影響しているといわけだ。【8月10日 デイリーNKジャパン】

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携帯電話がないと男女の出会いもままならないということで、「食事を抜いてでも携帯電話を買う」ということになるようですが、そのあたりは下記のようにも。

 

****「スマホを買うために家も売る」北朝鮮、今どきの新常識****

韓国には「フォン・プア」(Phone poor)という和製英語ならぬコングリッシュ(韓国式外来語)がある。

 

新しく出たばかりのスマートフォンを買うためにカネをつぎ込み、借金までして貧しい暮らしを送る若者を指す言葉で、「モバイル・プア」「スマート・プア」とも呼ばれる。

 

北朝鮮でもそんな若者が登場した。しかし、スケールが違う。スマホを手に入れるために家を売り払ってしまうというのだ。

 

「貧しくて自分の家すら買えない人ですら、携帯電話は欠かせないと考えている」と話す平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、家を売り払ってまで資金づくりをする人も中にはいると伝えた。

 

平均的な4人家族の1ヶ月の生活費が50万北朝鮮ウォン(約6500円)である一方で、国営企業の平均的な月給は4000北朝鮮ウォン(約52円)。

 

市場での商売で得たカネでその穴を埋めつつ暮らすというのが北朝鮮国民の一般的な暮らしだが、携帯電話はガラケーでも100ドル(約1万600円)から、ハイエンドモデルのスマートフォンなら700ドル(約7万4500円)もする。

 

700ドルと言えば、平壌郊外の農村の住宅1戸に相当する値段だ。地方都市の郊外なら、その5分の1から10分の1が相場だ。家を売り払えばちょうど携帯電話1台が買える計算になる。

 

情報筋は、そこまでして携帯電話を買う風潮があることについて、こんな社会背景を挙げた。

 

「友達や家族とのコミュニケーションは携帯電話で行う。直接顔を合わせる回数は減って、携帯電話で挨拶する時代になった。携帯電話がなければ友達との関係が絶たれてしまう」

 

別の平壌の情報筋は「朝鮮の人々は食事を抜いてでも電話は持ち歩くべきと考えている。ご飯も食べられず、タバコもまともに吸えないのに、携帯電話だけは持っている」と述べた。

 

スマートフォンを買うことは、重要な投資でもある。商人たちは、自分の扱っている商品の価格情報をスマートフォンで調べる。食堂は、スマートフォンで出前の注文を取る。

 

それ以外にもネットショッピング、送金、タクシーに加え、ご禁制の韓流コンテンツも見られる。下手をすると、見ただけで命すら危ぶまれる状況に追い込まれかねない韓流だが、SDカードに保存しておけば取り締まられてもすぐに隠すことができる。

 

商売にも娯楽にも使えて、命を守ってくれることすらあるスマートフォン。家を売り払ってでも欲しくなるのは当然だろう。【8月13日 デイリーNKジャパン】

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“家を売り払えばちょうど携帯電話1台が買える”というのも日本的常識では驚きですが、男女出会いサイトはともかく、すべての面で情報がないと生きていけないような社会にあっては、家を売っても携帯を・・・というのは、ある種合理的なのかも。

 

【リープフロッグ(カエル跳び)】

話が横道にそれますが、携帯が市民生活を変えるツールとなること、携帯やキャッシュレス決済など新たな技術が固定電話や銀行システムといった旧来技術を飛び越えて一気に広まることなどは、アフリカも同様です。

 

携帯・スマホが普及すれば、充電のための電気も必要になります。

 

****イノベーション、社会変えたい****

アフリカの今を語るのに欠かせないキーワードがある。「イノベーション(革新)」だ。貧困や医療などの問題に対し、起業家たちが最新の技術と発想で挑んでいる。アフリカの未来を変えうるのだろうか。(中略)

 

 ■1日3円、携帯で学習

ケニアの首都ナイロビ東部にあるスラム街。トタン屋根の家がひしめき合う。

その一角に親子5人で住む一家を訪ねると、ポール・オチエング君(15)がソファに座り携帯電話を真剣に見つめていた。

 「

理科の問題を解いているんだ」。携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)を使った学習サービスを使い始めて、3年になる。高校入試が迫り、勉強にも力が入る。

 

携帯の画面には、4択問題が表示されている。SMSで回答を送ると、答えと解説が返ってくる。先生に自由に質問できる機能もある。「数学の点数が50点から90点台まで伸びた。将来は会計士になりたい」

 

サービスを提供するのは、ケニア発のスタートアップ企業「エネザ・エデュケーション」。教師1人あたりの生徒が60人以上にもなる教師不足の現状を憂慮し、12年に地元の若者2人が設立した。今では500万人のユーザーを抱え、ガーナコートジボワールへの展開も始めている。

 

特長は二つ。ガラケーでも使えることと、1日3シリング(約3円)の低価格だ。ケニアではスマホの普及率は高くないが、ガラケーなら9割の家庭にある。貧困層でも払える利用料に抑え、ユーザー数を増やすビジネスモデルで成長した。

 

ポール君の父イサイア・ンディワさん(43)は不定期に建設現場で働いて月収は1万シリングほど。「テキストは数百シリングもする。でも1日3シリングなら払える。息子はクラスでも成績上位になったからね。今は娘にもやらせているよ」(ナイロビ

 

 スタートアップ投資拡大、技術普及も「カエル跳び

アフリカのスタートアップ企業への投資は近年、急拡大している。

 

現地メディア「ウィー・トラッカー」の調査によれば、18年にはアフリカのスタートアップ企業に対するベンチャーキャピタルからの投資額は7億ドル(約750億円)を突破。前年からの3倍以上の伸びをみせている。分野別では金融とITが融合する「フィンテック」をはじめ、健康や教育、農業など多岐にわたっている。

 

スタートアップから大企業に成長した例もある。ナイジェリアを拠点にネット通販などを手がけるeコマース「ジュミア」は、スタートアップとしてアフリカ初の「ユニコーン」(推定価値が10億ドル以上の非上場企業)と言われ、今年4月にはニューヨーク証券取引所に上場を果たした。

 

なぜアフリカでいま、スタートアップ企業が急成長をしているのか。日本貿易振興機構(JETRO)中東アフリカ課課長補佐の高崎早和香氏は「現代の技術をうまく当てはめ、社会課題の解決につなげている例が目立つ」と解説する。

 

また、「リープフロッグ(カエル跳び)」と言われる現象もアフリカ特有だ。先進国が段階的に技術を進歩させてきたのに対し、一足飛びに最新技術が普及するような現象を指す。

 

ケニアを中心に爆発的に利用者を増やしてきたモバイルマネー「エムペサ」はその好例だ。銀行口座も持たなかったような人たちが、当然のように携帯電話を使った決済を利用している。

 

アフリカの社会課題への取り組みは、国際機関やNGOによる援助が中心となってきた。「近年のスタートアップ企業は、社会課題がビジネスによって解決可能だということを示している。ビジネスには持続可能性という大きな強みもある」と高崎氏は話す。

 

ナイロビ大のウィニー・ミツラ教授(開発学)は「イノベーションはアフリカの発展に欠かせない」とし、「政策的にも各国政府が、革新を力強く推し進める環境を整えることができれば、よい未来につながるだろう」と語った。

 

 ■電源事業に商機、日系商社続々

日系企業も熱い視線を注ぐ。なかでも総合商社がこぞって参入するのが、電源と家電などを組み合わせた新サービスだ。

 

三井物産住友商事は18年、ケニアのITベンチャー、エム・コパ社への出資を相次いで表明した。同社は太陽光発電システムと携帯電話用充電器、照明やラジオなどをセットで割賦販売する事業を手がけ、いまではウガンダやタンザニアなどでも展開する。

 

顧客は約30ドルの頭金を払ってセットを受け取り、残額を最低で1日約50セントずつ支払う。完済すれば自分のものになる仕組みだ。

 

支払いは、携帯電話を利用したモバイルマネーで行うのが特徴だ。いまだ6億人以上が非電化地域に住むとされるサハラ砂漠以南でも、携帯電話は急速に普及した。

 

携帯電話でのキャッシュレス決済も広がっており、電気が届かない地域なのに「携帯電話も、(携帯を)充電するための電源も必要」(安永竜夫・三井物産社長)な状況になった。三井物産はそこに商機を見いだし、出資を通じて「新事業の芽にならないか検討している」という。

 

丸紅も今年6月、ケニアとタンザニアで同様の事業を手がける英アズーリテクノロジーズに出資を発表。発電設備やテレビに衛星放送約60チャンネルの視聴権がつく。三菱商事コートジボワールなどでの同様の事業に参画する。

 

携帯電話やキャッシュレス決済といった新しいインフラに注目する企業は多く、ソフトバンクグループは昨秋、モバイルマネー事業を展開するエアテル・アフリカに出資した。【8月14日 朝日】

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なお、携帯でのSNSが政治体制を変える大きな力となることは、「アラブの春」などの多くの最近の政治現象が示すところですが、そのあたりは「超監視社会」北朝鮮ではまた特殊でしょう。

 

【北朝鮮では常識とも思われている理不尽さと、意外にまっとうなものも機能した事例のバランス】

****北朝鮮で注目「赤い自転車の女」殺人事件の顛末****

北朝鮮で20代女性を殺害し、現金と持ち物を奪った容疑で逮捕された朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の元兵士に判決が下された。

 

言い渡された刑は、一般的な量刑の相場より軽いものだった。このような場合には、市民の間から不満の声が上がるものだが、今回に関してはそうなっていないと、デイリーNKの内部情報筋が伝えた。

 

情報筋によると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)に在住する元兵士は、25歳の女性を殺害し、自転車と現金を奪ったが、後に逮捕された。先月中旬に公開裁判が行われ、そこで言い渡されたのは教化刑(懲役)10年の刑だった。それに対して市民の大多数が「死刑になると思ったのに」と驚きを示しているという。

 

大幅な減刑となった理由は、その不幸な身の上にある。

この元兵士は、10年にも及ぶ兵役を終えて昨年、故郷の清津に戻ってきたが、家はもぬけの殻になっていた。兵役中に両親ともに亡くなっていたのだ。生まれ育った家で一人暮らしを始めた元兵士だが、食べものをいかに確保するかという問題にぶち当たった。

 

兵役を終える前の兵士は、商売に手を出したり違法行為に手を染めたりして、今後の生活資金を稼いでから除隊する。除隊時に所属部隊から受け取るのは、わずかばかりの食べ物だけだからだ。

 

しかし、充分な生活資金を準備できるのは、密輸や脱北を見逃す代わりに多額のワイロが受け取れる国境警備隊や、市場がある都市や近郊に駐屯している部隊の兵士くらいで、後はほぼ、着の身着のままの状態で軍隊から投げ出される。

 

この兵士は、清津市人民委員会(市役所)を訪ねて、就職口の斡旋と食料の配給を求めたが、うまく行かなかったようで、市場に出て物売りをしてその日暮らしをするようになった。

 

彼は、輸城川(スソンチョン)の渡し船に乗って市場に出勤していたが、船で赤い自転車を持った20代の子連れの女性を見かけた。自転車を持っているくらいなのだから、ある程度財産があるだろうと思ったのか、元兵士は船から降りた女性の後をつけて襲いかかり、現金と自転車を奪おうとした。ところが、女性が叫び声を下げて激しく抵抗したため、顔と鼻を手で強く押さえつけて窒息死させてしまったという。

 

通報を受けた清津市保安署(警察署)は捜査に乗り出し、被害女性のものと思われる赤い自転車に乗っていた元兵士がいるとのとの通報を受けて逮捕した。

 

元兵士は取調べに素直に応じた。また、隣人たちも彼の普段の生活態度や気の毒な事情を語り減刑を求めた。

 

予審(捜査終了後起訴までの追加捜査、取り調べ)を終えた保安署は、生い立ちや兵役、両親が亡くなったこと、生活苦の中にあったことを踏まえ、偶発的な犯行だとの報告を上げたようだ。その結果、大幅に減刑された懲役10年が言い渡されたというわけだ。

 

通常、量刑相場から大きく外れた判決が出た場合、何らかの裏取引があると考えるのが一般的だが、今回の場合は、元兵士の苦しいながらも誠実な生活態度が反映された裁判結果だとして、市民は驚きつつも、不満の声は上げていないと情報筋は伝えた。もちろん、被害女性の遺族は別だが。

 

この兵士は、咸鏡北道会寧(フェリョン)にある全巨里(チョンゴリ)教化所(刑務所)に移送され、現在服役中だ。減刑はされたものの、人権侵害の温床で衛生状態が極めて悪い上に、食べ物を差し入れする家族がいない彼が、生きて出所できるかは誰にもわからない。【8月14日 デイリーNKジャパン】

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北朝鮮兵士の窮状については、国境警備隊兵士が食糧難から中国領に越境して強盗した・・・といった類の話【7月27日NEWSポストセブン】もあります。

 

しかし、国境警備隊は非常に恵まれた部隊です。

 

“同じ地域にある軍隊でも、部隊によって置かれた状況は全く異なる。国境警備隊の場合は、密輸で儲けた資金を蓄えているため、食糧、衣類ともに充分に配給を受けている上に、自主的に耕した畑から取れる作物もあるため、兵士たちの栄養状態は良好だ。

 

そんな状況を知っている親たちは、息子を一般の部隊ではなく国境警備隊、海岸警備隊、海軍などに送り込むためにかなりの額のワイロを支払う。これはもはや一般的な現象だ。”【2018年12月26日 Newsweek】

 

そういう恵まれた状況になかった兵士の末路が上記記事ですが、個人的に興味深いのは当該兵士の話より(北朝鮮における一般市民の窮状はある意味常識的ですので)、理不尽な処刑がよく話題になる北朝鮮でも、こういうケースでは情状酌量されるのか?ということ、“市民は驚きつつも、不満の声は上げていない”といった「世論」的なものが存在するのか?、また、こういう話はどのようにして市民に広まるのか? ということの方です。

 

****妊婦も殺すワイロ漬け医療…「金正恩命令」も効かず****

北朝鮮では国家機関や朝鮮労働党の幹部らが権力を笠に着て、庶民からなけなしのカネを搾り取り、私腹を肥やす腐敗が横行している。

 

金正恩党委員長はこうした不正腐敗を厳しく取り締まる姿勢を見せているが、それほどの効果を見せていない。こうした不正腐敗は医療現場にも及んでいる。

 

北朝鮮は、かつては無償医療を誇っていたが、1990年代に「苦難の行軍」といわれる深刻な食糧危機に見舞われ完全に崩壊した。

 

北朝鮮と国交がある英国外務省が2015年7月に発表した「北朝鮮の医療施設と医師のリスト」という4ページの資料によると、北朝鮮の医療施設は劣悪で、衛生水準は基準以下だと指摘。

 

病院には麻酔薬がない場合がしばしばあるため、北朝鮮での手術はできる限り避けることや、即時帰国するように勧告している。実際、麻酔なしで手術を受けたことのある脱北者は、壮絶な体験について語っている。

 

医療崩壊という現実のなかで、現場の医師たちは献身的に診療に携わっていたが、国から出る雀の涙ほどの給料に頼っていては、生きていくこともままならない。

 

結果、ベテランで優秀な医者たちは、自宅で民間診療所を開き、経済的に余裕のある特権階級幹部やトンジュ(金主)を顧客に医療活動を続けている。北朝鮮で最大規模を誇る産婦人科医院「平壌産院」は、特権階層や富裕層しか利用できなくなってしまった。

 

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると6月、平壌産院を訪れた妊婦が適切な治療を受けられず死亡。北朝鮮当局は同産院の不正実態を集中的に調査し、産婦人科医6人を電撃解任したと伝えた。

 

RFAの情報筋によると、船橋(ソンギョ)区域に住んでいた妊婦が出産を控えて呼吸困難に陥り、平壌産院を訪れた。しかし、ワイロをわたすことができず、控室に追い出され呼吸が停止し、胎児と一緒に死亡したというのだ。

 

北朝鮮では社会のあらゆる場面でワイロが必要となるが、これこそ最も極端な例と言えるかもしれない。

 

妊婦の死亡に対して、平壌産院は船橋区域の産婦人科で妊婦の健康異常を早期に正常検診せず対策も立てていなかったからだと責任を回避しようとした。死亡した妊婦の遺族は、平壌産院で適切に治療していたら絶対に死んでいなかったと抗議したが、受け入れられなかった。

 

北朝鮮当局が自画自賛する平壌産院で、「お金がないという理由」で治療を受けられなかったという噂は住民の間で広まった。当局は医師らのクビを切ることによって住民の不満を抑えようとしたが、医療当局に対する恨みは収まることがないようだ。(後略)

 

平壌在住のRFAの情報筋は、「平壌市大同江(テドンガン)区域の文殊(ムンス)に位置する平壌産院は、2000年代以前から平壌女性の初出産や三つ子、双子を身ごもった地方在住の女性達が無償で出産できる『幸せのゆりかご』と呼ばれていた」と語る。しかし、医療崩壊の現実のなかで、金正恩時代に入ってからは一部の特権階級しか利用できなくなった。一般の女性が出産するには無条件にワイロを渡さなければならない。(後略)【8月4日 デイリーNKジャパン

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話の本筋の、ワイロがはびこる医療現場・・・ということは、これもある種常識的な話で特段の驚きはありませんが、この話で興味深かったのは、そんな北朝鮮でもやはり、十分な医療を施さずにに犠牲者が出たというようなことは問題視されるのか・・・・という点。(それとも、単に上層部へのワイロが足りなかったのか)

 

兵士の窮状とか医療現場の腐敗といった、「日本的基準ではとんでもないことだが、北朝鮮ならそういうのは常識ともと思われるようなこと」と、裁判における情状酌量、不誠実な医療への処罰といった「北朝鮮でもそういう“まっとうなもの”が機能しているのか」ということ・・・・この二つの側面がどのようにバランスしているのか・・・そこが知りたいところで、それがわかれば社会の実態も見えてくるところですが、そのあたりがよくわかりません。

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