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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

マーメイド クロニクルズ 第二部 第8章−6 キャストたち(再編集版)

2017-02-08 00:00:21 | 私が作家・芸術家・芸人
 演出家のドワイト・コパトーンは、困惑を禁じ得なかった。
 昨日までとキャストたちのパフォーマンスが一変してしまったから。ただし、それはよい方に。
 演出の余地がないほどに、彼女たちの踊りが完璧になってしまっていた。
 マーメイド役の夏海の踊りは、一つ一つの動きが巨大な猛禽類の羽ばたきのように力強かった。そのくせ目線はゾッとするほどのセクシーさに満ちている。
 言うまでもなく、夏海にとりついた悪魔姫ドルガの影響であった。
 一人目の魔女役ザムザは、見ていると吸い込まれそうになる妖しげなシミーと、以前と別人のように艶っぽい歌声でドワイトを驚かせた。
 昨夜は、魔法の蜜でも飲んだのかいと訊かれても、とりついた歌姫リギスはニヤリとするだけで答えない。
 二人目の魔女役シェラザードのアイソレーションは、切れ味を増し、人間の動きとは思えないほど各部分が独立して動いた。特に、スネークアームの動きをすると、本当の蛇が動いている錯覚に陥った。錯覚とドワイトが思った理由は、両腕を使ったスネークアームが、時に四本にも八本にも見えたからだった。
 実は、とりついたライムが茶目っ気を出して、そうした動きをしていたのであったが。
 三人目の魔女役ユリアは、剣とスティックの動きにすごみが出ていた。
 とりついたメギリヌが、イミテーションの剣を真剣と取り替え、スティックも真鍮入りの重量が3キロ近くあるものに取り替えたせいだった。まるで相手役を切り捨てるかのような気迫に満ち満ちた動きだった。

 その時、太陽の化身役の男性キャスト三人と、月の女神と冥界からの助っ人が入ってきた。
 とんでもない掘り出し物が集まったもんだ。いままで、どこにこんな魅惑的な舞のできる連中がうずもれていたんだろう。
 ドワイトが、そう思ったのも無理はない。
 太陽の化身役のキャストたちは、ジェフがスポンサーの地位を利用してオーディションに押し込んだダニエル、アストロラーベ、スカルラーベだったし、月の女神はミスティラで、冥界からの助っ人はマクミラだった。
 プロフェッショナリズムの権化ドワイトは、スポンサーがらみのキャスティングには強行に反対したが、彼らのパフォーマンスを見たとたんに即決でキャストに抜擢した。
 赤いマントを羽織ったダニエルは、太陽神のリーダー「コロナ」役で、姿を現した瞬間から圧倒的な存在感を漂わせていた。一流のバレリーナのような身体で軽やかなステップを踏む度に、天使の華やかさとヴァンパイアのすごみを交互に振りまいた。
 だがドワイトが最も気に入ったのは、彼の歌声だった。往々にしてナルシストは見ていてシラケるものだが、艶っぽい歌声にはクラっときそうになった。
 月の女神「ティラミス」役のミスティラの可憐さは、生まれたての動物の赤ん坊のような無垢さをただよわせながら、舞台に立つとその魅力は輝くエメラルドのようであった。
 また、冥界からの助っ人「クラリス」役のマクミラは、黒ダイヤの冷たい輝きとハスキーな声で見る者を虜にした。
 真っ赤な二条の鞭を振り回すと、一瞬にして女王様のオーラが立ち上った。振りかざされた鞭が、左右に動いているうちに炎に包まれていくと、観客からどよめきが起こる。
 だが、まだ驚くのは早かった。
 太陽神「アストローネ」役のアストロラーベと「スカラローネ」役のスカルラーベ兄弟の掛け合いは、彼らが冥界で得意としたパフォーマンスを下敷きにしていた。実際、どんな道具立てを使ったとしても、そのパフォーマンスは人間技ではないように思われた。
 2010年代に入ると、ブロードウェイは『スパイダーマン』のミュージカルを生身の人間を使って演じるという大胆不敵と言おうか、無謀な試みをして、キャストにけが人が続出する。もしもアストロラーベとスカルラーベの二人が本気でミュージカル・スターを目指していたらならば、キャストとして抜擢されていたかもしれない。


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