孤帆の遠影碧空に尽き

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原発  脱炭素への移行にあたり「安定供給源」として原発は一定に必要とのEUの認識

2021-10-25 23:16:52 | 資源・エネルギー
(22日に閣議決定された日本の第6次エネルギー基本計画【10月22日 東京】)

【「新増設・リプレースしない」方針で、「野垂れ死ぬ」将来の原発】
先の自民党総裁選挙で、河野太郎氏の「脱原発」が争点になるのでは・・・とも思われましたが、そういう議論は自民党的には不利になるという判断でしょうか、早々に引っ込められてしまったようです。

ただ、「脱原発」を明確にする、しないにかかわらず、日本の原発は将来先細りのようです。

****河野太郎氏の脱原発“置き土産”の余波 専門家「原発が野たれ死ぬ将来見えた」****
先の自民党総裁選で河野太郎氏は、既存原発の再稼働は認めながらも、核燃サイクルは「なるべく早く手じまいすべきだ」と明言した。

脱原発を期待する市民のなかから「現実路線に軌道修正した」と落胆する声があがった一方で、同氏周辺や専門家には「まったく妥協していない」と指摘する声が少なくない。

河野氏は敗北し、その政策実現はいったん遠のいたかに見えるが、「核燃サイクル政策はとっくに破綻しており、早晩政府は解決策を迫られる」との見方も強い。

10月にも閣議決定される「第6次エネルギー基本計画」はどうなるのか、間近に迫る総選挙では、原発政策で河野氏と共通点も少なくないとみられる野党は、どう攻めるのか――。

政府の有識者会議のメンバーとして、原子力政策に長く関わってきた橘川武郎・国際大教授(東大・一橋大名誉教授)に聞いた。 

*  *  * 
――「核燃サイクル」見直しを訴えた河野太郎氏は、総裁選に敗れました。  

今度の総裁選の結果を見て、資源エネルギー庁や電力業界は、ほっとひと安心したと思います。しかし現政権が短命で終わると、あらためて河野政権が登場する可能性があります。河野さんはまったく妥協していない。本格政権になれば、「原子力ムラ」にとって最悪シナリオになるんじゃないか。

 ――逆に、甘利明氏が自民党幹事長になるなど、新たな政府与党の体制には原発推進派も目立ちます。10月に閣議決定が予定される「第6次エネルギー基本計画」で、「原発新増設、リプレース(建て替え)」を求めてくる可能性もあるのでは?  

まったくありません。「安倍一強」時代でさえできなかったことが、新政権にできるわけがない。まして総選挙を直後に控えています。経済界には要望が強いが、3.11以来国民のなかに原発への忌避感が強いことは、政府与党も十分感じ取っています。あの原発事故以来、自民党も旧民主党系野党も原発を主要な論点から外しています。原発問題は、票を減らすことはあっても、増やすことはないからです。今後も主要な論点から外され続けるでしょう。野党も、同じことです。 

■アンモニア・水素火力が引退勧告
――河野さんが首相になれば、「原発の葬式」がいよいよ始まるはずだった?  

いや、実は「2050年には原発はよくて10%、場合によってはなくていい電源になる」。そうした流れが、今度の首相交代劇の前に、ほぼ固まった、と私は見ています。
 
これまでは、(原発反対派向けには)「新増設、リプレースしない」とする一方で、(推進派向けに)原発による電力は「2030年に20~22%」。この2つのバランスの中で、問題を先延ばししていく、という「先延ばし路線」が最近5~6年は続いてきました。 

「新増設・リプレースしない」方針は何を意味するのか。原発はあと50年も経てば、なくなるということ。「野垂れ死ぬ」将来が見えたわけです。

40年の寿命を延長して60年間稼働しても、2050年には、現在の33基のうち18基しか残らない。60年に5基しか残らず、69年12月には最後の北海道電力・泊3号機が停止する。  

さらに、政府が昨年12月に発表した、2050年の電源構成の「参考値」が重要な意味を持ちます。「再生エネ50-60%、水素とアンモニア10%、CO2を回収・貯留・再利用するCCUS付きの火力と原発30-40%」とした。

子供でも分かる理屈ですが、ふつうは「再生エネ、火力、原子力」に分けます。「火力の一部と原子力」をなぜくっつけたのか?「原発10%以下」の見通しを隠すためだった、と私はにらんでいます。 

――「原発10%以下」が、どうして可能になるのでしょう?  

アンモニアと水素を使う「カーボンフリー火力」が登場したからです。JERA(東京電力と中部電力が出資した日本最大の火力発電会社)が昨年10月13日に発表しました。菅義偉首相は、直後の26日の所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル」を宣言しましたが、この宣言の背景には、「CO2を出さない火力発電」という新しい仕組みが示された事実があったのです。これは「原発はもう引退せよ」とのメッセージであり、日本の電力業界の「ゲームチェンジャー」にもなるでしょう。原子力は「副次電源」になったということです。(後略)【10月6日 AERAdot.】
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【第6次エネ基本計画では従来目標の原発20~22%を維持 実現は困難】
上記記事にもある「第6次エネルギー基本計画」が22日、閣議決定されました。(総選挙のどさくさで、議論も何もあったものではありませんが)

****脱炭素へ再生エネ倍増 第6次エネ基本計画を閣議決定 原発の新増設は盛り込まず****
政府は22日の持ち回り閣議で、国のエネルギー政策の中長期的な指針「第6次エネルギー基本計画」を決定した。

2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にするため、太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる電源を現状から倍増を目指し、主力電源化へ「最優先の原則で取り組む」とした。

原発は脱炭素電源として重視して再稼働を進めるものの、新増設の方針は盛り込まなかった。(小川慎一)

◆再生エネ発電比率目標を10%以上引き上げ
計画では、温室効果ガス排出量を30年度に13年度比で46%削減するとの国際公約に基づき、再生エネの30年度の発電比率目標を36~38%と、これまでより10ポイント以上引き上げた。
 
東京電力福島第一原発事故から10年半が過ぎ、再稼働が10基にとどまる原発は従来目標の20~22%を維持。達成するには全36基(建設中3基含む)のうち30基程度の稼働が必要で、実現は困難な状況だ。
 
再生エネ拡大を図り、原発は「可能な限り依存度を低減」とする一方で、「必要な規模を持続的に活用する」と新たに明記。小型炉など新型炉の研究開発を進める方針を掲げ、既存原発からの建て替え(リプレース)に含みを持たせた。
 
再生エネと原発を合わせた脱炭素電源を全体の6割にできなければ、30年度の温室効果ガスの排出削減の約束は果たせない。
 
政府はこの日、温室効果ガス排出削減の具体策を盛り込んだ「地球温暖化対策計画」も決定。英国で31日に始まる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で計画を示す。

温室効果ガスを大量排出する石炭火力は先進国で全廃が求められているが、日本は30年度比率を26%から19%に縮小したものの、ゼロへの道筋が描けていない。(後略)【10月22日 東京】
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化石燃料を減らして脱炭素を目指す・・・ということでは、今回の「第6次エネルギー基本計画」でも、欧州諸国に比べると日本は周回遅れではないか・・・という話もありますが、それはまた別機会に。

話を原発に絞ると、目標「20~22%」という数字は、今後の原発稼働を考えると「実現は困難な状況」とのことのようです。やはり、前出【AERAdot.】にもあるように、“「野垂れ死ぬ」将来”というか、“自然消滅”ということでしょうか。

【コスト優位性を失う原発】
日本では原発に関しては一にも二にも安全性が問題となりますが、欧米諸国で「脱原発」が進んでいるのは、安全性問題に加えて、原発より再生可能エネルギーの方が安いから・・・という非常に現実的な要因によるところが大きいと言われています。

日本でも、原発のコストについては、見直しがなされているようです。

****原発、消えた優位性 重い安全対策・事故費****
コストが最も安いとされる発電方法が、原発から太陽光に変わろうとしている。経済産業省の試算では、2030年には太陽光の方が原発よりおおむねコストが低くなる見通しだ。政府や大手電力会社は原発の安さを強調してきただけに、エネルギー政策への影響は避けられない。

原発のコスト増の大きな要因は安全対策費だ。
東京電力福島第一原発事故で規制が強まり、過酷事故などを想定した対策工事が必要になった。かかる費用は、今回は15年の前回試算より1基あたり1369億円増えると見込む。
 
事故時の賠償や廃炉費用なども、前回の9・1兆円から15・7兆円に増えた。福島第一原発事故の処理費用をもとに算出している。政府は16年末に処理費用を上方修正したが、今後もさらにふくらむのは確実だ。
 
原発では費用が増えそうな要因がほかにもある。
使用済み燃料を再処理する日本原燃の「六ケ所再処理工場」(青森県六ケ所村)の総事業費は約14・4兆円となっている。工場の完成の遅れもあって前回の12・6兆円から増えた。
 
原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処理費用もある。地下深くに埋める最終処分場をつくろうとしており、経産省は3・1兆円の費用を見込むがこちらも増えそうだ。
 
経産省の試算では、原発の発電コストは20年、30年ともに「11円台後半以上」で変わらない。太陽光や風力は技術革新や量産効果で価格低下が見込まれる。再生可能エネルギーの導入が進みそうだ。
 
龍谷大学の大島堅一教授(環境経済学)は「原発が経済性に優れているという根拠はなくなった」と指摘する。

 ■政府、重視姿勢変えず
原発の発電コストは、試算のたびに高くなってきた。それでも、経産省は安定的に電力供給できる「ベースロード電源」だとして重視している。
 
太陽光は夜間は発電できず、風力などは天候によって発電量が左右される。再生可能エネルギーが増えすぎると、悪条件が重なったときに大規模な停電が起きる恐れもある。
 
原発と同じくベースロード電源とされてきた石炭は、脱炭素の流れのなか縮小している。経産省や大手電力会社は脱炭素と安定供給を両立させるため、原発を活用すべきだと主張。自民党内にも原発のリプレース(建て替え)や新増設が必要だとの意見は根強い。
 
梶山弘志経産相は「既存の原発の再稼働を進めることが重要だ」としてきた。政府は近く改定するエネルギー基本計画でも、原発を一定程度維持する方針は変えないとみられる。【7月13日 朝日】
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【欧州 脱炭素への移行にあたり「安定供給源」として原発は一定に必要との認識】
コスト的な優位性は失われたものの、エネルギー安定供給という視点から、政府は「原発を一定程度維持する方針は変えない」ということで、今回の「第6次エネルギー基本計画」となっています。

確かに、欧州の天然ガス価格高騰によるエネルギー危機、中国の石炭不足による電力不足など、「安定供給」の重要性を再度検討すべき事態も各地で生じています。

また、2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にするためは、現実問題として安定的な原子力エネルギーも一定に活用する必要があります。

そうしたことから再生可能エネルギーの活用が進むギリスでも、新規原発への資金拠出が認められるようです。

****英、新たな原子力発電所に資金拠出へ 実質排出ゼロ目標で=英紙****
英紙テレグラフによると、英政府は二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロの実現に向け、2024年の総選挙前に新たな原子力発電所に資金を拠出する計画を発表する見通し。同紙が17日、報じた。

政府報道官はロイターに「エネルギー安全保障を強化し、数千人の雇用を創出するため、少なくともあと1件の大規模原子力プロジェクトを数年内に承認することを目指している」と述べた。

最近の欧州のエネルギー危機と英国での燃料不足を受けて英政府はCO2排出量の少ない再生可能エネルギーへの移行を進めている。

テレグラフは、政府の資金拠出先の最有力候補として、フランス電力公社(EDF)がイングランド東部のサフォークに計画しているサイズウェルC原子力発電所を挙げた。

ジョンソン英首相は今月初め、2035年までに国産のクリーンエネルギーヘの転換を目指すと表明した。【10月18日 ロイター】
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「原発大国」フランスも原発増設に踏み出すようです。

****フランス新型原発増設、年内発表と報道****
19日付のフランス紙フィガロは、マクロン大統領が国内で、新型の欧州加圧水型原子炉を6基増設する計画を年内に発表する考えだと報じた。発表すれば、増設の判断は先送りするとしてきた政権の方針転換となる。【10月19日 共同】
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欧州委員会のフォンデアライエン委員長も、低炭素経済へ移行するに当たっては安定したエネルギー源として原子力発電と天然ガスが必要だとの認識を示しています。

****原発と天然ガス、気候変動対策に必要 欧州委員長****
欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は22日、欧州連合が低炭素経済へ移行するに当たっては安定したエネルギー源として原子力発電と天然ガスが必要だと述べた。
 
EU首脳会談後に記者会見したフォンデアライエン氏は、気候変動と闘うためEUは二酸化炭素排出量を大幅に削減する必要があり、「再生可能でクリーンなエネルギーをもっと必要としていることは明らかだ」と主張。その上で、再生可能エネルギーに加えて「安定した供給源である原子力と、(低炭素経済への)移行期にはもちろん天然ガスも必要だ」と語った。
 
原発には大気中にCO2をほとんど排出しないという利点がある。天然ガスは化石燃料の中では燃焼時のCO2排出量が最も少なく、代替エネルギー源が開発されるまでの「つなぎ」と位置付けられている。
 
欧州委は年末までに、気候変動対策に貢献する経済活動を分類し列挙した、いわゆる「グリーンタクソノミー」を提示しなければならない。
 
電力の約7割を原発に依存しているフランスのエマニュエル・マクロン大統領は22日、「われわれの気候変動目標を達成するために原発を利用する必要性について、これほど明確かつ広範な支持が表明されたことはこれまでなかった」と述べた。
 
EU外交筋は21日夜、タクソノミーへの天然ガスと原発の追加を「加盟国の大多数」が希望しているとAFPに明かしていた。
 
天然ガスの価格高騰を受け、フランスを中心とするEU加盟10か国は今月中旬、原発を支持する共同声明を発表した。一方、ドイツやオーストリア、ルクセンブルクなどは、放射性廃棄物の長期保管問題を指摘して原発に強く反発している。 【10月24日 AFP】
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