酔眼独語 

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オバマのノーベル賞

2009-10-10 17:42:34 | Weblog
 ノーベル賞委員会は今年のノーベル平和賞受賞者にオバマ米大統領を選んだ。プラハ演説などで注目を集めていはいるものの、実績ゼロに等しい新米元首に贈られるのは極めて異例だという。

 《ノルウェーのノーベル賞委員会は9日、2009年のノーベル平和賞を「国際協調外交を推進した功績」で、米国のバラク・オバマ大統領(48)に授与すると発表した。

 特に、オバマ氏が核兵器の全廃に向け外交交渉を開始したことを評価した。

 現職米国大統領の受賞は1906年のセオドア・ルーズベルト、19年のウッドロー・ウィルソン以来で、90年ぶり。就任して1年にも満たない大統領が選ばれるのは異例で、同委のオバマ大統領への期待値の高さを示した》=読売ONLINE=

 既に各メディアが伝えているように、オバマの「核なき世界」構想を強力に支援しようというメッセージであることは間違いない。決断には敬意を表したい。

 だが、ノーベル賞委員会の平和賞に対する思い入れの強さがマイナスに作用する側面にも留意する必要がある。平和賞は政治的思惑がにじみすぎて物議を醸すことがしばしばあった。金大中やカーターなどはその例だ。

 今回のオバマ受賞決定がどんなリアクションを引き起こすのかに注目したい。とりわけアメリカ国内の動向は気になる。健康保険法案がうまくいかず、経済の建て直しも道半ば、アフガンは泥沼で、五輪には落選した。落ち目のオバマにノルウェーから援軍が来た格好だ。

 米国内の反応は冷ややかと毎日新聞は伝える。

 《だが、反戦・核軍縮の米最大規模の団体「ピース・アクション」の声明は、アフガン増派を検討するさなかの受賞を「皮肉なことだ」と指摘。「核兵器のない世界」についても、「平和賞に値する業績がない」とし、「平和を推進する力」を示すように求めた。

 共和党や保守層はより辛らつだ。黒人で共和党全国委員会のスティール委員長は声明を発表。「確かなことは、大統領は雇用創出、財政責任などで、米国民からいかなる賞も得られないことだ」と皮肉った。保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」はニュースメールで、「ノーベル賞は、米国の内政に横やりを入れ、政治論争の種をまいている」として、ノーベル賞委員会に批判の矛先を向けた》=毎日jp=

 アフガニスタンで戦争を続け、兵員の増派を検討している最中の米大統領に「平和賞」を贈るとはかなりの変化球だ。通常兵器による戦争には目をつぶり、核削減構想だけを評価しているということなのだろうか。

 アフガンへの増派をめぐっては現地司令官とホワイトハウスで意見の食い違いが見られる。せかす現地、逡巡するワシントンという構図だ。受賞によってアメリカのアフガン政策が変化するようなことがあれば、保守派から「弱腰大統領」批判が吹き上がるのは必至だろう。

 ひいきの引き倒しはよくあることだ。エールを送ったつもりが、かえって身内の反発を招くケースもある。ノーベル賞委員会の今回の決定がマイナスに作用しないことを祈るばかりだ。
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