孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

スリランカ 戦線は北部へ

2007-09-14 17:45:27 | 国際情勢


昨日、インドからちょっと変わったニュースが。
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インドとスリランカを隔てる遠浅の海で行われている水路建設をめぐり、ヒンズー教の保守層が浅瀬に点在する砂州は神の化身であるラーマ王の創造物「アダムの橋」だと主張し、工事に反対している。
インド政府は12日、ラーマが実在した証拠はないとの見解を表明、保守派の猛反発を買った。【9月13日 時事】
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地図左上隅がインドのタミル・ナードゥ州、楕円で囲まれた砂州が“アダムの橋”と呼ばれる地域です。
東南アジア共通文化の代表が古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」。
インド、スリランカ、タイ、インドネシアなどの国々で、絵画、彫刻、建築、演劇、映画、ドラマ、音楽、舞踏などの題材とされていますので、これら地域の旅行中必ず何らかの形で接する機会があります。

ランカ島(現在のスリランカ)に住む魔王にさらわれたシータ姫を救い出すため、英雄ラーマ王子が猿軍の王らとともにランカ島へと橋を作り、魔王を滅ぼすことに成功、シータ姫を連れて故国へ戻ってめでたく王位に就く、しかし、ラーマ王はシータ姫の貞操を疑い・・・という物語です。
そのランカ島に渡るために作った“アダムの橋”がこの地域に残る砂州だと言うわけです。


(写真は文章と何の関連もありませんが、スリランカ関連の写真を見ていて気に入ったので。お姉さんと弟でしょうか。 少しブレているのが残念。
“flickr”より By jadhu )

インド政府の“ラーマが実在した証拠はないとの見解”も部外者にはユーモラスですが、立場によっては許されざる暴言になるのでしょう。
この砂州が“アダムの橋”かどうか、ここをラーマ王が猿のハヌマン等と共に渡ってスリランカに攻め入ったかどうかは定かではありませんが、インド側のタミル・ナードゥ州に多く居住するタミル人がスリランカへも移住して多く暮していることは事実です。

スリランカで多数派を占めるシンハラ人(仏教)に対し、少数派に置かれた北部・東部に多く居住するタミル人(ヒンドゥー)は、スリランカのタミル人居住地域とインドのタミル・ナードゥ州を併合した“統一タミル人国家”を主張して運動を起こしました。

この運動の過程で、過激化したタミル人青年達で組織されたのが“タミル・イーラム解放のトラ”(LTTE)です。
LTTEとスリランカ政府の泥沼の紛争、LTTEの自爆テロ戦術・少年兵問題などは、6月24日の当ブログでも取り上げたところです。

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スリランカ国防省によると、政府軍は2日までに、北西部マンナール県にある反政府武装組織「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」支配地で住民解放を名目に、LTTEの掃討作戦を開始した。作戦に伴い、住民ら計15人が死亡した。政府軍は7月に東部一帯を制圧しLTTE部隊を駆逐。10月までに北部一帯のLTTE軍事拠点に対する壊滅作戦を始めるとの観測が流れていたが、今回の作戦はその前哨戦とみられている。【9月2日 共同】
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2002年の停戦合意が2006年7月崩壊して、戦闘が再開していました。
政府軍がトリンコマリーなど東部を押えて、これから北部(“アダムの橋”の付け根のマンナールやジャフナなど)の戦線が主になるようです。
もっとも“スリランカ海軍は10日夜、同国南東部沿岸沖で反政府武装組織「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」の武器密輸船3隻を撃沈した。”【9月11日 時事】といった記事もありますので、東部が完全に政府軍のコントロール下にあるとも言えないようです。

そんな戦闘が続くスリランカからこんなニュースも。
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ペット犬の提供呼び掛け=治安回復へ奇策―スリランカ
内戦が続くスリランカの警察当局は、治安の回復に向け、国民にペットの犬の提供を呼び掛ける広告を新聞に掲載した。
ジャーマン・シェパードやラブラドル・レトリーバー、ロットワイラー、ダルメシアン、コッカースパニエル、ドーベルマン・ピンシェルなら大歓迎という。
広告は「あなたのペットを英雄にしませんか。テロを阻止し、スリランカを変革するのに役立ててください」と訴えている。
対象となるのは、生後6カ月から2歳までの犬で、血統書付きに限られる。
提供された犬は、爆弾や地雷、麻薬の探知や、犯人逮捕の訓練を施される。警察への提供期間は最大8年で、その後は元の所有者に戻される。その際に、「退職金」が支払われるかどうかは不明。【9月13日 AFP】
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血統書付きでないとダメみたいですが、雑種の野犬は使えないのでしょうか?
お寺の境内で、暑さのなか暇そうにグッタリ寝ている犬を多く見かけたような気がします。

シンハラ人とタミル人の間の不信感、恐怖、憎悪は絶望的なほど大きなものがありますが、さりとて今後LTTEを制圧したにしても、暴力の連鎖を絶ち、テロを根絶するには長い時間をかけた“融和”しか途はありません。
相手に譲る度量、相手の立場に思いをいたす想像力、公的・私的な問題の原因を“民族の違い”にすりかえない良識などが求められると思うのですが・・・。


(北部タミル人居住区の中心都市ジャフナの孤児院。戦いの影が強くなり閉鎖されたそうです。“flickr”より By jadhu )



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