(2/6からの続き)
(乾先生の家の前にいる金八。窓の中から乾の先生の家の中を伺っている。)
(同じマンションの住民♀が通る)
あ、あ、いや、別に怪しい者じゃなくて、あのぅ、ちょっと友人がここにいるもんですから。
チャイムを今から押そうかなぁと思って。
はい、押します。
(ピンポーン)
(中から乾先生が出てくる)
あ、どうも、こんばんわ。
やっぱりあなたでしたか。
やっぱり私ですぅ。
あのぅ、お邪魔してよろしいですか?
そのつもりで来たんでしょ?
ハイ。
(乾先生のお宅の中に入る金八)
おぉ、またプラモデルですか。
これはレコードです。
あ・・・・
私の座る椅子は無いですね。
はい、それじゃ、ここに失礼します。(床に正座する金八)
ども、今日はぁ、3Bの生徒が大変失礼なことを致しました。
しかしあのぅ、帰っちゃいけませんよ。勝手に帰っちゃいけませんよ。
ボクは勝手に帰ったんじゃありません。
ちゃんと教頭先生に「早退する」と言ってきました。
どっちにしても問題はまだ解決してないんですから。
ボクにとって解決なんてことは永久にありはしません。
乾先生。
僕は生徒に自分の出題意図を説明するつもりだったんです。
それをまったく暴力的に取り囲むなんて、僕の親心も3年B組ときたひにゃぁ、全て水の泡だ。
おぉ、あれを親心と言われるんですか?
坂本先生っ。(キレる乾先生)
冷静になりましょう。
そらぁ生徒達がやったこたぁ重々けしからんことだという風に思っております。
しかしどうぞ生徒達にその愛情を持って下さい。
彼らの人格を尊重してやって下さい。
彼らは、あなた問題の中にわざと罠を儲け、彼らの心をもてあそんだと言って・・・
だからダボハゼだと言うんだっ。
あんたまた言いましたね、その言葉を。
ああ言いましたよ。自信もって言いますけどね。
今回の僕の出題は、まさに僕の愛情の固まりです。
「愛情、愛情」って、あなたの「愛情」はムチばっかりの愛情なんだよ。
そういうあなたこそ子供の言い分を鵜呑みにして、ねじ込んでくるママゴンの偏愛そのものじゃないんですかっ!!(キレまくる乾先生)
ぼ、僕のどこがママゴンですか。
あぁ頭のてっぺんから足の先まで全部ママゴンみたいですよっ。(キレまくる乾先生)
(一息ついて)
僕は最初っから、生徒達にいかに勘違いをさせようかと、そういうつもりで問題を作ったんです。
あぁ、とうとう白状しましたねぇ。
話を聞かないから帰ってくれませんか?
いや、帰りません。話をしに来たんですから。
だったら終いまで聞いたらどうなんですか?
はい。
はい、聞きます。(再び正座する金八)
統計学上に見てですねぇ、進学を希望する生徒の3年生の第2学期のこの期末テストの時と、高校受験の時の緊張度は、大体同じような数値を示してるんですよ。
わかっているはずの問題でも、その緊張のあまり、100%の回答力を発揮する事が出来ず、その結果、入試問題によくみられる落とし穴に簡単に引っかかってしまうんです。お分かりですか?
え、えぇ、まぁ、そぅ・・・
従って、受験の時と、ほぼ同じ緊張度を示すこの2学期の期末テストの時に類似の落とし穴的問題を意識的に作成し、出題することによって、生徒の入試の時の心得を強烈に印象づけさせる事ができるわけなんでうす。
(なんとなくうなずいている金八)
実験の結果、生徒達は見事に引っかかってきたじゃないですか。
実験・・・?
そうですよ、だから僕はその実験結果を生徒に発表しようとしたのに、先生のクラスはただ騒ぐだけで、僕に言わせりゃ「勝手にしろ」ですよっ。
あのぅ、実験という言葉はよくありません。
彼らは生身の人間なんですから。
僕は結果でしかものを見ません。
情緒的なことは国語の時間にたっぷりとやって下さい。
あのぅ、乾先生のそのぅ、深い考えがあったということ、そらぁ、これで良く分りました。
私のほうに誤解があったことも認めます。
でもぅ、そのぅ、どうして彼らにそのぅ、お考えをわかりやすく話してもらえなかったんでしょうか。
そうすれば彼らは乾先生に感謝すればこそ、あんな騒ぎには私ならなかったと・・・
僕は別段感謝されようと思って授業してるんじゃありません。
うーーん。まぁ、そりゃ、確かにまぁ、そうですけども、うーーん、でもあのぅ、教師と生徒っていうのは、そりゃぁ一種の人間関係ですからね?
いや、その人間関係では小学校から落ちこぼされ的に数学力を救う事は出来ないんです。
いやぁ、中学校には・・・
文句があるんだったら文部省に言って下さい。
だからそのぅ、教育におけるそのぅ、人間関係・・・
それともうひとつ、簡単な落とし穴に引っかかる大きな原因に、生徒達の国語力の低下があることをお忘れなく。
理解力です。
その問題が何を言い、何を要求しているかを読み取る力は国語力にあるんでしょう。
簡単な問題でつまづくのも国語力の低下が原因です。
(帰宅中の金八)
(回想)
つまらぬ数学でつまづくのも国語力の低下が原因です。
ママが言ったんだ。
勉強、勉強で子供をいびつにする日本になんていることはないって。
(帰り途中、巡査に呼び止められる金八)
坂本くん?(金八を懐中電灯で照らす巡査)
君はあの色男をガーーーンとやったそうだね、ガーンと。
アハハハハ、いやあんた、しかしよくやったなぁ、いやはぁ。
大体ですよ、頭が良さそうで、足が長くて、姿格好のいい男はどうも昔から虫が好きませんよ。ね?
それがどうかしたんですか?
いやだから本官はですよ、「世の中不公平だ。」と、こう言ってるんですよぅ。そうでしょう?
たし算が少しくらいできるからと言ってですよ、人を見下すことはないでしょう?
あぁいう体はガーーーンとやってやればいいんだよ、ガーーーンとぉ。
ガーーーンとやられたのはこっちのほうですよ。
うん? 先生が?
顎か? 顎どうしたかなぁ?
違いますよ、ここですよ。(と言いながら胸を叩く金八)
胸か。(と言いながら金八の胸に手をやる巡査)
(手を掴んで払う金八)あんた夜中に何をやってるんですか、ホントに。
(4/6に続く)
(乾先生の家の前にいる金八。窓の中から乾の先生の家の中を伺っている。)
(同じマンションの住民♀が通る)
あ、あ、いや、別に怪しい者じゃなくて、あのぅ、ちょっと友人がここにいるもんですから。
チャイムを今から押そうかなぁと思って。
はい、押します。
(ピンポーン)
(中から乾先生が出てくる)
あ、どうも、こんばんわ。
やっぱりあなたでしたか。
やっぱり私ですぅ。
あのぅ、お邪魔してよろしいですか?
そのつもりで来たんでしょ?
ハイ。
(乾先生のお宅の中に入る金八)
おぉ、またプラモデルですか。
これはレコードです。
あ・・・・
私の座る椅子は無いですね。
はい、それじゃ、ここに失礼します。(床に正座する金八)
ども、今日はぁ、3Bの生徒が大変失礼なことを致しました。
しかしあのぅ、帰っちゃいけませんよ。勝手に帰っちゃいけませんよ。
ボクは勝手に帰ったんじゃありません。
ちゃんと教頭先生に「早退する」と言ってきました。
どっちにしても問題はまだ解決してないんですから。
ボクにとって解決なんてことは永久にありはしません。
乾先生。
僕は生徒に自分の出題意図を説明するつもりだったんです。
それをまったく暴力的に取り囲むなんて、僕の親心も3年B組ときたひにゃぁ、全て水の泡だ。
おぉ、あれを親心と言われるんですか?
坂本先生っ。(キレる乾先生)
冷静になりましょう。
そらぁ生徒達がやったこたぁ重々けしからんことだという風に思っております。
しかしどうぞ生徒達にその愛情を持って下さい。
彼らの人格を尊重してやって下さい。
彼らは、あなた問題の中にわざと罠を儲け、彼らの心をもてあそんだと言って・・・
だからダボハゼだと言うんだっ。
あんたまた言いましたね、その言葉を。
ああ言いましたよ。自信もって言いますけどね。
今回の僕の出題は、まさに僕の愛情の固まりです。
「愛情、愛情」って、あなたの「愛情」はムチばっかりの愛情なんだよ。
そういうあなたこそ子供の言い分を鵜呑みにして、ねじ込んでくるママゴンの偏愛そのものじゃないんですかっ!!(キレまくる乾先生)
ぼ、僕のどこがママゴンですか。
あぁ頭のてっぺんから足の先まで全部ママゴンみたいですよっ。(キレまくる乾先生)
(一息ついて)
僕は最初っから、生徒達にいかに勘違いをさせようかと、そういうつもりで問題を作ったんです。
あぁ、とうとう白状しましたねぇ。
話を聞かないから帰ってくれませんか?
いや、帰りません。話をしに来たんですから。
だったら終いまで聞いたらどうなんですか?
はい。
はい、聞きます。(再び正座する金八)
統計学上に見てですねぇ、進学を希望する生徒の3年生の第2学期のこの期末テストの時と、高校受験の時の緊張度は、大体同じような数値を示してるんですよ。
わかっているはずの問題でも、その緊張のあまり、100%の回答力を発揮する事が出来ず、その結果、入試問題によくみられる落とし穴に簡単に引っかかってしまうんです。お分かりですか?
え、えぇ、まぁ、そぅ・・・
従って、受験の時と、ほぼ同じ緊張度を示すこの2学期の期末テストの時に類似の落とし穴的問題を意識的に作成し、出題することによって、生徒の入試の時の心得を強烈に印象づけさせる事ができるわけなんでうす。
(なんとなくうなずいている金八)
実験の結果、生徒達は見事に引っかかってきたじゃないですか。
実験・・・?
そうですよ、だから僕はその実験結果を生徒に発表しようとしたのに、先生のクラスはただ騒ぐだけで、僕に言わせりゃ「勝手にしろ」ですよっ。
あのぅ、実験という言葉はよくありません。
彼らは生身の人間なんですから。
僕は結果でしかものを見ません。
情緒的なことは国語の時間にたっぷりとやって下さい。
あのぅ、乾先生のそのぅ、深い考えがあったということ、そらぁ、これで良く分りました。
私のほうに誤解があったことも認めます。
でもぅ、そのぅ、どうして彼らにそのぅ、お考えをわかりやすく話してもらえなかったんでしょうか。
そうすれば彼らは乾先生に感謝すればこそ、あんな騒ぎには私ならなかったと・・・
僕は別段感謝されようと思って授業してるんじゃありません。
うーーん。まぁ、そりゃ、確かにまぁ、そうですけども、うーーん、でもあのぅ、教師と生徒っていうのは、そりゃぁ一種の人間関係ですからね?
いや、その人間関係では小学校から落ちこぼされ的に数学力を救う事は出来ないんです。
いやぁ、中学校には・・・
文句があるんだったら文部省に言って下さい。
だからそのぅ、教育におけるそのぅ、人間関係・・・
それともうひとつ、簡単な落とし穴に引っかかる大きな原因に、生徒達の国語力の低下があることをお忘れなく。
理解力です。
その問題が何を言い、何を要求しているかを読み取る力は国語力にあるんでしょう。
簡単な問題でつまづくのも国語力の低下が原因です。
(帰宅中の金八)
(回想)
つまらぬ数学でつまづくのも国語力の低下が原因です。
ママが言ったんだ。
勉強、勉強で子供をいびつにする日本になんていることはないって。
(帰り途中、巡査に呼び止められる金八)
坂本くん?(金八を懐中電灯で照らす巡査)
君はあの色男をガーーーンとやったそうだね、ガーンと。
アハハハハ、いやあんた、しかしよくやったなぁ、いやはぁ。
大体ですよ、頭が良さそうで、足が長くて、姿格好のいい男はどうも昔から虫が好きませんよ。ね?
それがどうかしたんですか?
いやだから本官はですよ、「世の中不公平だ。」と、こう言ってるんですよぅ。そうでしょう?
たし算が少しくらいできるからと言ってですよ、人を見下すことはないでしょう?
あぁいう体はガーーーンとやってやればいいんだよ、ガーーーンとぉ。
ガーーーンとやられたのはこっちのほうですよ。
うん? 先生が?
顎か? 顎どうしたかなぁ?
違いますよ、ここですよ。(と言いながら胸を叩く金八)
胸か。(と言いながら金八の胸に手をやる巡査)
(手を掴んで払う金八)あんた夜中に何をやってるんですか、ホントに。
(4/6に続く)