新旧の書籍および映画の批評,作品解説.
Augustrait





[提供:作品社]
 いかにして世界は,再編されているのか?21世紀世界を支配するに至った新自由主義30年の政治経済的過程とその構造的メカニズムを世界的権威が初めて明らかにする.渡辺治《日本における新自由主義の展開》収載――.

 新自由主義(ネオリベラリズム)と呼ばれる経済思想の教義――起源・原因・含意――を論じる本書は,市民の自由や権利の保護より資本の自由な活動を優位に置く教義が,国家機構に浸食している度合いと影響を分析する.1973年の「もう一つの9.11」といわれるチリのアジェンデ政権クーデターと,新自由主義陣営の刺客"シカゴ・ボーイズ"による実験.アパルトヘイト後の南アフリカを蹂躙した思想の実践.1979年のサッチャー政権と米連邦準備制度理事会議長の就任,レーガン政権に先立つ鄧小平の「改革・開放」.
‘新自由主義とは何よりも,強力な私的所有権,自由市場,自由貿易を特徴とする制度的枠組みの範囲内で個々人の企業活動の自由とその能力とが無制約に発揮されることによって人類の富と福利が最も増大する,と主張する政治経済的実践の理論である’
 これらを代表的メルクマールとしても,この支配的な言説様式は「世界を解釈し生活し理解する常識(コモンセンス)に一体化」するほどにあらゆる世界へ浸透し,破壊的プロセスを伴って増殖を続けている.著者は,きわめて強力な発展力学で推し進められてきた新自由主義の「時間」「場所」の両面から,その帝国主義的ジェスチャーを批判する.絶対王政や重商主義を退け,政府の役割を縮小し自律的な社会の運動法則を論じた古典的自由主義の考えを焼き直し,20世紀の新自由主義者らは同盟関係を結び,多数派勢力を率いて資本主義に新自由主義思想を刻印した. 
‘新自由主義化は,グローバルな資本蓄積を再活性化する上であまり有効ではなかったが,経済エリートの権力を回復させたり,場合によっては(ロシアや中国)新たに創出したりする上では,目を見張るような成功を収めた.新自由主義的議論に見られる理論的ユートピアニズムは主として,この目標を達成するために必要なあらゆることを正当化し権威づける一大体系として機能してきたというのが私の結論である’
 それは,「次世代の政治的リーダーたちが取り除きたくても取り除けない遺産」となったことであり,新自由主義が世界的にもたらした現実を「略奪による蓄積」「剥き出しの階級権力の各国および国際的な回復と再構築」と本書は指摘するのである.自立,自由,選択,権利という聞こえのいい言葉で善意の仮面をかぶり,支配階級の権力回復という閉ざされた民主主義を巧みに偽装していることの考察はスリリングではある.ただし,その価値体系の逆照射となる,崇高な自由の展望としての民衆運動の復活は,希望的言及の域にとどまっている.

資本主義の終焉――資本の17 の矛盾とグローバル経済の未来
デヴィッド・ハーヴェイ
作品社

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Title: A BRIEF HISTORY OF NEOLIBERALISM
Author: David Harvey

ISBN: 9784861821066
  • 『新自由主義―その歴史的展開と現在』デヴィッド・ハーヴェイ ; 渡辺治 監訳 ; 森田成也, 木下ちがや, 大屋定晴, 中村好孝 訳
    --作品社,2007.3, , 395p, 20cm
    (C) 2005 David Harvey




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