新旧の書籍および映画の批評,作品解説.
Augustrait





[提供:中央公論新社]
 一七八九年,市民によるバスチーユ襲撃によって始まったフランス革命は,「自由と平等」という光り輝く理想を掲げ,近代市民社会の出発点となった.しかし,希望とともに始まった革命は,やがて恐怖政治へと突入,ナポレオンを登場させ,彼の皇帝即位をもって幕を下ろす.本書は,ドラマに満ちた革命の有為転変をたどりつつ,当時を生きた人々の息づかいや社会の雰囲気を丁寧に追い,革命の時代を鮮やかに描き出す――.

 絶対制末期の失政に抗議するブルジョアの決起で口火が切られ,バスチーユ牢獄襲撃に始まり,立憲王政から共和政へと急進化した市民革命.1791年に憲法が制定され,国王ルイ16世(Louis XVI)の処刑の前後から恐怖政治が市民を圧した.断頭台による大量処刑は,革命に反対する反動派のイデオロギーをいたく刺激することとなる.1789年に始まるフランス革命は,ナポレオン・ボナパルト(Napoléon Bonaparte)のクーデターによって総裁政府が倒される1799年に終結したというのが一般的理解.

 この擾乱は,世界史における変事でも五指に数えることができるだろう.本書は,バスチーユ陥落からナポレオン戴冠までの激動の15年間を,歴史の有為転変の物語として提示する.革命以前の封建的王制下アンシャン‐レジームの変革,近代ブルジョア社会の樹立を意義とするフランス革命は,高邁な精神が血潮に行き渡っているような魅力的な人物,啓蒙思想が躍動しての「歴史における劇薬」であった.アンリ・ド・サン・シモン(Claude-Henri de Saint-Simon)は『産業者教理問答』で,貴族・ブルジョア・産業者といった階級の敵対感情,自階級内部での連帯感情を分析してみせた.

 一方,烏合の衆が「革命的集合体」に転化するまでに,社会過程としての触媒「集合心性」があると解釈して考察したジョルジュ・ルフェーブル(Georges Lefebvre)は,貴族,ブルジョア,都市民衆,農民が統一性,連動主義が希望をもって前進したと見立てた.いずれにせよ,フランス革命の創造的,積極的契機は,民衆の不満と欲求が膨張した「磁場」となって,勇猛果敢な人間たちが織り成すドラマを生みだした.本書のインプリケーションである.

パリの夜―革命下の民衆 (岩波文庫)
レチフ・ド・ラ・ブルトンヌ
岩波書店

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原題: 物語フランス革命―バスチーユ陥落からナポレオン戴冠まで
著者: 安達正勝

ISBN: 9784121019639
  • 『物語フランス革命―バスチーユ陥落からナポレオン戴冠まで』安達正勝
    --中央公論新社,2008.9, , 342p, 18cm
    (C) 2008 安達正勝




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