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木造住宅耐震補強考

2011-04-15 23:54:32 | 日々の建築考
先日、昭和建設さんとのご縁により、
一般の方に向けて、耐震補強のお話をさせて頂く機会がありました。

阪神・淡路大地震を経て出来た
現在の建築基準法の耐震のとらえ方、
耐震の構造、昔の建物の耐震補強の方法、
地盤についてのお話を中心に紹介しました。

ところで、You Tubeに耐震補強をした建物とそうでない建物の
振動実験の動画があります。

在来木造住宅震動台実験



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防災科学技術研究所のデータによると、
地震動は兵庫県南部地震のJR鷹取駅で観測された実波形、通称「鷹取波」
 南北方向最大641.7ガル
 東西方向最大666.2ガル
 上下方向最大289.5ガル


この実験に使用された建物は明石から移築されたもので、

【補強していない建物の保有耐力充足率】
 2階X 1.09
 2階Y 0.75
 1階X 1.01
 1階Y 0.43 (分かりやすいように順番を入れ替えて表示)

【補強済み建物の保有耐力充足率】
 2階X 1.64
 2階Y 1.53
 1階X 1.55
 1階Y 1.57 (分かりやすいように順番を入れ替えて表示)

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データを見た感想としては、
なかなか構造的に恵まれた建築だと思いました。

というのも、補強されていない建物の保有耐力充足率が、
X方向は上下階とも1.0を下回らないですし、
2階X方向は0.75とまあまあ。
1階Y方向が0.43と低いです。

横浜市の耐震診断士として数年調査してきましたが、
有利な2階だけでも1.0を超えた物件は稀だったように思います。
0.75という高い数値も比較的少ないです。

一方、補強済みの建物の保有耐力充足率が、
全て1.5を下回らないのは凄い。

この建物は
間口3間・奥行3間のバランスの良い建物であり、
かつ、柱の直下率も良い方。
上下階の構造線も揃っているので耐震補強が有利に働きやすい。
最初から充足率1.5倍以上を狙ったというより、
そうなってしまった、なり易かったのかと思いきや、
「建築基準法で定める極めて希に起こる地震を上回る、兵庫県南部地震
の激震に対しても倒壊に至らぬよう、上部構造評点1.5を目指す」
ことだったようです。


この動画を見て、
補強あり、なしの建物とも1階右下の壁モルタルが
剥離落下するタイミングは若干時間差があるものの、
補強ありの建物は、筋交いと構造用合板が効き崩落を逃れていますが、
補強なしの建物は、このタイミングで耐力壁を失うのか以後倒壊します。

落下したモルタルは後で塗り直せば大丈夫。
大切なのは、躯体が倒壊しないことですね。


ところで、充足率1.0ギリギリの試験体動画はあるでしょうか。
引き続き調べて見たいと思います。
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