孤帆の遠影碧空に尽き

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ロシア  対米強硬姿勢を強めるメドベージェフ大統領 与党支持率低下でも底堅いプーチン人気

2011-11-24 23:05:31 | ロシア

(10月19日 支持者との会合でなごむメドベージェフ大統領 12月4日投開票のロシア下院選挙の結果次第では、プーチン首相に切り捨てられる可能性も・・・ “flickr”より By tikandelaki4 http://www.flickr.com/photos/68508062@N06/6262645115/

リセット停止
ロシアのメドベージェフ大統領は23日、アメリカが東欧でのミサイル防衛(MD)システム配備計画を進めるならば、ロシアは対抗措置として欧州との国境地域に新型ミサイルを配備すると警告、さらに、2010年4月にオバマ米大統領と調印した戦略兵器削減条約「新START」からの脱退をも示唆しています。

****ロシア:大統領、新型ミサイル配備を検討 米MDに対抗*****
ロシアのメドベージェフ大統領は23日のテレビ演説で、米国が欧州で配備を進めるミサイル防衛(MD)計画に対抗し、国内の欧州隣接地域に新型ミサイルの配備を検討する考えを表明した。
また米国とMDに関する協議が決裂した場合、今年2月に発効した新戦略兵器削減条約(新START)から脱退する可能性も示唆した。

メドベージェフ大統領はオバマ米政権が誕生した09年以降、対米関係の改善に力を注いできたが、MDに関する協議が停滞していることから、強硬姿勢に転じたともみられる。また政権与党「統一ロシア」が来月4日の下院選で苦戦が予想されている情勢を踏まえ、強気の外交方針を示した側面もありそうだ。

大統領は演説で、西部の飛び地カリーニングラード州や南部での新型ミサイル「イスカンデル」などの配備を検討し、ロシアの戦略弾道弾が米国のMDを撃破できるように開発を進めるよう命じた。一方で「米国と北大西洋条約機構(NATO)とMDに関する対話は続ける」との考えも明示した。

メドベージェフ氏は米露関係が冷却化していた08年にも、イスカンデルの配備を進めるよう指示したが、対米関係の改善に伴い、取りやめていた。
ロシアとNATOは昨秋、欧州におけるMD分野で協力を進めることで合意。しかしロシアが共通の防衛システムを求める一方で、NATOが限定的な協力を提案するなど、双方の溝が埋まっていない。

米国のMDをめぐっては、ロシアが自国を対象にしていないことを文書に明記するよう要求しているが、米国が受け入れていないことも対立点となっている。
NATOとロシアは来年5月に米シカゴで開くNATO首脳会議までにMDの協力体制をまとめたい方針を掲げている。【11月23日 毎日】
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メドベージェフ大統領は、アメリカがロシアとの連携なしにMD計画を推進していることへの対抗策として以下の4点に言及しています。
(1)欧州にあるロシアの飛び地カリーニングラードでレーダー基地を稼働
(2)自国の戦略核を守る航空宇宙防衛システムの強化
(3)MDを突破するための戦略核ミサイルと核弾頭の性能向上
(4)MDシステムを破壊する軍事的措置の準備を進める
さらに、この4点で不十分な場合は、新型の戦術ミサイル「イスカンデル」を飛び地カリーニングラードとロシア南部に配備するほか、新STARTからの脱退も検討すると警告しています。

オバマ大統領は09年、ブッシュ前政権のMD欧州配備を変更し、海上型と地上型の迎撃ミサイルを段階的に配備し、イランの弾道ミサイルに対処する構想を発表しました。この計画変更は、ロシアへの配慮も考慮に入れたものでした。これにより米ロ関係は「リセット」されたとも言われました。

しかしアメリカが昨年2月、迎撃ミサイルの配備先をルーマニアと発表、ルーマニアも同国南部への関連施設受け入れを正式表明したことに、ロシアが強く反発。MDがロシアからの攻撃を想定したものでないことを法的に保証するよう米側に求めています。そして、すでに5月段階で、アメリカが一方的にMDを強化すればロシアの新戦略兵器削減条約(新START)脱退もあり得ると警告しています。

G8首脳会議に合わせて5月26日に行われた、オバマ米大統領とメドベージェフ大統領の会談でも進展しませんでした。

****新START脱退警告****
オバマ政権のMD計画は現在、イランの短・中距離弾道ミサイルを対象に進められているが、2018~20年には大陸間弾道ミサイルに対応できるように強化される。米国のMDがロシアの大陸間弾道ミサイルに向けられた場合、ロシアの核抑止力が損なわれるため、ロシアは16日、米国が一方的にMDを強化すればロシアの新戦略兵器削減条約(新START)脱退もあり得ると警告した。

ロシアが要求する「法的な保証」については米上院の承認が必要なため、オバマ大統領が同意する見込みはほとんどない。メドベージェフ大統領は「最終的には2020年ごろに、そのときの政治家によって解決されるだろう」と、MD計画が大陸間弾道ミサイルへの対応段階に移るまで問題を事実上、先送りしたことを認めた。【5月27日 産経】
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また、北大西洋条約機構(NATO)とロシアは昨秋に欧州版ミサイル防衛(MD)で連携することで合意していますが(いわゆる「欧州版MD」)、NATOは双方が個別のMDを開発したうえで、何らかの連携を取る形を提案、一方ロシアはMDの開発段階から協力し、飛来する弾道ミサイルを迎撃する分担地域を定める「セクター式」などを主張して合意が得られていません。

ロシアが開発段階からの「対等な参加」を求めているのは“ミサイルの飛来を発見するロシアの早期警戒システムは優れているが、ミサイルを迎撃する技術では米国に10年以上の後れを取っている。このため、ロシアはMD計画への「対等な参加」を求めているという”【5月27日 産経】という事情がありますが、最先端のMD技術の流出を警戒するアメリカは慎重姿勢を崩していない・・・ということのようです。

官僚的な体質が嫌悪され、与党「統一ロシア」苦戦
5月の首脳会談では「最終的には2020年ごろに、そのときの政治家によって解決されるだろう」と先送りの姿勢も見せるなど、2008年の大統領就任以降、冷え込んでいた米露関係の修復に努めてきたメドベージェフ大統領がアメリカとの対決姿勢に転じた背景には、外交や軍事面で強硬路線をとりながら大統領復帰を狙うプーチン首相の存在があるとの指摘があります。【11月24日 AFPより】

そのプーチン首相の狙いは、冒頭【毎日】にもあるように、政権与党「統一ロシア」が来月4日の下院選で苦戦が予想されている情勢を、ロシアを「大国」として処遇することを求める強硬姿勢で突破しよう・・・というものでしょうか。

選挙情勢については、与党「統一ロシア」は過半数は維持するものの、全体の7割を占めた前回議席を大きく減らしそうだとの世論調査が出ています。

****ロシア下院選:与党が苦戦…12月4日投票****
12月4日投票のロシア下院選で、政権与党「統一ロシア」が苦戦している。
9月末の党大会で党首であるプーチン首相の大統領返り咲きを打ち出したが、支持率の低迷に歯止めがかからず、議席減は必至だ。
党比例代表名簿トップのメドベージェフ大統領は選挙情勢への危機感から、オバマ米大統領とともに初参加となるはずだった東アジアサミットへの参加を見送った。

統一ロシアは4年前の前回下院選で、定数(450)の7割にあたる315議席(得票率64%)を獲得して圧勝したが、官僚的な体質が嫌悪され、最近は国民の支持が離れている。
世論調査機関「全ロシア世論調査センター」は、今回の選挙で統一ロシアは過半数は維持するものの、269議席(同54%)にとどまり、憲法改正に必要な3分の2(300)に届かないと予測している。
同党は27日に再び党大会を開き、プーチン氏を党の大統領候補に正式決定する方針だが、支持率のV字回復につながるか疑問視されている。

プーチン首相は来年大統領に復帰した場合、メドベージェフ氏を首相に任命する意向を示しているが、下院選での統一ロシアの圧倒的な「勝利」を前提条件にしているとの見方がある。首相ポストを確実にしたいメドベージェフ大統領は、外交より国内事情を優先せざるを得ないのが実情のようだ。

米ハワイのホノルルで12~13日にあったアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議には、ロシアが来年の会議を主催することもあって出席したが、その前後に極東・シベリアを訪問し、事実上の「選挙運動」に駆け回った。【11月19日 毎日】
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プーチン首相の想定以上に議席を減らした場合は、メドベージェフ大統領は首相にはつけない場合もあるようです。

プーチン首相がブーイングを浴びるという異例の出来ごとが報じられています。
****プーチン首相に異例のブーイング、ロシアの格闘技大会で****
ロシアで行われた格闘技大会で20日、リングに登場したウラジーミル・プーチン首相に観客がブーイングと口笛を浴びせ、その様子が生中継されるという異例の出来事があった。反プーチン派からは称賛の声があがっている。(後略)【11月21日 AFP】
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プーチン首相のテレビ出演は厳密に演出されるのが通例で、見ず知らずの観客を前に即興で演説することはほとんどありません。
“腐敗告発ブログで知られるアレクセイ・ナバルニー氏はブログに動画を掲載し、「一時代の終焉(えん)」と書いた。露ウェブサイト「gazeta.ru」も、「公共のイベントでプーチン氏に対する嫌悪感が発露されたことなど、いまだかつてなかった」と伝えた。”【同上】とのことですが、格闘技大会のリングというかなりイレギュラーな場面での話ですから、どうでしょうか?

それでもやはり“プーチン”】
与党の支持率に陰りが・・・とも言われていますが、プーチン首相については、ソ連崩壊の混乱からロシアを救い、安定をもたらしているとの根強い評価もあります。

****安定志向、プーチン氏支持の源〈20歳のロシア*****
ロシアのプーチン首相が来春の大統領選で返り咲きを目指すとの表明に、内外から反発や冷たい視線もある。与党の支持率も下降気味だが、それでも勝利は堅いとされる。なぜなのか。

モスクワ中心部で、アレクサンドラさん(21)はモダンダンスを週3回教えている。雑誌「照明工学」の副編集長も務め、今月、ロシアのラジオ局「ヨーロッパ・メディア・グループ」に転職した。「本業」は女子大生だ。
「プーチンさん、愛してる」。そんなタイトルで1年前、モスクワ大の女子学生のセミヌードカレンダーが売り出され、話題を呼んだ。アレクサンドラさんは7月のページを飾った。

ソ連末期の1990年夏に、シベリアのイルクーツクで生まれた。父は軍に属し、寮の一室で暮らした。トランクがベビーベッド代わり。一つのリンゴを分け合って食べたと、母から聞かされた。「今は、ないのは戦争だけ。なのに周りの若い人は不満ばかり。自分の部屋も車もあるのに、ガソリン代が足りないと『プーチンが悪い』。彼がいなければ、もっとひどくなっていたはず」

今はチタン輸出の仕事に携わる父(42)とは意見が合わない。汚職や官僚主義でビジネス環境が整わないと政権を批判する父は、外国に出たいとさえ言うが、自分はこう思う。「汚職は昔からあり、政権はそれをなくそうとしている。プーチンが長く政権を担うのは無意味ではない。この間、生活がよくなったことを人々は忘れている」 (中略)

9月にプーチン氏が大統領選出馬を宣言すると、知識層にはうんざり感が漂った。24年までの君臨が可能で、社会が停滞するのではとの懸念も出た。
だが、「世論財団」によると58%が出馬決定を「肯定的」に受け止め、「否定的」なのは23%。世論調査機関「レバダ・センター」の10月の調査では「出馬を聞いてどう感じたか」との質問に「何も感じなかった」が41%、「同意・安心」が37%で、「怒り・不安・失望」は20%にとどまった。
「小さな自由と社会の安定」を求める層の受動的な支持も、プーチン氏の強みだ。(後略)【11月22日 朝日】
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“プーチン氏は10月、ロシア主要テレビ局とのインタビューで「ナットを締めざるを得ない時期はあったが、今は違う」と語った。「強権」路線をやんわり否定し、「民主制度と現代的な土台に基づいた経済の多様化をはかる」”【11月21日 朝日】・・・だそうです。

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