海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

愛楽園フォーラム

2009-02-16 17:02:39 | 差別問題
 昨日開かれた「愛楽園将来構想フォーラム・名護市から発信する未来の沖縄」(同実行委員会主催、名護市共催)には、770人もの来場者があった(2月16日付琉球新報)。 シンポジウムに加えて、地元の小・中・高・大学生・社会人による演劇「光の扉を開けて」が上演されたのだが、その演技のレベルの高さに感心した。沖縄から芸能界に若者が次々とデビューしていくのが納得できた。沖縄はスポーツの分野では野球、女子ゴルフ、ハンドボール、バスケットボールなどで優れた選手が輩出しているが、それが選手の底辺の広がりと厚さ、指導者の豊富さ、練習環境の充実に支えられているのは言うまでもない。演劇の分野でもそうなりつつあるのかもしれない。これからも期待が持てる。
 会場には子どもづれの家族が目立った。多くは演劇に出演する自分の子どもや孫を見に来た人たちだろう。中には、ふだんはハンセン病の問題に関心のない人もいただろうが、そういう人がより多く集まってくれた方が、フォーラムを開いた意味もある。愛楽園の将来構想をどれだけ現実のものとできるかは、市民の理解と協力をどれだけ得られるかにかかっている。不況が深刻化している今の状況ではなおさらだ。
 以下に「フォーラム宣言」を紹介したい。

           名護から発信する未来の沖縄 ~愛楽園将来構想フォーラム~
                         フォーラム宣言

 沖縄愛楽園は、昨年、開園70周年を迎えました。最高で950人を超えた入所者は、現在では264人となり、平均年齢は79歳となっています。70年の時を経て、沖縄愛楽園はハンセン病の隔離施設から、地域社会に開かれた医療機関へと変化しています。
 2002年から沖縄愛楽園では内科、外科、皮膚科など8診療科目で外来診療を開始し、地域医療の一端を担っています。
 しかし今でも園内の納骨堂には、かつてハンセン病患者として差別され、迫害された幾多の無念の魂が眠っています。
 2009年は日本でハンセン病隔離政策が始まってから100年目です。今年4月に施行される「ハンセン病問題基本法」の前文には「ハンセン病の患者であった者等が、地域社会から孤立することなく、良好かつ平穏な生活を営むことができるようにするための基盤整備は喫緊の課題であり」「偏見と差別のない社会の実現に向けて、真摯に取り組んでいかなければならない」と明記されました。
 本日、「名護から発信する未来の沖縄~愛楽園将来構想フォーラム~」に参加した私たちは、沖縄愛楽園に名護市の未来を変える大きな可能性があることを知りました。沖縄愛楽園の将来像を愛楽園入所者・退所者、地域住民、名護市が共に考えていくことで、誰もが認め合って生きていける社会づくりができると確信します。私たちはその第一歩を踏み出しました。
 ハンセン病であった人たちも、エイズと向き合う人たちも、障害のある人もない人も、みんなが平等で自由な、人に優しい人権と福祉の「あけみおのまち名護」を目指して、私たちは歩み続けることをここに宣言します。
                                                    2009年2月15日
            「名護から発信する未来の沖縄~沖縄愛楽園将来構想フォーラム~」参加者一同

 愛楽園の存続に関しては、たんに国や地方自治体に任せておけばよいというものではない。「らい予防法」による隔離政策が、ハンセン病患者・元患者の人々に塗炭の苦しみを与え、その人生を狂わせたことは言うまでもない。それと同時に忘れてならないのは、患者・元患者への直接の差別者は、地域に住む住民であり、時には家族や親族でさえあったということだ。
 元患者の人たちの失われた人生は取り返せない。差別した側が償いとして今できることは、元患者の人たちがこれからの人生を少しでもいい環境で暮らせるように、愛楽園の施設を充実した形で存続させる努力をすることだ。それは国や地方自治体だけでなく、市民一人ひとりの責任でもある。
 医療施設としての愛楽園の外来利用者は、現在古宇利島住民の利用が増えているという。橋ができたのと古宇利島の診療所が廃止されたのが理由としてある。ワルミ大橋ができれば今帰仁村民の利用はもっと増えるだろう。そのような外来診療に加えて、シンポジウムでは北部医師会の代表から、終末医療の場としての活用が案として出されていた。
 それを実現するためには相当の予算措置が必要となる。愛楽園と地域の自治体、医療・福祉・介護関係の団体、住民が一体となった取り組みがなければ、構想を実現することはできない。これから色々な構想が検討されるだろうが、ヤンバルの一住民として構想実現に積極的に協力したいものだ。

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