世の中、まちがってる、根拠なき反日キャンペーン。

相も変わらず根拠なき反日キャンペーンで、国をまとめようとする輩が存在する。

尖閣諸島問題その2(23)

2012-08-16 10:36:57 | Weblog

◆領土拡張の先兵
では、なぜこの中国の「民兵」がキーワードになるのでしょうか?
それは、民兵が軍属ではないというところにあります。軍事訓練も受けますし、軍を所掌する中央軍事委員会の指導下にありながらも、彼らは軍人ではないのです。日本の青年消防団のようなかんじ…というと語弊がありますが、それに近いかもしれません。中国は領土拡張を目論んで戦略的辺彊へ手を伸ばす際、この軍人でない兵士を実に効果的に用います。『リアリズムと防衛を学ぶ』さんも先日取り上げていました(該当記事はこちら)が、洋上における中国の民兵を使った領土拡張には一つのパターンがあります。
http://www.youtube.com/watch?v=sVVM2AmvD5U&feature=newsweather

<レベル1>
国内法で主権を主張。
<レベル2>
民兵を「民間人(漁師など)」として係争地域で活動させる。
この段階で施設(避難所や観測所など)を構築することもある。
<レベル3>
「民間人」保護を名目に沿岸警備組織(この場合は海監や漁政)を派遣。
<レベル4>
「民間人」がなんらかの妨害もしくは危害を被れば、人民解放軍海軍を派遣。
施設構築により実効支配を確立する。
<レベル5>
領土問題を「平和的に話し合おう」と相手に外交を持ちかける。

というパターンです。係争相手としては、民間人に対してのっけから攻撃を加えるわけにもいきませんから、例え民兵だと分かっていても手を出し辛いものです。それを逆手にとって民兵はじわじわと係争領域に浸透し、実効支配のための先鞭をつけるのです。レベル5の段階ではもう何もかも手遅れです。外交交渉はすべて中国ペースで進み、決裂しても中国の支配が揺らぐわけではありません。

このレベル1~5の実効支配確立までのパターンは、南シナ海における領有権問題で中国がとった行動から得られた教訓です。
中国の南シナ海進出の概略については『ロシアの南下政策と中国の南進政策』(2010/9/17)のエントリーでも扱っていますが、本稿ではもう少し民兵に焦点を絞って見てみましょう。

1974年南ベトナム政府パラセル諸島とスプラトリー諸島における主権領有を宣言しました。中国政府は直ちに抗議し、海軍哨戒艇2隻、漁船2隻をパラセル諸島甘泉島に派遣し、そこに駐留していたベトナム兵を駆逐して占領してしまいます。中国は声明を発表し、「中国固有の領土である西沙諸島で操業していた(民間)漁船に対し、南ベトナム駆逐艦が領海侵犯であると挑戦してきた。そこで、海軍を漁船と民兵の保護のために派遣した」というものでした。この後中国は、民兵2個大隊を同諸島深航島に上陸させ、南ベトナム軍の反撃に備えて陣地を構築しています。

また、フィリピンと領有を争っているミスチーフ礁においても民兵の働きを確認することができます。米軍がフィリピンから撤退したのを機に、中国はミスチーフ礁に漁船待避所という名目でコンクリート製の建築物を建造します。もちろんフィリピン政府は主権の侵害であると抗議するのですが、中国はフィリピンに対して「中国の漁民(民兵)の生命と操業の安全を守るための施設である。話し合いで解決しよう」と呼びかけます。ところがその後、中国は艦艇や海洋調査船を派遣、1999年には、鉄筋コンクリートの建物を4棟と大型の船舶が停泊可能な岸壁及びヘリポート等を建設して今ではすっかり実効支配を確立しています。

中国民兵に対してはアメリカも関心を寄せ、『2009年 中国軍事力白書』において民兵一般について囲み記事を設けて紹介しています。また、白書では海上民兵(naval militia)が人民解放軍海軍に対する補給支援活動に従事していたことにも言及しています。
今年に入り、そのアメリカ自身もまた中国の民兵と直接対峙する出来事が発生しました。(2010年)3月に米海軍の音響調査船インペッカブルが、南シナ海の公海上で海上民兵が乗り込んだ中国のトロール漁船5隻に包囲され、執拗な妨害行為を受けたのです。先述の民兵を用いた実効支配パターンとは少々逸脱する事案であることから詳細は割愛しますが、南シナ海では伝統的な領有権問題だけでなく、「接近阻止・領域拒否」戦略においても民兵が看過できないプレイヤーとなっているのかもしれません。


◆後の先をとる
冒頭で述べた通り、日本にとって重要なのは「次」の事態です。中国は1992年に「領海及び隣接区法(領海法)」を制定し、その第2条で尖閣諸島中国の領土なのだと勝手に規定しています。「そんなもの、中国の国内でしか通用しないよ」、と放っておくわけにはいきません。国内法での主権の正統化はレベル1の段階、つまり尖閣略奪へ着手したことを示しているからです。今回の事件では漁政船が出動しているので、レベル3まで達していると見てよいでしょう。

しかし、ここから尖閣諸島は南シナ海とは異なるステップを踏むのではないかと私は考えています。というのも、尖閣諸島を自国領と規定している中国ですが、今回、海軍が出てくることはありませんでした。南シナ海などの先例から鑑みれば、ずいぶん控え目です。これは、現状では日本に分があると中国自身が考えているのに加え、尖閣諸島における武力行使は米軍が介入する可能性が高いことも原因です。尖閣問題では中国はできるだけ非武力で事を進めたいでしょう。したがって、南シナ海以上に尖閣では民兵の役割が重要になってきます。彼らが魚釣島へ強行上陸して施設を構築したり、もしくはその過程で海保と衝突したりすることで、日本の出方を瀬踏みし、状況を中国有利なものへと転換することを狙うしかありません。

ここで日本にとって大切なのは、相手の挑発に乗らないことです。今回の事件では、海自の出動や海保の武装を刷新して「断固とした」対応を求める勇ましい声も聞かれました。しかし、中国が民兵を送り込む目的を考えれば、「断固とした=武力」という発想がいかに相手の思うつぼであるかが分かるはずです。下手に武力攻撃すれば「日本は民間人を攻撃した」と宣伝することができます。つまり、中国に海軍派遣の格好の口実を与えることになるのです。「尖閣諸島に領土問題はない」とする立場をとる日本政府にとって、政治的にも軍事的にも好ましくない状況を生み出すことになるのは言うまでもありません。

そもそも、国境や領海がらみの局地的な衝突を本格的な戦争にエスカレートさせないための安全装置として海上保安庁は存在します。ファイティングポーズをとってはいても、こちらから先に手を出すのは必ずしも得策ではないのです。私も「断固とした」対応を取るべきだとは思いますし、我が領土を寸毫も侵すべからずとの姿勢を見せるべきだと考えますが、それは常に武力を意味するものではありません。将来的には日本のより明確な実行支配を示す施設を魚釣島などに建設するべきだとは思いますが、基本的には相手に先に手を出させてから対処する「後の先」をとるべきだと考えています。これは前線の海保の隊員に負担をかけることになるのですが、伝家の宝刀である海上警備行動を乱発するのはあらゆる意味から慎むべきものです。現実の事態に即した法制度、拿捕に際しての海自との共同オペレーションなどが、今回の事件を契機として洗練されることを期待したいと思います。
http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50454195.html



ここに言う中国の領土拡張のパターンに従えば、中国の尖閣諸島への侵略は既にレベル3の段階にまで達している、というよりも超えていると言えるのである。
(続く)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 尖閣諸島問題その2(22) | トップ | 尖閣諸島問題その2(24) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事