孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  犯罪グループによる「アカウント養殖」 スマホ決済から「顔認証決済」へ

2019-07-05 23:13:55 | 中国

(ズラリと並ぶ数百台のスマートフォン。警察が摘発したアジトではこれらスマホがWeChatに登録され、それぞれ無人で操作で「アカウント養殖」が行われていた。【75日 FNN PRIME)

 

【スマホ決済先進国の中国では犯罪グループによる「アカウント養殖」も】

セブンペイでの詐欺事件が報じられていますが、PayPay2回ほど使ったことがあるだけの私としては、今一つピンとこないところも。

 

****他人名義のセブンペイで詐欺未遂容疑 中国籍2人を逮捕****

コンビニ最大手セブンイレブンのスマートフォン決済「7payセブンペイ)」が不正アクセスを受けたとされる問題で、警視庁は4日、他人名義のセブンペイで不正に決済しようとしたとして、中国籍の男2人を詐欺未遂の疑いで逮捕し、発表した。

 

逮捕されたのは、いずれも住所不詳で職業不詳のジャン・ション(22)、自称学生のワン・ユンフェイ(25)の両容疑者。ワン容疑者は容疑を否認しているという。

 

新宿署によると、逮捕容疑は3日、セブンイレブン西武新宿店(東京都宿区)で、都内の40代男性名義のセブンペイを使い、電子たばこのカートリッジ40カートン(20万円相当)を購入しようとしたというもの。ジャン容疑者は調べに「SNSで知り合った人物からIDとパスワードが送られてきた。たばこを買えるだけ買ってくれと指示され、買い物をした」と供述しているという。

 

セブンペイに覚えのない多額の入金をされていることに男性が気づき、同店に連絡。「たばこの量が多いので後から取りに来る」といったん店を後にした2人が再び現れたことから、同店が通報していた。ワン容疑者の車からたばこ19カートンが見つかっており、警視庁が関連を調べている。【74日 朝日】

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被害にあわれた男性が「おにぎり1個プレゼントにつられてアカウントをつくって、40万円取られちゃった。馬鹿だね・・・」と嘆いておられましたが、私もその手の餌につられてカードを作ったり、アカウントをつくったりしています。お気持ちはお察しします。

 

犯人に中国人が関与しているというのは、中国人がどうこうと言うより、周知のように中国は現金を殆ど必要としないスマホ決済先進国ですから、当然にスマホ決済関連の詐欺に関しても日本のはるか先を行っているということでしょう。

 

日々、いろんな写真を報道で目にします。紛争や難民の悲惨な写真、政治家の性格が顔に出たような写真・・・そんななかでも冒頭に紹介した「アカウント養殖」の写真には「こんなのあるんだ!」と驚きました。

 

****スマホ数百台を無人操作…摘発!「アカウント養殖」とは****

アカウント作成には厳格な本人確認

 日本でも徐々に普及してきたスマホ決済。“スマホ決済先進国”の中国において、大都市ではもはや現金払いは過去のものとなりつつある。

 

その代わりに必要なのが決済アプリAli pay(支付宝)とWeChat Pay(微信支付)だ。特にWeChatは中国版LINEとも言われる国民的アプリであり、メッセージ感覚で送金も行えることから、友人と食事した際の割り勘の精算など個人間のお金のやり取りにもよく使われる。

 

便利であると同時にこうした送金機能は犯罪者にとって悪用し易いものであり、賭博や詐欺、マネーロンダリングなど違法行為にも使われてしまう。

 

このためAli payWeChat Payも、アカウントを作る際には厳格な本人確認を行っている。中国で携帯電話は実名登録制で、それぞれの送金アカウントは携帯番号と紐づけられている。

 

また、中国人であれば国民一人一人の「背番号」である身分証番号と顔写真、外国人であればパスポート番号や顔写真などによって、本人確認が行われ、匿名アカウントは作れないことになっている。

 

しかし、ネットで検索すればアカウントを売買する業者がいくつも出てくる。警察によれば、これらのアカウントは赤の他人名義で作られものを転売しているのだと言う。もちろん違法だ。

 

転売価格も様々…高値なのは?

そして写真(省略)は業者から送られてきたというアカウントの値段表だ。本来は無料で登録できるものである。

 

「国外」と書かれているのが海外の携帯電話番号で作られたアカウント。「新号」は新しいアカウントの意味だ。使用期間が長いほど値段が高いことがわかる。また、「国内」というのは中国の携帯電話番号で作られたアカウント。これも使用期間が長いほど値段が上がることがわかる。

 

外国の携帯番号に紐づけられて作られたアカウントは、本人確認が甘い国の携帯番号で作られていることが多く、警察から目をつけられやすいのだ。

 

一方で、中国国内携帯に紐づけられ、長期間使われている、友達の数が多い、LINEのタイムラインに当たるモーメンツへの投稿があるなど、正常に使われていた「実績」が多ければ多いほど疑われづらいため、値段も高くなるということのようだ。

 

(中略)詐欺などの犯罪者にとっても、ある程度使用実績のあるアカウントの方が、足がつきづらく、転売業者にとってもカネになるということである。こうしたニーズから、更なる産業が形成されていたことが警察の捜査で明らかになった。

 

警察もあ然…これが「アカウント養殖」

ズラリと並ぶ数百台のスマートフォン。警察が摘発したアジトではこれらスマホがWeChatに登録され、それぞれ無人で操作が行われていた。

 

プリセットプログラムによって自動的にQRコードをスキャンして友達を追加したり、自動的にモーメンツをアップすることもできるようになっていた。

 

長期にわたって人間が普通に使っているよう見せかけ、アカウントが高く売れるよう「育てる」、いわば「アカウント養殖」が行われていたのである。

 

容疑者の男によると、スマホに専用のソフトを入れると、コンピューターから自動操作が可能になるということで「1か月以上使われたアカウントは封鎖されづらい」などと供述していた。

 

こうした実態を受け、WeChatを運営する中国IT大手テンセントも対策を強化すると表明した。身近なアプリをめぐる意外な手口。利用者一人一人が被害者にならないよう気をつけなければならない。【75日 FNN PRIME

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無人の部屋にずらっと並んだスマホ、コンピューターからの自動操作による「アカウント養殖」・・・・近未来的犯罪ですね。

 

そのうち、AIを使って無人スマホ同士でそれらしい会話をさせて養殖する技術も出てくるでしょう。

無人の部屋で何百台ものスマホが「今夜どうする?」「この前の店で食べようか?」「いいわね」・・・なんて会話している光景は、もはやシュールですね。

 

こういうスマホ決済先進国の犯罪集団からすれば、途上国日本での犯罪などちょろいものでしょう。

 

【スマホ決済から更に進んで「顔認証決済」の時代へ】

もっとも、何でも新しいものに飛びつく中国社会では、スマホ決済から更に進んで「顔認証決済」の時代に向かっているとか。現金はもちろん、スマホも不要という訳です。

 

****スマホ決済は古い? 中国に広がる顔認証搭載レジ****

店頭で画面をのぞき込むだけ

中国の巨大テクノロジー企業はモバイル決済を大衆に広めることでは米企業を一足飛びに追い抜いた。次はスマートフォンを使わず、単に画面をのぞき込むだけで決済する方法を試している。

 

アリババグループ傘下のアント・フィナンシャル・サービス・グループは「支付宝(アリペイ)」、テンセントホールディングスは「微信支付(ウィーチャットペイ)」とそれぞれ中国2大電子決済ネットワークを展開している。この両社の間で、キャッシュレス社会の次のステージをめぐる主導権争いが激しくなってきた。

 

中国全土の店頭に自社ブランドの顔認証スクリーンを設置することを目指し、それぞれが小売店に対し販売スピードや効率性を高める手段として売り込み攻勢をかけている。

 

両社はこの数カ月間に競合する2つの決済システムを商品化し、さらに改良した。7億人のアクティブユーザーを持つアリペイを運営するアントは昨年12月、先に店頭レジ用の顔認証決済装置を売り出した。

 

続いてテンセントが今年3月、個人の好みに応じてスマホのQRコードの読み取りでも顔のスキャンでも決済が可能なウィーチャットペイの新システムを発表した。

 

翌月、アントはアリペイの顔認証システムのアップグレード版を発売。サイズはタブレット端末「iPad Mini(アイパッドミニ)」くらいに小型化され、価格は最初の顔認証決済システムの約3分の11999元(約31000円)に抑えた。

 

アナリストはこの装置がすでに定着し始めたとみている。

「中国では顔認証がかなり成熟した段階に発達している。今後はキャッシュレス取引の標準的機能として取り入れられる可能性が高い」。蘇寧金融研究院のアナリストはこう話す。

 

こうした動きが注目されるのは、アリペイとウィーチャットペイが合わせて中国の第三者モバイル決済サービス市場の9割近くを占めるからだ。インターネット調査会社の比達諮詢(ビッグデータリサーチ)によると、昨年の同市場の取引総額は160兆元(約2500兆円)に達している。

 

アリペイとウィーチャットペイは人々が決済ネットワークを利用するたびに小売業者から少額の手数料を徴収する。だが利用者数や取引額の伸び鈍化に伴い、両社の間では争奪戦が激しくなっている。(中略)

 

両社はいずれも新技術を導入した商店の数を公表していない。だがアリペイまたはウィーチャットペイを利用できる顔認証装置は、中国各地の自動販売機や食料雑貨店、病院でも目につくようになった。両社の端末には本人認証のために顔の細部まで捉えられる3次元カメラが搭載されている。

 

中国はこれまで顔認証技術の開発最前線を走ってきた。この技術は今や、政府や企業による市民や従業員の監視システムから公衆トイレのペーパーホルダーに至るまであらゆる場所に使われている。(中略)

 

潜在的な問題としてプライバシーへの懸念がある。中国支付清算協会が行った2018年の調査では、モバイル決済利用者の85%が顔や指紋などの生体認証による決済に前向きだった一方で、個人データの安全性を最大の懸念として挙げる人が70%を超えた。

 

また一部の利用者は、顔認証技術が思ったほどスムーズではないと話す。南京の金融企業で働くツァン・リンリンさん(31)は3月、鉄道の駅でアリペイの装置を使ってボトル入り飲料水の代金を支払ったが、手続きが面倒だったという。

 

ツァンさんは初の利用だったため、自分の顔の画像とアリペイの口座を連携させるまでに何度もトライしなくてはならなかった。また別の機会には、ツァンさんが決済しようとするとカメラが顔全体の画像を捉えられなかった。カメラの位置が高すぎたのが理由だ。「私は単なる好奇心から試してみた。だが時間がないときは使わないと思う」

 

一方、杭州の大学生ワン・ハオウェイさん(19)はコンビニや大学の自動販売機では顔認証による支払いが気に入っているという。

 

「すごく便利だ」とワンさんは話す。それにスマホのバッテリーが減った時にモバイル決済ができなくなる不安から解放されると指摘した。【612日 WSJ】

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一般に個人情報の扱いには“おおらか”とされる中国にあっても、個人データの安全性が懸念されるようにもなっているようです。


なお、中国では、生後わずか数カ月の写真をもとに経年変化を考慮した顔認証技術によって10年後に誘拐・行方不明になっていた子供を保護するというレベルに達している・・・という話は、6月18日ブログ“AI(人工知能)の驚異的な可能性 必要なAI活用ルール 不可避な社会変革”で取り上げました。

 

顔認証は中国の専売特許ではなく、各国が導入を争っていますが、アメリカの空港の顔認証はトラブルも多いようです。技術的に中国のレベルに達していないということでしょうか。

 

****アメリカの顔認証ゲート......顔写真データは盗難、通過できない客も続出****

<アメリカの空港で導入が進む顔認証だが、登場手続きがうまくいかなかったり、顔写真データが盗まれたりと、ちょっとしたトラブルが続いている......

米国では数年以内に、出国する旅客の97%に対して顔認証システムによるチェックが実施されるようになる見込みだ。米国土安全保障省(DHS)は、このシステムは98%の一致率を誇り、不法滞在者摘発などに役立つとしている。

顔認証システムは政府だけでなく、民間企業の間でも採用が進んでいる。米Washington Postのジェフリー・ファウラー記者は610日、米航空会社JetBlueの顔認証による登場手続きシステム「e-gate」を体験した記事を公開した。

旅客の15%がうまく通過できなかった
JetBlue
は、このシステムにより搭乗手続きが簡易化でき、旅客のストレスを減らせるとしている。旅客はゲートにあるカメラをのぞき込むだけで、ボーディングブリッジに進める。仕組みは、ゲートにあるカメラで撮影した顔写真を、DHSが提供するパスポートやビザの渡航情報のデータと照合するというものだ。

撮影された写真は、一定期間(出国の場合、米国民は12時間、それ以外は2週間)保存された後、破棄される。

ファウラー記者はニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港のe-gateで取材した。自身で10回ゲートを通ってみたところ、サングラスを装着した状態を含めてすべて通過できたが、2便分の搭乗をチェックしたところ、旅客の15%はうまく通過できなかった。

JetBlue
は、うまくいかない原因として、カメラに顔を向ける時間が短かすぎたり、ひげが生えるなどで照合元の写真と著しく見た目が変わっているケースを挙げた。(中略)

サイバー攻撃で米国を入出国した旅客の顔写真が盗まれた
本誌米国版によると、企業によるものだけでなく、米連邦政府の顔認証プログラムも、米国民の権利として拒否できるという。その場合は、パスポートの提示などの従来の手続きを行うことになる。

折しもこの記事が公開された同じ日に、国土安全保障省税関・国境取締局(CBP)が、下請け業者へのサイバー攻撃により、米国を入出国した旅客の顔写真と車のナンバープレートの写真データが盗まれたと発表した。規模は不明だが、流出した個人データは取引され、悪用される可能性がある。(後略)【612日 Newsweek

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「浜の真砂は 尽くるとも 世に盗人の 種は尽くまじ」ということで、顔認証技術が普及すれば、またそれに応じた犯罪・詐欺が現れるのでしょう。

 

【日本にも、中国並みの「超監視社会」がやって来るのか?】

中国内には2億台近い監視カメラがあるとされ、顔認証技術と組み合わせて「超監視社会」が出現しつつあるということは、このブログでもすでに何回かとりあげた話題です。

 

日本も2020東京オリンピックに向けて、その方面の技術活用が進むようです。

 

****W杯・五輪、日本でも活用視野****

AIを利用した監視カメラは、日本でも使われ始めている。

 

大きなスーツケースを持った男が1人、街を歩く。異なる場所で撮影された画像を時系列で追うと、ある時点から荷物を持っていない。どこかに置いたのか。危険物ではないのか――

 

警備大手セコムが実験したときの画像だ。実際は、街頭に設置した仮設カメラや警備員が胸に着けたウェアラブル端末で動画を撮影。AIが特定の人物の特徴を分析し、膨大なデータをさかのぼって追跡する。

 

同社は17年以降、この警備システムを東京マラソンの観客警備で使っている。今年の大会では、現場に展開した警備員の携帯型カメラや監視カメラは計140台に及んだ。今年9月から日本で開かれるラグビー・ワールドカップ(W杯)や、来年の東京五輪での活用も視野に入れる。

 

人の行動予測にまで踏み込んだのが、万引き対策システムを提供するアースアイズ(東京)が開発した「AIガードマン」だ。

 

店に設置した防犯カメラの映像をAIがリアルタイムで分析。目線や姿勢から「不審な買い物客」を見つけ、店員による声かけを促す。導入先では、万引きの被害額を半減させたという。

 

同社の推計では、万引きによる被害は年約4千億円に上る。山内三郎社長は「AIがさらに進化すれば、さまざまな事件や事故の予防にも生かせるようになる」と期待する。

 

「中国並み」には慎重

来年の東京五輪パラリンピックに向けて、国内の監視カメラ市場は拡大が続く。富士経済の調査によると、日本国内で出荷される業務用監視カメラの台数は今年、115万3400台と前年より4・1%増えると予測する。

 

日本ではこれまで、監視カメラで映像を撮りためておいて、何かあったときに後で解析する使われ方が主流だった。その力は実証され、昨年10月のハロウィーに東京・渋谷で軽トラックが横転させられた事件では、防犯カメラの解析が群衆の中から人物を特定する「決め手」になったとされる。

 

しかし、技術の進歩はさらに先を行き、AIを使ってリアルタイムに個人を特定する道具に変容。顔がうまく映り込んでいなくても、全身を照合すれば人物が特定できるようになった。中国を見るまでもなく、技術的には、広範囲にリアルタイムで特定人物を追跡できるところまできている。

 

日本にも、中国並みの「超監視社会」がやって来るのか。セコムの目崎祐史・IS研究所長は慎重だ。同社が担当するスポーツ大会の警備では警察当局と情報は共有するものの、個人の行動予測につながるような情報は社外に提供しないと強調する。

「中国のような監視社会は日本には受け入れられない。自社の警備態勢の改善に生かす以上の情報は使わない」(中略)

 

顔認証などの画像処理が普及すれば容疑者の割り出しはより早くなり、防犯効果も高まるだろう。一方で、公共の場でそうしたカメラが広がることは、プライバシーや人権の侵害と背中合わせになる。

 

日本では、政府が定めるルールは最低限にとどまる。どう運用するかは業者など使う側の裁量に多くが委ねられており、議論の余地は大きい。【630日 朝日「AIの目、忍び寄る監視社会」】

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業者など使う側の裁量・・・ということで、ヤフーが7月から始めるとされている、サイトの利用者の信用度を点数化する「Yahoo!(ヤフー) スコア」などの話などいろいろありますが、長くなったので今日はここまで。

 


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