孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ベトナム  英密航の悲劇 どうして密航までして・・・ ベトナム人にとって日本の労働市場は?

2019-11-02 22:51:49 | 東南アジア

(英密航で亡くなったファム・ティ・チャー・ミーさんがフェイスブックで公開していた、日本での着物姿の写真【11月2日 朝日】)

 

【密航の悲劇「息ができない。お父さんお母さんごめんなさい」 なぜ英国を目指したのか?】

10月23日、ベルギーからフェリーでイギリスに到着したトラックの冷蔵コンテナから女性8人と男性31人の計39人の遺体が発見された事件では、遺体は当初中国人と報じられていましたが、その後の調査で全員がベトナム人であることがわかりました。

 

この悲劇の痛ましさを一段と増したのは、犠牲者の一人の女性が死ぬ直前、母親に送った「息ができない。お父さんお母さんごめんなさい」というメッセージでした。

 

このベトナム人女性は技能実習生として3年間、日本でも働いていたようです。

 

*****「息できない」絶えた通信 彼女はコンテナで見つかった****

英ロンドン近郊で10月23日、トラックの貨物コンテナから39人の遺体が見つかった。英国への密入国に失敗した人たちとみられ、その多くがベトナムで最も貧しいと言われる北中部2省の出身者である可能性が高まっている。密航をしてまで、なぜ英国を目指したのか。若者たちの地元を訪ねてみた。

 

首都ハノイから南へ330キロのハティン省カンロック。小さな家の祭壇に、行方がわからなくなっているファム・ティ・チャー・ミーさん(26)の遺影が置かれていた。

 

「息ができない。お父さんお母さんごめんなさい」

英国へ向かうはずだった10月21日、こんなメッセージを通信アプリで母親へ送信してきたのを最後に、チャー・ミーさんからの音信は途絶えた。移民を隠して密入国させるコンテナの中にいたとみられ、家族の毛髪や爪のDNAを使った身元確認が進んでいる。

 

両親によると、チャー・ミーさんは技能実習生として3年間、日本の弁当工場で働き、今年6月に帰国したばかりだった。本人のフェイスブックには富士山や桜、着物姿の写真も投稿されていた。

 

運転手をしている兄弟が交通事故に遭って払えなくなった車の購入費用の残金3億5千万ドン(約162万円)や、家族の生活費をまかなうため、英国でネイリストとして働こうとしたという。

 

当初の予定は、ベトナムから中国経由でフランスに入るというもの。その費用として仲介業者が提示したのは2万2千ドル(約239万円)で、家族が親戚の不動産を抵当に銀行から借金をして賄った。父親は「コンテナに乗ると知っていたら行かせなかった」。仲介業者には一度も会ったことはなかった。

 

なぜベトナムの若者たちは英国に向かったのか。信者がコンテナにいたとみられる神父は「違法な大麻栽培ビジネス」を理由として挙げました。

 

カンロックから北へ約80キロ離れたゲアン省ジエンチャウ出身のグエン・バン・フンさん(33)も、同じコンテナにいたと見られている。

 

「弟は大学の音楽科まで出た高学歴なのに、ベトナムでは月収700万ドン(約3万2千円)しか手に入らない。もっといい暮らしを望んだ。それには海外に行くしかない」

 

兄のハイさん(35)は、保険会社で働いていた弟が1年前に国を出た理由をそう明かした。英国入りに成功したら、3億ドン(約138万円)を家族が仲介業者に払うことになっていた。

 

海外に行けばなんとかなるという考えは、地域の人の間に広がっている。「出稼ぎ村」と呼ばれるゲアン省ドータインには、韓国や日本、欧州で稼いだお金で建てられたという邸宅が並ぶ。コンテナで亡くなった犠牲者のうち、25人がこの村の出身者だと報じられている。

 

その1人、グエン・ディン・トゥさん(26)は妻と2人の子どものために2018年に家を新築した。約500万円の借金が残り、出稼ぎを決めた。

 

家族によると、腕にタトゥーを入れているので日本や韓国には行けないと思い、今年3月にルーマニアの渡航許可を得た。だが、現地で得たのは、1日8時間も寒い職場で冷凍食品を扱う月収500ドル(約5万4千円)の仕事。続かなかった。

 

2カ月後、ベトナム人の友人に誘われドイツへ。食堂で働いたが、月1千ユーロ(約12万円)の収入は高い生活費に消えた。その後、英国を目指したようだ。

 

父親のサットさん(70)は、コンテナに隠れて英国への密入国に成功したという地元住民から「トレーラーに入ると、携帯電話もお金も身分証明書類も取り上げられ、到着後に返される」と聞いた。こうした方法が横行していたようだ。「息子には危険という意識がなかったのかもしれない」

 

6~7%台の経済成長を続けるベトナムの平均年収はおよそ2600ドル(約28万2千円)。一方、ゲアン省の平均は半分の約1240ドル(約13万5千円)だ。豊かな中流層が増える一方で、特に農業中心の北中部は都市部と比べて企業の進出や雇用の機会も少ない。

 

信者の1人がコンテナにいたとみられるハティン省の教会の神父、グエン・スアン・ホアさん(60)は若者が英国を目指す理由について「大きな理由は欲だ。英国でベトナム人が大金を稼げるのは、違法な大麻栽培ビジネスだと言われる。月収20万円程度の日本や韓国より楽に稼げると思い込む人もいる」と話した。農村に両親を残し、借金の利息も稼がなければと違法な仕事に向かっていく実情があるという。

 

「いい学校を出ても仕事はなく報われない。こうした地域への投資を増やし、政府が農村部の不公平感をなくす努力をしなければ、密入国はなくせない」【11月2日 朝日】

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“英国でベトナム人が大金を稼げるのは、違法な大麻栽培ビジネスだと言われる”ということに関しては、以下のようにも。結局、イギリスなど外国に入国しても、大麻など違法ビジネスにかかわらないと、密入国費用を取り戻すほどに稼ぐことも難しいようです。

 

****命がけで欧州に渡るベトナム移民、大麻の違法栽培に従事も 英****

ベトナム人のクオン・グエンさんは、英国で大麻の違法栽培に長年にわたって従事していた。クオンさんのように、英国の数十億ドル規模の違法大麻産業に従事するベトナム移民は数千人いるとされる。

 

しかし、より良い生活を求めて欧州を目指す不法移民は極度の危険にさらされる。(中略)

 

取材でクオンさんは、トラックの底に隠れて英国に潜り込み、民家やホテル、馬小屋などで大麻栽培を行っていたことを明らかにした。

 

大麻の違法栽培に従事したのは、すべて大きな夢のためだったとしながら、「とにかく稼ぎたかった…合法、違法にかかわらず」と当時の心境にも触れた。

 

専門家らによると、英国の大麻市場の背後にはベトナムの犯罪組織が存在しているとされ、その取引規模は年間26億ポンド(約3600億円)にも上るとされる。

 

またクオンさんは自らの意思で英国に行ったと話すが、だまされて人身売買の犠牲となり、このような犯罪組織に捕らわれてしまっている人も大勢いる。

 

■危険な旅

(中略)いわゆる小悪党でドラッグ常習者だったクオンさんは、29歳の時に英国に行くことを決めた。大麻取引で稼げると考えたのだ。仲介業者に1万5000ドル(約160万円)を支払い偽の旅券を手に入れ、欧州へのツアー旅行に紛れ込んだ。

 

フランスでツアーから抜け出し、カレーに行った。そこでベトナム人の密入国を仲介する業者が海峡を越えて英国まで行く手配をした――トラックの底に隠れるという方法だった。「落ちたらもちろん死ぬ」とクオンさんは言い、他の3人のベトナム人移民と共に1晩かけて英ドーバーに向かったと話した。

 

初めての国で、英語も話せなかったため、クオンさんにできることは限られていた。再び仲介業者に助けを求め、イングランド・ブリストル郊外の住宅に設けられた大麻栽培工場で働くことが決まった。

 

半年後、栽培工場があった地域に警察の手が伸びた。クオンさんは持てるだけの大麻草を持って急いで逃げた。

 

そして今度は、ブリストル近郊のホテルにあった大麻栽培工場で再び働き始めた。ここでは1万9000ドル(約200万円)近く稼いだという。これは、ベトナムでの給料と比べれば一財産だ。

 

ベトナム移民の大半は、貧しい中部出身だ。多くは英国を目指し、稼いだお金は国に仕送りをしている。仕送りは新しい車やオートバイ、家を建て直すために使われる。

 

■人身売買の被害

だが、英国までの旅費は安くない。

 

密入国業者は、旅行のための書類や航空券代として4万ドル(約440万円)の支払いを要求する。通常は東欧諸国まで飛行機で向かい、そこから陸路で英国を目指す。

 

なかには人身売買業者の犠牲となり、イギリス海峡を渡るころには負債が多額に膨れ上がり、売春宿やネイルサロン、大麻畑などで働かざるを得ない人もいる。

 

英全国警察本部長評議会によると、国内の大麻関連犯罪の約12%は東南アジア出身者によるもので、他の欧州域外出身者を上回っている。

 

また、国際反奴隷協会、NGOエクパット英国支部、パシフィック・リンクス・ファンデーションの報告書によると、2009年から18年に英国政府によって人身売買の被害者の可能性があるとされたベトナム人は大人と子ども合わせて3100人以上に上るという。

 

クオンさんは最終的にロンドンに行き、ドラッグを売ったり、大麻栽培で新人教育をしたりして数年間を過ごした。そして、2013年に大麻吸引の疑いで逮捕された。

 

刑事法院の記録によると、クオンさんは大麻栽培の罪で有罪とされ、禁錮10月を言い渡されている。クオンさんは最終的に内務省から国外追放とされた。

 

内務省のデータによると、2014年以降、自らの意思または強制的に帰国したベトナム人は1600人以上に上っており、うち少なくとも22人が14歳未満だった。 【10月30日 AFP】AFPBB News

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【日本で急増するベトナム人労働者 しかし、その実情は・・・】

「そんな危ない密入国や違法ビジネス就労なんかしなくても、日本などで安全に働けば・・・」とも思うのですが、日本での就労もいろんな問題を抱えていることは周知のところです。

 

“在留外国人は就労、留学など中長期在留者と在日韓国・朝鮮人ら特別永住者の合計で、増加は6年連続。国別では最多の中国が76万4720人と全体の3割近くを占め、韓国(44万9634人)、ベトナム(33万835人)、フィリピン(27万1289人)、ブラジル(20万1865人)と続いた。ベトナムの増加率(26.1%)は上位10カ国・地域で唯一2割を超えた。”【3月22日 時事】

 

近年、在留外国人の増加がいろんな形で話題になりますが、その増加をもたらしている最大の要因が、技能実習・留学生拡大の流れを背景にしたベトナム人の急増です。

 

結果、滞在中にいろんな原因で死亡するベトナム人も増加し、“増える在日ベトナム人の位牌 東京・日新窟に供養塔が完成”【7月1日 毎日】ということにも。

 

もっとも、ベトナムおいて日本が「働きたい国」として人気が上昇している・・・という訳ではなく、増加は日本側の受入れ拡大によるもので、日本の場合、現地の送り出し機関への多額の手数料などコストが高いことから、他の韓国などを希望する傾向もあるようです。

 

****10代ベトナム人「働きたい国」日本ではなく韓国のワケ****

ベトナム人技能実習生は、現地の送り出し機関に多額の手数料を払う形で、日本側の機関や団体の接待や裏金までも負担している。

 

ゆえに、他国に比べて日本で働くことは、お金がかかり過ぎるのが現状だ。そんな中、若年層のベトナム人たちは韓国への関心を高めているという。一体なぜなのか。ジャーナリスト・澤田晃宏氏がリポートする。

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ベトナムからの渡航先は、18年に日本が6万8737人でトップになった。次点の台湾とは僅差だが、

「台湾はビザの取得が簡単で、10年以上働けるが、給料が安い。台湾を目指すのは日本では採用されない30代以上の人が多い」(送り出し機関幹部)

ただ、アジア圏に限らず、ドイツやルーマニアなど欧州の国々もベトナム人労働者の採用を始めている。現状では、他国に比べ、日本で働くにはお金がかかり過ぎる。日本が「働きたい国」であり続けるためには、不透明なお金を排除する必要がある。

ハノイ市内の韓国語学校を訪ねた。学長のグエン・クアン・ドックさん(32)が誇らしげに言った。

「20代半ばより上の世代はドラゴンボールやワンピース、名探偵コナンが大好きで日本への憧れが強い。一方で今の10代はK‐POPの影響で韓国への憧れが強い。しかも日本より稼げる」

韓国は日本の技能実習制度を参考に1993年から単純労働分野の外国人の受け入れを始めたが、日本が現在抱える仲介業者のピンハネや非人権的な働かせ方が問題になり、04年からは労働者として受け入れる「雇用許可制」を導入した。国が業種ごとの受け入れ数を割り振り、国の機関同士で採用を行うため、ブローカーが入る余地がない。

韓国の雇用許可制で働く場合、失踪防止の目的で約4千ドル(約45万円)の保証金を預ける必要があるが、手数料は約630ドル(約7万円)だ。

 

転職が認められており、企業も待遇をよくしなければ人材を確保できない。そのため、寮などが無償提供されることも多く、実際に手にできるお金は日本の技能実習生よりも高いことが多い。

日本も単純労働分野の労働者を「労働者」として受け入れる在留資格「特定技能」を4月に新設した。本格的な受け入れはまだ始まっていないが、送り出し機関が仲介する形になる。

「候補者から手数料として3千ドル(約33万円)を徴収し、日本企業から年収の3割相当を紹介料としてとることを想定しています」と、送り出し機関幹部はそろばんをはじく。

 

日本に目を向けると、人材派遣会社が特定技能外国人をサポートする登録支援機関に登録し、虎視眈々と商機を窺っている。深刻な人手不足というならば、なぜ、国が率先して人材の受け入れをしないのか。オモテナシに欠けている。【7月27日 AERA dot.】
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日本の場合、仲介業者のピンハネの問題、労働の実態などについては、多くが指摘されていますので、今日は見出しの列挙だけ。

 

“ベトナム人実習生「日本の接待費用も負担」の裏事情 手数料は最低賃金の80倍”【7月27日 AERA dot.】

“ベトナム人実習生の心の声 夢見た日本に失望”【9月1日 朝日】

“外国人技能実習生 来日後に絶望する人が少なくないのが現実”【9月22日 NEWポスト】

 

今は「日本が門戸を緩めると、近隣国から日本で働きたい人がドッと押し寄せる」という発想ですが、やがて、日本が求めても「来てくれない」という日もやってくるかも。東南アジアの国々もやがては自国内の労働力が次第に不足し、外国に出る必要も薄れてくるでしょう。

 

そうした状況にあって、独自の取り組みを進める企業もあるようです。

 

****モス、ベトナム人350人採用 4年計画 「特定技能」資格者****

モスフードサービスは15日、今年4月に導入された「特定技能」の在留資格を得たベトナム人を4年間で350人採用する計画を発表した。資格取得に必要な外食の知識や技能を学ぶ教育プログラムを現地の短大と始めており、日本で就業を終えた後は、ベトナムで幹部社員に登用することを視野に入れる。

 

モスフードは、ベトナム国立のダナン観光短期大学と提携し、10月から「ベトナム カゾク」と名付けた教育プログラムを始めた。短大の学生の中から希望者を募り、日本の外食店で働くうえで必要な知識や技能のほか、自社で働くのに必要な専門用語などを教える。

 

受講後、特定技能のうち「外食」業種の試験を受けてもらい、合格者は来日して主に「モスバーガー」の国内にある直営店で働いてもらう。給与や家賃補助などの福利厚生は、日本人の正社員と同水準にするという。

 

モスフードは2020年中にも現地企業と合弁会社を立ち上げ、ベトナムに進出する予定だ。法律が定める上限5年の在留期間が終わって帰国した後は、現地の幹部社員として迎え、ベトナム国内での店舗運営などを担ってもらう考えだ。

 

15日に記者会見したモスフードサービスの桜田厚会長は「教育面でベトナムを手伝い、ベトナムが成長できればいい」。短大のレ・デュク・チュン校長は「学生が日本の知識や文化を身につけ、日本企業に対応できるようになることを期待している」と語った。

 

今回の教育プログラムの期間は、短大側が手掛ける日本語教育なども含めて、およそ1年間。初回の20年は50人、その後は毎年100人の採用を目指す。

 

ただし、計画通りに進むかは未知数だ。特定技能の外食は4月以降、3回の試験を国内で実施し、計1546人が合格した。海外では11月に初めてフィリピンで行うが、ベトナムでの試験実施は決まっていない。

 

政府が外食で受け入れを見込むのは5年間で最大5万3千人と、介護に次いで多い。だが、出入国在留管理局による在留資格の審査に時間がかかり、外食の業界団体によると、10月上旬までに特定技能に認められたのは23人。ある外食産業の幹部は「何度も書類を出し直し、認められるまでに5カ月かかった」と話す。

 

ベトナム人の働き手を積極的に採用する国内企業は少なくなく、今後、モスフードと同様の動きが広がる可能性がある。【10月16日 朝日】

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