孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー 高まる僧侶の軍政批判

2007-09-19 15:18:33 | 国際情勢

(今回の僧侶の抗議活動に関してはAFPに格好の写真(シュエダゴンパゴダに向かってデモをする僧侶達)があるのですが、勝手に掲載できません。かわりに全く関係ない写真ですが、珍しい上の写真。
これは、撮影場所がバゴーになっているので、恐らく2001年ミャンマー各地で起こった反ムスリム暴動時のものではないでしょうか。僧侶達が手に棒を持って、モスクの破壊に向かうところです。
このときの暴動については、いくつかの暴力行為を扇動していたと見られる僧侶は、僧侶の格好をしたUSDA(軍政の御用大衆組織)か軍人だったとの報告もあるようです。
いずれにしても、血の気の多い坊さんも多いようです。
ミャンマーにおける仏教以外の信仰の自由、宗教対立については興味深いものがあります。
“flickr”より By andrewjudededo)


9月4日の当ブログ(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070904)でも取り上げたミャンマー情勢が僧侶の抗議デモによって緊迫しています。
石油関連製品の大幅値上げに始まった軍事政権への抗議活動はヤンゴンから地方へ拡大したものの、4日の時点では続報があまりなく、「収まったのかな・・・」という感じを受けていました。
しかし、現地では抗議が続いていたようで、特に5日パコックで行われた僧侶のデモ、それに対する治安当局の対応によって、国民の信頼をあつめる僧侶が全面に出る様相を呈してきています。

5日のパコックのデモには僧侶300人以上が参加。

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解散させようとした軍の威嚇発砲の弾が数人の僧侶に当たり、負傷者が出た。8月から始まった価格高騰に反発するデモに対し、軍が発砲したのは初めて。【9月6日 毎日】

軍政は一連のデモで初めて治安部隊を投入。空に向け威嚇発砲したほか、竹の棒で市民を殴打し、3人が負傷したとされる。兵士たちはさらに、10人の僧を連行し、電柱に縛り付けて竹の棒で打った。
【9月16日 IPS】

治安部隊の隊員を解放した後も、僧侶数十人が町に出て軍関係者が営業する店を襲撃した【9月7日 AFP】
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発砲で僧侶に負傷者がでたのかどうかは報道によって異なります。
治安当局者が6日朝、謝罪のために僧院を訪れましたが、怒った僧侶が当局者の車4台を燃やし、当局者約20人を僧院に閉じこめるという展開になりました。
市民1000人あまりが集まり、「僧侶を脅すとは何事か」と叫び騒然としたようですが、当局側が僧侶側に謝罪し、同日夜までに人質全員が解放されました。【9月6日 読売】

ミャンマーの仏教は上座部仏教ですので、素人考えで“個人の解脱が主眼で、社会運動などにはあまり活発ではないのでは・・・”と思っていたのですが、僧侶たちはもともと支配に対する抵抗の役割を長年にわたって果たしており、イギリス植民地時代には西洋の帝国主義に対して立ち上がったそうです。
また、最近では、1988年の民主化闘争の中で主要な役割を果たし、その時に拘束された僧がいまだに90人も刑務所の中にいるとのこと。【9月16日 IPS】

ミャンマーではごく普通に、「ちょっと10日ほど明日からお寺でお坊さんをやってきます。」というような庶民の生活と僧侶が極めて密着した関係にある社会ですから、僧侶達もある意味では世間の状況を熟知しているとも言えるかもしれません。


(今年正月旅行時の写真 マンダレー市街の様子 托鉢を終えたお坊さん達もバスでお寺へ帰ります。
托鉢のときは僧侶はバスに乗ってもお金は払わなくていいそうです。)

軍事政権はその後、デモを主導する民主化勢力への非難を強めています。
国営メディアを通じ、連日「有効な行動をとる」と警告。
ア・ウン・サン・スーチー率いる最大野党「国民民主連盟」(NLD)が権力に着くために騒動を利用していると非難、NLDメンバーの逮捕も相次いでいます。
最初のデモを主導して逮捕された元学生運動家らを国営テレビで「テロリスト」と非難、厳しい法的措置をとると宣言しました。
7日に裁判所が6人の労働運動家に禁固20~28年の判決を下しましたが、これも「反政府運動への見せしめ」とみられています。 【9月10日 朝日】

更に軍政当局が親軍政組織を動員し、抗議活動に対抗して、先日決定した新憲法基本原則を民主化への実績としてアピールする大規模集会を数日中に行う準備をしているとも報じられています。【9月15日 共同】
また、「国民民主連盟」(NLD)の本部や幹部宅などの電話約50回線を遮断しました。
NLDと海外メディアとの連絡を絶つことを狙ったものと言われています。【9月14日 毎日】


国際社会もミャンマーこの事態に反応しています。
アメリカは11日、拘束されたミャンマーの民主化勢力が激しく殴打されているとの報道を受けて、同国軍事政権に対し、拘束者への赤十字国際委員会のような国際機関の接触を認めるよう求めています。【9月12日 時事】
ブッシュ大統領夫人がこれまでもミャンマー情勢に深く関心を持って活動してきていますので、アメリカの反応も早いものがあります。

また、アルブール国連人権高等弁務官は13日、国連人権理事会の第6回会合で、ミャンマー軍事政権に対し、拘束したデモ参加者を直ちに解放するとともに、拘束者の人権を尊重するよう促しました。【9月14日 時事】

僧侶団体は、軍事政権に対し(1)僧侶への謝罪(2)物価値下げ(3)政治犯の釈放(4)民主化勢力との対話--の4項目を要求。
17日までに応じなければ抗議行動を行うと表明していました。【9月18日 毎日】
また、回答がなければ、軍人や親軍政組織からのお布施を拒否すると宣言したそうです。 【9月16日 朝日】
“お布施の拒否”と言うのは信仰の篤い人にはこたえるかも。
僧侶側からすると、寄付者の救済を拒否することにもなって相当に厳しい意味があります。

軍事政権は、僧侶らの動きを抑えるため僧院への監視を強化。一部の地域では、政府系の仏教組織を通じて夜間の外出禁止を命じる手紙を送っています。 【9月16日 朝日】

こうした情勢のなかで、マンダレー管区のチョウパダウンで17日、僧侶約400人がデモ行進を行ったことが報じられました。【9月18日(火)00:06 時事】
政権側からの回答がなかったため、僧侶達の行動が各地で始まったようです。

ヤンゴンでは午後1時前から、400人余りの僧侶が約2時間にわたり市街地を歩いた。市民らも後に続き、デモ隊は一時、600人近くにまで増えた。【9月18日 朝日】
ヤンゴン近郊のバゴーでも僧侶約800人がデモを実施した。【9月18日 読売】
西部シットウェでも僧侶のデモがあり、軍が催涙ガス弾を発砲。僧侶数人を拘束した。【9月18日 毎日】
ヤンゴンの北80キロのPeguでは、数百人の僧侶が地元の仏塔に向けて穏やかにデモ行進を実施。マンダレー近郊の2都市でも、300人の僧侶が抗議活動に参加したという。
ヤンゴン北のAunglanでは、約90人の僧侶が2時間にわたりデモ行進を行った。【9月19日 AFP】

軍事政権に対する国民の不満を背景に僧侶たちの要求は政治性を強めてきており、両者間の緊張が高まっているとも報じられています。【9月18日 毎日】
国民から敬われている、また、軍も対応に苦慮する僧侶の政府批判が本格化してきたことで、今後市民の抗議行動がさらに拡大する可能性が出てきました。


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