ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

ポーツマス・スクエア

2017-09-17 11:34:56 | 生活
 ポーツマス・スクエアは、サンフランシスコ市のチャイナタウンにある公園だ。サンフランシスコのチャイナタウンは、長崎、神戸、横浜のように貿易港の中国人居留地として設けられたものとは異なり、1800年代中期に太平天国の乱やアヘン戦争などで疲弊の色を見せる清朝から、金塊の発掘や鉄道敷設の仕事を求めてやってきた人々により発展したようだ。そのためか日本の中華街と比べて人々の生活の色がとても濃厚で圧倒させられる。とはいえ、30代独身日本式サラリーマン諸氏が独りで訪れても、市場を覗いたり、漢方薬品店を冷やかしたりするくらいしかすることがなく、半日程度しか時間を潰せない。そんなときはポーツマス・スクエアだ。というより、チャイナタウンで一番魅力的な場所はポーツマス・スクエアだということを今回は紹介します。


この場所の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。


①場所、アクセス
チャイナタウンにある大型駐車場はポーツマス・スクエアの地下にあるため、チャイナタウンで駐車場を探せば辿りつく。地下4階程度の大型駐車場であり、駐車場の柱に記されるエリア記号(イオンモールでいう3-F、2-Bといった、停めた場所を覚えるためのもの)に、“重力(Power)”や“叡智(Intelligence)”といった不可思議な単語が使われているのが興味深い。また、駐車場から地上へ出る際は必ずエレベーターを使いたい。階段を使うと糞尿と、そのオーガニックな臭気でむせ返る可能性がある。



②ポーツマス・スクエアに生きる人々
エレベーターで地上へ上がると、そこが“ハート・オブ・チャイナタウン”と称されるポーツマス・スクエアだ。“あれ?大阪かな?”と思う。青空と高層ビルの下、無数の老父老婆のグループが簡易椅子に腰を掛けて、段ボールをテーブルにしてカード賭博や中国将棋に興じていたり、何をするでもなく遠くを見つめていたりしている。その恰好も様々で、スーツにスニーカーの日本式教師スタイルの人や、ジャージにべルトを巻いて、ハットを被る人など、洗練された世界都市の片隅で、現代社会からほんの少しだけ離れたところに生きる人々の姿を見ることができる。


③ポーツマス・スクエアに生きる人々
圧巻なのは何といっても生演奏による青空カラオケだ。公園の中央に四阿(亭)が設けられており、そこには常に楽団がいる。四阿(亭)の前に置かれた募金箱付近に交代で歌い手が立ち、思い思いの中国民謡をのびやかに歌い上げる。その音痴を通り越した味わい深いメロディーが、スピーカーを通して公園内に響き渡るが、誰もそれに興味を持っておらず、通行人は見向きもせずに通り過ぎていくのだ。


④ポーツマス・スクエアに生きる人々
ここまで書くと、何だか怪しげで近寄りがたい場所のように捉えられるかも知れないが、設営された遊具では童たちが楽しそうに遊んでいるし、ビジネスマンらが腰を掛けてランチを食べていたりと、いたって普通の空間として世界からは受け入れられている。違和感を感じるこちらが異端だ。


 四阿(亭)の正面にある植え込みの縁石に腰を掛けると、背景にそびえたつダウンタウンのビル群とこの雑多な公園内の景色のコントラストから生命の息吹のようなものを感じ、青空カラオケを必死に歌う老父はニンゲンの尊厳を高らかに歌い上げているかのようで、進歩的演劇を見ているかのような気分になり、時を忘れ、少しだけ暇を潰せるのでお勧めします。

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