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凌 冬から春への着こなし

不定期にはなってしまうが、凌アイテムのおすすめの着こなしを季節ごとに紹介したいと思う。素材の機能だけを並べ立てるのではなく、凌の美学でデザインされたアイテムがシノギングでどう機能するかを実践的な視点で解説する。

今回は、冬から春への着こなし

最近なんだかぼんやり暖かくなって来ちゃって低山の冬もそろそろ終わりかな、などと思っていると寒さがぶり返したりと、まったく春という季節は暖かくなったり寒くなったり落ち着かない。名もない低山でも標高を少し上げれば雪もあり冷たい風に凍えることもあるし、日当たりの良い裏山ではお花見気分を味わうこともできる。そんな中途半端な季節におすすめするのが、凌アイテムのなかでも特に異端、いや、最も凌らしい存在のシルベを中心にした着こなしだ。上半身はゴブソデTシャツとクイックアームウォーマーの合わせ技で寒暖差を凌ぎ、前身頃をシルベでガードするという作戦。脚まわりはフユガレにクナイを合わせた万全の備え。

どうです、このうっとりするようなネオクラシックな着こなし!

マキアゲボウ

冬の凌クラシックスタイルその2で紹介したベレーボウと同じ素材を使用している。画像では伝わらないがとてもソフトで薄手の起毛ウールを使用している。起毛させた生地はとても通気度が高く、しかも裏張りをしていないから汗抜けが良いので、シノギングでは当たり前のあえぐような直登でもオーバーヒートしない。 汗をかいてもちょっとした雨にやられても、一旦保水して汗だれや雨だれを感じさせないのがウールのいいところ。保水力が高いためびしょびしょに濡れた後に乾くまでには少し時間がかかるが、ダラダラと汗や雨がたれてくるよりぜんぜんいいわけである。天然の抗菌防臭効果も備わっているので被りっぱなしでも汗や焚き火の匂いがほとんど気にならない。ツバを巻き上げているので当然視界はいい、しかしのその代わりに日差しの向きによってはまぶしいので、そんなときにはちょっとだけツバを下ろしたりサングラスを併用したりすることを推奨する。

クビマキ

凌の着こなしには欠かせない便利アイテム。ほど良い保温性と風通織りならではのずば抜けた通気性と速乾性のおかげで一年中重宝するアイテムだ。身体に負荷がかかり続けるシノギングにもオーバーヒートしにくくそれでいて暖かい。そして汗をしっかり吸収してくれる。チューブ状の作りなのでネックゲイターの様に被ったり、ネクタイのように結んだりといろいろなアレンジができる。全体に無地の着こなしにクビマキを加えてアクセントにしてほしい。

シルベ

日本の伝統的な衣装の腹掛けを基にした究極のベスト。単体で見るとインパクトが大きすぎてさてどうしましょう???と思われるかもしれないが、ベースレイヤー、バックパックなどを合わせれば実に機能的な着こなしになる。schoeller dynamicの生地は強靭でほど良い厚みがあり、適度な防風性と通気性を備えている。 前身頃(胸、お腹、腰周り)を覆うことで冷たい風を受け流して体温の低下を防ぎ、腕と背中を露出することでオーバーヒートを防ぐ。バックパックのショルダーに干渉せず、腰周りまでをカバーする絶妙な大きさは一度使ってみると納得してもらえるだろう。シノギングイベントではアイテムのお試しも行っているので興味のある人は是非リクエストしていただきたい。荷物の多い私は画像の様にヤマバッグを併用しているが、荷物の少ない人であればそれらを上下のポケットにうまく振り分けてバランスよく収納することができる。先日の気温4℃のシノギングでは、長い急登にも一切オーバーヒートすることがなく、尾根に出て強い風に吹かれ続けたが必要以上に立ち止まらなければほとんど寒さを感じなかった。真夏にはさすがに暑苦しく感じるかもしれないが、秋から春にかけてのシノギングではかなり快適に使えるアイテムである。

ゴブソデTシャツ&クイックアームウォーマー

ゴブソデTシャツとクイックアームウォーマーは、メリノウールのマイクロパイルを肌面に配した程良い厚みのあるベースレイヤーで、元々この二つを合わせて使うことを想定して企画している。冬から春にかけてのシノギングでは、暖かな南面を歩くときにはアームウォーマーを手首まで下げて、冷たい空気の漂う北面を歩くときにはアームウォーマーを袖の上に重ねて、または袖の下に重ねることで細かな体温調節ができる。こんなふうに調節ができることがこの二つのアイテムを合わせる最大のメリットである。肌面がメリノウール、外側が吸汗ポリエステルの生地は保温性と吸汗放出性のバランスが良く防臭性にも優れている。ウール100%のベースレイヤーでは汗が残りすぎて・・・、という汗かきな人にはとても快適に使用できる。自分の体質をよく知ってそれに合わせたウェアを選ぶこともシノギングにおける大切なテクニックのひとつなので、氾濫する情報に踊らされずに自分に合ったものを選んでいただきたい。 

フユガレ

裏地付きのパンツや中綿入りのパンツで山を歩くなど、一昔前まではやってはいけないことの筆頭だったが、最近では素材の進化のおかげでやってはいけないことではなくなった。 素材の進化とはつまり通気性のある生地と、通気性のある生地に合わせても吹き出さない中綿が開発されたことである。この類のウェアはアクティブインサレーションという言葉で総称されておりフユガレもこのアクティブインサレーションである。一昔前の裏地付きパンツや中綿入りパンツで猛烈にオーバーヒートして懲りた経験のある人はいまだに敬遠するかもしれないが、気温が5℃前後かそれよりも低い環境であればこのパンツはオーバーヒートしないのでご安心いただきたい。フユガレは保温性を得るためにタイツを穿いたり、オーバーパンツを穿いたりする必要がなく単体で使用できるのでとても軽くて動きやすい。軽くて動きやすいということは疲労しにくいということにつながるので、足元が不安定になりがちな雪中シノギングなどでそのパフォーマンスを最大に活かすことができる。通気性が高いということは強風を感じてしまうリスクもあるが、経験上、まあまあの強風でも運動を停止しなければほとんど気にならないし、もし気になる場合にはツユハラヒを巻いて凌げばいい。 クナイと合わせるときには膝のあたりを少しばかりだぶつかせればクラシックな着こなしができる。こういう着こなしにこだわることも凌の美学のひとつである。

クナイ

シノギングの着こなしで全体をビシッと引き締めてくれているこのクナイは言わずと知れた凌アイテムの定番中の定番。でも、クナイって雪山でも使えるのだろうか?と思う人も多いかもしれないが、ズバリ使えます。ただし、どんな雪山でもという意味ではなく、ここではあくまでもシノギングのフィールドとして定めている森林限界以下の雪山を指している。そして、クナイには使用する生地の違いで2種類が存在し、そのうちのクナイkevlarは生地の性質上雪が付着するので雪山での使用をお薦めしていない。クナイはソフトシェルのゲイターなので防水性は備えていない。防水性は備えていないが日頃から撥水のメンテナンスをしっかりしておけば雪山でも充分に使える。しかし、濡れないということではないのでくれぐれも誤解のないように。低山とはいえ雪山ともなると無雪期とは違う少々ごついシューズを履くかもしれないが、スノーハイキング向けのシューズであれば問題なく使用できるし一部のライトアルパインブーツにも対応できるものがある。雪山のシノギングということならば、左右の脇のループを雪の付着しにくい細引きなどで固定してシューズの底にまわし、しっかりフィットさせ裾からの雪の侵入を防ぐようにしておきたい。地下足袋のパターンを採用したスリムなフィットは雪山でも歩きやすく、何かに引っ掛けるようなこともないので悪い場所を安全に通過できる。独自のアイデアの先端のトグルはシューレースに掛けやすく不意に抜けるようなことがない、それでいて外すことは簡単である。こういう使い勝手も気温の低い雪山では重要なポイントである。

 

シノラーよ、孤高であれ! 

 

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