孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インドネシア  パプアの分離独立運動 広がる宗教的不寛容

2012-10-01 23:08:22 | 東南アジア

(2006年12月とかなり古いものですが、ジャワ島の古都ジョグジャカルタでパプア独立を叫ぶ学生たち “flickr”より By sumaryanto bronto http://www.flickr.com/photos/sumaryanto-bronto/1227561272/

続発する「謎の射撃」事件
ニューギニア島の西半分はインドネシア領のパプア州及び西パプア州になりますが、この地で独立運動とインドネシア軍・警察による人権侵害が続いていることは、11年8月7日ブログ「インドネシア  再燃するパプア独立運動  影響力を増すイスラム強硬派」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110807)でも取り上げたことがあります。

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 ◇パプアの分離独立運動◇
旧オランダ領のニューギニア島西部(パプア)は1963年にインドネシア統治下に移され、69年に同国へ併合された。金、銅鉱山など天然資源が豊富だが地元への恩恵は限られ、貧困率は国内最悪。政府や外国資本の収奪に対する住民の不満は強く、63年以来、分離独立を求める小規模な武装闘争や非暴力の住民運動が続いている。ニューギニア島西部はパプア州と西パプア州からなり、分離独立の動きは両州で見られる。【10月1日 毎日】
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特に、今年5月以降、政府側と独立派の対立が激化して無差別の「謎の射撃」事件が続発しています。

****インドネシア:パプア州で国軍と住民の対立激化*****
インドネシアの東部パプア州で、国軍や警察と住民の対立が激化している。民間団体によると5月以降、暴力事件などで少なくとも計15人が死亡している。
背景にはインドネシアからの分離独立を巡る、政府側と独立派の対立があると見られ、治安悪化の懸念が高まっている。

今月6日、パプア州中部ワメナで国軍兵士2人の乗ったオートバイが子供をはね、怒った地元住民が兵士1人を刺殺。1人に重傷を負わせた。翌日、国軍兵士数百人がこの地区を襲撃。住民1人が刺殺され、7人が負傷、複数の民家や自動車が燃やされた。
州都ジャヤプラでは4日、独立派デモを解散させようとした警官が学生3人を殺害。14日には警察による独立派指導者の射殺をきっかけに武装した活動家が暴徒化し、商店や車、オートバイなどに次々と放火。3人が逮捕され、手製爆弾や弓矢などが押収された。

一方、5月中旬以降、住民や軍関係者などが無差別に銃撃される「謎の射撃」事件がジャヤプラだけで5件発生。州全体では過去1カ月で計11件、9人が犠牲になった。いずれも実行犯は不明のままだ。
地元人権団体「コントラス」によると、「射撃」事件は昨年1年間の13件から大幅に増加。同団体は最新の報告書で、州内で独立派掃討を行う国軍、警察、諜報(ちょうほう)機関同士の競争が背景にあるとする専門家の分析を紹介。各治安機関と連携し、独立派に対抗する地元勢力の存在も治安悪化の要因となっている可能性を示唆した。

インドネシア政府は独立運動への支援を警戒し、パプアへの外国メディアなどの入域を厳しく制限。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは「パプアを(国際社会から)隠し続けることで、政府は国軍を免責し、住民の恨みを増大させている」として入域制限解除を求めた。【6月25日 毎日】
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著名な活動家でもあるカルマ服役囚は、5月以降の無差別銃撃事件について「予算削減を防ぎたい軍や警察が競って事件を起こし、独立派による治安悪化を演出している」との見方を示しています。

****パプア:独立活動家「このままでは民族根絶させられる*****
インドネシア・パプア分離独立運動では「国家反逆罪」で有罪となった活動家ら約70人が投獄されている。その一人で活動家のフィレップ・カルマ服役囚(53)が病気治療で滞在中のジャカルタで毎日新聞の取材に応じ、「国際社会の介入で独立の是非を問う住民投票を実現してほしい」と訴えた。

カルマ氏は「インドネシア人は我々と兄弟で平等だと言うが、それは虚言だ。独立を求めるパプア人の声は封じられ、人権侵害や差別が横行している」と語り、「このままではパプア民族は根絶される」と訴えた。
公務員だったカルマ氏は04年の式典で使用が禁止されている独立パプア「国旗」を掲揚して逮捕され、懲役15年の判決を受けた。獄中での虐待などへの抗議行動が国内外に伝わり、パプアでの人権侵害の象徴的存在になった。国連は昨年11月、カルマ氏の拘束は国際法違反としてユドヨノ大統領に即時釈放を求めた。

カルマ氏は「独立実現にはパプア人の団結が不可欠だが、インドネシアの治安当局がそれを阻んでいる」と述べ、国軍や警察が掃討作戦や独立派の切り崩しを進めていると指摘。5月以降の無差別銃撃事件について「予算削減を防ぎたい軍や警察が競って事件を起こし、独立派による治安悪化を演出している」との見方を示した。

パプアでは、衛生環境の整備や教育の普及も遅れ、エイズ感染率は全国平均の約15倍に上るなどの問題を抱えている。カルマ氏は「弾圧やエイズでパプア人は絶滅に向かっている」と語り、国際社会の支援を訴えた。【10月1日 毎日】
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また、インドネシア当局の独立運動弾圧に、オーストラリアがテロ対策として支援している特殊部隊が関与しているということで、オーストラリアでも問題になっています。

****パプア州:独立運動、インドネシア特殊部隊が弾圧疑惑****
インドネシアからの分離・独立を求める住民運動が続く東部で、国家警察の対テロ特殊部隊が住民の弾圧に関与している疑惑が浮上し、部隊を支援するオーストラリアへの批判が高まっている。独立派は豪政府が「人権侵害に加担している」と非難。豪州でも支援中止を求める声が出ている。
 
◇豪州が支援し誕生
この部隊は「デタッチメント(分隊)88」。
02年にバリ島で起きたイスラム地下組織ジェマ・イスラミア(JI)による爆弾テロ事件で豪州人を含む計202人が犠牲になったことを受け、03年、テロ対策の専門部隊として米豪両政府の支援で誕生した。部隊名「88」は豪州人の死者数に由来するとされ、豪州連邦警察などが訓練を担当。車両や装備の提供も受け、インドネシア全土でJIなどが標的の対テロ作戦に当たってきた。

対テロ部隊はパプア州の独立派で武装闘争を続ける「自由パプア運動」(OPM)の掃討作戦に参加。5月以降、政府側と独立派の対立が激化し無差別の銃撃事件が続発して計27人が死亡。6月には州都ジャヤプラで独立の是非を問う住民投票の実現を提唱していた地元指導者、マコ・タブニ氏が警官に射殺される事件が発生した。

◇運動指導者殺害に関与?
インドネシア政府は海外メディアの入域を厳しく制限しているが、旅行者を装ってジャヤプラで現地取材した豪ABCテレビが8月末、目撃者の証言などを基に、マコ氏殺害に対テロ部隊が関与したと報じた。
拷問を受けるパプア人と部隊員とされる武装警官が一緒に映る動画も入手。部隊が住民への拷問や殺害を続けていると指摘し、独立派幹部は「パプア人殺害の資金や装備を供給している豪政府も暴力の当事者」と訴えた。

豪州のカー外相は「部隊の目的はテロ対策であり、内乱鎮圧ではない」と語り、インドネシア側に真相究明を求めると発言。豪政界では「関与が明確になったら支援を打ち切るべきだ」と要求が出る事態に発展している。【9月30日 毎日】
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昨年8月のブログでも書いたように、インドネシア国軍は東チモール独立運動に対しても熾烈な弾圧を行っていいます。
インドネシアという国が多くの島々からなり、民族的にも多様であるという事情もあって、頻発する独立運動、それに対する鎮圧作戦が行われるところですが、観光地バリ島が見せるのどかなイメージ、成長が期待される経済などとは異なる、インドネシアのもうひとつの側面です。

原理主義の高まりで広がる宗教的不寛容
なお、インドネシアの抱える問題として最近指摘されることに、広がる“宗教的不寛容”の問題があります。

****インドネシア、宗派対立激化 原理主義台頭 薄れる寛容性****
2002年のバリ島爆弾テロから来月で10年となるインドネシアでは、テロの頻発に加え、多数派のイスラム教スンニ派住民による少数派住民への襲撃が相次いでいる。政府は、世界最大のイスラム教徒を抱える穏健な世俗国家で、宗教の多様性に比較的寛容なこの国に、「原理主義と不寛容」が急速に台頭していると危機感を強めている。

「事件は遺憾だ。宗教に対する寛容性における汚点だ」。ユドヨノ大統領が苦渋の表情で言及した「事件」とは、東ジャワ州マドゥラ島中部のサンパン県で8月26日、暴徒化した500人のスンニ派住民が、少数派のシーア派住民を襲撃した出来事を指す。シーア派住民の2人が死亡、数十人が重軽傷を負い、35軒の家屋が放火されたのだ。

事の発端は、シーア派の生徒数十人が、スンニ派住民に登校を妨害され、小競り合いとなったこと。だが、根は深そうだ。シーア派団体は、イスラム団体を統括するイスラム指導者会議(MUI)が1月に、シーア派を「異端」とするファトワ(宗教裁定)を出し、これがシーア派への差別を助長させ襲撃の要因になった、と非難している。
ユドヨノ大統領は、あるシーア派指導者の兄と、その弟のスンニ派指導者との「兄弟対立」に起因しているという見解を示した。

だが、標的はシーア派にとどまらない。西ジャワ州ボゴールでは7月、アハマディア派が襲われた。
インドネシアの人口(約2億4千万人)の88%を占めるイスラム教徒のうち、スンニ派は99%と圧倒的で、シーア派は100万~300万人、アハマディア派は50万人ともされる。

ある専門家は「宗教上の寛容性が低下している要因として、宗教の多様性と寛容性を脅威だとみなして拒絶し、正統性を認めない原理主義の高まりにあると指摘できる」と説明する。

一方、テロの企ては枚挙にいとまがない。ミャンマー西部ラカイン州における仏教徒とイスラム教徒との衝突事件にからみ、インドネシア国内の仏教徒を標的にテロを計画した容疑者が逮捕された。
ジャカルタの議会を狙ったテロも発覚し、中ジャワ州ソロを拠点とする若いテロリストが逮捕されている。
こうした動向は、「民主主義の進展に対する反動としての原理主義の台頭」(専門家)という側面が指摘されている。政府は、原理主義の台頭を押さえ込む包括的な対策に乗り出した。【9月13日 産経】
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こうしたイスラム原理主義・宗教的不寛容が拡大するインドネシアの首都ジャカルタで、人種的・宗教的に少数派であるプロテスタント華人のバスキ氏が副知事に就任することになったのは、やや異色の出来事ともいえます。

****華人系副知事誕生へ インドネシア首都ジャカルタ****
インドネシアの首都ジャカルタ特別州で20日、知事選の決選投票があり、民間団体の速報によると、開票の結果、新顔候補が現職を抑えて当選確実。副知事には、少数派の華人(中国系)が直接選挙制導入後、初めて就任する見通しとなった。
 
インドネシア調査機関(LSI)が午後3時(日本時間同5時)すぎに発表した集計速報によると、得票率は、新顔の中ジャワ州スラカルタ市のジョコ・ウィドド市長(51)が約54%、現職のファウジ・ボウォ知事(64)が約46%。

ジョコ氏とペアを組んだバスキ・チャハヤ・プルナマ副知事候補(46)は祖父が中国広東省から移民した華人3世。現職陣営は「華人に首都を奪われていいのか」と批判を展開した。激しい接戦が見込まれたことから、特別州警察と国軍が約1万6千人を動員し、警戒に当たった。

インドネシアでは1998年、スハルト体制崩壊時の暴動で華人経営の商店が多数焼き打ちに遭うなど、華人はしばしば攻撃や抑圧の対象になってきた。
有権者約700万人の約9割がイスラム教徒とされるジャカルタで、プロテスタントでもあるバスキ氏が支持を集めるかが注目されていた。
投票は約1万5千カ所で午前7時から午後1時まで行われた。地方総選挙委員会による結果発表は9月29日の予定。(ジャカルタ=郷富佐子) 【9月21日 朝日】
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“華人は総人口の3%程度といわれる。財閥のほとんどを占める経済力を持ちながら、1965年、共産党のクーデター計画を華人が支持したとして政治的迫害を受けて以来、政治との関わりを避ける傾向が強かった”【9月19日 朝日】とのことです。
バスキ氏は「私は華人である前にインドネシア人だ。金持ちとして2千人に寄付するより、良い政治で1千万人を救いたい」と語っています。
多様性が認められる大都市ジャカルタだからこそ可能だった、プロテスタント華人の副知事就任とも思えます。
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