孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

グルジア 対立を煽る1発の不発ミサイル

2007-08-12 13:22:20 | 国際情勢

(写真は南オセチア自治州との境界を警備するグルジア兵士 “flickr”より By
randblid)

世間ではアフガンの韓国女性人質2名解放のニュースもありますが、今日はちょっと縁遠い国の話。
場所はグルジア。
正直なところ私のグルジアに関する知識は「多分、旧ソ連から独立した国じゃないかな・・・、でも、なんかときどき聞くことがあるな・・・ああ、相撲の力士、黒海の出身国だ。」
まあ、その程度でした。



そんなグルジアの名前をここ数日目にします。
今月6日、1発のミサイルがグルジア領土に着弾しました。
首都トビリシの郊外50キロにあるツィテルバニ村に着弾したミサイルは全長4.8メートル。
不発だったため死傷者はありませんでした。
グルジア政府は「ロシアの戦闘機が領空侵犯して投下したものだ。」と、以前から緊張関係にあったロシアを激しく非難しています。

ロシアは一貫してこれを否定しており、ロシア参謀総長は「グルジアのロシアに対する非難は挑発だ」とも発言しています。

着弾した地域はロシア国境沿いにあり、グルジアからの分離独立を主張する南オセチア自治州周辺の紛争地帯の端に位置しています。
同地域の支配権は親ロシア派の反政府勢力が握っており、ロシア軍主導の平和維持軍と共同監視に当たる軍事監視団、さらに欧州安保協力機構(OSCE)の軍事監視団が派遣されている地域だそうです。

更に、11日には「ロシア政府は10日、グルジアがコドリ川に病死したブタの死骸を投棄したとしてこれを非難、「生物テロ」に等しいとする声明を発表した。」(AFP)というニュースもありました。
グルジアのミサイル非難に対するロシア側の反発のようです。

今のところミサイル事件の真相はまだ藪の中です。
傍目には少し滑稽なやり取りにも思えますが、特にグルジア側の反応は厳しいものがあります。
その理由はグルジアの政治・社会情勢にあるようです。

北海道より少し小さいぐらいのグルジアは黒海に面し、カフカス山脈でロシアに接しています。
スターリンの出身地でもあります。
国内にはグルジア人以外に、オセチア人、アブハジア人が居住しており、それぞれグルジア中央政府からの分離独立を主張(国際的には未承認)して、独自の支配地域(南オセチア自治州(自称“南オセチア共和国”)、アブハジア自治共和国)を形成、ロシアを後ろ盾にしてグルジア中央政府と対峙しています。
これまでに“民族浄化”や難民の悲劇も起きています。

更に、ロシアのチェチェン共和国とも国境を接している関係で、チェチェンゲリラが事実上支配している地域もあるようです。
以前はアジャリア自治共和国という分離独立勢力もありましたが、これは2004年にグルジア中央政府が押さえ込みました。

さして大きくもない国内に、このようなロシアと親しい分離独立勢力を多く抱えている状況にあるため、1発のミサイルが激しい対立・非難応酬を引き起こしているようです。

激しい非難の応酬は、国民の視線を意識して更にエスカレート、後には引けないチキンレースとなって、ついには武力衝突に・・というのはお決まりのコースです。
今後OSCE等の調査が進むと思いますが、不発弾で残骸はあるもののグルジアも旧ソ連でロシアと同じ兵器を使用しているようで、特定には問題もあるかも。
いずれにしても冷静な対応が求められることは言うまでもないことです。


(写真はグルジアと南オセチア自治州の境界となる山脈 “flickr”より By Henning(i))


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