孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

香港  返還から20年 習主席訪問で厳戒態勢に 台湾以上に展望が開けない香港

2017-06-27 22:20:13 | 東アジア

(建設が進む「港珠澳大橋」 橋で本土とつなぐことは容易ですが、香港住民の心をつなぎとめることは・・・・【https://udn.com/news/story/7331/2482769】)

返還から20年 習主席訪問で香港統治を強化
香港と中国本土の珠海、マカオを結ぶ世界最長クラスの海上橋「港珠澳大橋」は年内完成を目指しています。

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年内の完成をめざして、真っ黒に日焼けした男たちが黙々と作業していた。香港と中国本土の珠海、マカオを結ぶ世界最長の海上橋「港珠澳大橋」(全長55キロ)。総工費は1千億元(約1兆6千億円)超。「大経済圏がいよいよ形成される」。同橋管理局の韋東慶・行政総監は胸を張る。
 
香港から建設構想が生まれたのは80年代。だが、香港と中国の経済関係が深まれば、返還交渉で不利になるとの警戒感が英国にあり、着工は返還後の09年にずれこんだ。

投資に見合う経済効果を疑問視する声があったが、珠海学院の陳文鴻・名誉教授は橋の建設に「香港を本土に融和させるという政治的意図が中国にあった」と語る。【6月27日 朝日】
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“年内完成”に関しては、コンクリート圧縮試験のデータ改ざんの疑いが発覚しており、2017年完成は難しいのではないか・・・との声も出ているようですが、そこは中国の威信をかけた国家プロジェクトですから、何としても押し切るのではないでしょうか。

また、これまで港珠澳大橋に関する問題は工事延期に限らず、予算超過、死亡事故、賄賂など多岐にわたっていますが、そこは中国の威信をかけた国家プロジェクトですから・・・・。

もとより香港は九龍半島側で中国・深圳に接していますが、「港珠澳大橋」によって珠海、マカオともつながり、いよいよ中国との一体化が進むようにも思われます。そのあたりが橋建設の“政治的意図”でしょう。

その香港はイギリスから返還されて20年を迎えるということで、29日には記念式典集積のため習近平国家主席が香港を初訪問します。

****7月1日」控え、香港ピリピリ…習近平主席“威圧”狙い初訪問 返還20年式典、空母「遼寧」も初寄港****
1997年に英国から中国に主権が返還されて7月1日で20年を迎える香港が“ピリピリ”している。

習近平国家主席が29日にも香港を初訪問し、返還後に駐留を始めた人民解放軍部隊を閲兵するほか、中国の空母「遼寧」が香港に初寄港する見通しだ。

「独立」議論が起きた香港社会を威圧する狙いがある。一方で、中国による政治介入に反発する独立派や民主派の団体は相次ぎデモを計画。香港警察は警戒態勢を強めている。
 
香港では7月1日、返還20周年記念式典に加え、3月の行政長官選挙で当選した林鄭月娥氏の就任式が行われる。習氏はいずれの式典にも立ち会うほか、式典前日に人民解放軍部隊を閲兵し、香港の治安維持を改めて命じる見通しだ。習氏の香港訪問は2013年3月の国家主席就任後、初めて。
 
香港紙、星島日報によると習氏は空母「遼寧」の香港寄港を指示した。市民に空母を公開することで「国家の海軍力を理解させ、民族の誇りを強めさせる」狙いがある。軍事力を見せつけ、新疆ウイグル自治区やチベット自治区並みに「香港独立派」を牽制(けんせい)する。
 
一方、「香港独立」を掲げて昨年旗揚げした政党の香港民族党は30日、市内中心部で「香港陥落20周年追悼式典」と題する反中デモを行う。党代表の陳浩天氏は取材に対し、「誰かが反中意思を示さなければ、香港人が全員、中国統治を歓迎していると国際社会が誤解する」と話している。
 
ほかにも民主派団体が1日に数十万人の大規模デモを計画しており、香港警察は少なくとも9千人態勢で警備に当たる。さらに隣接する広東省では、中国本土から習氏への抗議目的で香港を訪れる人物を警戒。鉄道駅などでの身分証と所持品チェックを強化した。
 
香港中文大学が行った最新の世論調査で、「返還後の20年で香港の社会状況が悪くなった」とする回答が62.9%に上った。習氏による訪問が強圧的な印象を残せば、親中派の新長官の施政下で、香港社会の混乱はさらに拡大しそうだ。【6月24日 産経】
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香港当局は抗議行動封じ込めへ
すでに抗議活動も報じられています。

****香港返還モニュメント、黒い布で覆う 民主派が抗議活動****

7月1日に中国への返還20周年を迎える香港で26日、香港の民主化を訴える政治団体などが、返還を記念するモニュメントを黒い布で覆う抗議活動を行った。駆けつけた警察側が、すぐに撤去した。
 
金色のモニュメントは高さ約6メートルあり、香港を象徴する「バウヒニア」の花をかたどっている。中国政府から香港に贈られ、1997年に返還式典が開かれた海辺の広場に設置されている。

地元メディアによると、民主派の政党「香港衆志」など3団体のメンバーが26日早朝、モニュメントに登り、黒い布をかぶせたという。
 
団体側は「黒い布で覆われた金色の花は、議員資格を取り消すなど政治がコントロールされる『一国二制度』の危うさを示している」などとする声明を公表した。
 
モニュメントのある広場や隣接する施設では、毎年7月1日に記念式典が開かれている。今年は習近平(シーチンピン)・中国国家主席が出席する予定だ。【6月26日 朝日】
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香港当局は、警官の大量動員や抗議集会締め出しなどで、“デリケートな問題に言及した内容が習主席の目に触れる事態を阻止する”構えとか。

****香港返還20年、習主席訪問へ 厳戒の市内で大規模デモも****
・・・・習主席の訪問中、市内は厳戒態勢が敷かれる見通しで、抗議デモ参加者が習主席に近付けないよう、一部地区は封鎖される。

香港警察は数カ月前から、隣接する広東省の警察と合同訓練を実施していた。地元紙の報道によると、一線に配備される警官は、天安門事件や「真の普通選挙」といったデリケートな問題に言及した内容が習主席の目に触れる事態を阻止するよう指示されているという。

中国政府のナンバー3、張徳江氏が昨年香港を訪問した際には、警察が歩道に張り付き、巨大な障壁を設置して一般人の接近を阻んだ。

民主化運動の指導者が結成した政党「香港衆志」の広報によると、今回は張氏の訪問時を上回る厳戒態勢が予想される。

20周年の記念式典が行われる7月1日は、伝統的に抗議の日でもあり、市民数千人の人出が予想される。しかし、これまで毎年民主化運動の会場となってきた市中心部のビクトリア公園では、今年は中国寄りの組織が記念式典を行う。

デモ行進は実行される予定だが、活動家の1人は「中国政府が香港で我々を締め出そうとしている。我々の自由と民主主義が脅かされている」と危機感を示した。【6月26日 CNN】
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【“息苦しさ”を増す香港社会 台湾移住も
今更のことではありますが、香港の「一国二制度」は形骸化を強めています。

****香港返還20周年、中国の締め付け強まり揺らぐ「一国二制度****
2017年6月23日、香港が1997年に英国から中国に返還されて7月1日で20年の節目を迎える。返還時には社会主義の中国とは異なる「一国二制度」が認められたはずだが、中国政府の締め付けが強まり、制度は揺らいでいる。これに伴い、香港住民の対中感情は悪化し、本土との亀裂も深まっている。

英国の植民地だった香港が返還された際、中国政府は引き続き50年間は特別行政区として資本主義を採用し、社会主義の中国と異なる「一国二制度」を維持することを約束。外交と国防を除き、香港には「高度な自治」が保障された。

香港の憲法に当たる基本法には、中国本土では制約される言論・報道・出版の自由、集会やデモの自由、信仰の自由などが明記されている。

「一国二制度」に暗雲が立ち込めたのは、2017年の行政長官(香港のトップ)選挙をめぐり14年8月、中国政府が自由な立候補を阻む措置を決定したのがきっかけ。これに反発し、民主化を求める学生らが中心部に座り込む「雨傘運動」が繰り広げられた。

翌15年10月から12月には、中国共産党批判や指導者のスキャンダルなど本土で販売できない書籍を扱ってきた「銅鑼湾書店」親会社の出版社の株主ら5人が中国当局に連行されるなどして相次いで失跡。「言論の自由」が脅かされたとして、香港社会に大きな衝撃を与えた。

昨年9月の議会選挙(定数70)では「雨傘運動」後に台頭した香港独立を視野に入れる「本土派」議員2人が当選したが、香港政府は就任宣誓時に中国を侮蔑する発言などをしたとして、議員資格取り消しの司法審査を高等法院(高裁)に請求。2人は最終的に議員資格を取り消された。

香港メディアによると、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の張徳江委員長は5月末、北京で開催された「香港基本法実施20周年座談会」で講演。「中央と香港特区の関係は授権する側と授権される側の関係で、分権関係ではない。いかなる状況下でも高度な自治を盾に中央の権力に対抗することは認めない」と指摘した。

その上で民主派の動きを「香港に対する国家の主権回復を認めず、香港を国家から分離し独立か半独立の政治実体にする企て」と批判した。

これに対し、香港住民の中国に対する不信感は高まる一方。香港大学が住民を対象に5月に実施した香港を含む世界16カ国・地域の好感度調査によると、1位台湾、2位カナダ、3位シンガポール、4位日本などの順で、中国は最下位だった。「いい印象を持っている」との回答は1%にすぎなかった。

7月1日には中国の習近平国家主席が出席する返還20周年記念式典や盛大な花火大会などのイベントが予定されている。習主席の訪問に合わせ、民主派などは10万人規模の抗議デモも計画しているという。【6月24日 Record china】
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好感度調査で1位の台湾への移住も増加しているようです。

****自由な未来、描けぬ香港 来月、中国返還20年****
香港が英国から中国に返還されて7月1日で20年を迎える。1世紀半ぶりに祖国に戻った高揚感は消え、中国と距離を置こうという動きが拡大。中国がめざした融合は進んでいない。

 ■「息苦しい」 増える台湾移住
中国の影響の下で変わる社会に見切りをつけ、台湾に新天地を求める香港人が増えている。
 
「中国にコントロールされた香港で暮らしていくと思うと、息苦しい」。9月に夫(44)と台湾に移る決心をした貿易会社勤務の女性(43)はこう漏らした。
 
中国企業による香港の土地の「爆買い」が進み、不動産が高騰。「庶民はマイホームなんて買えない」。中国の異質な価値観が香港社会に入り込み、自由な空気が失われることも心配した。移住先として米国なども考えたが、最後は費用の安い台湾を選んだ。
 
返還前、共産党の統治を恐れ、多い年は6万人超が米豪などに移住したが、近年は7千人前後に落ち着いている。その中にあって移住先として台湾人気が急上昇。この5年で倍増し、昨年は約1千人が渡った。
 
背景には、自由やチャンスといった輝きを失いつつある香港の現状がある。

この春、林栄基さん(61)は台湾を訪れ、書店を見て回っていた。中国共産党の批判本が売り物だった香港の「銅鑼湾書店」の元店長。知人が台湾に第2の銅鑼湾書店を開くのを手伝っている。
 
林さんは2015年10月、香港に隣接する広東省に入った際、中国当局に取り押さえられ、約8カ月間拘束された。香港の「一国二制度」の柱である言論・出版の自由が中国に侵されたと、社会に衝撃が広がった。
 
中国は香港政府に、反体制活動を取り締まる法の制定を求めている。林さんは「今は『香港独立』と言っても問題ないが、法律ができたら発言さえ許されなくなる」。国際NGO「国境なき記者団」の報道の自由度ランキングで香港は02年は18位だったが、今年73位に沈んだ。

 民主化も進まない。
「香港人はなぜリーダーを自分で選べないのか」。香港のテレビ局でディレクターをしていた羅鎮祺さん(39)は不満を隠さない。
 
返還の際、中国は香港トップの行政長官選で民主的な選挙を実現させると約束したが、14年、中国に批判的な人が事実上、立候補できない仕組みを決めた。若者たちの反発は「雨傘運動」と呼ばれたデモに発展し、羅さんも若者と路上で五十数日寝泊まりした。
 
雨傘運動の元リーダー、黄之鋒さん(20)は「運動は終わったが、その精神は続いていく」と強調する。雨傘運動後は香港の民主化が優先との意識が若者の間で強まっている。

倉田徹・立教大教授は「中国の民主化を求める基地が香港から台湾にシフトする可能性がある」と指摘する。

 ■投資依存、暮らし圧迫も
(中略)03年以降、中国本土から香港への直接投資の合計は4500億ドル(約50兆円)を超える。00年代半ば、香港の実質GDP(域内総生産)の成長率は6~8%まで伸びて03年の新型肺炎SARSであえいでいた香港を救った。
 
だが、中国マネーは香港社会を大きく変えた。住宅価格は跳ね上がり、一般家庭向けの物件は平均年収の35倍まで高騰。資産を持つ富裕層は潤う一方、低所得層の暮らしを圧迫する。
 
九竜半島・深水ホの古いアパート。販売員の女性(42)が娘と2人で暮らす自宅は10平方メートル(約3坪)。ベッドと棚が半分を占め、「鳥かごで暮らしている気分」。これでも家賃は3200香港ドル(約4万5千円)で、月給のほぼ半分を占める。公営住宅を申請したが、競争率は高い。
 
強まる本土への経済依存は複雑な対中感情を生む。
香港中心部にある結婚紹介所「聚縁坊」。中国本土の男性と結婚したいという女性からの相談が相次ぐ。
 
15年、本土の男性と結婚した香港女性は返還前の96年の4倍に増えた。本土に好条件の男性が増えたためとみられる。女性の気持ちを代表の鄭莉莉さんが解説する。「多くの中国人と仕事をしたり、友人になったりしている。政治的な理由で彼らを遠ざけられない」

 ■高まる「香港人」意識

若者たちの間では、自分は香港人であるという「香港人意識」が高まっている。

「小学校で、一国二制度は50年間変わらないと習ったのに現実は違う。先生、私をだましたの?」。香港の学生、周可愛さん(20)は中高生のころ、こんな疑問を抱くようになった。
 
きっかけは12年。中国政府の意向を受け、香港政府は小中学校で中国人としての愛国心を高める「国民教育科」の導入をめざした。これに市民が「洗脳教育だ」と反発し、大規模な反対運動に発展。周さんは自分に近い世代が参加する姿に引き込まれ、行動を共にするようになった。
 
それから2年後の冬、周さんは警察署にいた。デモ隊の一員として雨傘運動に参加。警察の退去命令を最後まで拒み、逮捕された。就職にも影響は出そうだが、後悔はしていない。
 
返還の年に生まれ、香港メディアから「97少女」とも呼ばれる周さん。自分は何人だと思っているかと尋ねると、「香港人です」ときっぱり答えた。
 
中国による香港経済のてこ入れが効いた約10年前、自分は中国人という香港人が半数を超えた。だが、国民教育科反対運動や雨傘運動などで流れは変わった。香港大の最新の調査では、自分を香港人と考える人は63%まで上昇。中国人という人は35%に落ち込んだ。
 
香港人意識は、政治運動に関わらない若者にも広がっている。返還前に英国が発行した英国海外市民(BNO)旅券を手放したくないとして、昨年、香港でBNO旅券の更新手続きをした人は前年比44%増と大幅に増えた。香港の大学生、朱喬雋さん(21)もその一人。「外国で中国人だと思われたくない」と語る。
 
自分が何人であるかという自己認識の変化は、90年代後半以降の台湾にもあった。香港の若者は台湾のたどった道に傾いているようにも見える。香港の政治に詳しい元外交官は言う。「中国が香港人の人心掌握に失敗したのは明らかだ」
 
香港の若者は、中国が一国二制度を「不変」とする期限が切れる30年後、香港を率いる世代だ。そのとき、香港の香港らしさは維持されているのだろうか。香港は今、その分岐点に立たされている。【6月27日 朝日】
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「一国二制度」が守られたとしても、あと30年間の話であり、その先にあるのは共産党一党支配体制です。「一国二制度」にすがってみても将来的な希望は描けません。

「本土派」と言ってはみても、現実的に中国の政治的・経済的圧力の前に道があるのか・・・・。台湾以上に展望が開けない香港です。

台湾移住が選択肢になるのも理解できますが、それが可能なのは経済的に総統の余裕がある階層だけではないでしょうか。

「自由」をあきらめて、中国支配のもとでの経済的利益のみを追求して生きていくのか・・・もとより「自由」とは縁がなく、その価値も十分に認識し得ていない本土の住民ならそれも“楽な道”ではありますが、いったん「自由」を味わった人間には厳しい選択です。

中国からすれば、香港を取り込みたいのであれば、今必要なのは長大な海上橋よりは香港住民の心に架ける橋のはずですが、「中華民族の偉大な復興」に突き進む習主席の耳には届きようもない話でしょうか。

と言うか、「一国二制度」とか高度な自治といった代物は、中国の現体制を否定する考えであり、一党支配の現体制を絶対のものとする中国指導部には到底容認できるものではないでしょう。

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