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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第3章-8 血の契りの儀式

2018-04-16 00:00:48 | 私が作家・芸術家・芸人

 閉じられていたヴラドの両眼が、見開いた。
 もはやこれまでと同じわし鼻に分厚い唇でも、人を惹き付ける若者のそれでなく、いっさいの妥協、偽り、裏切りを許さぬ残虐な君主ヴラド・“ドラクール“・ツェペシュの充血した両眼であった。

     

 古代からさまざまな民族が入り込んできた東欧南部に位置するバルカン半島。
 カトリック文化圏の中央ヨーロッパ、ギリシア正教圏の東ローマ帝国、そしてイスラム圏のオスマン・トルコ帝国の3つの勢力が、15世紀にぶつかり合っていた。
 ここは覇権を争う勢力側から見れば「戦略上の重要拠点」。同時に、侵略者から見れば「喉元から手が出るほど確保したい通り道」であった。狙われる側の住民たちから見れば、つかの間の安息の時さえない「この世の地獄」。
 民族や国境を越えて人を救うべき宗教が、現世に苦しみを生みだすことに一役買うとは、まさに歴史の皮肉であった。だが、1448年、幽閉を解かれたヴラドとラドウ兄弟がワラキアの支配者となってから、この地を狙うものは自らが地獄を見ることになった。
 はるか遠くからでも、特注の日光を遮る鎧に身を包んだ「ドラゴン」と「悪魔」の二人が見えると敵は先をあらそって逃げ出すようになった。
 最初は、青銅だった鎧は戦場の返り血を浴びて赤銅色に輝いていた。
 ヴラドが両手に持った「ドラゴンの鎖鎌」は、一振りで十三の敵兵の首をはねた。死屍累々となった戦場を進む姿はまさにドラゴンであった。龍の鮮やかな絵柄が刻み込まれた鎖鎌が振り回されるのを遠目に見た敵は、それだけで戦意喪失した。
 ラドウの水晶のように透き通った「デーモンの魔剣」は、数十人を瞬時になぎ倒した。魔剣は、戦場で血を吸う度にうら若き女性の悲鳴にも似た歓喜の叫びを上げた。その度に、魔剣は切れ味を増していくようであった。
 いつしかワラキアの民たちさえも、ヴラドとラドウの兄弟を畏れるようになった。彼らは、いっさいの嘘、ごまかし、犯罪をゆるさなかったからである。
 裁判の結果、有罪となったものたちは尻から口まで太い杭に串刺しとなって、刑場にさらし者にされた。彼らの流した血はこっそりと瓶にためられ、ヴラドとラドウの「食糧」とされた。
 罪人たちの裁判は、深夜に城内で行われた。


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