孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ナイジェリア  将来は世界第3位の人口へ 現在は世界最多の極度の貧困人口 貧困永続化の恐れも

2018-06-26 22:19:53 | アフリカ

(2050年時点で人口が1億人超のアフリカの国と、1日1.9ドル未満で暮らす貧困層が5割超のアフリカ諸国(赤褐色の国) ①がナイジェリア【2018年1月10日 朝日】)

2050年までには人口4億人へ 経済成長への期待と貧困永続化の恐れ
2017年の段階で世界の人口は約75.5億人、このうち12.6億人がアフリカですが、今後アフリカは急激に人口が増加する“人口爆発”が続き、2050年には倍増して世界人口97.7億人のうち25.3億人を占め、約4人にひとりがアフリカに暮らしているという状況になるようです。

そのアフリカで最大人口を誇る人口大国がナイジェリア。
現在でも1億9千万人ほどですが、2050年には4億人に増えて世界第3位に、更に、2100年には8億人近くに増えるとも推測されています。(面積は日本の2.5倍)

ちなみに、2050年時点で人口が1億人を超えるアフリカの国は、ナイジェリア(4.11億)のほか、コンゴ民主共和国(1.97億)、エチオピア(1.91億)、エジプト(1.53億)、タンザニア(1.38億)、ウガンダ(1.06億)とのことです。

ナイジェリアはその人口から、将来の巨大市場として熱い視線を浴びていますが、一方で貧困も問題も深刻です。

****アフリカ人口爆発、2050年に倍増 記者が見たのは・・・・****
アフリカ大陸の人口が急増している。全54カ国の人口約12億5600万人は、国連の推計で2050年には倍増して約25億人となり、世界全体の4人に1人を占める見通しだ。

6割を若年層が占め、世界各国の企業は経済成長と市場拡大を期待する。一方、貧困の撲滅や食料の確保など、一人ひとりの暮らしの問題の解決も待ったなしだ。

約1億9千万人と大陸最大の人口を誇るナイジェリア。昨年11月、最大都市ラゴス中心部の市場を訪れると、大勢の人々でごった返し、熱気があふれていた。

洋服や干物を売る商売人の声が飛び交い、車のクラクションが鳴り響く。牛が通行人の女性に頭突きをするなど混沌(こんとん)とした雰囲気だ。(中略)

ナイジェリアの人口は2050年までに4億人に増えて米国を抜き、中国、インドに次いで世界で3番目に人口が多い国になるとみられている。2100年には8億人近くに増えるとも推測されている。
 
21世紀に入って大きく経済成長したこの国の人口増に、世界各国の企業が熱い視線を送る。昨年11月にラゴスで開かれた国際見本市には、大手の自動車メーカーや食品関連企業がこぞって出展。日本企業も20社以上がブースを構えた。
 
バイクの新モデルを披露したホンダ現地法人社長の室岡克博さん(53)は「ナイジェリアでは中国やインドのメーカーとの競争が激しい。ただ、人口増で巨大マーケットに成長することを考えれば、ここに来るしかない」と断言する。
 
サントリー食品インターナショナルの現地法人社長のチネドン・オケレケさんは「経済が石油に依存する構造になっているなど不安要素もあるが、さらに発展する可能性を持っているのは間違いない」とみる。
 
国際見本市を主催したラゴス商工会議所のショラ・オイエタヨ副会頭は「ナイジェリアは資源も豊富で、何より優秀な若い人が大勢いる。この国の未来は明るい」と太鼓判を押した。

「40人以上子どもを…」
アフリカ諸国では、人口増に伴う経済成長への期待の一方で、貧困や飢餓の解決や、教育や雇用の確保などが急務だ。
 
10~15年の合計特殊出生率の平均が5・91人のアフリカ東部ウガンダ。「40人以上の子どもを生んだ女性がいる」と聞き、首都カンパラの北東約45キロにあるカビンビリ近郊を訪ねた。(中略)

(40人以上を産んだ)ナバタンジさんは1980年前後に生まれ、本人も誕生日が分からない。幼い時に母親を亡くした。学校には通えず、12歳ごろに20歳以上年上の男性と結婚するよう父親に命令された。「とても嫌だったけれど、私には選択肢がなかった」(中略)夫は多重婚で、ナバタンジさんの元を訪れることは少なくなった。

安定した収入を得られる職は見つからず、農作業などをしてしのいでいる。収入は多い時でも1日約1万シリング(約300円)。ほとんどは食費で消える。子どもたちの学費は払えない。
 
子どもたちは学校に行かず、洗濯や料理、薪拾いをして家族を支えている。サツマイモの皮をナイフでむいていたワルシンビ君(8)は「本当は学校に行って弁護士か医者になりたいんだ」とうつむいた。

貧困永続化の恐れも
世界銀行によると、アフリカ諸国ではナイジェリアを含む少なくとも12カ国で、1日1.9ドル未満で暮らす貧困層の割合が人口の半数を超える。

人口の3割を超える国だと約30カ国になる。栄養不足人口の割合や、5歳以下の乳幼児死亡率が高いと国連が認定した「後発開発途上国」も、全47カ国中33カ国(17年6月時点)がアフリカ諸国だ。コンゴ民主共和国や南スーダンなど紛争が続く国も少なくない。
 
国連は15年9月、持続可能な開発目標(SDGs)を採択。「貧困をなくす」や「質の高い教育をみんなに」など、30年までに達成すべき17の目標を設定した。

アフリカの人口問題を専門とするナイロビ大学のアルフレッド・オティエノ准教授は「出生率が高い国では、教育機会や雇用、食料、水の確保が喫緊の問題だ。これらを解決できなければ、高い出生率は貧困を永続化させる恐れがある」と指摘する。
 
「国際社会はアフリカ諸国で教育機会の拡大や女性の地位向上、避妊薬の普及を今以上に支援すべきだ。地道に思えても、こうした政策こそが急激な人口増加の抑制につながる」【1月10日 朝日】
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世界の中でサハラ砂漠以南の“サブサハラ・アフリカだけは、生産年齢人口(15歳以上65歳未満)増加率が人口増加率を上回る「人口ボーナス期」が21世紀終盤まで続く”【2016年08月12日 白戸圭一氏 ハフポスト】ということで、経済成長の基盤を有していると言えます。

しかし、対応を誤ると、高い出生率が貧困を永続化させることにも。

少なくと、現段階の状況は最悪です。ナイジェリアは“あの”インドをもしのぐ極度の貧困人口を抱える国でもあります。

****極度の貧困人口、ナイジェリアが世界最多の8700万人****
1日当たりの生活費が1.90ドル(約200円)未満という極度の貧困状態で暮らす層の推定人数を国別に比較した最新のデータで、世界最多はナイジェリアの8700万人という結果が出た。

米シンクタンク、ブルッキングス研究所が世帯調査や国際通貨基金(IMF)のデータからまとめた統計を基に、世界の貧困人口を追跡している「ワールド・ポバティー・クロック」が発表した。

世界では現在、6億4300万人が極度の貧困状態にあり、その3分の2がアフリカ大陸に住んでいるという。

ナイジェリアをはじめとするアフリカ大陸の人数は今後さらに増加する傾向にあり、年末には現在よりさらに320万人増える見通しだ。

ナイジェリアはアフリカ最大の産油国だが、石油価格の低迷や産油量の急減で2016年から不況に突入した。同国では毎分、新たに約6人が極度の貧困状態に陥っている。

一方、これまで極度の貧困人口が最も多かったインドには明るい兆しがみられる。同国の全人口のうち、貧困ラインを下回っている人は5.3%と推定される。

チームによると、極度の貧困層が増えている18カ国のうち、アフリカが14カ国を占めている。この傾向が続けば、30年には極度の貧困人口の9割がアフリカの住民という計算になる。

極度の貧困人口が多い10カ国の中で、アフリカ以外の国はバングラデシュ(1700万人)とインドネシア(1420万人)だけだ。

一方でチームの推計によると、16年1月から18年7月までの間に極度の貧困状態を脱する人は、世界で計8300万人に達している。【6月26日 BBC】
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【「ボコ・ハラム」だけではない暴力是認の社会現実
アフリカ最大の産油国、巨大市場という利点によって経済が活性化し、国民の一部がその恩恵を享受しているのも事実ですが、一方で人口の半数に近い8700万人が「極度の貧困」に苦しんでいます。

その原因は、“資源の呪い”とも言うべき腐敗・汚職の蔓延、インフラなど経済基盤や教育などの社会基盤の欠如・遅れなどがすぐに想起されますが、そうしたナイジェリアの混迷を象徴するのがイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」による殺戮・拉致などの混乱です。

政府は「ボコ・ハラム」を追い込んでいると主張していますが、依然としてテロ・拉致が続いています。

****ナイジェリアで少女らによる自爆攻撃、ロケット弾も撃ち込まれ31人死亡****
ナイジェリア北東部ボルノ州で16日夜、イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」によるものと思われる少女を使った自爆攻撃が起き、31人が死亡した。地元当局者と民兵指導者が17日、AFPに明らかにした。
 
攻撃はボルノ州の町ダンボアで、イスラム教の断食月「ラマダン」明けの祭り「イード・アル・フィトル」の祝いから帰る途中の人々を狙って起きたもので、ボコ・ハラムの犯行と思われる特徴があった。
 
数回の自爆の後、襲撃者らは自爆攻撃の現場に集まった群集の中に携行式ロケット弾を撃ち込み、死傷者がさらに増えた。
 
地元の民兵指導者は「昨夜ダンボアで2度の自爆攻撃とロケット弾による爆発があり、31人が死亡した。その他に数人が負傷した」と語り、ボコ・ハラムの犯行であることは明らかだと述べた。
 
地元当局者は「死傷者の大半は町の外から発射されたロケット弾によるものだった。事件後に、自爆攻撃が6人の少女によって実行されたことが明らかになった。救急隊が現場で6人の頭部を発見した。顔つきからして7歳から10歳までの少女だった」と述べた。
 
政府はボコ・ハラムが劣勢にあると繰り返し主張しているが、あるアナリストは「ボコ・ハラムはナイジェリア北東部で大量の死傷者を出す攻撃を行う意図と作戦能力を維持している」と指摘している。【6月18日 AFP】
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犠牲者の多さもさることながら、女6人が相次いで自爆するという方法、それも「顔つきからして7歳から10歳までの少女だった」ということ・・・なんともやりきれない犯行です。

「ボコ・ハラム」の凶悪・卑劣なテロ行為は今更の話ではありますが、そうした人命を軽視した残忍さは単に「ボコ・ハラム」だけの問題ではないようです。

****盗賊集団が村襲撃、子どもら45人死亡 ナイジェリア****
ナイジェリア中部カドゥナ州の警察当局などは6日、州内で武装した盗賊集団と民兵の衝突があり、住民の子どもを含む45人が死亡したと発表した。一帯では家畜の牛の窃盗や、強盗、誘拐などを伴う暴力が激化している。(後略)【5月7日 AFP】
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****遊牧民が農耕民の集落襲撃、86人死亡 ナイジェリア****
ナイジェリアの警察当局は24日、同国中部で遊牧民とみられる集団が農耕民の集落を襲撃し、86人が殺害されたと発表した。一帯には夜間外出禁止令が出され、ムハマドゥ・ブハリ大統領は平静を呼びかけた。
 
現場はプラトー州のバーキンラディ地区。一帯では、キリスト教徒が多いベロム人の農耕民が、イスラム教徒が多いフラニ人の遊牧民に21日に攻撃を仕掛け、これがきっかけとみられる武力衝突が数日にわたって続いていた。
 
国家警察の幹部が記者会見で明らかにしたところよると、23日の衝突後にベロム人の複数の集落を捜索した結果、計86人が殺害されていたことが分かった。このほかに6人が負傷し、家屋50棟が破壊されたという。(中略)
 
ナイジェリアでは土地や資源をめぐる争いに民族や宗教、政治的な対立も絡んで数十年にわたって抗争が続いており、今回の事件は来年選挙を控えるブハリ大統領に圧力をかけるものとなった。
 
専門家はこの抗争について、2009年以降少なくとも2万人の死者を出しているイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」による襲撃をしのぎ、ナイジェリアにとって最も懸念すべき治安上の問題になる可能性もあるとみている。【6月25日 AFP】
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“ナイジェリアでは長年、土地の所有権を巡り農民と遊牧民が対立している。農民は、遊牧民が農地で放牧し作物を食い荒らしていると主張。近年は天候不順で農地が減り、衝突が激化している。”【6月25日 共同】

こうした農民と遊牧民の対立、近年の気象変化に伴う状況悪化の話は、ナイジェリア以外でも耳にします。

さらに言えば、そうした“対立”が“襲撃”といった暴力に直結し、多数の犠牲者が出るという現実がナイジェリアやその他アフリカ諸国には存在しています。

「ボコ・ハラム」にしても、コンゴや中央アフリカなどでの武装組織・民兵の残虐行為にしても、そのような“暴力”の行使を否定しない社会現実に根差すものであり、貧困や政治の腐敗などが助長しているものと思われます。

問題は山積し、それらは互いに絡み合ってあいますが、まずは「ボコ・ハラム」のような潰しやすいところからでしょう。それすら速やかにできないようなら、将来の人口大国は膨大な貧困を抱えるだけに終わってしまいます。

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