孤帆の遠影碧空に尽き

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台湾  米中対立激化で強まる中国の軍事的脅威 一方、戦える状況にないとの指摘もある台湾軍

2020-09-30 22:39:53 | 東アジア

(蔡英文総統(中央)と厳徳発国防部長(左から2番目)の下で軍は深刻な機能不全の状態に【9月22日号 Newsweek日本語版】)

 

【米中対立の最前線にあって、強まる中国の軍事的脅威】

米中対立が激化するなかで、アメリカが支援を強化する一方で、中国はけん制を強めるという形で、台湾がその前面に立っていることは、9月19日ブログ“台湾 米中対立のなかで中国との軋轢も激化 「民主主義の防波堤」とは言うものの・・・”でも取り上げました。

 

****中国軍戦闘機や爆撃機など19機、台湾の防空識別圏に進入****

中国は、クラック米国務次官による李登輝・台湾元総統の告別式参列に反発し、台湾への威嚇効果を狙った台湾海峡付近での軍事演習を行った。

 

台湾国防部(国防省)によると、19日午前には戦闘機「殲(J)16」や爆撃機「轟(H)6」など19機の中国軍機が台湾の防空識別圏に進入した。中国軍機による進入は2日連続で、前日の18機を上回った。

 

中国が懸念するのは、クラック氏訪台が、将来的な米国務長官や国防長官の訪台への布石となることだ。米台が高官レベルで安全保障協力を公然と強化すれば、中国が目指す台湾統一への障害になる。

 

共産党機関紙・人民日報系の環球時報は19日の社説で、国務長官などが訪台した場合、中国軍がミサイルを発射して台北市の総統府上空を通過させる可能性があるとして、「米台は状況を見誤るな」と主張した。【9月19日 読売】

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こうした中国側の反応を、アメリカは「脅し」と批判。

 

****中国の台湾海峡演習は「脅し」=南米で経済侵略に警戒呼び掛け―米国務長官****

南米4カ国を歴訪中のポンペオ米国務長官は18日、中国軍が台湾海峡で同日開始した実戦演習を「われわれは(李登輝元総統の)告別式のために使節団を送っており、中国は明白に軍事的な脅しで応じた」と非難した。ガイアナのアリ大統領と会談後の記者会見で語った。(後略)【9月19日 時事】 

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ただ当事者の台湾としては、事態が制御できない状況になることは避ける必要があります。

 

****台湾総統、中国共産党に自制要求 連日の軍事威嚇に****

台湾の蔡英文総統は20日、中国が多数の軍用機を連日、台湾海峡の中間線を越えて台湾側に進入させたことについて「台湾人が警戒を高め、国際社会も中国がもたらす脅威を理解することにつながる」と指摘、共産党には自制して挑発行動を取らないよう要求した。総統府が明らかにした。(後略)【9月20日 共同】

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社会でも不安が高まっているのは事実でしょう。

 

****中国軍機が頻繁に活動、台湾で不安高まる―米メディア****

2020年9月21日、ボイス・オブ・アメリカの中国語版サイトは、最近中国軍機が頻繁に活動していることに台湾人は不安を感じていると伝えた。

記事は、「台湾国防部の報告によると、この4カ月、中国人民解放軍の空軍機が台湾海峡の中間線を越える頻度と数が増加している」と紹介。

 

台湾国防部は、中国人民解放軍が戦争準備を積極的に進めており、台湾攻撃能力が増強されているため、台湾軍はコンピューターを使った図上での漢光演習で最も厳しい戦闘プランを設定し、新たな事態の発展と新たな脅威に対応したことを明らかにしたと伝えた。

こうした点を踏まえて台湾の淡江大学の戦略研究教授の黄介正(ホアン・ジエジョン)氏は、「私は普通の民衆が実際の軍事衝突に対する心の準備ができているとは思わない」との見方を示した。

記事は、台湾の大学院生の呉さんの例を紹介。呉さんは中国軍機の活動が不安を引き起こしているとし、「中国軍はわざと騒ぎを起こしてわれわれの対応能力を見ているのだと思う」と語った。また、台湾男性として最終的に軍事任務に就くよう召集されるのではないかと心配していると述べた。

また記事は、台湾ヤフーの調査では、9月初めの時点で64%の人が中国との衝突を心配しており、衝突するとは思わない人は33.5%だったことも伝えている。【9月22日 レコードチャイナ】

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中国側は、そうした台湾側の不安を煽ることで、状況を有利な方向に変えたいとの思惑も。

 

****中国の基地からJ-20戦闘機を飛ばせば15〜20分で台湾を爆撃できる―台湾メディア****

2020年9月26日、中国紙・環球時報は台湾メディア・中時新聞網の報道を引用し、中国のJ-20戦闘機は15〜20分で台湾に到着し爆撃できると伝えた。

記事は、浙江省衢州市の市民が衢州空軍基地に着陸するJ-20ステルス戦闘機の映像を撮影したことを紹介。「このJ-20は安徽省蕪湖空軍基地の王海大隊所属の戦闘機で、衢州空軍基地に最近配備されたようだとの分析がある」と伝えた。(中略)


また中時新聞網は、「J-20がミサイルを搭載してこの基地から離陸した場合、時速2000キロ近い速度で7〜8分飛行すると、台湾北部にある戦闘機は長距離空対空ミサイルの射程圏内に入り、15〜20分で台湾上空から爆撃できる」と指摘した。【9月28日 レコードチャイナ】

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台湾側は「中国には、今は“その気”はない」と社会不安を和らげる対応。

 

****中国、台湾との全面戦争に備える兆候ない=国防部長****

台湾の厳徳発国防部長(国防相)は29日、中国が台湾との全面的な戦争の準備をしている兆候は見られないとの見解を示した。

厳氏は議会で「中国共産党は台湾に対する挑発を続けているが、今のところ本格的な戦争の準備ができているという兆候は見られない」と指摘。中国が部隊を内陸部から台湾に面した東部沿岸に移動させる様子はないと説明した。

台湾の軍隊は平時の戦闘準備態勢を維持しており、警戒レベルを引き上げていないと述べた。

蘇貞昌行政委員長(首相)は議会で、台湾市民は自らの命と領土を守るべく戦い抜くと述べ、攻撃すれば高い代償を払わなければならないと強調した。【9月29日 ロイター】

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【まともに戦える状況にない台湾軍の実情】

「今のところ本格的な戦争の準備ができているという兆候は見られない」としても、万一、日増しに軍事力を増強している中国が(多大な政治的リスクを覚悟のうえで)実際に軍事進攻を決意した場合、台湾として軍事的に防衛することは極めて困難だろう・・・ということは素人考えでも想像できます。(その際のアメリカの対応は・・・わかりません)

 

しかし、「台湾市民は自らの命と領土を守るべく戦い抜く」とは言うものの、台湾軍の実情は“保有する戦車の半数はまともに動かない”といったように、「素人の想像」以上にお寒いものだとの指摘が。

 

****中国軍の侵攻で台湾軍は崩壊する──見せ掛けの強硬姿勢と内部腐敗の実態****

<アメリカ製の最新兵器をひけらかし万全の体制で中国を迎え撃つと息巻く台湾政府......実際には戦車は壊れ、自腹で修理部品を調達するよう若い兵士に強要する始末>

 

中国は台湾海峡周辺に軍隊を集結させ、台湾島の奪還には「手段を選ばない」と息巻いている。アメリカとその友好国としては、台湾が自力で中国軍の侵攻を食い止めてくれると信じたいところだ。

 

しかし現実は厳しい。今の台湾には現役の兵士が少な過ぎ、予備役の動員システムもお粗末過ぎる。それだけではない。驚くなかれ、保有する戦車の半数はまともに動かない。実戦で使えそうな武器はもっと少ない。

 

そのせいで、中国軍と砲火を交える前から尊い人命が失われている。政治家は血税で買ったアメリカ製の最新兵器をひけらかすが、軍の補給体制は旧態依然。だから、メンテナンスに必要な部品を自腹で買い求めていた若い将校が絶望して自ら命を絶った。

 

黄志劼(ホアン・チーチェ)は台湾軍の中尉だった。徴兵で入隊し、当初は空挺部隊に配属されたが、志願して将校になる道を選んだ。今は「将校なんて責任ばかり重くて給料は安い」と思われている時代なのに、だ。

 

黄は第269機械化歩兵旅団に配属され、補給物資の倉庫の担当係になった。(中略)だが4月16日の夜、黄(当時30歳)は基地の食堂近くの暗い階段で首をつった。(中略)

 

黄の母親は記者会見で、息子が上司からしごかれ、修理部品が足りないなら自腹で調達するよう、上官から圧力をかけられていたと訴えた。

 

実際、黄は市販の修理用ハンマーや消火バケツなど多くのアイテムを購入して、なんとか足りない物資を補おうと苦労していた。

 

議会の公聴会に呼ばれた国防部長の厳徳発(イェン・トーファー)は「兵士が自費で備品を購入することは軍規に反する」と述べた。「何かが壊れたり、欠損した場合は、必要な書類を作成し、しかるべき部署に提出して代替品を要求すればいい」

 

この発言、現場の将校や兵士には悪い冗談にしか聞こえなかった。実際、同じ公聴会で軍の監察官は厳の発言を否定し、部品を自腹で買ってこいという上からの圧力を兵士が受ける事例は「何度もあった」と認めている。

 

黄の死後、彼の担当していた倉庫を調べた監察官は、少なくとも31種類の部品が補充されていないことを確認した。

ちなみに、この第269機械化歩兵旅団は後方支援の部隊ではない。台湾北部の桃園市郊外に戦略的に配置された精鋭の戦闘部隊だ。中国軍が台湾に上陸し、首都・台北へ向けて進軍する事態に備え、地上戦でそれを阻止するのが任務とされている。

 

こんな精鋭部隊でさえ、物資の不足が深刻なのだ。その他の部隊の状況は想像するのも恐ろしい。

 

軍も政府も、有事に遅滞なく対応できる部隊の実態を公表していない。しかし毎年恒例の「漢光演習」を含め、シミュレーションによる机上演習の際には、兵員の90%が戦闘能力を保持し、兵器類の85%以上が実戦使用に耐えることを前提としている。

 

「そんな数字は無意味だ。何の現実的根拠もない」。そう切り捨てるのは、台湾の退役陸軍中佐で軍事評論家のジェームズ・ホアンだ。

 

「どれだけの戦車や銃が、本当に実戦で使える状態にあるのか。軍上層部には、それを知る手掛かりもないだろう。なぜなら、軍隊の底辺にいる兵士でさえ、いいかげんな数字を上司にあげているからだ。そうすれば将校連中はバラ色の絵を描き、上層部や政治家を喜ばせることができるわけだ」

 

使える戦車はわずか3割

第542装甲旅団の司令官だった退役少将の于北辰(ユィ・ペイチェン)は、黄の配属先ではあまりに多くの備品が破損または欠損していたため、正規ルートで交換を申請できない状況だったのではないかと推測する。

 

もしも正直に報告すれば、現在の軍の体制では「軍価格」の高額な部品の購入を求められ、どう考えても予算を超過する恐れがある。

 

それに正規ルートでの申請にはあきれるほど煩雑な手続きが必要で、経験の浅い下級将校の手に余るという。上層部の調査が入ることを嫌うから、上官もいい顔をしない。

 

そこで黄は、おそらく前任者たちの例に倣って書類を偽造して事態を隠蔽し、自分で穴埋めしようとしたのだろう。于はそう推測する。

 

ネット上のフォーラムをのぞいてみれば、補給部隊や武器庫管理の任務についてぼやく自称「退役軍人」の書き込みがいくらでも見つかる。

 

信じ難い話ばかりだ。自腹で部品を買った、書類や整備記録を偽造した、手抜きの修理作業を見逃してやった、装備点検や演習の時期が近づくと仕方ないから別な部隊から部品を盗んだ、などなど。

 

補給部隊での経験が長く、今も現役の曹長である陳(チェン※現役の軍人なので姓しか明かさなかった)は、悲しいけれどこれが現実だと認めた。

 

「実戦で使える」という文句をどう定義するかによるが、と前置きして陳は言った。「米国製であれ台湾製であれ、装甲兵員輸送車の90%程度は一応走れる状態にある。しかし車軸などの整備状況が悪いから、舗装道路を50キロも走れば動けなくなる」

 

キャタピラ式だと、もっと悲惨だ。「私の知る限り、走行可能な状態にある戦車や自走砲は約50%だ。運よく走行できても、搭載した兵器が使える保証はない。米軍の基準で言えば、まともに走れて武器も使える戦車は全体の30%程度だろう」

 

それだけではない、と陳は言う。大規模な演習が始まる時期を除けば、弾薬も燃料も恒常的に不足している。メンテナンスの人材も十分だったためしがないという。

 

「いま中国が攻めてきたらどうなるか」と陳は言う。「こちらの戦車に実弾を積み込み、走行できる状態に仕上げるまで何日か、あるいは何週間か待ってくれと、敵にお願いするしかない」

 

軍備削減のしわ寄せが

軍備の老朽化には、さまざまな理由が考えられる。だが元軍人たちの言い分には説得力がある。

元海軍大尉で、今は台湾国際戦略研究センターに所属する常漢青(チャン・ハンチン)に言わせれば、最大の問題は台湾軍のあまりにも急激な、そして拙速なリストラだ。

 

1990年代後半から2000年代初頭にかけて、台湾は兵力を50 万人から20万人以下に削減する方針を打ち出した。この改革の大半は台湾国防部の作戦・計画参謀本部が立案したもので、実を言えば常自身も当時のスタッフの1人だった。

 

「政治家は、軍の規模を縮小して最終的に徴兵制を廃止したいと考えていた。軍の上層部も、その要望に応じるしかなかった。しかし中国の脅威が強まっていることを考えれば、戦闘部隊の削減はあり得なかった。ならば、代わりにどこを削減すればいいか。そう、まずは補給部隊だ。前線で戦う部隊がいれば後方支援の部隊は必要ないと言わんばかりの対応だった」

 

こうして補給部隊は予算も人員も大幅に削減された。そしてたちまち、膨大な整備作業のニーズに応えられなくなった。

 

一方で、前線部隊の下級将校や兵士らは必要な技術も知識もないまま、複雑な整備作業や交換用部品の在庫管理を任された。その結果、整備不良や故障が増え、交換用部品やリソースの配分が狂う悪循環に陥った。(中略)

 

台湾国防部には本稿の内容について、何度もコメントを求めた。だが返ってきたのは「国防部はよく知っているメディアとしか話をしない。独自の調査には返答しかねる」という言葉だった。

 

いざとなればアメリカに

今回取材を行った軍の現役および元幹部たちはいずれも、国防部長の厳こそが、長年台湾軍をむしばんできた機能不全の指導部の典型だと口をそろえた。(中略)

 

国際戦略研の常も、台湾の防衛能力をことさらに誇示する蔡政権の姿勢には問題があると語る。彼のみるところ、蔡政権の体質は敗北主義で、中国との関係は(軍隊ではなく)政治で解決すればいいと考えている。

 

「本音の部分では、現政権は台湾が軍事力で中国に対抗するのは無理だと考えている」と常は言う。「今の強硬姿勢は見せ掛けにすぎない。アメリカから買った最新兵器を誇示するだけで、本当に中国が攻めてきたらアメリカが助けてくれると信じ、そういうシナリオに懸けている」

 

しかし台湾の新聞を読むまでもなく、中国側のスパイは台湾軍の兵士が兵員輸送車の部品をネット通販で探しているのを知っている。台湾軍がまともに戦える状態にないことも把握している。しかし、それで台湾の軍人には祖国防衛の覚悟がないと結論するのは間違いだ。于は言う。

 

「退役軍人の1人として、これだけは言える。わが軍の兵士や将校団の祖国防衛に懸ける決意には一点の曇りもない。いざ戦場に立てば、彼らは立派に任務を果たす。たとえ装備が足りなくても」【9月22日号 Newsweek日本語版】

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上記指摘がどこまで本当なのかは知りません。

ただ、「現政権は台湾が軍事力で中国に対抗するのは無理だと考えている」のは事実でしょう。

 

その上での、強硬姿勢の危うい「綱渡り」・・・・難しい立場です。

 

****米国連大使、台湾の国連加盟を支持****

クラフト米国連大使は29日、台湾政府などが主催したオンライン会合に出席し、「世界は台湾が国連に完全加盟することを必要としている」と述べ、台湾の国連復帰を支持する考えを示した。台湾は中国の国連加盟を受け、1971年に国連を脱退している。

 

これを受け、中国の国連代表部は「中国の主権と領土保全を損なう発言で、強い憤りと反対を表明する」と声明を発表。台湾との接触をやめるよう米国に要求した。トランプ米政権は中国に対抗し、台湾を支援する姿勢を強めている。

 

クラフト氏は、台湾の民主主義を称賛し、「世界のための良い力だ」と指摘。その上で「特に公衆衛生と経済発展に影響を与える問題に関して、世界は、国連システムへの台湾の完全な参加を必要としている」と述べ、台湾が参加しない国連は「世界を欺いている」とも訴えた。(後略)【9月30日 産経】

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台湾にとっては本来喜ぶべき話でしょうが、こういう話が表立ってされるようになれば、中国との緊張もさらに一段レベルアップします。

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