孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国・新疆ウイグル自治区の「施設」で何が行われているのか?

2019-05-26 22:11:05 | 中国

(職業技能教育訓練センターで調理の実習に取り組む入所者=4月18日、新疆ウイグル自治区ホータン地区、冨名腰隆撮影 【5月19日 朝日】

【施設入所者は「自ら望んで来た」とは言うものの、断れば「裁かれて終わり」】

新疆ウイグル自治区における、中国政府によるイスラム系ウイグル族等に対する弾圧・文化宗教改造を目的とした思想教育(もしくは、中国政府の言うところの「職業訓練」)については、同地域における思想教育を伴う「強制労働」に近い生産活動が、(欧米大企業はそのことを知ってか知らずか)欧米諸国の消費者が手にする商品のサプライチェーンに組み込まれている・・・という問題を、518日ブログ“欧米大企業のサプライチェーンに組み込まれた新疆ウイグル族の思想教育的(強制)労働”でも取り上げました。

 

新疆では100万人を超す住民が強制収容所(もしくは中国政府の言うところの再教育訓練施設)に入れられていると言われていますが、一体何が行われているのか?

 

それらの施設をめぐっては、虐待や拷問など深刻な人権侵害が行われているとの疑いを国際人権団体や米国政府などが指摘しています。

 

そのような指摘が事実かどうか、まずは、中国政府が「実際の姿」として“見せたがっているもの”がどういうものかを見る必要があります。下記は、中国当局が外国メディアに公開している「再教育施設」の状況です。

 

****「望んで来た」口そろえる入所者 新疆ウイグル自治区「再教育施設」ルポ****

(新疆の)カシュガルを訪れた翌日、政府担当者の案内で、タクラマカン砂漠に接する新疆ウイグル自治区南部のホータン地区に入った。

 

人口約250万人のうちウイグル族が97%を占める同地区は、中国からの独立を目指す勢力の動きも活発とされ、過去に大規模なテロも相次いだ。厳しい規制が敷かれ、外国メディアが取材するのがとりわけ難しい地域だ。

 

防砂用のポプラが両側にそびえ立つ直線道路を1時間ほど走り、「墨玉県職業技能教育訓練センター」に着いた。2017年5月に造られたという施設は、まだ真新しい。

 

職業訓練棟の調理室では、コック帽に白衣姿の約40人が、小さな石の入った中華鍋を無表情に振り続けていた。ガラン、ガランと音が響く。部屋の壁には「手に職あれば、生涯憂いなし」との標語が中国語とウイグル語で掲げてあった。約800人の入所者は、調理やあんまなど15のコースから選ぶという。

 

カシュガルの施設と同じく、入所者は宿舎内での携帯電話の使用や週1回の帰宅が許されているという。

 

 ■「軽い罪犯して」

彼らはどうやって、このセンターに来たのか。

 

ブアイシャム・アムリズ学長(34)は「みんな軽い罪を犯した者だが、警察とセンターが協議し、さらに地元政府の推薦を得て自ら申請した者がここに来る」と説明した。

 

行政の判断で刑事手続きを経ずに施設に送る仕組みは、長年、人権保護の観点から中国が内外の批判を浴び、13年に廃止が決まった「労働教養施設」と似通う。誰がどんな基準で入所期間を決めるのか、明確な規定がないのも似ている。

 

学長の説明の真偽を確かめたいと、パソコン実習室で学んでいた男性(31)に声をかけた。

入所7カ月。施設から10キロほど離れた村に妻と3人の子を残して来たという。

 

「イスラム教の教義を守るべきだと感じて子供を学校に通わせなくなり、(戒律に反して)酒を売る店の店主を殴った。村の幹部に『無料の施設でやり直せる』と言われ、申請した」

 

さらに7人の入所者に聞いたが、全員が「望んで来た」と答えた。

 

 ■「思想を改めた」

いずれも言葉遣いや話し方が似通っている分、模範的な回答を暗記させているのではという疑念もわいた。

学長にただすと、「話が似ているとすれば、それは彼らが思想を改めたからだ」と、色をなして反論した。

 

 ■中国側、過激思想の防止強調

人権団体や米国などが深刻な人権侵害の疑いを告発するまで、中国政府はこうした訓練センターの存在を対外的に明らかにはしてこなかった。国際的な関心と批判が高まるなか、昨年、公的施設と位置づけるための法整備をした。

 

過激思想の広がりを防ぐための教育施設だとする中国側と、民族的な抑圧が行われる強制収容施設だとする人権団体や米国との主張は真っ向から対立する。

 

背景にあるのは、根深さを増す共産党政権とウイグル族の対立だ。

共産党政権は長らく、発展の恩恵を行き渡らせることで民族対立を解消しようと政策を展開してきた。

 

だが、09年、広東省ウイグル族への偏見に根ざす乱闘事件が起き、それが新疆に飛び火して大規模な民族衝突に発展したころから、双方の不信と憎悪は深まった。

 

当局がウイグル族の集まりや宗教的習俗への抑圧を強めるのに比例するように、刃物や火器で武装したグループが警察署などを襲う事件が増加。手口も過激化し、13年には天安門に車ごと突入する事件、14年には雲南省で通行人を無差別に襲撃する事件が起きた。

 

当局は「分裂主義勢力」の犯行とみなし、海外のイスラム過激派組織とのつながりも強調。政権は、こうした動きを放置すれば、国家を揺るがす深刻な脅威になるとの危機感を隠さなくなった。

 

新疆での反テロ政策に関する政府の白書によると、14年以降、民族扇動や国家分裂などの疑いで摘発したグループは1588、拘束者は1万3千人。違法な宗教活動を行ったとして4858件、3万人以上を調査・処分した。街じゅうに監視カメラを設置したり家庭用の包丁を鎖で固定したりする管理政策も進んだ。

 

共産党政権はイスラム教を含む宗教自体を否定していない。しかし、前提はそれが社会の安定や国家の統一に役立つことだ。宗教が分裂活動や反政権的な動きの温床になっているとみなせば、容赦なく抑え込む。新疆やチベットで起きているのは、そうした現実だ。

 

習近平(シーチンピン)国家主席は16年、15年ぶりに開いた全国宗教工作会議で、「宗教管理は党と国家にとって特殊な重要性を持つ。法治によって社会主義に適応させよ」と指示した。

 

 ■在外ウイグル族「宗教理由に弾圧」

中国政府の迫害を恐れ、帰国をためらう在外ウイグル族の話からは、「携帯電話は使える」「自ら望んで来た」などとした施設側や入所者の説明とは異なる状況も浮かび上がる。

 

新疆の区都ウルムチ出身の元工場経営者トゥルグ・メフメティさん(51)は17年3月、産児制限のある中国で妻が5人目の子を妊娠したころから当局の圧力を感じ、妻を連れて親族のいるトルコに渡った。

 

当初は生まれた子を親族に預けて戻るつもりだったが、出国から半年の間に、新疆に住む母親から、兄と妹が相次いで中国当局に拘束され、妹は連行後に死亡したと聞かされた。

 

さらに、母親が携帯電話で中国に残るメフメティさんの子4人の写真をトルコに送ったことを罪に問われて刑務所に送られたと、義姉から知らされた。4人の子も施設に入れられたという。現在は義姉とも連絡が取れなくなり、知人経由で義姉が「再教育施設」にいると伝えられたという。

 

メフメティさんは「中国に戻れば、自分も拘束される可能性が高い」と恐れ、妻と生まれた子とトルコにとどまっている。新疆の他の知人らへの電話もつながらなくなり、中国のSNS「微信(ウィーチャット)」のアカウントは使用できなくなったという。

 

「私の家族が特別ではなく、イグル族が自らの文化や宗教を捨てないことを理由に政府の弾圧が続いている」と憤る。

 

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは昨年の報告書で、中国外に住むウイグル族らの証言をもとに、新疆を訪れた親族が中国当局に拘束されたり、旅券を没収されたりしたと指摘。新疆のウイグル族らも、当局から国外の親族と連絡を取らぬよう命じられ、連絡が取れない状態が続いているとしている。【519日 朝日】

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中国側監視のもとで「望んで来た」と答える入所者の言葉をそのまま信じることが難しいのは言うまでもないところです。

 

****中国、新疆に謎の訓練所 入所断れば「裁かれて終わり」****

(中略) 男性のセンターでの生活は9カ月目に入ったという。告白は続いた。

 

「友人や家族にも『国家に従うな』と強要した。過激思想に染まっている自分には気づかなかった」

センターへ行くよう男性に促したのは、地元の共産党幹部だった。「本来、刑を受けなければならないが、施設に入れば免除される」。そう諭され、入所の申請書類にサインしたのだという。

 

「強制された」のかと問うと、男性はつぶやくように「自発的に来た」と答えた。そのやり取りを、そばに立つ地元政府関係者が見続けていた。

 

「過激思想を取り除き、仕事を見つけるための最高の環境を提供している」

そう言って胸を張るママト・アリ学長(45)に、「入所を拒否することは可能か。断るとどうなるのか」と詰め寄ると、学長はしばらく黙り込んでこう言った。

 

「そんな人はいない。いたとしても、裁かれて終わりだ」【520日 朝日】

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随分正直な学長です。断れば裁かれて終わりなるというのは、「自発的に来た」という建前とは相いれません。

 

【解放された妻は「別人」に 解放後も恐れる中国当局の目】

国際的批判の高まりを受けて、中国当局は“解放”も進めているようです。

 

****豚肉を食べて酒を飲む「別人」に、解放されたウイグル人妻たち 中国****

2017年、パキスタン人と結婚したウイグル人女性たちが、中国政府によるイスラム過激派排除の捜査網にとらわれ、その姿を消した。

 

これらの女性たちが最近になって解放されはじめている。しかしパキスタン人の夫らは、その解放には大きな代償が伴ったと話す。戻ってきた妻たちが「中国社会への適応」の証明を強要されており、宗教的戒律をも犠牲にしているというのだ。

 

中国には「職業教育センター」と称する強制収容所がある。ここには100万人近くの収容者がいるとみられているが、新疆ウイグル自治区出身のウイグル人妻約40人もその一部だった。

 

夫たちによると、強制収容所で妻たちはイスラム教で禁止されている行為「ハラーム」を強要され、それは解放された今でも同じように続いているという。

 

最近、妻に会うため新疆にある妻の実家を訪ねたというあるパキスタン人の男性は、匿名を条件にAFPの取材に応じ「妻は豚肉を食べたり酒を飲んだりしなければならず、今でもそれを強要されていると話していた」と述べた。

 

また「当局者から、連れ戻されたくなければ、過激思想を捨てたことを証明する必要があると言われたようだ」と説明し、実家に戻った妻は礼拝をやめ、コーランの代わりに中国関連の本を読んでいると続けた。(中略)

 

強制収容所はウイグル人を含むイスラム教徒弾圧の一環で設置されたが、国際社会から激しい批判を受けたことや中国とパキスタンの経済的結びつきが深まっていることを踏まえ、政府は2か月前から徐々に女性たちを解放している。(中略)

 

■試される「中国社会への適応」

AFPが取材したウイグル人妻の夫9人は、解放された妻たちは3か月間、新疆を離れることができず、その間厳しく監視されることになると語った。

 

ある宝石商の男性は「妻が中国社会に適応しているか確かめるための監視だろう。適応していないと判断されれば、戻されてしまう」と述べた。(中略)

 

解放された妻たちについては、被害妄想に陥ったり、通報を恐れたりしていると、多くの家族が指摘している。

前述の宝石商の男性は「最悪なのは、妻が何も話さないことだ」「両親や家族、私のことさえ疑っている」と語った。

 

また、匿名を条件にAFPの取材に応じた別の夫ら7人も、妻との連絡はまだ電話のみだが、同じような状況にあると証言している。

 

■パキスタンへの多額投資の影響も

(中略)中国は近年、パキスタンとの関係を強化しており、中国・パキスタン経済回廊の下、インフラ事業に多額の資金を投じている。

 

一方パキスタンは、新疆でのイスラム教徒弾圧に対する国際的批判に表向きは同調している。同国のイムラン・カーン首相はこの問題について、英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで「率直に言って、それについてはよく分からない」と述べた。

 

パキスタン人の夫にとって、妻は今も行方不明も同然だ。愛する妻や母親の解放を最初は喜んだものの、帰って来た女性たちが別人のようになっているのを見てその喜びが消えたと話す男性もいる。

 

宝石商の男性は、「妻はまったく別人になってしまったので、私たちの結婚はもう長く続かないのではないかと心配している」と語った。 【526日 AFP

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解放された妻の夫の言葉ではなく、妻自身の言葉が聞きたいところですが、もともと女性が表に出る習慣のないことに加え、中国当局の目に“おびえている”現状では、それはかなわないのでしょう。

 

【異民族間の結婚を奨励するなどで同化を進める】

上記のような施設での思想教育(もしくは職業訓練)のほか、中国政府はウイグル族と漢民族の結婚を奨励するような施策で、“同化”を進めているとも。

 

****新疆で父母どちらか漢民族の学生有利に 中国、異なる民族間結婚を奨励か*****

****

情勢が不安定な中国北西部の新疆ウイグル自治区で最近、大学入試に関する規定が変更され、父母のどちらかが漢民族の学生に対する得点の上乗せ幅が大幅に引き上げられた。専門家らは主にイスラム教徒の少数民族の文化を排除しようとする当局の新たな取り組みとみている。

 

暴力事件が相次いで発生した2014年以降、中国当局は新疆ウイグル自治区での取り締まりを強化。長いひげやスカーフ着用を禁止し、100万人に及ぶイスラム教徒の少数民族を収容施設で拘束するなど、過酷な措置を強要している。

 

中国当局者は施設について、チュルク語を話す人々が中国語と仕事のスキルを学べる「職業訓練施設」で、宗教的過激思想に染まらないようにするのが狙いと説明。しかし人権団体などは、施設はウイグル人ら少数民族の文化や宗教的信念を、中国で大多数を占める漢民族の社会に強制的に同化させるのが目的と指摘している。

 

専門家らは、新疆ウイグル自治区での大学入試規定の変更がこの方向に沿った動きだとみている。2015年の統計によると同自治区の人口2300万人のうち、およそ半数をウイグル人が占めている。

 

同自治区当局は不利な立場にある学生に全国の大学入試で得点を上乗せする既存の規定を変更。父か母が漢民族の学生に対する上乗せ幅を20点と昨年から2倍に引き上げた一方、両親が少数民族の学生に対する上乗せ幅を15点と昨年に比べ半分以下に引き下げた。

 

豪ラ・トローブ大学で中国の民族関係・政策に詳しいジェームズ・レイボールド教授はAFPの取材に対し、「新たな大学入試規定は漢民族と異なる思想や行動様式についていかなるものでもすべて漢民族化させる取り組みの一環」と説明。同教授によれば政府は「異なる民族間の結婚が、国家の統合促進とウイグル人ら少数民族の同化を促すのに重要な手段」と考えているという。 【翻訳編集】AFPBB News

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「収容所」にしろ「異なる民族間の結婚」にしろ、2300万人の民族の文化・宗教の改造を現実にやってしまうところが、中国という国のおそろしいところです。

 

中国政府のそのような圧力は、新疆のウイグル族等だけでなく、人権派弁護士、あるいは左派学生など、共産党の

指導する体制に異を唱える人々にも向けられています。

 


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