Chef's Note

『シェフの落書きノート』

酔月

2005-11-26 | 自由 気ままな独り言
初めてのバイト体験記
初めてのバイト体験記 #2 の続きのストーリー。

逗子のレストランは、日曜のバイトにしても…遠かった。
料理長のせっかくの誘いだったのだが…
高校の授業が終わってから働ける所を探したかった。

バスに乗って横須賀中央へ…。
横須賀中央は、横須賀で一番の賑やかな街。
と言っても…横浜のそれとは桁が違うけど…。

私鉄の京浜急行『横須賀中央駅』の前にある街。

駅を降りて左へ…細い路地を入って少し行った所に
”アルバイト募集”の張り紙を見つけた。
”高校生可 時給500円 食事付き”

当時の時給で500円は、破格の給料。
しかも食事付き。

「いいなぁー。これ!」
行ってみよう!
すぐ決めた。

簡単な面接をしてもらった。
「みんな来ても、すぐやめちゃうんだよ…」
とご主人は、言っていた。

そうなんだ…逗子のレストランと変わらないんだな。
そう思った。

バイトが決まって一安心。
17時から22時まで

働きだした…。
学校の授業が終わってから…
電車に乗って横須賀中央へ

忙しかった…。
目がまわるほど忙しかった。

5時間なんて…アッと言う間。
ご飯を食べて…
「お先に失礼しまーす!」

今度は、バスに乗って帰る。

大衆酒場 『酔月』
通りに面した入り口の横で
焼き鳥を焼いている。

接客係だった。
「おはようございまーす!」
と挨拶をしてから…。

店内の掃除やスタンバイから始まる仕事。
6時を過ぎた頃から忙しくなり始め。
7~8時は絶好調を迎える。

「お兄さん…ビール追加!」
「ハイ、ビールですね?1本でいいですか?」

「お兄さん…焼き鳥、バラと砂肝たれで5本づつ!」
「ハイ、焼き鳥ですね…。バラと砂肝たれで5本づつ…ありがとうございます!」

「ハイ、料理できたよ。3番テーブルにお願い!」
「ハイ!」
「ハイ!お待ちどお様でした。串カツと鯵たたきですね」

「ハーイ!焼き鳥あがったよー!持ってってー!」
「ハーイ!」
「ハイ、焼き鳥お待たせしましたー!」

「こっち…こっち…お兄さん!お酒追加ねー!」
「ハーイ!少々おまちくださーい!」

…こんな感じ。

店は、それほど大きくはなかったが…。
カウンターにずら~と並ぶお客様。

テーブル席も空けばすぐに次のお客様が入る。

アルバイトをして接客に慣れてきた頃。
暇な時は、焼き鳥の焼き方を教えてもらった。

豚のバラ肉を焼く時は、ちょっと大変。
脂が燃え出してしまう…。
ど忙しい時は…これも大変。
焼いても焼いても…追いつかない。

しかも焼き鳥の焼いた煙をかぶり…
焼き鳥の匂いがついてしまう。

帰り道…バスを降りてから…
家まで10分弱を歩くのだが…
犬に追いかけられる事もしばしば…。
(その頃、野良犬がわりといた)

このお店…個人店で…。
家族経営に等しい構成。

女将さんが始めたお店。
女将さんの娘さんが若奥さん。
そしてそのお婿さんが板前さん。
その板前さんが、ご主人として経営している。

若奥さんの従弟のタケシ君が板前さんの弟子。
そしてパートのおばさん。
…とアルバイトのオイラ。

タケシ君とは、すぐに仲良くなった。
彼は、ちょっと複雑な環境で育った子。
でも、性格は男気があって真っ直ぐな奴。

家族経営の親戚の店で働くのも複雑な気持ちだったよう…。

若奥さんとは、姉弟みたい感じなのだが…
師匠でもあるご主人と折があわないらしい…。

オイラが、働き始めて数ヶ月。
タケシが他のお店で働く事になった。

タケシの代わりに板前さんが必要との事。

…れれれ?
…えっ!オイラ?

オイオイ…オイラ…
板場であるカウンターに入ることになってしまった。

タケシから…板場の引継ぎ。
ってタケシ…
メニューの全部作ってた訳じゃん?

オイラ…
こんなに沢山あるメニュー全部作る訳?

しかも、カウンターだと接客もしなきゃ…でしょ?

まー…世の中…なんとかなるもので…。
気がついたら…作れるようになっていた。

『鯵のたたき』は姿造り
寄せ鍋、牡蠣鍋、串カツやら刺身類
天ぷら、サラダ…。

今の居酒屋さんとは違って
全部が手作り。
って言っても…
それほど難しいのはなかったけど。

しびれたのは…『どじょう鍋』
鍋によっつに切った豆腐をおいて
7:3:2:1で作った割り下入れて
(7はだし、3は醤油、2はみりん、1は酒…気持ち酒を多め)
沸騰させる。
そこに生きた泥鰌(どじょう)をザルですくって蓋を少し開けた瞬間に鍋の中に放り込む。

30秒位たったら、笹垣ごぼうを入れて、蓋をして少し火にかける。
卵を溶いて卵とじにしたら出来上がり!

今でも忘れないのは…
よほど印象深かったからなのかな?


そんな…オイラを見て…。
バンドの皆…怒り気味!

「また、指…切ったのかよ!」
…って。
「す…すまん…キャベツ切っててさ…」
「頼むから…気をつけろよな!お前いなきゃ誰がベース弾くの?」
「大丈夫。大丈夫。弾けるからさ!」
…なんて感じ!

指3本…いっぺんに切った時なんか…。
「頼む!バイトやめてくれ!指切らない他のバイトにかえてくれ!」
ってメンバー皆が言い出す始末。

オイラ…今だから言うけど…。
滅茶苦茶…指を包丁で切りまくった。

若奥さんに
「そんなに指を切ったら…指がなくなっちゃうよー!」
なーんて言われてた。

「んー …そうだな。でも楽しいから…俺、このバイト続けるわ。な!いいだろ?」
なんてワガママ言って続けた。

板場も慣れてくると…。

カウンターのお客さんから
「お兄さん、一杯 飲みなよ!」
「お姉さん!お兄さんにお酒 一杯あげて!」
なーんて言われて
オイラの前にお酒が置かれる。

「頂きまーす!」
ちょっと口つけたふりしてカウンター下に置く。

バイトが終わり頃の時間になると…。
カウンター下には、十数杯のお酒やらビールやらが並んでいる。

ハハハ…オイラ高校生…。

酔っ払ったお父さん達の相手してた。


暴走族『酔月 #2』へ続く




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