撮りためたビデオを見ている中で、ちょうど10月に「大筋合意」をしたことを受け、甘利経済再生担当大臣と3人のパネラーで意見を交し合ったNHKスペシャルがありました。
内容はタイトルほどのことはなく、いつもの通りというか、「政府側」と「対する立場」の人達の意見が交わされたというものでした。
ただ、TPPとかに詳しい人にとっては中身が無い内容だったと思いますが、政治に疎い私にとっては「あっ、なるほどね」と勉強になる内容でした。
まず、TPPというのは、「グローバリゼーションの行き着くところ、つまり、経済活動の未来は国境が関係なくなる」という理想の1つの過程であるということですね。
GATTやWTOというものがありますし、EUやASEANや各国間のFTAというのものがありますが、試行錯誤をしながらも「理想」に向かって、利害関係のある国同士が、腹黒いものを持ちながら、いかに自国に有利な貿易圏を作るかを、頑張っているわけです。
また、そういった活動の中で、「中国VSアメリカの戦いの1つ」という位置づけがあるわけですね。
AIIPというのがあるそうで、中国、韓国、ロシアやEUの主要国(ドイツ、フランスなど)など50カ国以上が参加しているのですが、これは中国が主導して「貿易ルール」を作って、アメリカに対抗していこうとしているわけです。
世界の貿易相手として中国はどこも外すことが出来ません。
だから、中国の主導したAIIPにも入るわけです。
そして、これは中国の思惑です。
中国は「世界をアメリカと我が国の2大国でコントロールしていこう」とアメリカにメッセージを送り続けています。
しかし、アメリカはちゃんちゃらおかしく「2大大国の1つとして中国がある」なんていうことは、絶対に認めません。
さらに、最近は南沙諸島の埋め立て問題などあまりの無法者の振る舞いに、警告をしていましたが、その警告を無視する中国に対して、実力行使に出ています。
まあ、戦争にはなりませんが。
そんな流れで進めてきたのが、中国に対抗する経済圏を作る「TPP」なわけです。
榊原さんが言っていましたが、なるほど、TPPは中国に対するブロック経済圏なわけですね。
AIIPは中国主導の経済圏、TPPは日米中心の経済圏なわけえす。
「中国が世界の経済ルールを決めるわけではない、我々が決めるんだ」というストレートなオバマのビデオも流れていて「へ~、中国を名指しするぐらい、ここまでストレートに言うんだ」と驚きました。
そういったことを知り、勉強になりました。
それはそうと、番組を見ての感想ですが、甘利経済再生大臣と他の反対派の議論は、正に安保法案と全く同じで「立場が違う」から話がかみあわない。
安保関連法案では、政府側は「国際情勢が日本だけ自分のことだけ考えていればいいという状態ではなくなっている」、野党は「10を超える法案を1つ1つ議論せず、全てまとめて安保関連法案として1つの法案にし、通そうとしているのが無理がある」というところで、話が折り合いませんでした。
TPPも、甘利さんは「日本は既に開放していて、むしろこれから攻めることが出来る。12カ国で自由に共通したルールで経済貿易が出来る」という主張。
一方、反対派は「一番の貿易相手である中国に対するブロック経済圏を作ることになる。アメリカとの関係は安保の問題で、経済圏で言えば中国を敵に回してよいのか?また、既に海外の関税比率は低く、あまり効果が無い分、デメリットが多い」という主張。
また、私は自称「農村コーディネーター」ですので、なるほどな~と思った東大大学院教授の農業に冠するお話でした。
・例えばアメリカは、お米の生産価格12,000円に対し、販売価格4,000円との差額は補填している。それに対し、日本の米は競争力が無い。
だから、「米、肉、乳製品など、この5商品は必ず守る」、と国会で決議した項目を、結局、撤廃している。このことについて、なんら説明が無い、これでいいのか?
・ウルグアイランドガットのように、金をばらまいて終わりで、何もならなかった。今回もセーフティーネットを作るといっているが、それでは意味が無い。「強い農業を作る」といったって、いったいどうやって作るのか?
・過去「農家」に対して、未来に繋がるシステムを作ってはいない。「農業」といっても、「農家」が産業化することはそうはなかった。
・農業は単なる産業の話ではない。環境、食料安保、自給率なども含め、単なるGDPで測るだけのものではない。
このお話、全く同感でした。
「農業」と「農家」を履き違えているんです。
以前も何か書いたことがありますが、世界の「農業」は、スケールが違うんです。
北海道なんて世界からみたら規模でいえば、子どものレベル。
「規模の効率化」なんていうものは、日本ではそもそも出来ない。比較にならない。
さらに、「補助金」の金額が比較にならない。
例えば、アメリカで100万ドルの売上げがある米農家がいれば、補助金は6割以上なわけです。
それに引き換え、日本の農業の補助金なんて無いに等しいもの。
メディアは補助金が農業をダメにした、なんていうけど、全くの嘘。
補助金というのは、大体が「農業土木」とか「土地管理事務所」とか「水管理なんとか」といったところに行きはしますが、1件1件の農家の収入の半分が補助金、なんていうのは聞いたことがありませんよね?
せいぜい、機械などの投資の1/3とか半額を補助する、といったぐらいです。
戦後、1960年代から「規模の拡大による産業化」は、うたわれてきました。
そのほとんどが失敗です。
何故か?
日本のような狭い耕作地しかないところは、農業ではなく「農家」が守っているんです。
その「農家」が産業として上手くやっていくためには、若手や他から来る人材にお金をバンバン投資して、今までの「先祖代々の土地をまもるため」に農業をやっている方々ではなく、小規模でも中規模でもいいから、「商売人」を育てないと、ほとんど効果が無いんです。
結局、ブランド牛とか道の駅とか、一部のものが光り輝いていますが、あれは国の補助とか大規模化とか関係ないんですね。
個人の努力なんです。
規模の経営を大きく掲げても、「また言っているよ」というのが農家側の立場です。
そして「またどうせ途中で方針転換するんだろう」という政府に対する不信があります。
そんな中で、TPPとか言っていますが、「国富全体から見れば、TPPはすべき」といった主張をする人もいるでしょう。
でも、結局、そもそもTPPがあろうがなかろうが、日本として「食料自給率はどうするの?」といったことを、経済産業省と農水省では違っていて、経済産業省の勝利みたいな形でTPPを推進してしまっていますが、本当のところ、どうするのか決めてよ、ということだと思います。
食料安全保障をどうするの?
TPPがあろうがなかろうが、もうあと10年で国産の農産物は激減していくのをどうするの?
もっとその前のことで言えば、「マニフェスト」で約束したことを実行するかどうかが政治家だとしたら、下野していた時代の自民党が「TPP絶対阻止!民主党は農業を切り捨てるのか!」といったポスターを貼り、選挙をしていた自民党が、政権奪取したとたんに掌を返して「TPP推進」になってしまったのは、どうするの?
なんてことを思ったりしたわけです。
あ~、また長文になってしまった
以上で終わりにします。
内容はタイトルほどのことはなく、いつもの通りというか、「政府側」と「対する立場」の人達の意見が交わされたというものでした。
ただ、TPPとかに詳しい人にとっては中身が無い内容だったと思いますが、政治に疎い私にとっては「あっ、なるほどね」と勉強になる内容でした。
まず、TPPというのは、「グローバリゼーションの行き着くところ、つまり、経済活動の未来は国境が関係なくなる」という理想の1つの過程であるということですね。
GATTやWTOというものがありますし、EUやASEANや各国間のFTAというのものがありますが、試行錯誤をしながらも「理想」に向かって、利害関係のある国同士が、腹黒いものを持ちながら、いかに自国に有利な貿易圏を作るかを、頑張っているわけです。
また、そういった活動の中で、「中国VSアメリカの戦いの1つ」という位置づけがあるわけですね。
AIIPというのがあるそうで、中国、韓国、ロシアやEUの主要国(ドイツ、フランスなど)など50カ国以上が参加しているのですが、これは中国が主導して「貿易ルール」を作って、アメリカに対抗していこうとしているわけです。
世界の貿易相手として中国はどこも外すことが出来ません。
だから、中国の主導したAIIPにも入るわけです。
そして、これは中国の思惑です。
中国は「世界をアメリカと我が国の2大国でコントロールしていこう」とアメリカにメッセージを送り続けています。
しかし、アメリカはちゃんちゃらおかしく「2大大国の1つとして中国がある」なんていうことは、絶対に認めません。
さらに、最近は南沙諸島の埋め立て問題などあまりの無法者の振る舞いに、警告をしていましたが、その警告を無視する中国に対して、実力行使に出ています。
まあ、戦争にはなりませんが。
そんな流れで進めてきたのが、中国に対抗する経済圏を作る「TPP」なわけです。
榊原さんが言っていましたが、なるほど、TPPは中国に対するブロック経済圏なわけですね。
AIIPは中国主導の経済圏、TPPは日米中心の経済圏なわけえす。
「中国が世界の経済ルールを決めるわけではない、我々が決めるんだ」というストレートなオバマのビデオも流れていて「へ~、中国を名指しするぐらい、ここまでストレートに言うんだ」と驚きました。
そういったことを知り、勉強になりました。
それはそうと、番組を見ての感想ですが、甘利経済再生大臣と他の反対派の議論は、正に安保法案と全く同じで「立場が違う」から話がかみあわない。
安保関連法案では、政府側は「国際情勢が日本だけ自分のことだけ考えていればいいという状態ではなくなっている」、野党は「10を超える法案を1つ1つ議論せず、全てまとめて安保関連法案として1つの法案にし、通そうとしているのが無理がある」というところで、話が折り合いませんでした。
TPPも、甘利さんは「日本は既に開放していて、むしろこれから攻めることが出来る。12カ国で自由に共通したルールで経済貿易が出来る」という主張。
一方、反対派は「一番の貿易相手である中国に対するブロック経済圏を作ることになる。アメリカとの関係は安保の問題で、経済圏で言えば中国を敵に回してよいのか?また、既に海外の関税比率は低く、あまり効果が無い分、デメリットが多い」という主張。
また、私は自称「農村コーディネーター」ですので、なるほどな~と思った東大大学院教授の農業に冠するお話でした。
・例えばアメリカは、お米の生産価格12,000円に対し、販売価格4,000円との差額は補填している。それに対し、日本の米は競争力が無い。
だから、「米、肉、乳製品など、この5商品は必ず守る」、と国会で決議した項目を、結局、撤廃している。このことについて、なんら説明が無い、これでいいのか?
・ウルグアイランドガットのように、金をばらまいて終わりで、何もならなかった。今回もセーフティーネットを作るといっているが、それでは意味が無い。「強い農業を作る」といったって、いったいどうやって作るのか?
・過去「農家」に対して、未来に繋がるシステムを作ってはいない。「農業」といっても、「農家」が産業化することはそうはなかった。
・農業は単なる産業の話ではない。環境、食料安保、自給率なども含め、単なるGDPで測るだけのものではない。
このお話、全く同感でした。
「農業」と「農家」を履き違えているんです。
以前も何か書いたことがありますが、世界の「農業」は、スケールが違うんです。
北海道なんて世界からみたら規模でいえば、子どものレベル。
「規模の効率化」なんていうものは、日本ではそもそも出来ない。比較にならない。
さらに、「補助金」の金額が比較にならない。
例えば、アメリカで100万ドルの売上げがある米農家がいれば、補助金は6割以上なわけです。
それに引き換え、日本の農業の補助金なんて無いに等しいもの。
メディアは補助金が農業をダメにした、なんていうけど、全くの嘘。
補助金というのは、大体が「農業土木」とか「土地管理事務所」とか「水管理なんとか」といったところに行きはしますが、1件1件の農家の収入の半分が補助金、なんていうのは聞いたことがありませんよね?
せいぜい、機械などの投資の1/3とか半額を補助する、といったぐらいです。
戦後、1960年代から「規模の拡大による産業化」は、うたわれてきました。
そのほとんどが失敗です。
何故か?
日本のような狭い耕作地しかないところは、農業ではなく「農家」が守っているんです。
その「農家」が産業として上手くやっていくためには、若手や他から来る人材にお金をバンバン投資して、今までの「先祖代々の土地をまもるため」に農業をやっている方々ではなく、小規模でも中規模でもいいから、「商売人」を育てないと、ほとんど効果が無いんです。
結局、ブランド牛とか道の駅とか、一部のものが光り輝いていますが、あれは国の補助とか大規模化とか関係ないんですね。
個人の努力なんです。
規模の経営を大きく掲げても、「また言っているよ」というのが農家側の立場です。
そして「またどうせ途中で方針転換するんだろう」という政府に対する不信があります。
そんな中で、TPPとか言っていますが、「国富全体から見れば、TPPはすべき」といった主張をする人もいるでしょう。
でも、結局、そもそもTPPがあろうがなかろうが、日本として「食料自給率はどうするの?」といったことを、経済産業省と農水省では違っていて、経済産業省の勝利みたいな形でTPPを推進してしまっていますが、本当のところ、どうするのか決めてよ、ということだと思います。
食料安全保障をどうするの?
TPPがあろうがなかろうが、もうあと10年で国産の農産物は激減していくのをどうするの?
もっとその前のことで言えば、「マニフェスト」で約束したことを実行するかどうかが政治家だとしたら、下野していた時代の自民党が「TPP絶対阻止!民主党は農業を切り捨てるのか!」といったポスターを貼り、選挙をしていた自民党が、政権奪取したとたんに掌を返して「TPP推進」になってしまったのは、どうするの?
なんてことを思ったりしたわけです。
あ~、また長文になってしまった
以上で終わりにします。