孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ世論が嫌うイランを相手に繰り広げられる“ドナルド・トランプ・ショー”

2019-06-25 23:25:41 | イラン

40年前の1979年に起きた、在イラン、アメリカ大使館人質事件 目隠しをされ人質となったアメリカ大使館員ら【625日 NHK】)

 

【「10分前の中止」という“寸止め”パフォーマンス】

イランのアメリカ無人機撃墜への報復として、アメリカ・トランプ大統領がイランへの攻撃を承認した後、攻撃10分前にこれを中止したことは報道のとおり。

 

トランプ大統領は、攻撃前に150人の犠牲者が出るという話を聞いて、無人機撃墜の報復としてはバランスを失していると判断して中止したといったことを語っていますが、これはウソでしょう。

 

戦争状態にはまだない相手への警告等の意味合いの攻撃を行う場合、互いに後にひけなくなくなる人的被害を最小限にとどめるように攻撃対象を限定・選定することは常識であり、イランへの攻撃が協議された際には、真っ先に人的被害の規模について確認がなされたはずです。承認されたのちに大統領から聞かれて初めて明らかにするなんて話は絶対にありえません。

 

ではなぜトランプ大統領はいったん承認した攻撃を中止したのか?・・・・もちろん本人以外はわかりません。

 

いったんは承認したものの、本格的戦争に発展しかねないリスクの重圧を感じて心変わりしたのか?

あるいは、最初から「10分前の中止」という“寸止め”パフォーマンスを予定しており、当初の承認はそのための演出だったのか?(最初から実行する気はなかったので、150人もの人的被害を伴う大規模な攻撃がいったんは演出されたのか?)

 

この「10分前の中止」の評価はいろいろあるでしょうが(オバマ前大統領が同じことを行えば、トランプ氏は「弱腰だ!」「優柔不断だ!」と大騒ぎするでしょうが)、イランに対しても、世界に対しても、生かすも殺すもトランプ氏の心ひとつだということを改めて見せつける効果はあったでしょう。

 

また、よく言われるトランプ大統領の特徴である、何をするかわからないという「予見不能」な側面を、強く印象づけることにもなりました。

 

【「横綱の品格」を無視した「大国」アメリカのトランプ外交】

そうした「いつ攻撃が行われるかわからない」という軍事的圧力をイランに意識させながら、最高指導者ハメネイ師を制裁対象とするなど、イランへの制裁を容赦なく強めています。

 

****米、イラン最高指導者に経済制裁 「外交を軽蔑」とイラン反発****

アメリカのドナルド・トランプ大統領は24日、イランに対し強硬な追加経済制裁を科すと発表した。同国の最高指導者アリ・ハメネイ師も対象にするとしている。

 

トランプ氏は追加制裁について、イランによる米軍の偵察ドローン(小型無人機)の撃墜と、「他の多くのこと」を受けたものと説明した。

 

ハメネイ師を対象とすることについては、「イラン政権の敵対的行為に対する最終的な責任がある」ためと述べた。

 

幹部8人も対象に

BBCのバーバラ・プレットアッシャー米国務省担当編集委員は、イランの政治と軍事に関して決定権をもつハメネイ師は巨大な経済力ももっており、その最高指導者に経済制裁を科すことは大きな意味をもつと分析する。

 

また、すでにイランに経済制裁を科しているアメリカは、さらに厳しい追加制裁をすることで、同国がイランに求める核開発の中止やミサイル製造の制限などにイランを応じさせるのが狙いだという。

 

米財務省によると、追加制裁は「イラン革命防衛隊の敵意に満ちた地域的活動を監督している官僚組織の上層部」に属するイラン幹部指揮官8人も対象にしているという。

 

また、追加制裁により、「イラン指導者の経済資源へのアクセスを禁止するとともに、最高指導者や最高指導部に指名された特定の政府関係者たちも対象になる」と説明。イランによる外国の金融機関を通した取引も禁じるとしている。

 

これに対し、イランのジャヴァド・ザリフ外相はツイッターで、アメリカは「外交を軽蔑している」と反発。トランプ政権について「戦争を渇望している」と批判した。

 

一方、スティーブン・ムニューシン米財務長官は、ザリフ氏も今週内に経済制裁の対象になると述べた。(後略)【625日 BBC】

*******************

 

力が相対的に劣る国は、芝居がかったスタンドプレー、道化じみた行動、いら立たせるような主張、あるいは民衆の怒りを利用するが、およそ「大国」「覇権国家」たるものは抑制的に振る舞い、世界が理解できるように予見性があり、国際社会に責任を負いながら「力の劣った国」の見え透いた行動を超越することで力を示す・・・・そういう考えが外交の「常識」とされてきました。

 

「大国」アメリカには「横綱の品格」が求められているとも言えるでしょうか。

 

横綱ということでは、白鵬の「張り手」「かち上げ」が昨年話題になったことがあります。

 

****白鵬の張り手やかち上げは禁じ手か****

大相撲名古屋場所は8日、ドルフィンズアリーナで初日を迎える。最近、やり玉に挙げられているのが横綱白鵬の張り手やかち上げ。反則技でもない取り口は、それほど批判されることなのだろうか。

 

白鵬は5月の夏場所も、張り手を何度か見せて物議を醸した。昨年末には横綱審議委員会からも苦言を呈されている。

 

過去には白鵬のかち上げで相手力士が脳振盪(しんとう)を起こしてひっくり返ったこともあるし、白鵬の張り手やかち上げを汚いとか醜いと感じる人もいるかもしれない。やる回数が多いことに不満を持つ人もいるだろう。

 

見方は人それぞれ。しかし、長年相撲を取ってきた者からすれば、ひどい取り口とも思えないし、封印を余儀なくされるのはどうかと思う。

 

相手をわざと痛めつけているのであれば問題だ。ただ勝負は甘い世界ではないし、相撲のルール上やってはいけないものでもない。(中略)普段から頭と頭がぶち当たるような稽古をしていれば、そんな張り手くらいで倒れることもないだろう。やられたら逆にやり返すくらいの気持ちで白鵬に立ち向かっていけばいい。

 

若手に感じられぬ闘志や気概

かち上げや張り差しをする方からすれば、失敗したら逆に相手に踏み込まれて一気に押し出されてしまうリスクがある。

 

張っていけば当然脇があくし、かち上げるときに背中が伸びてしまうことだってある。その隙を突いて、立ち合いから恐れることなく白鵬に強く当たっていけばいいし、立ち合いのタイミングをずらしたっていい。

 

だが、今の若手は何の対策もなく、相撲にならないことが実に多い。(後略)【201876日 元大関魁皇 日経】

*****************

 

アメリカ・トランプ大統領は、横綱にありながら、「張り手」「かち上げ」はもちろん、「猫だまし」だろうが、立ち合いの変わり身だろうが、何でもあり・・・というところでしょうか。

 

相手の弱点を嗅ぎつければ、そこをグイグイ攻め立てることも厭いません。

 

【大衆の関心を引き付ける“ドナルド・トランプ・ショー”】

それが悪いのか?

少なくとも、世界の耳目を「トランプ劇場」に集めることには成功しています。

 

****トランプ氏が仕掛けるイラン劇場****

ドナルド・トランプ米大統領の先週末にかけてのイラン政策は、場当たり的であり、巧みでもあった。

 

トランプ政権の戦争への傾斜を目にしたハト派と孤立主義者らは一時パニックに陥ったが、その後、軍事攻撃が取り消されたとの発表に歓喜した。

 

一方でタカ派はオバマ前政権風の譲歩だとしてトランプ氏を批判したが、イランへのサイバー攻撃や制裁強化の公表がその怒りを静めるのに役立った。

 

その結果は何か。トランプ氏は米国のイラン政策における支配力をさらに強化した。政権内外の対立派閥は同氏の支持を得る策を練らざるを得なくなったのだ。そして、トランプ氏がイランについて発言やツイートを重ねれば重ねるほど、同氏の真意はより分かりにくくなる。

 

こうした展開に意外感はない。対中貿易やメキシコ経由の移民の問題、ベネズエラや北朝鮮、そして現在のイラン問題に至るまで、一貫性がない対応は一貫しているからだ。つまりトランプ氏は、どの歴代大統領よりタカ派的な時もあれば、ランド・ポール上院議員を興奮させるほどにハト派的な時もあるのだ。

 

トランプ大統領は、何よりもまずショーマンなのだ。ニューヨークで不動産取引を行っていたキャリア初期の1970年代からテレビのリアリティー番組の司会者時代、第3のキャリアである政治家時代を通じ、常に名声の力を理解し、うまく利用してきた。

 

つまり、米国の政治をドナルド・トランプ・ショーに変えたのだ。米国も世界も、トランプ氏の一挙手一投足にくぎ付けとなり、次の展開の予想に夢中になっている。

 

上空から降り注ぐ破壊的攻撃の脅しをツイートし、戦争の惨禍をぎりぎりのタイミングで回避し、一連の重要な首脳会談の舞台演出を行うといった行動のどれもが、世界がこれまで目にしたことのない迫真のリアリティーショーとなっている。

 

これが米国の外交政策を助けるか、それとも傷つけるかは別の問題だ。

 

しかし、北朝鮮の核問題など、解決困難な外交問題をトランプ氏の宣伝マシンの材料に変えたことは、国家戦略上の勝利ではないとしても、マーケティング巧者の勝利を意味する。

 

未解決の外交問題は通常、大統領の人気を下押しする。しかし、トランプ氏の場合、それはドラマとサスペンスを提供する筋書きとなる。金正恩朝鮮労働党委員長がレモンを提供し、それをトランプ氏がレモネードにして売るといった具合だ。

 

トランプ氏に批判的な人々は、同氏が米国および世界の政治を支配しているにもかかわらず、ケーブルテレビ(CATV)に取りつかれた何も知らないナルシシストだとして非難し続けている。

 

こうした人々が見逃しているのは、トランプ氏がメディア報道を支配する本能的な力を有しているだけでなく、パワーに関する鋭い判断力も持つことだ。

 

ロサンゼルスの社交界は、政治的なパワーに憧れを持つ世界的セレブであふれている。ハリウッドがトランプ氏を毛嫌いする理由の一つは、トランプ氏がロナルド・レーガン氏と同様にショービジネスの世界を超え、セレブとしての力を本物の力に変えているからだ。

 

トランプ大統領のイラン政策のカギは、いわゆる外交政策通が思っているよりもイランは弱く、米国が強いことをパワーに対する嗅覚から感じ取ったことにある。

 

トランプ氏の見方からすると、オバマ前大統領が結んだ核合意は、ジョン・ケリー氏(当時の米国務長官)よりはるかに賢いイランの交渉担当者による信用詐欺がうまくいった結果だ。トランプ氏が望むのは、自身がかぎ取った2国間の力関係に合致するイランとの取引だ。

 

この目標を追求するため、トランプ氏は2つの戦略を組み合わせている。

 

パブリック・ディプロマシーのレベルでは、人々を驚嘆させ、話を盛るという常とう手段を用いている。血も凍るような脅しを必要に応じて甘いささやきに切り替えるのだ。

 

パワー・ポリティクスのレベルでは、一貫してイランへの圧力を強化し続けている。イランの近隣国に武器を供与したり米国の支援を約束したりする一方、イランには制裁を強化して心理的な圧力を強めている。

 

トランプ氏は自身が進めるイラン政策が制約の下にあることを十分理解している。新たな中東戦争を引き起こせば政権が大打撃を受ける恐れがある。

 

しかし、もしイラン側が戦争を仕掛ければ別の問題だ。米国あるいはイスラエルを標的とする明確なイランによる攻撃であれば、真珠湾攻撃が米国の民主主義支持者を帝国主義の日本と戦うために団結させたように、トランプ氏の支持基盤を固めることになるかもしれない。

 

1941年当時、米国民は戦争を望んでいなかった。フランクリン・ルーズベルト大統領(当時)は日本に壊滅的な影響をもたらす経済制裁を課し、日本に対してアジアからの撤退か米国との戦争かの選択を迫った。

 

トランプ氏はイランも同様に追い詰めることが可能で、かつ制裁で弱体化したイランが戦争より後退を選択すると信じている。

 

米国の外交政策に関するトランプ氏のアプローチは、抑制、予見性、責任が国際的な覇権国家の特徴と考えるエスタブリッシュメント層を強く懸念させるものだ。力が相対的に劣る国は、芝居がかったスタンドプレー、道化じみた行動、いら立たせるような主張、あるいは民衆の怒りを利用する。一方で覇権国家はこうした見え透いた行動を超越することで力を示す。

 

それはトランプ流のアプローチではない。攻撃的でけんかっ早いトランプ氏は国内政治で使うのと同じ手法を外交政策でも使う。こうした手法が継続的な成功をもたらすのかどうかはまだ分からない。

 

しかし、注目を奪うイベントで大衆の関心を引きつけるのは、古代ローマ時代から力をもたらすための定石だったことを忘れるべきではない。【625日 WSJ】

**************

 

問題は、こうした“ドナルド・トランプ・ショー”が一時的な成果を勝ち得たとしても、長期的に見た場合、アメリカの外交政策を助けるか、それとも傷つけるか、世界の安定・平和に寄与するかどうかです。

 

個人的には、その点に関しては強い懸念を感じていますが、そのことは今回はパスします。

 

【アメリカ世論のトラウマとなったテヘランのアメリカ大使館人質事件】

相撲の「張り手」「かち上げ」同様に、派手な“ドナルド・トランプ・ショー”にもリスクが伴います。意図したように進まないと、自ら演出した言動で出口が見つからず立ち往生することにもなりかねません。

 

そうしたリスクはあるものの、イランを舞台にした“ドナルド・トランプ・ショー”がアメリカ国内で効果的なのは、アメリカ世論がイランを毛嫌いしているからでもあります。

 

****アメリカはなぜイランを嫌うのか****

緊張高まるアメリカとイラン。今週、大阪で行われるG20サミットでも主要議題となる見通しです。イランを「世界最大のテロ国家」と呼んで敵視し、軍事、経済、政治のあらゆる面で圧力を強め続けるトランプ政権。アメリカは、そもそも、なぜそこまでイランを敵視するのでしょうか。

 

アメリカとの戦争に最も近い国

「ここ2、3年の間に、アメリカとイランは戦争になると思いますか?」 アメリカで、5月に行われたある世論調査の質問です。「戦争になりそう」と答えた人の割合は、実に51%。半数を超えるアメリカ人が、イランとの戦争が現実味を帯びていると感じているのです。

これは、対北朝鮮、対ロシア、対中国を上回っています。また、別の調査では、アメリカ人の8割以上が、イランに対して否定的な見方を持っていることもわかりました。

 

40年前のある事件

その背景に何があるのか。アメリカの人たちと話していると、よく話題になる事件があります。40年前の1979年に起きた、在イラン、アメリカ大使館人質事件です。

 

イランではアメリカ資本を導入し、親米路線をとっていた国王の体制に国民が反発し、イスラム革命を起こして、王政を打倒します。そして、ホメイニ師を最高指導者とするイラン・イスラム共和国が樹立されました。

 

その年の11月、ホメイニ師を熱狂的に支持する学生たちが、首都テヘランのアメリカ大使館を占拠し、亡命した国王の身柄の引き渡しを求めて大使館の職員などを444日にわたって拘束したのです。これがきっかけとなり、翌年、両国は国交を断絶。いまも続いています。(中略)

 

この事件は、カラーテレビが普及していたアメリカで連日、大きく報じられ、衝撃を持って受け止められました。(中略)イランに対する嫌悪感を植え付けた出来事だったと多くの専門家が指摘しています。(中略)

 

トランプ政権のねらいは

トランプ政権のねらいはいったいどこにあるのか。(中略)

 

記者:トランプ政権が考えているのは、イスラム体制を転換させることなのでは?
(国務省でイラン政策を統括する)フック氏:われわれが求めているのは、イランの体制が、態度を改めることだ。イランという国家の将来を決めるのは、長年苦しめられてきたイランの国民だ。われわれはイランの国民を支持する。体制転換が目的ではない、あくまでイラン国民に寄り添っているだけだと主張しました。

 

しかし、対イラン強硬派として知られるボルトン大統領補佐官は、トランプ政権に入る前、イランの体制転換が必要だと公言していました。(中略)

 

専門家からは批判

しかし、中東の専門家からは批判も相次いでいます。

「イスラム体制は政治的にも経済的にも構造がしっかりしていて、近い将来、体制転換が起きるとは思えない。イランの態度にも大きな変化をもたらさないことは明らかで、トランプ政権に果たして戦略というものがあるのかすら疑問だ」(ジョージメイソン大学 エレン・ライプソン教授)

 

取材を通して

私は以前、中東にも駐在していましたが、イランでは、「アメリカが嫌われている」と感じる場面が多くありました。国交断絶から40年という時の流れが、お互いの不信感やそれぞれの偏った物の見方を増幅させたように感じます。そして、それを政治的に利用しようとする、双方の指導者たちの思惑も透けて見えます。(後略)【625日 NHK】

**********************

 

たった一回だけのイラン観光の印象からひとつだけ付け加えれば、イランには「アメリカに死を!」と叫ぶ人々もいますが、街中にコカコーラが溢れているように、一般市民はアメリカ文化をそんなに嫌悪してはいないように感じました。

 


コメント (1)   この記事についてブログを書く
« エチオピアでクーデター未遂... | トップ | コロンビア  左翼ゲリラと... »
最近の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (アッキードF19で小沢一郎を撃退希望)
2019-07-19 06:53:16
https://blog.goo.ne.jp/adoi/e/24a688657c8774f650a8ee0d48d4f8d3
日航ジャンボ123便ソ連自衛隊核攻撃惨事における たくさんのJAL123便の元気な生存者及び、ご搭乗の昭和天皇が、日本の埼玉県警察の警察官らの襲撃(日本語で おまわりさん?らの手により)により
http://www.marino.ne.jp/~rendaico/ainugakuin/e0011938_16494167[1].jpg
といった惨憺たる虐殺死体と化した

一方、救助に奔走したのは米国のみであった


なお、米国機関で改めて調査を行ったところ、生存者の一部は、伊豆の達磨山の地下にヘリで連れていかれ、少なくとも十数年は生存していたことが新たに判明した。
また、藤岡公民館の日航機石碑は、米軍で救助に入って日本の埼玉県警らに殺害された米兵50名の墓となっていることが新たに判明した

コメントを投稿

イラン」カテゴリの最新記事