孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  想定していなかった香港区議選大敗 今後の反動は? 中国広東省への波及の懸念も

2019-12-01 23:12:46 | 中国

(林鄭月娥行政長官(左)のボス、習近平も幻想を見せられていた(201771日)【1126日 Newsweek】)

 

【区議選大敗は中国指導部には“想定外”?】

香港の区議会選挙では民主派が地滑り的に圧勝しました。

 

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区議会議員選挙は、親中派の特権階級による間接選挙である行政長官選挙と違って、市民が直接投票する普通選挙であり、民意が反映される。18区議会の452議席を選ぶが、それ以外に、親中派に27議席を割り当てる仕組みとなっている。

 

今回は、過去最多の約1100人が立候補し、投票率も71.2%と過去最高であった。

 

そして結果は、民主派が388議席で約85%の議席を獲得する圧勝であった。親中派は改選前には7割を占めていたが、59議席と惨敗した。その他は5議席である。

 

2015年の前回の選挙(総議席数は431)では、民主派が120議席、親中派が293議席、その他が18議席だったので、地滑り的な大変動が起こったと言ってよい。まさに民主化を求める市民の声が反映されたのである。【1130日 JBpress 舛添 要一氏「香港情勢を甘く見た中国、巻き返しに出る可能性も」】

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民主派が躍進するというのは(どこまで議席を伸ばすかは別にして)選挙前から一定に予想されてもいました。

ですから、香港政府・中国が(若者らによる混乱という選挙回避理由があったにもかかわらず)負けることが危惧される選挙を予定どおり実施したことは驚きでもありました。

 

それについては、いささか信じがたい話ではありますが、中国指導部には「デモの混乱を嫌うサイレント・マジョリティーによって親中派が勝利する」という予測があげられおり、中国指導部も親中派勝利を信じていたとのことです。(小選挙区制による議席数はともかく、得票率では親中派は約4割占めていましたので、まったく根拠がない予測でもありませんが)

 

****香港区議選:中国共産党は親中派の勝利を確信していた(今はパニック)****

<香港デモ隊は一握りの「暴徒」で、その他の「声なき多数派」は親中派を支持している――それは中国が仕組んだプロパガンダではなく「信仰」だった。人民日報や環球時報のジャーナリストたちに聞いてわかった中国指導部の驚くべき慢心ぶり>

 

(中略)この結果に中国の報道機関はパニックに陥った。なんとか中国共産党に有利なように情報操作ができないかと慌てたのだ。

 

香港では民主派の勝利が予想されていたが、中国メディアの編集者たち(と背後の中国政府当局者たち)は、親中派の圧勝を確信していたようだ。自分たちが発信するプロパガンダに操られていたのだ。(中略)

 

用意されていた「親中派圧勝」の原稿

それによれば(中国の政府系英字紙チャイナ・デイリー、共産党機関紙人民日報系のタブロイド紙である環球時報、および人民日報など中国系)各紙とも、選挙前夜には親中派圧勝の予定稿を作っていた。その中には、親中派の大物議員として知られる何君堯のような候補が得票数を伸ばすという予想もあった。(中略)

 

この見当外れの予想からは、厄介な問題が透けて見える。中国共産党の上層部が、香港について自分たちが発信したプロパガンダを信じ込んでいるという問題だ。(中略)

 

チャイナ・デイリーと環球時報は、投票日当日に出した記事でも親中派の勝利を予想。高い投票率は「香港の混乱がこれ以上、続かないようにという市民の願いのあらわれ」だと主張していた。予想が外れた場合に備えておく試みは、ほとんどなかった。

 

中国共産党の指導部は、選挙前に親中派が主張していた言葉を、本当に信じていたようだ。親中派は、林鄭月娥行政長官が繰り返し「サイレント・マジョリティー(声なき多数派)」と呼んできた香港の一般市民は、抗議デモを続ける民主派に批判的だと主張してきた。

 

だがこの主張は、事前の世論調査によって覆されていた。各種世論調査は、香港の一般市民が警察に不信感を抱いており、抗議デモにおける暴力には不満を感じながらも、その責任は主に政府にあると考えていることを示していた。

 

多くのアナリストにとって、今回の選挙での最大の注目は、民主派が過半数の議席を獲得するかどうかだった。それなのに中国の各種メディアは、親中派が前回以上に民主派に差をつけて勝利すると予想して原稿を作成していたのだ。

 

なぜ、これほどの大きな誤算が生じたのか。最大の問題は、中国共産党から香港の世論操作を任されていた人々が、その成果の報告も自分たちで行っていたことだった。

 

これを行っていたのが、中国政府の香港出先機関である香港連絡弁公室だ。同機関は本土と香港の統合を推し進めるのが表向きの任務だが、実際には親中派の政治家をまとめたり共産党系の会報を出す役割などを果たしている。また、中央政府のスパイもする。

 

「指導部の望む情報」だけを提出

香港で長引く抗議デモは連絡弁公室にとって大きな失態であり、「サイレント・マジョリティー(声なき多数派)説」は彼らにとって、名誉挽回のための策だった。この説を裏づける資料のみを中国側に提出し、否定的な材料は全てもみ決していたのだろう。

 

だがもちろん、共産党指導部が一つの情報入手経路にだけ頼るということはない。(中略)共産党もそれは自覚しており、情報は複数の手段を使って入手している。(中略)国営新華社通信のスタッフなどが作成する内参(内部参考資料)もその一つだ。

 

問題は、ますます疑い深くなってきている習近平体制の下では、こうした内参さえもが、その内容を「指導部の望む情報」に合わせるようになっていることだ。

 

計画の失敗は「忠誠心が損なわれている兆候」に仕立て上げられる可能性がある。特に分離主義に関連のある問題についてはその傾向が強く、習は2017年、「分離主義との戦い」の失敗を理由に新彊ウイグル自治区の共産党員12000人以上を調査している。

 

香港は(習にとって)政治的には新彊ウイグル自治区ほど危険な場所でなないが、リスクが高い地域であることに変わりはない。

 

だが政治的なインセンティブがあることで、複数の情報源が指導部にとって「聞こえのいい論調」を繰り返し、指導部はそうした情報の信頼性が高いと確信するようになっていくのだ。(中略)

 

大敗の結果を受け、考え方も変わるかもしれない。しかし今のところは、これまでの「信仰」をさらに強化する方向の報道ばかりだ。

 

国有メディアはすべてをデモ隊と、アメリカの「選挙干渉」の責任とし、中国共産党の根深い外国スパイ恐怖症を悪化させている。いずれ誰かが詰め腹を切らされることになるのだろうが、それもきっと人違いである可能性が高い。【1126日 Newsweek

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【中国の香港支配強化に障害となるアメリカの「香港人権・民主主義法案」】

共産党支配、習近平氏の一強体制のゆがみを感じさせる話ですが、中国指導部の読みが大外れしたことで、その衝撃は大きく、そして反動も大きなものとなることが懸念されます。

 

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そこで、習近平政権は、今後、立法会選挙の仕組みを変える可能性すらあり、香港の自治権を制限する方向に動く可能性がある。「一国二制度」は認めても、香港はあくまでも中国の一部であり、北京に刃向かうことは許さないという立場である。【1130日 JBpress 舛添 要一氏】

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そうした動きにとって障害となるのが、アメリカ議会が可決し、トランプ大統領も渋々認めた「香港人権・民主主義法案」です。

 

****ポピュリズム横行する民主主義と「幸福な監視社会」中国の相克****

・・・・そのような北京政府の前に立ち塞がっているのが、国際社会、とりわけアメリカである。

 

中国の監視社会の酷さは、ウイグルへの弾圧が典型であるが、習近平による非公開演説や収容者の家族との想定問答集などの内部文書を1116日にニューヨークタイムズが入手して公開した。

 

その中で、習近平が「容赦するな」と喝破したことが暴露されている。これは「幸福な監視社会」が牙を剝くと、どのような弾圧社会になるかを示しており、世界に衝撃を与えた。

 

そして、アメリカ議会では、1015日に下院で可決された「香港人権・民主主義法案」が、上院でも1119日に全会一致で可決された。この法律は、香港で「一国二制度」、つまり「高度な自治」が機能しているかどうかを毎年検証し、議会に報告することをアメリカ政府に義務づけるものである。もし人権侵害などが確認されれば、香港への優遇措置を見直すことが可能となり、民主派を支援する内容となっている。

 

この米議会の決定に対して、中国は内政干渉だとして猛反発し、対抗措置をとることを明らかにした。そこで焦点になっていたのが、法案に必要な署名に(米中貿易協議への悪影響を懸念する)トランプ大統領が応じるか否かであった。(中略)

 

今のトランプは再選されるために役立つことは何でもやる、再選にマイナスになることは何もやらないという一貫した姿勢である。結局、27日には、「香港人権・民主主義法案」に署名し、その結果、法案は成立した。これに対して、中国は、「重大な内政干渉だ」として、報復措置をとることを示唆した。(中略)

 

習近平政権にとっては、香港や台湾を中国の不可分の領土として中国共産党の支配下に置くことが政策目標であり、その基礎が崩れるような事態は何としても避けたいのである。

 

しかし、米中貿易摩擦をこれ以上に悪化させたくないので、アメリカを刺激しないように慎重に行動してきた。香港に直接介入しなかったのも、そのためである。

 

しかし、アメリカが法律まで制定して香港の行方について「内政干渉」するに及んで、北京政府としても何らかの対抗措置を考えざるをえなくなっている。それがどのようなものになるか、これから2週間の中国の動きを注目しなければならない。

 

世界の覇権をめぐる米中の争いで、軍事や経済については、中国が猛烈な勢いでアメリカに追いついている。問題は、民主主義という価値観について、どのような立場をとるかということである。

 

世界中でポピュリズムの嵐が吹き荒れ、民主主義の統治能力が問われるなかで、「幸福な監視社会」を実現させた中国である。共産党の支配のほうが安定性を含め、統治が上手く機能しているのではないかという意見が世界中で力を持ち始めている。

 

そのような状況で、香港で民主派が勢力を伸ばしていることは、政治制度が覇権争いの重要な柱であることを再認識させている。【1130日 JBpress 舛添 要一氏「香港情勢を甘く見た中国、巻き返しに出る可能性も」

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トランプ大統領は、米中貿易協議への悪影のリスクより、ウクライナ疑惑などで議会の支持が絶対必要な状況で、香港問題・人権を軽視しているとして議会を敵に回すリスクの方を重視したということでしょう。

 

【香港問題の中国政治への波及は?】

香港の問題が、中国の香港政策にどのように影響してくるか・・・というのは上記記事にもあるとおりですが、もうひとつの観点は、香港の問題が中国政治にどのように影響するのかということです。

 

もちろん、習近平指導部の失態ということで、権力闘争の重要なカードにはなるでしょうが、一般的には中国共産党の一党支配という政治体制そのものへの影響は考えられない・・・といったところでしょう。

 

実際、個人的にもそのように思いますが、香港に隣接する広東省では、“飛び火”的な動きも見られるとか。

 

****中国本土・広東省で住民と警察衝突 香港混乱飛び火か 関連書き込み次々削除*****

中国広東省茂名(ぼうめい)市で、火葬場の建設に反対する地元住民と警官隊が衝突、負傷者が出た。米政府系のラジオ自由アジア(RFA)などが1日までに伝えた。

 

抗議活動に参加した住民らは、広東省に隣接する香港での反政府デモのスローガン「時代革命(革命の時代だ)」を叫んでいたという。

 

中国当局は香港の混乱が本土に飛び火することを厳戒している。茂名での衝突は本土で一切報じられておらず、関連の書き込みなども次々と削除されている。

 

茂名の公園予定地に火葬場が建設されることを知った住民ら数百人が28、29日の2日間にわたって街頭で抗議活動を展開。警官隊は催涙ガスを発射したり、警棒で住民を殴打したりして押さえ込み、約50人が逮捕された。高齢者や小学生も負傷したという。

 

インターネット上には横倒しにされて破壊された警察車両や、催涙ガスを浴びてせき込む住民らを映した映像が拡散した。【121日 産経】

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地方政府による一方的土地利用に対する住民の抗議デモ・警官隊との衝突といった類は、中国では日常茶飯事であり、基本的には広東省茂名市の騒動もその一つでしょう。

 

ただ、「時代革命(革命の時代だ)」といったスローガンが使用されているように、広東省は香港との関係が強く、中国政府としても警戒を強めています。

 

****香港デモ魂は既に広東へ、習主席も恐れる革命の揺籃****

「(国家主席の)習近平(シー・ジンピン)は自信満々のはず。では何故、北京は香港の動きを『カラー革命』という大げさな言葉まで持ち出して恐れるのか。

 それは当然だ。香港と隣の広東省が100年前、中国革命の揺籃(ようらん)の地だった史実を皆、忘れている」

中国近現代史に詳しい知識人がつぶやいた。既に現役を退いたこの人物は広東、湖北という中国革命の引き金を引いた武装蜂起の拠点にも住んだ経験がある。

 

とはいえ監視が厳しい中国で香港の運動の波が広東に押し寄せるなど夢物語。中国各地の庶民から聞こえるのも中国政府と歩調を合わせた厳しい香港デモ批判ばかりだ。その時は「老人のざれ言」と気にもとめなかった。

 

ところが最近、耳にしたエピソードは、老知識人の慧眼(けいがん)を証明していた。広東には大陸各地とは違う特殊性が確かにあった。

 

「信じられないかもしれないが、香港で長く続くデモは、広東省の普通の家庭で大論争を巻き起こしている。親子が分断され、家庭崩壊につながる例だってあるんだ」。聞き捨てならない話は、香港と広東省を頻繁に行き来する中国人ビジネスマンらの口から出た。

 

見逃していたポイントは、香港と広東の頻繁な人の往来。人が行き来すれば互いに友情が育まれ、恋愛感情も生まれるのだ。

 

香港デモ巡り広東の家庭分断

その舞台は香港の大学や専門学校である。ここでは地元出身ではない中国大陸から来た学生が数多く学ぶ。比率が高いのは広東省出身の学生、研究生だ。

 

抗議活動の拠点である香港の名門、中文大学の中国研究部門の教員は「研究生に限れば78割が中国大陸出身。香港で生まれ育った学生の方が少数派だ」と内情を明かす。(中略)

 

ある大陸出身学生を巡る悲劇を2つ紹介したい。広東省で暮らすごく普通の品行方正な夫婦の娘、Aさんは香港で学んでいる。Aさんが付き合っているボーイフレンドは、香港で生まれ育った普通の大学生。当然、周りの学生と同じく積極的にデモに参加している。

 

Aさんはボーイフレンドの影響もあってデモに傾倒する学生らにかなり同情的だ。ただ、自らはデモに行かない。共産党支持の親からデモには絶対行くなと厳命された事情もあった。

 

それでも広東の故郷に帰るとデモがどうしても話題になる。娘を前に両親は過激な行動に走る香港の若者らを「役立たず」「ただ飯食い」呼ばわりする。香港人ボーイフレンドとの付き合いもこころよく思っていないため、いきおい、彼氏の悪口まで口に出てしまう。

 

Aさんは頭が固い親に反発し、香港での生活で喚起された自分の政治信条をぶつける。結局、家庭内でデモを話題にすると深刻な親子げんかになるため、その話題を避けるしかなくなった。実家では会話も弾まず、気まずい。帰郷の回数も極端に減ってしまった。

 

香港のデモは今や広東省の家庭の不和、分断、崩壊まで招きかねない極めて敏感な話題なのだ。こんな例は枚挙にいとまがない。香港の若者の間で叫ばれている「時代革命」の魂は、少し違う形で既に広東側にじわり浸透。水面下で様々な議論を呼び起こしている。(中略)

 

香港と広東省珠海を片道40分ほどのバス便で結ぶ全長50キロメートルの海上大橋(北京展覧館の展示から)

最近は香港と広東省珠海が全長50キロメートルの海上大橋でつながれ、片道たった30分余り。

 

香港の九龍サイドの新駅には広東省側から直接、高速鉄道が乗り入れる。おカネさえあれば広東省から香港に日々通える。人の出入りが頻繁だからこそ、様々な問題が起きるのだ。

 

中国政治の中心、北京から離れた「辺境」香港の政治運動であっても、長い意味では国家を変える力がある。それは冒頭で触れたように歴史が証明している。主人公は近現代史に名を残す革命家、孫文(18661925年)。マカオ北方の広東省香山県(現中山市)の農家の生まれだ。

 

広東人が顔を合わせれば必ず金もうけの話をするのがマナーだ――。こう揶揄(やゆ)される半面、広東は多くの偉大な政治家も輩出する不思議な土地だ。進取の気性に富み、海外へ勇躍する華僑も多い。中国の「改革・開放」政策の下、広東省一帯が「世界の工場」になった理由もここにある。(中略)

 

今年は多数の犠牲者を出した1989年の天安門事件から30年。ようやく世界2位の経済大国に躍り出たのに、その成果も灰じんに帰しかねない。当面は香港トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)と香港警察を前面に立てた締め付け、いわゆる「統治システム」の強化で対応するしかない。(後略)【1112日 編集委員 中沢克二氏 日経】

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こうした状況での“想定外”の区議選大敗・・・中国指導部としては強い危機感を持っていることでしょう。

 

香港では混乱が続いています。“香港で大規模デモ 若者に警察が催涙弾、収束の見通しなく”【121日 毎日】

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