孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

香港  中国への返還15周年 一体化の進行とともに経済的・感情的軋轢も

2012-06-29 22:56:53 | 東アジア

(香港のマダムタッソー蝋人形館の胡錦濤国家主席 “flickr”より By dreistreifen  http://www.flickr.com/photos/dreistreifen/847073655/

大規模デモの計画に、厳戒態勢
7月1日で、香港がイギリスから中国に返還されて15周年を迎えます。
中国からは胡錦濤国家主席が記念式典出席のため香港を訪れますが、中国及び香港政府に対する大規模抗議デモが予定されています。なお、胡主席の香港訪問は、2007年に返還10周年の関連行事に出席して以来、5年ぶりです。

****中国主席香港入り、1日のデモは50万人規模か****
中国の胡錦濤国家主席は29日、英国植民地だった香港が中国に返還されて15周年を迎える7月1日を前に香港入りした。
胡主席は一連の記念行事で、香港に「高度な自治」を認めてきた「一国二制度」の成果を強調する。胡主席の滞在期間中には香港、中国政府に対する大規模デモが計画されており、厳戒態勢が敷かれている。

胡主席は空港で、「香港は返還から15年で、一国二制度の実践により常に豊かさを増し、発展してきた」と記者団に述べた。
しかし、市民の間では、貧富の格差拡大などにより、香港政府への不満が高まっている。毎年7月1日に行われるデモの参加者は今回、過去最多とされる03年の約50万人に匹敵する規模となるとの予測もある。【6月29日 読売】
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7月1日には、政府トップの行政長官が官僚出身の曽蔭権氏から、先の選挙で当選した親中派実業家の梁振英氏に交代しますが、梁新長官にも批判が集まっており、今回抗議デモは新長官への抗議でもあります。

****民主派、大規模デモを計画=1日、香港返還15周年****
香港は7月1日、英国から中国への返還15周年を祝うとともに、政府トップの行政長官が官僚出身の曽蔭権氏から親中派実業家だった梁振英氏に交代する。
梁氏は返還前から中国共産党・政府と密接な関係にある典型的な「左派」。さらに、長官選の選挙戦で自宅の違法建築を隠していたことが発覚したため、民主派は同日、梁氏に辞任を要求する大規模デモを計画している。

共産党秘密党員説もある梁氏の長官就任に対し、民主派は「香港人による香港統治ではなく、党員による香港統治だ」と反発。また、3月までの選挙戦で梁氏陣営が対立候補だった唐英年前政務官の自宅違法建築を非難していたにもかかわらず、梁氏自身にも全く同じ問題があったことが最近になって分かり、民主派は梁氏当選の有効性に疑問を呈している。

返還15周年記念式典には中国の胡錦濤国家主席が出席。このため、民主派はデモで、湖南省の民主活動家、李旺陽氏が不審死した事件の真相究明も求める。【6月29日 時事】 
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報道の自由は後退
2047年まで香港の高度な自治と資本主義システムを継続する「一国二制度」とは言いながらも、中国への経済依存が強まり中国との一体化が進む中で、親中派が影響力を拡大し、香港社会の変質も指摘されます。

****メディア関係者の87%、この7年間で報道の自由は後退と回答―香港****
2012年6月25日、香港のメディア関係者の87%がこの7年間で報道の自由が後退したと考えていることが明らかになった。シンガポール華字紙・聯合早報が伝えた。

香港記者協会はメディア関係者600人を対象に、ドナルド・ツァン(曽蔭権)香港特別行政区長官の在任期間中の報道の自由についてアンケートを実施した。87%が報道の自由は後退したと回答。5年前と比べて28ポイント増加した。

報道の自由の後退の原因として、政府の情報公開が少なくなり取材が制限されたとの回答が90%、業界の自主規制が81%、中国本土の干渉が68%という結果になった。情報公開に関して香港政府はIT技術を活用した政府独自の情報公開を強化しているが、記者協会は市民に情報を与えるタイミングを政府が操作するものと批判している。【6月28日 Record China】
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【「香港人は法治を尊重し、自由を愛している」】
ただ、香港の人々の中国への感情には微妙なものがあります。
今年1月には、香港の地下鉄内で中国観光客の子供がお菓子を食べたことに香港の地元住民が注意したことから口論となる出来ごとがあり、これをきっかけに香港・中国双方が互いに非難し合う騒動がありました。
1月24日ブログ“香港と中国本土  地下鉄内騒動から感情的対立が過熱 「香港の人たちは犬だ」”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120124

****<香港返還15周年>「醜いイナゴ」VS「犬畜生」、中国本土との確執は深刻化―SP華字紙****
2012年6月25日、香港が中国に返還されてから間もなく15周年。だが、今年に入り、互いに「醜いイナゴ」「犬畜生」とののしり合うなど、両者の間の確執はますます深刻化している。シンガポール華字紙・聯合早報が伝えた。

きっかけは今年1月に香港の地下鉄車内で発生した事件。中国本土からの女性観光客と地元乗客の間で、女性客が連れていた子どもが車内でお菓子を食べたことをめぐり、激しい口論が発生。その模様が動画投稿サイトで公開されたことで、騒ぎは一気に拡大した。

この少し前に起きた、香港の高級ブランド店前で記念撮影していた香港人が「中国本土客と外国人以外はダメ」と断られた事件が伏線となった形。経済力をつけ、意気揚々と押し寄せてくる本土人に対する嫉妬にも似た複雑な感情に加え、そのマナーの悪さにも我慢の限界がきたようだ。

地下鉄ホームで子どもにおしっこさせる、子どもを生みにやって来て病院のベッドを占拠し、粉ミルクを買い占める、高額の不動産を買い漁り、価格上昇を引き起こす―などの迷惑行為は数知れず。香港人は相当なストレスをため込んでいたらしい。

これを機に、双方は激しい舌戦を展開した。中国の大学教授が「香港人は犬畜生」とののしれば、香港の民衆も「中国人は醜いイナゴ」と容赦ない。香港側は迷惑行為への対抗策として、中国本土からの越境出産を企む妊婦の受け入れを制限したり、香港人以外の不動産購入禁止を検討したりと溝は深まるばかりとなっている。

中国の全国人民代表大会香港区代表で、2008年まで4年間、香港立法会議長を務めたリタ・ファン(范徐麗泰)氏が香港人と本土人の本質的な違いをこう表現している。「スープを煮込んでいる時、表面を油が覆うので中でどれほどグツグツしているのか分からない。だが、ふきこぼれそうになったら、香港人は火を弱くするが、本土人はとりあえず油を足す」。

つまり、社会の安定を図るなら、香港人は問題点を根本から解決しようとするが、本土人はその場しのぎで抑えるだけというもの。ファン氏は「本土が長く安定を維持したいなら、汚職や職権濫用、人権を尊重しないといった姿勢を改めるべき。香港人は法治を尊重し、自由を愛している。この長所は今後も続いていくだろう」と話している。【6月26日 Record China】
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「香港人は法治を尊重し、自由を愛している。この長所は今後も続いていくだろう」とは言うものの、「一国二制度」が保証されているのはあと35年です。
それまでに中国本土社会の民主化が進展していれば別ですが、現在の政治体制のまま2047年が近づけば、香港社会はどうなるのでしょうか?

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