孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

リビア  ロシア・トルコの後押しで東西勢力の停戦合意 今後については不透明

2020-01-12 22:29:17 | 北アフリカ

(会談前に握手するトルコのエルドアン大統領(右)とロシアのプーチン大統領(左)=8日、イスタンブール【1月9日 共同】)

 

【ロシア・トルコの呼びかけで停戦合意】
シリアと並んで「アラブの春」の失敗例とされるのがリビア。

久しく東西勢力の内戦状態が続いていましたが、(東部ハフタル将軍支持の)ロシア・プーチン大統領と(西部・暫定政権支持の)トルコ・エルドアン大統領の呼びかけによって「停戦」が実施されることになりました。

****リビア 東部軍事組織が停戦受け入れ表明 和平の動き進むか焦点 ****
国が東西に分裂して戦闘が続く北アフリカのリビアで、首都の攻略を目指している東部の軍事組織が12日からロシアとトルコの停戦の呼びかけに応じることを明らかにし、各国が介入して西部の暫定政府との間でエスカレートする戦闘が収まるのかが焦点です。

リビアでは、9年前、民主化運動「アラブの春」で独裁的なカダフィ政権が崩壊したあと、国が東西に分裂し、去年4月から東部の軍事組織が、国連などが認める西部の暫定政府がある首都トリポリの攻略を目指して軍を進め、戦闘が続いています。

こうした中、軍事組織を支持するロシアと暫定政府側に立つトルコが12日からの停戦を呼びかけ、ハフタル氏が率いる軍事組織は、11日夜、停戦に応じることを明らかにしました。

暫定政府を率いるシラージュ首相もハフタル氏側が戦闘をやめるなら停戦に応じる立場を示していることから、各国が介入してエスカレートする戦闘が収まるのかが焦点となります。

また、ドイツの仲介で、リビアの和平に向けた関係国による国際会議の開催が調整されていて、今回の停戦が守られ、リビアの和平の動きが進むことが期待されています。【1月12日 NHK】
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【LNAの首都進攻作戦の停滞】
リビアは2011年の民主化運動「アラブの春」でカダフィ長期独裁政権の崩壊後、内戦が続き東西に分裂しています。

国連が主導し、西部トリポリに拠点を置くイスラム色が強いシラージュ暫定政府をトルコやカタールなどが後押ししています。

一方、東部の(カダフィ政権でも軍事参謀長の地位にありましたが、その後カダフィ大佐と離反した)ハフタル将軍が率いる「リビア国民軍」(LNA)をロシアやサウジアラビア、エジプトなどが支援しており、双方は激しく戦闘を続けてきました。

EU内でも、イタリアは暫定政府を、フランスはハフタル将軍を支持していると言われています。このあたりはリビアにおける利権をめぐる争いとも見られています。

様相に変化が見られたのは昨年4月。東部のハフタル将軍率いるLNAが首都トリポリへの進軍を発表、武力によるリビア統一を目指すことに。

しかし、首都進攻作戦は暫定政府側の激しい抵抗にあって、思うように進みませんでした。
そもそも、政治的にはハフタル将軍にとって“悪くない”流れにあった昨年4月、なぜ敢えて軍事作戦に踏み出したのか・・・という疑問もありました。

****リビア民兵組織将軍の、裏目に出たトリポリ進軍作戦*****
<内戦の雄として政治力も兼ね備えたハフタル将軍が、首都陥落という勲章欲しさに勇み足を踏んだ>

東西両政府の分断が続くリビア内戦に新展開があった。東部を支配する民兵組織「リビア国民軍(LNA)」のハリファ・ハフタル将軍が、西部の「国民合意政府」が支配する首都トリポリを武力制圧すると宣言したのは4月4日のこと。早くも複数回の空爆を行い、住民2000人以上が市外へ脱出している。

なぜハフタルはこの時期に軍事攻勢を選んだのか。彼の率いるLNAは国内最強の武装勢力だが、最近のハフタルは政治力も付けていて、戦わずして権力を握る道もあったはずだ。4月14〜16日に予定されていた国民会議(国連主導で内戦終結と大統領選挙に向けた枠組みを決める会議)では、最強の政治指導者と認知される可能性が高かった。なのに彼は首都への進軍を決めた。

およそ合理的な戦略とは言えない。ハフタルは強さを誇示したい幻想に酔っている。だから選挙や交渉ではなく、戦闘なり策略なりで国家指導者の座を得たいと思っている。(中略)

17年のベンガジ解放宣言以降、LNAは犠牲者を極力出さないよう、少しずつ支配地域を広げてきた。この3年に東部で「石油の三日月地帯」の油田や石油ターミナルを占拠。現地でカネをばらまいて既成事実を積み上げる手法を取り、抗争の泥沼化を避けてきた。

16年9月の三日月地帯に続いて、今年2月には南西部のシャララ油田も制圧したが、どちらも派手な戦闘はなく犠牲者も少なかった。

以前からトリポリ制圧を口にしてはいたが、実際に兵を動かすことはなかった。そして順調に支配地域を広げるにつれ、彼は欧米の政府や国際会議に招待されるようになった。

油田地帯をほぼ掌握した時点で、国際社会からもリビアの真の実力者、まともな交渉相手と認められる一歩手前まで来ていた。

交渉失敗なら火の海に
つまり、過去1年間の戦略は功を奏していた。それでも彼は、トリポリを掌握して政治的・軍事的支配者の地位を確立するという夢を捨てられなかった。この誇大妄想のせいで、彼はせっかく手にした地位を失うような行動に出てしまった。

するとフランスやイタリア、イギリス、アメリカ、そしてUAEが共同声明を発表し、事態の即時沈静化を求めるとともに、国際社会は国連主導の国民会議による和平プロセスを支持すると明言した。この時点で、彼の作戦は裏目に出たといえる。(後略)【2019年5月4日号 Newsweek】
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【LNA,ロシアの支援でシルト奪還 トルコは暫定政府支援で派兵 激化する代理戦争の様相】
ハフタル将軍の首都進攻作戦は軍事的には停滞していましたが、ここにきてようやく「成果」も。

*****リビア民兵組織、北部都市を奪還 トルコ派兵開始で緊張高まる****
リビアの元国軍将校で実力者のハリファ・ハフタル氏率いる民兵組織「リビア国民軍」(LNA)は6日、北部沿岸の都市シルトを奪還した。
 
首都トリポリから約450キロ離れたシルトは2016年以降、国連が正統性を認めているリビアの国民合意政府(GNA)に掌握されていた。
 
しかしLNAの報道官は6日、数時間の戦闘の末にLNAの戦闘員らがシルトを掌握したと発表した。
 
GNAはこの件を認める発表をまだしていないが、同市内のGNA系の軍司令官は匿名を条件に、シルトが奪取されたことを認めた。(後略)【1月7日 AFP】
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LNAがシルト奪還という成果をあげられるように“急に強くなった”背景には、ロシアの傭兵の活躍があるとも伝えられているようです。【1月11日 「中東の窓」より】

一方、暫定政府側を支援してきたトルコはリビアに派兵することで、更に暫定政府支援を強化することに。

エルドアン大統領のこの決定には、単に軍事的に劣勢に立つ暫定政府支援だけでなく、その見返りとしてキプロス・イスラエル沖の天然ガス開発において、“締め出されていた”トルコに有利な排他的経済水域(EEZ)をリビア暫定政府との間で合意することでトルコの権利主張を可能にすることにあったとされています。

また、産油国であるリビアへの影響力を強め、将来のエネルギー確保につなげる狙いもあるとの指摘もあります。【1月7日 産経より】

****トルコ、リビアに派兵へ 地中海の天然ガス田巡る思惑も****
トルコのエルドアン大統領は(2019年12月)26日、混乱が続く北アフリカのリビアに派兵する方針を明らかにした。リビア西部の首都トリポリを押さえる暫定政府と交わした軍事協力の覚書を根拠にするとみられる。

ただ、東部ベンガジを拠点とする武装組織はエジプトなどの支援を受けており、情勢がさらに複雑化することになる。
 
エルドアン氏は26日、首都アンカラで演説し、「(暫定政府から)派兵の要請があったので受け入れる」と話した。1月8日か9日に国会承認を経て、派兵する見通しを示した。
 
トルコは先月、暫定政府と軍事協力の覚書に合意。暫定政府の部隊に訓練や武器を提供するほか、共同軍事計画に関して助言したり、人員を派遣したりすることなども定めている。
 
今回の派兵には、トルコが参入を狙う東地中海の天然ガス田開発も関係する。トルコは、産出したガスをパイプラインで欧州に送ろうとする沿岸国の計画から排除されてきた。

そこで、東地中海の対岸にあるリビアの排他的経済水域(EEZ)と自国のEEZを合わせてパイプラインの敷設予定ルートをふさぐことを狙い、リビア暫定政府の協力を取り付けるために派兵を決めたとみられる。
 
リビアは2011年の「アラブの春」でカダフィ独裁政権が崩壊後、国家が分裂して内乱状態が続く。背景にあるのはイスラム組織「ムスリム同胞団」をめぐる中東主要国の対立だ。
 
同胞団を敵視するエジプトやアラブ首長国連邦はベンガジを拠点とする武装組織「リビア国民軍(LNA)」を支援。一方、同胞団に融和的なトルコやカタールがトリポリの暫定政府を支えてきた。

リビア国民軍は今年4月、暫定政府に加わる同胞団のシンパや、過激派を排除するため、トリポリに向け進軍していた。今後、トルコが実際に派兵すれば、混乱に拍車がかかるのは必至だ。【2019年12月27日 朝日】
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いずれにしても、ロシア・エジプトの支援で軍事攻勢を強めるハフタル将軍・LNA、これに対抗する形で暫定政府支援の派兵を行うトルコ・・・ということで、いよいよ“代理戦争”が激化することが懸念されていました。

【シリアと同じ構図 停戦合意が機能するのか?】
こうした状況の打開を目指したのが、ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領の会談でした。

****ロシアとトルコ首脳、リビア停戦を要求 和平の仲介役へ****
内戦状態が続く北アフリカのリビア情勢を巡り、ロシアのプーチン大統領は8日、トルコのエルドアン大統領と会談し、戦闘を続けるリビアの暫定政府と「リビア民主軍」(LNA)の双方に対し、12日午前0時で停戦するよう求める共同声明を発表した。対立する両勢力に影響力を持つロシアとトルコが仲介を主導し、和平を目指す考えだ。
 
リビアでは、西部トリポリを拠点とする暫定政府と、東部が拠点のLNAの間で戦闘が激化。暫定政府を支援するトルコが5日、リビアへの派兵を開始したと明らかにし、緊張が高まっていた。ロシアはLNAを支援しているとされ、プーチン氏の出方が注目されていた。
 
ただ、暫定政府とLNAはこれまでの停戦でも長続きしておらず、両勢力がトルコとロシアの求めに応じて停戦に合意し、維持できるかは見通せない状況だ。
 
共同声明では、反体制派の最後の拠点イドリブ県に向けアサド政権が攻勢を強めるシリア情勢を巡っても、ロシアとトルコで連携して解決を目指す姿勢を強調し、中東で米国の影響力が弱まる中、地域の安定に向け向け共同で取り組む姿勢を打ち出した。【1月9日 朝日】
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「リビア民主軍」(LNA)側は停戦合意を拒否することを表明していましたが、傭兵派遣などで後ろ盾となっているロシアの圧力には抗しきれなかったようで、冒頭記事の「停戦合意」という話になっています。

問題は、この停戦が機能するのか、いつまで続くのか?という点ですが、似たようなロシア・トルコの合意で停戦が成立したはずのシリアで、今イドリブに対する政府軍・ロシアの激しい攻撃が行われているように、リビアにおいても同様の展開になる可能性も多々あります。

特に、もともと「リビア民主軍」(LNA)側は停戦合意に否定的だったこと、昨年4月に政治的妥協ではなく軍事的勝利にこだわる形で首都進攻を始めたハフタル将軍の性格などからすれば、停戦がいつ破綻してもおかしくないとも言えます。

ただ、ロシアの後押しなしでは首都攻略も難しいというところで・・・どうでしょうか?

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