酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

年金財源試算は信頼できるか

2008-05-22 04:48:30 | Weblog
 公的年金の基礎年金財源をすべて消費税に置き換えると税率はどれほどになるか。こんな試算を政府が社会保障国民会議に示した。

 09年度から税方式に移行すると現行5%に加えて3.5─12%の消費税が必要になるという。トータルの消費税率は8・5─17%に跳ね上がる。

 一目見て「これは大変だ」と感じる国民が大半だろう。これが試算の狙いなのか。つまり、年金を消費税で賄うとこんなにあがりますよ、というメッセージだ。民主党は税方式への移行を主張している。しかも、消費税は上げなくてもできるという。これに冷や水を浴びせたと見ることもできよう。

 もっとも、福田首相も民主党との政策協議をにらみ「税方式への移行も検討対象になる」と発言している。首相にとっては必ずしも歓迎できる試算ではあるまい。誰が何のために試算したのか、今ひとつピンとこない。

 計算はきちんとできているのだろう。ただ、経済成長率や利回りの見込みはかなり高めだ。年率3・5%成長など考えられない。

 さらに問題なのは、年金の骨格を現行どおりとしていることだ。年金問題の本質は国民、とりわけ若い人たちが「将来年金など当てにできない」と見切ってしまっている点だ。納付率が低下の一途をたどることは間違いない。一方で、年金だけでは暮らせない実態がある。

 ここにメスを入れないで、数字だけ示しても反感を募らせるだけだ。

 国民皆年金は「国是」だろう。しかし、その趣旨は必要な人には必ず行き渡らせるということだろう。しかも、それだけで暮らせる額を、である。

 こう考えると、基礎年金額の大幅引き上げが必要だ。現行の6万6千円では夫婦二人でも暮らせない。資産が1億円以上ある人やほかに多くの収入源をもつ人に年金が必要なのか。こうした根本的な論議を先行させるべきだ。

 年金の信頼性を回復させるには税方式がベストである。世代間対立の緩和にもなるはずだ。今回の試算が税方式移行へのブレーキにならないよう、注意して見守りたい。

 全国紙の大半がこの試算を「論議の土台になる」と歓迎の論調を掲げた。朝日、読売、日経はそれぞれ独自のプランを示しており、当然の評価だ。でも、読売には笑うね。「わが社のミックス方式では消費税上げは2%。一番お徳です」というような雰囲気で得々として書いているのがほほえましい。

 大新聞社の方々は比例報酬部分がたっぷりあるし、企業年金も充実している。基礎年金の充実に興味があるのかどうか。聞いてみたい。
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