孤帆の遠影碧空に尽き

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キューバ  オバマ大統領の“レガシー”は引き継がれるのか? 国内弾圧を続けるキューバ当局

2016-12-19 20:54:43 | ラテンアメリカ

(キューバの首都ハバナの店で、キューバ産のラム酒を買う観光客ら【12月17日 AFP】)

キューバとの合意を打ち切りも警告するトランプ氏
オバマ大統領が“レガシー”とするキューバとの歴史的な国交回復。

トランプ次期大統領は選挙戦序盤ではキューバとの国交回復を評価する姿勢を示していましたが、その後は批判的な発言に転じていて、カストロ前議長死去後の11月28日には、自身のツイッターで、キューバ政府が自国民および米国との関係改善に後ろ向きであれば、キューバとの合意を打ち切ると警告しています。

****米国の対キューバ政策、逆戻り? トランプ氏が体制批判****
歴史的な国交回復を昨年実現したばかりの米国の対キューバ融和政策に暗雲が立ちこめている。トランプ次期米大統領は26日、フィデル・カストロ氏の死去を受け、反カストロ体制の姿勢を当選後初めて鮮明にした。

対キューバ外交の転換はイラン核合意と並び、国際協調を目指したオバマ政権のレガシー(遺産)だ。トランプ氏が選挙中に掲げていた「レガシーの否定」が現実味を帯びてきた。
 
トランプ氏は声明で「今日、世界は60年近く自国民を抑圧してきた残忍な独裁者の死去を記録した」とし、カストロ氏の「レガシー」として「銃殺隊、盗み、想像を絶する苦悩、貧困、基本的人権の否定」と列挙した。
 
さらに「我々の政権は、キューバ国民が繁栄と自由を迎えることを保証するため、できる限りのことを行う」と強調。「キューバは全体主義的な島のままだ。私の望みは、長い恐怖から解かれ、すばらしいキューバ国民が自由に暮らせる未来に向かう転換点に今日がなることだ」とし、現体制との歩み寄りを否定した。
 
またペンス次期副大統領もツイッターで「暴君カストロが死んだ。新しい希望の夜明けだ」と同調した。
 
一方、今年3月、現職米大統領として88年ぶりにキューバを訪問したオバマ氏は「60年近く両国は争いや深刻な政治的対立で刻まれた関係だった。我々は協働し、過去から未来に目を向けた」とカストロ氏に弔意を示した。トランプ氏と対照的な内容だ。
 
米議会では共和党を中心に、伝統的に対キューバでの強硬論が多く、国交回復や制裁解除には否定的だ。議会の承認が必要な対キューバ禁輸措置の全面解除は困難なため、オバマ氏は大統領令で貿易や投資、渡航、金融に関する規制を段階的に緩和してきた。
 
トランプ氏は大統領選の序盤、キューバとの関係改善に前向きな姿勢も示していた。しかし次第に共和党の方針に歩調を合わせ、オバマ氏の大統領令を覆すことも明言していた。
 
背景には、フロリダ州を中心に100万人以上いる米国内のキューバ系住民の存在がある。カストロ体制に反発する亡命者が多く、キューバに歩み寄ることは選挙で利点がなかった。
 
トランプ氏がオバマ氏の政策を覆すことは、手続き上は可能だ。しかし国交回復を受けて米国企業のキューバへの投資も始まり、今月にはアメリカン航空が定期便を就航させる。活発化しつつある民間の経済活動を損ないかねない。
 
トランプ氏の声明に対して、キューバ側は27日未明(日本時間同日夕)までに公式の反応を示していない。【11月28日 朝日】
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ビジネスマン・トランプとしては、もっと相手を追い込んで、有利な取引を・・・というところでしょうか。

一方EUは、こうしたアメリカの不透明な方向にかかわらず、キューバとの関係を改善する方向を選択しています。

****EU キューバと関係正常化で合意****
EU=ヨーロッパ連合は一党独裁体制を敷くキューバに対して20年にわたって続けてきた経済協力などへの制限を解除し、関係を正常化することでキューバ側と合意しました。

EUは、1996年、共産党による独裁体制を敷くキューバで、反体制派への弾圧が行われているなどとして政治・経済両面で関係を制限してきました。

EUのモゲリーニ上級代表は12日、ベルギーのブリュッセルにキューバのロドリゲス外相を招きこうした制限を解除し、政治対話と貿易や投資の活性化を通じた経済協力を強化する合意文書に署名しました。

EU各国からは去年7月、アメリカのオバマ大統領がキューバとの国交回復に踏み切ったことをきっかけに迅速な関係改善を求める声が強まっていました。

キューバではカストロ前国家評議会議長が先月、死去し、EUのモゲリーニ上級代表は、改めて哀悼の意を伝えた上で20年ぶりの関係正常化について「新たなページを開く日となった」と述べて、経済の立て直しを進めるキューバを支援していく考えを示しました。

一方、オバマ政権を引き継ぐトランプ次期大統領がキューバとの国交回復に批判的な姿勢を示していることについては「われわれの関係はアメリカの方針に左右されない」と影響を否定しました。【12月13日 NHK】
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経済苦境・財政難が続くキューバ
アメリカの経済制裁解除が遅れるなかで、キューバ経済は苦しい状況が続いています。
その“苦しさ”を示すような話も。

****債務はラム酒で返させて、130年分 キューバがチェコに申し出****
財政難のキューバがチェコに対する債務をラム酒などで返済すると申し出ていたことが分かった。チェコ財務省が16日、明らかにした。
 
チェコ財務省がAFPに送った声明によると、キューバ側は債務返済に充てる物品のリストを提示。これには数銘柄のラム酒も含まれていたという。
 
チェコのメディアによるとキューバの債務は約70億コルナ(約320億円)とされる。しかし財務省によると、返済についての話し合いは昨年末に始まったばかりで総額は未確定だという。

この負債の大部分は、1993年にチェコとスロバキアに分裂する以前のチェコスロバキア時代のキューバとの経済的結びつきの産物だ。
 
チェコ日刊紙ドネスは、レンカ・ドゥパコバ財務副大臣がラム酒での債務返済は「興味深い選択肢」だと述べたと報じた。
 
同紙によると、1人当たりのビール消費量が世界で最も多い飲酒大国チェコは2015年、キューバから892トン、5300万コルナ(約2億4000万円)相当のラム酒を輸入した。
 
この輸入実績を基に計算すると、債務全額がラム酒で返済されるとすれば、チェコは今後130年分のラム酒が手に入ることになる。
 
しかし同紙によるとチェコ財務省はこの代物返済案に反対しており、少なくとも一部は現金で返済してもらわなければならないと考えているという。【12月17日 AFP】
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“債務返済に充てる物品のリストを提示”ということで、キューバも「全額をラム酒で」と言っている訳ではないようです。

観光関連は活況を呈するも、利益は未だ全体に及ばす
キューバでも、アメリカからの旅行者が増加する状況で、観光関連の業種はそれなりに活況を呈しているようです。

****キューバで民泊市場拡大 観光客急増で一般家庭にもビジネス好機 競争激化****
フィデル・カストロ前国家評議会議長が死去したキューバでは、急増する海外からの観光客向けに「民泊」ビジネスが注目されている。

最大手の米民泊仲介サイト「エアビーアンドビー」(Airbnb)も昨年キューバに参入。
同国の経済改革の柱である観光業は、一般家庭にとっても魅力的な収入源となっている。
 
富裕層が多く住む首都ハバナの新市街にある2階建ての一軒家。家主のイリキス・マルティネスさん(41)は1階で家族5人で生活し、2階は2組の旅行者に部屋を提供して生計を立てている。「年内は予約でいっぱい」と好調で、現在、3部屋目を貸すため政府に申請中だ。
 
キューバ政府は貧困対策として一定の個人事業を行うことを認めており、民泊もその一環。2000年に認可され、民泊ビジネスは浸透している。
 
イリキスさんも、米国に渡った親族から譲り受けた一軒家で同年から民泊を始めた。政府に対し、認可料月65ペソ(約7700円)のほか、1人当たり1泊40ペソの宿泊料のうち10%を支払う。

観光シーズンとなる最盛期の11月〜2月以外は部屋が空くこともあるが、それでも月3千円程度というキューバ人の平均収入と比べると、収入ははるかに多い。
 
キューバの観光業は14年に米国との国交正常化交渉を開始してから特に注目を集め、15年は観光客340万人を突破し、今年はそれを上回るペースで増加。日本からは15年に前年比約80%増の約1万4000人が訪れた。
 
キューバへの外国資本のホテル進出も目立つが、供給は追いつかず、民泊市場も拡大を続けている。エアビーアンドビーに登録されているのは、キューバで4千件に上るという。
 
イリキスさんも同社のサービスに加入し、これまでの海外に住む友人、親族を頼った口コミでのビジネスから大きく変わった。「メールを早く返信しないと、顧客を逃してしまう。競争相手が多くて大変」と、市内のWi−Fiが使える区域に通う毎日だ。
 
フィデル氏の死去で、経済、政治体制に目立った変化は予想されていないが、イリキスさんは「2、3年後はどうなるのか分からない。今こそが私のビジネスの好機」と話した。【12月18日 産経】 
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しかし、こうした変化のもたらす利益は社会全体には及んでいないのが実情です。

****<キューバ>利益行き渡らず…遅い変革、米亡命相次****
キューバが2015年7月に米国と国交を回復してからほぼ1年半になる。反米の象徴だったフィデル・カストロ前国家評議会議長は先月25日に死去。キューバの針路を探った。
 
フィデル氏の遺灰が埋葬された今月4日。服喪期間が明けていないにもかかわらず、ハバナ市内の高級レストラン「ラ・グアリダ」は昼時からほぼ満席になるほどにぎわっていた。1994年公開のアカデミー賞候補作の映画「苺とチョコレート」が撮影された舞台として知られる。国交回復以来、来店客のほとんどが米国人だという。
 
それでも「米国人観光客が殺到した昨年に比べ、今年は落ち着きを取り戻している」と女性店員は語る。
 
キューバの外交筋は「米国との国交回復で最も得をしたのは観光業だ」という。ただロイター通信によると、アメリカン航空は国交回復を機に就航させた米キューバ間の定期便を現在の週13便から、来年2月以降は週10便に減らす。利用客が当初の予測ほど伸びなかったのが理由だ。
 「
観光業による利益は一過性のもので、国民一人一人に行き渡っていない。キューバの変革に必要なのは、雇用を生む大規模な工場新設などの投資だ」。こう力説するのはハバナ在住のフリー記者、イルデブランド・チャビアノ氏(67)だ。

フィデル氏は社会主義に固執したが、弟のラウル・カストロ国家評議会議長(85)は市場開放に積極的なだけに、兄の死で「目の上のたんこぶが取れた気分だろう」と皮肉る。
 
キューバは国民の教育水準が高い一方、人件費は安い。ハバナ郊外のマリエル港では税制を優遇する経済特区を造成中で、同様の外国企業誘致が全土に広がれば、市場開放が加速する可能性はある。
 
ただ、いつになるか分からない変化の訪れを国民は待っていられないようだ。
 
服喪期間が終わった今月5日の夜明け前。ハバナの米国大使館の裏手にある小さな公園で、十数人が米国行きの査証(ビザ)を申請するため順番取りで並んでいた。

一番乗りは午前0時から待っていた20代の夫婦。地方からバスで8時間かけて来たという。毛布にくるまり暖を取る妻は「米国に移住できたらレストランを開きたい」と夢を語った。だが、相変わらず、宝くじに当たるような確率でしか査証は発給されず、密入国による米国への亡命が後を絶たない。
 
キューバ政府による言論弾圧も状況は好転していない。国内の問題をインターネットで告発するハバナ在住のフリー記者、フアン・ゴンザレス・フェブレス氏(66)は「まるでヒトラーが支配していたドイツだ。監視の目が社会の隅々まで行き渡っている」と語る。

反体制派市民の動きは盗聴・監視され、米政府の批判を気にしてか、デモを起こそうにも事前に外出禁止を命じられるか、抗議行動を起こした途端に警察当局に拘束されるという。
 
国交回復後も公務員の給与は低く、食料配給の不足や、政府管理の食品が横流しされ闇市で売買される状況は変わらない。フェブレス氏は「社会の問題意識を告発し、国民が共有する手段すらない」と嘆く。
 
ラウル氏は2018年2月に政界を引退すると公言。後継者と目されるディアスカネル第1副議長(56)はキューバ革命後の生まれで、カリスマ性ではカストロ兄弟に劣る。
 「
ディアスカネル政権下での経済改革はカストロ路線からの変節と映り、(カストロ信奉者の)民衆らが暴動を起こす恐れがある。そのような事態を防ぐためにも、ラウル氏は引退までの今後1年で、新生キューバの道筋を作らなければならない」。チャビアノ氏はこう指摘する。
 
米国では、オバマ政権の対キューバ融和政策を見直し、民主化が進まない場合は「関係を断ち切る」と宣言するトランプ次期大統領の就任を来月に控える。米国の内政干渉に神経をとがらせるラウル氏は、難しいかじ取りを迫られそうだ。【12月18日 毎日】
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体制維持の一斉摘発も トランプ氏の選択は?】
オバマ大統領はトランプ氏に“レガシー”の継続を求めています。

****オバマ大統領、キューバとの関係維持をトランプ氏に直接要求へ****
オバマ米大統領は、米国とキューバとの関係の「時計の針を戻す」ことは両国の利益を損なうとして、最近の関係改善を維持するようトランプ次期大統領に求める意向だ。米ホワイトハウスのローズ大統領副補佐官が13日、明らかにした。

ローズ氏によると、現政権は、オバマ氏の政策を維持するようトランプ次期政権を説得する意向だという。
「キューバ問題は、オバマ大統領が米国の利益にとって正しいアプローチだと主張するリストにあり、これからもあり続ける」と、テレビ会談で記者らに述べた。

来年1月20日に就任するトランプ氏は、キューバが米国と「より良い取引」をしない限り、キューバとの関係改善を「終わらせる」と公言。キューバ政府はこれまでのところ、トランプ氏の発言に関するコメントを控えている。【12月14日 ロイター】
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しかし、キューバ政府の国内締め付けも報じられており、今後のトランプ政権・米議会の対応は不透明です。

****キューバ当局、反体制派を一斉摘発 カストロ前議長の死後初****
キューバの反体制派団体は18日、当局がフィデル・カストロ前国家評議会議長の死去後初となる反体制派の一斉摘発を行い、数十人を逮捕したことを明らかにした。
首都ハバナで予定されていた抗議デモも阻止され、米国人の人権派弁護士も一時身柄を拘束されたという。
 
ラウル・カストロ国家評議会議長が、北南米で唯一の一党独裁体制に対する異論は受け入れないという姿勢を示したものとみられる。
 
反体制派団体「キューバ愛国同盟」のホセ・ダニエル・フェレル委員長は、AFPの電話取材に対し、同国東部のサンティアゴとパルマ・ソリアーノで「午前6時(日本時間同日午後8時)に一斉摘発が始まり、住宅4棟が捜索を受け、42人が逮捕されたと報告を受けた。サンティアゴで20人、パルマ(Palma)で12人、ハバナで10人だ」と語った。
 
東部やハバナでは、政治犯の釈放を求めて実施予定だったデモが阻止された。フェレル氏もサンティアゴで警察に一時身柄を拘束されたが、その際に警官らから脅しを受け、デモについて「騒乱と不服従とスパイ行為を助長した」と言われたという。
 
また、米国人の人権派弁護士キンバリー・モトリー氏は、グラフィティ(落書き)アーティストで現在収監中のダニーロ・マルドナド氏を刑務所に訪問する予定だったが、同行するキューバ人活動家2人と共に16日、当局に身柄を一時拘束された。

親類の話によるとマルドナド氏は、カストロ前国家評議会議長が死去した翌11月26日、ハバナ市内の壁にペンキで「彼は死んだ」と書き、逮捕されたという。【12月19日 AFP】
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トランプ次期大統領の姿勢に関しては、叩ける相手は徹底的に叩いて、“アメリカ第一”の最も有利な条件を得る・・・というタフなビジネスマンかもしれませんが、すべての人々に希望の光を与えるといった政治家としての理念・志しとは縁のない人物のようです。
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