~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

側彎症民間施術に対する厚生科学研究

2008-02-24 14:53:31 | 側彎症をめぐる法規制
医学界の立場から民間療法(カイロや整体)の実態を調査した研究報告書があります
ので、ご紹介します。ここで述べられていることは10数年前の実態なのかもしれません。
その後、カイロプラクティックは業界団体を形成して、民間における代替医療の
担い手になるべく努力を続けてきているようです。海外ではそのような努力も実り
法的に認められる業界団体になってきている国もあるようです。しかし、わが国で
はおそらくそのようなことが実現するのは、これからさらに10年はかかると思います。
なぜならば、カイロプラクティック業界も複数の団体が存在し、統一がとれていな
いように見受けられます。また依然として誰でもがかってに「カイロプラクター」
として開業できてしまう現実もあります。整体においては、業界団体さえ存在して
いるのかどうかが不明です。
そして、何よりも、いまだにネットを開けば、禁忌(やってはいけない領域)と
された病気/症状に対して「治療できます」「治ります」「医者でも治せないもの
を治しました」とこういう類の宣伝が平然と流布されています。

米国をはじめとする欧米では、いまの日本のような状態を行政と医学界と、そして
民間(国民)の力で整理し改善してきた実績があります。日本はそのような国々から
すれば、10年は遅れた状態にいまだにある、ということです。

行政が管理監督して、状況を整理するとはとても思えません。医学界(先生がた)に
しましても、日常診療が忙しくて、とてもネット社会のことまで手が回るはずも
ありません。
残されたのは、皆さん、患者さんとお母さんがたです。大切なことは、この側わん症
という病気について正しい理解をされること。そして、整体の誘導や甘言にだまさ
れないことです。整体が裏で糸引く掲示板などにだまされてはいけません。
側彎症を治しました、などとこれみよがしに患者さんの背中の写真を掲示している
ような整体になど行かないことです。
お子さんを大切に思い、お子さんをなんとか治したいと願う、そのお母さんがたの
気持ちにつけこんでくるのが、整体の手口です。そのことを十分に理解することが
真にお子さんを守ることになる、ということをご理解いただきたいと思います。
 ........................................................................

厚生省 平成2年度 厚生科学研究
http://www.jac-chiro.org/miurareport.htm

三浦レポート

三浦レポートとは正式には「脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究」と呼び、厚
生省が科学技術研究費を使って東京医科大学の三浦幸雄教授ら7名の整形外科医に
委託した調査研究である。調査は1989年ごろから1年半かけて行われ、1991年3月に
答申された。
 厚生省はこの報告に基づいて、同年7月ほぼ同内容の行政通知を全国の都道府県
衛生部に送った。この報告内容はその後各界からの大きな反響や批判を招いた。マ
スコミはその後数年カイロプラクティックの危険性を強調した報道を行い、あはき
業界は手緩いと強く批判。カイロプラクティック側はこの研究は人選・方法に問題
があり、参考文献もない非科学的な「研究」であることを指摘した。

厚生省 平成2年度 厚生科学研究
「脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究」 報告書より一部抜粋
本研究班では、カイロプラクティック師による実技の見学も行ったが、施術者によ
り触診法に大きな違いがみられた。診察法、所見のとりかたは人体の解剖学的知識
に基づくものではなく主観的、非科学的である。例えば環軸椎の触診、脊椎乳頭突
起の触診をしているとは思われず、誤りが多いといえる。

オ)危険性
(略)徒手調整の手技によって症状を悪化し得る頻度の高い疾患、例えば椎間板ヘル
ニア、後縦靭帯骨化症、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、環軸椎亜脱
臼、不安定脊椎、側彎症、二分脊椎症、脊椎すべり症などがあり、これらは禁忌の
対象に含められるべきである。

2)我が国における実害例の検討
<症例2>
友人の勧めでカイロプラクティック受診し加療受けたところ歩行困難となり、
医療機関入院となる。
<症例3>
両下腿の痛み、しびれが出現、医療機関へ通院、加療を受け、症状改善。その後、
カイロプラクティック療法を受け、両上肢のしびれも上行し医療機関再診となる。
<症例4>
左下肢のマヒが進行したため、カイロプラクティック療法を受けたところ左上下肢
完全マヒとなり、再度施術を受けたら四肢マヒとなった

表2 実害例からみたその病因性
消極的傷害 : (治療の開始遅延・中断) 脊柱側彎症

脊柱側彎症などに対し(甘言を弄し)施術することもまた、正当な治療を受ける
機会を遅延もしくは中断させることによってそれだけ治療効果を損なうことになる
ため、消極的傷害に該当するといえよう。

ウ)側彎症患者の検討
 脊柱側彎症患者300名を対象としてカイロプラクティックについてアンケート調
査を行い、162名から回答が得られた。162名中11%がカイロプラクティックの施術
を受け、12名が何らかの効果があったと回答してきた。効果の内容は肩、背中、腰
の張り、痛みが施術後和らぐとの主観的効果であり、背中の曲がりがよくなったと
いう回答はない。効果ありとして回答してきた1例を以下に示す。

13歳、女性、特発性側彎症
12歳のとき側彎を指摘された。その時、側彎度は37°であった。カイロプラクティ
ックの施術を週1~2回約1年受けた。施術後は肩凝り腰の張りが和らいだ。13歳
のとき側彎度は47°と進行していた。以後医療機関にて適切な治療を受けている。
 当該患者の側彎は進行性であり、カイロプラクティック施術中にかなりの側彎進
行がみられている。カイロプラクティックにより正当な治療の時期が遅延した消極
的被害例である。カイロプラクティック施術により器質的側彎の改善は絶対得られ
ない。施術後、背中、腰の張り、痛みが一時的に和らぐといった主観的評価をもっ
て効果ありと判定している。

ア)禁忌対象疾患の認識
 既に述べたように、カイロプラクティックの禁忌は、一般には腫瘍性、出血性、
感染性疾患等とされているが、術者によっては、リウマチ、筋萎縮性疾患、心疾患
等も禁忌に含めている。しかし徒手調整の手技によって症状を悪化し得る頻度の高
い疾患、例えば椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、
骨粗しょう症、環軸椎亜脱臼、不安定脊椎、側彎症、二分脊椎症、脊椎すべり症などの
明確な診断がなされているものは禁忌の対象に含めるべきでる。
 従って禁忌対象疾患については、施術者のみならず、国民も十分認識しておく
必要がある。

ウ)医学的治療の遅延防止
治療の遅延を招くような漫然とした施術は消極的傷害ともいえる。また患者の疾病の原因や
症状発生の機序を独断的・誘導的に説明することは、同じく治療の遅延や、
正しい医療に混乱を招く恐れがある


エ)誇大広告の規制
 近年我が国における、いわゆるカイロプラクティックブームは、有効性を誇張し
たり、また短期間でカイロプラクティックをマスターできるといった誇大広告によ
り商業的に創り出された側面もある。医療および医業類似行為に関しては、医療法
等により、その広告規制が厳しくなされているが、カイロプラクティックを始め、
その他の民間療法については、規制が明確にされていない。しかしながら、国民の
健康を守る観点から、誇大広告を厳しく規制する方策がとられるべきである。

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ブログ内の関連記事
「特発性側彎症患者さんが適正な医療を受ける権利について」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/1dfb83e785b212fa86046608996d5489
「側湾症ビジネス - ネットを利用する民間療法者」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/60276564d244e5ac7fcd0e03c2ae375d


(御願い:本ブログ内で使用している「整体」とは、特発性側弯症を医学的根拠を
示すことなく治療できると宣伝し、特発性側弯症という原因不明の病気で苦しんで
いる患者さんとそのご家族を「ビジネス」のために利用している一部の整体のこと
を示しています。そのような整体のために、多くの良識ある整体の方々が同列で
呼称されることは本意ではないかと思いますが、その点に関しては整体という業界
内で解決されることを期待しております。業界基準と倫理規定を持たれている
カイロプラクティックの方々は、もちろん含むものではありません)


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