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名もない渓 再訪

地形図上で見る限り1時間半もあれば主尾根に出るだろうと登り始めたが、いざ登り始めると露岩やら石楠花地獄やらでなかなか進むことができず、予想よりも1時間も多くかかってようやく主尾根に出たことはまだ記憶に新しい。それはこの渓を存分に楽しんだ翌日のことだった。

あれからちょうど一ヶ月。

八月最後の週末となると何となくどこかに行っておきたい気分になってこの渓を再訪した。天気は申し分なく入渓地点から自然林が美しい。地元のじいさん2人が釣りでもしているのかと思ったら大雨で流れた木橋を架けなおすところだと言う。我々はどうせ水に濡れるからとあいさつをして沢に入る。こうやって地元の人たちが整備してくれているから不自由することなく安全に山を歩くことができるのだ。ありがとうございます。

比較的穏やかな渓相のこの沢は暑さを凌ぎながら歩くのにうってつけだ。

水量はやや多いだろうか?ナメの上の滝は勢いよく落ちる流れのすぐ脇をよじ登るのだが、その時にちょろちょろと水が頭に落ちてくる。それでなのかどうなのか、みずくぐりの滝というらしい。

難所という難所のない沢だが、強いて言えばこの山女止めの滝。同行のY氏は手前のへつりでドボンしたものの、ある切実な理由で装備を4キロも軽量化したことも幸いして難なくクリア。三段の脚立の上に立つのも怖い私はもちろんここを遠慮して高巻いた(笑)安全第一である。

H沢の出合いを過ぎると谷は狭くなり段々も高くなる。ゴルジュ帯を抜けて切れ落ちた渓を行くと小さな石ころが落ちてきた。うん?落石?いったん収まったと思ったらさっきよりも大きい石が落ちてくる。何だろうと崖の上を見上げると20mほど上の尾根のへりを熊がのしのしと歩いている。熊が歩くたびに石がごろごろと落ちているのだ。これだけ山に入っているのに熊を見るのはなんと初めて。それはいかにも立派な成獣で影絵のようにまっくろいからだに太い足が印象的だ。登山口などで「クマ出没注意」の立て札を見るだけで脚が震えるほどビビりな私は、このあと急に言葉が少なくなり、まわりをきょろきょろおどおどしながら暗い(急に暗くなった笑)渓を歩く。

T沢の出合いを過ぎると間もなく前回一夜を凌いだエリアに入るが、この先にハンモック適地はないので30分ほど下流の平坦地まで戻ることにする。わずかな情報によると、かつてここには山の分校があったという、なかなか気持ちのいい場所だ。一夜だけお借りします。

にわか雨があるかもしれないので面倒くさくなる前にタープを張っておく。タープはやはり設計者が思い描いた形になるようにきれいに張るのが礼儀であろう。それはバックバックも同じだしウェアも同じこと。使いこなす、着こなすという事はとても大事なことだ。

バックパックは木に吊るし、クナイはスリットラインに吊るすのが凌流。ハンモックまわりのセットアップが終わったらお待ちかねの、なんにもしない時間だ。

緑と湿気に包まれて、沢の流れを聞きながら、焚き火のお世話をしたり、ハンモックに寝転んだり。あたりがいつの間にか暗くなるまでこうしている。なんという贅沢な時間だろう・・・。

現実でも夢でも熊に襲われることはなく朝は来た。ここにいた痕跡を残さぬようにパッキングを済ませる。最高の一夜をありがとう。ここからすぐ南に気持ちよさそうな尾根が伸びているが騙されてはいけない。M岳に続くこの尾根はきっと前回のような面倒が待ち受けているに違いないのだ。

まるで岬のように飛び出た尾根の首根っこの部分を乗っ越して反対側に出ると踏み跡は再び沢沿いに続く。やや荒れているところもあるがテープも貼られ踏み跡は明瞭だ。

沢の流れに付かず離れずに続くかつての仕事道であろう道を辿ってみる。

K沢に流れ込む名もない枝沢。白っぽい樹皮の木が多いので渓は明るく緑がまぶしい。

山仕事の小屋でもあったのだろうか?なかなかいい別荘地だ。沢の一段高いところにはところどころに広い平坦地があり、そこにはかつて炭焼き小屋がいくつもあったらしい。この山に暮らした人々の生活はどんなものだったのか?山奥の村のそのまた山奥の渓に暮らした人々の気配を感じながら仕事道を歩く。

カモシカを発見。昨日の熊のことが頭から離れず、本日も引き続ききょろきょろおどおどしながら歩いているので発見が早い(笑)

数年前までは原生林へのハイキングツアーもやっていたようで、これはそのために整備されたであろう足場。ちょっと危ういところもあるが利用させていただく。

夏休み最後の、いや、八月最後の週末のシノギング。好天に恵まれ名もない渓を存分に楽しむことができた。

 

今回の装備

クビマキ雨の低山(絶賛販売中)

ハチジュウハチヤ七分袖 (絶賛販売中)

ハザカヒ(絶賛発売中)

クナイkevlar(絶賛販売中)

ハヲリモノocta(絶賛販売中)

クイックハラマキocta(試作品)

カルフワタオル(この秋発売)

スーパーフィットメッシュグローブ(絶賛販売中)

ヤマバッグ(絶賛販売中)

タモツ、ウルオス(絶賛販売中)

モグ wool insulation(沢にはこれ!絶賛販売中)

ヌノバケツ(絶賛販売中)

小さいヌノバケツ 角(絶賛販売中)

行燈風シェード(絶賛販売中)

シノギチャブダイ(絶賛販売中)

シノギチャブダイ三脚取付具(絶賛販売中)

凌ピッケル(絶賛販売中)

EXPED Hammock Trekking Tarp

EXPED Travel Hammock

EXPED Black Ice 45

 

 

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