オータムリーフの部屋

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21世紀の資本論

2014-06-11 | 読書
今アメリカで、マルクスがブームになっている。『21世紀の資本論』と題する専門書がアマゾンのベストセラー第1位になり、フランス人の著者トマ・ピケティがワシントンにやって来ると、ロック・スター並みの聴衆が集まったと言う。まだ、和訳されていない本書を池田信夫氏が明快に解説している。彼の解説はわかりやすく、示唆に富んでいるが、資本主義のご本尊みたいな池田氏がマルクス主義者?の本を「ピケティは正しい」と評価しているのに少なからず驚いた。

 保守派は「マルクスの本がベストセラーになるのは、アメリカの歴史はじまって以来の危機だ」と警戒し、リベラル派の経済学者、ポール・クルーグマンは「ピケティは不平等の統一場理論を発見した」と絶賛した。この本は、世界で所得分配の不平等が拡大している事実を明らかにし、その原因が資本主義にあると主張している。
 1970年から2010年までにアメリカの賃金の中央値はほとんど同じだが、上位1%の人々の所得は165%増え、GDP(国内総生産)の20%を超えた。格差の拡大は一時的な問題だと思われ、戦後ずっと多くの国で所得分配は平等化しているとされてきたが、ピケティのチームは過去300年の各国の税務資料を調査した結果、戦後の一時期を除いて格差は拡大してきたという事実を明らかにした。不平等度は、ヨーロッパでは20世紀の初めには今のアメリカと同じぐらい高かった。それが1910年以降、下がったのは、二度の世界大戦と大恐慌で資本が破壊されたためだ。特に海外投資が植民地の独立によって失われたため、戦後ヨーロッパの資本分配率は下がり、アメリカより平等になった。70年代までの平等化の時代は世界大戦と大恐慌の賜物で例外的だったのだ。
 ピケティはこの現象を資本蓄積が増えると資本分配率が上がり、さらに不平等化が進むと結論付けた。
 ヨーロッパではアメリカほど資本蓄積が進まなかったので、分配は平等で戦後の成長率は高かった。資本収益率が成長率より低いと、分配は平等化して成長率は高まる。戦争に負けて資本が破壊された日本とドイツの成長率が高かったのも、ピケティの理論によれば必然の事象だったわけだ。日本の場合は、一人あたりGDPがイギリスに追いついた段階で成長が止まり、バブルが崩壊し、新興国の参入で世界の成長率が上がったが、資本蓄積が進むにつれて資本収益率が上がり、不平等化が進んだ。
 このような資本過剰は、人口が減少して成長率の下がる国でもっとも顕著にあらわれ、その典型が日本だ。「労働生産性の差が所得格差になる」と言う経済学の理論は単純労働にしか当てはまらない。ルパート・マードックが年収2500万ドルもらっているのは、彼が平均的な労働者の1000倍働いているからではなく、その子の所得が高いのは親の財産を相続できるからなのは自明の事実だ。
 日本では、2000年代に入って名目賃金が下がり続け、非正規社員の比率が労働者の4割に近づく一方、企業の内部留保は積み上がる一方だ。資金を借りて事業を行なうための企業が、リスクを取らないで貯蓄していることが日本経済の萎縮する原因であり、デフレはその結果にすぎない。
 では、この格差を是正するにはどうすればいいのか。ピケティの主張する累進課税やグローバルな資本課税に賛同する者はほとんどいない。課税の中心を所得から富に移すべきだという彼の主張は合理的であるが。
 
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