1つは、ピンチをチャンスに代えようとする強い意志だ。
2つは、ピンチをチャンス代え得る技術力の高さだ。
先ずは、クリア回数と危険エリアに侵入された回数をおさらいしてみよう。
クリア数 被進入回数 クリア/回数
日本W杯 3 6 40 90%
10/8アルゼンチン 40 46 87%
10/12韓国戦 18 34 53%
北朝鮮W杯 28 68 41%
パラグアイW杯 27 34 79%
ウルグアイW杯 37 48 77%
アルゼンチン戦では、クリア数、進入回数ともども南アW杯のデータよりも悪化している。W杯で戦った相手よりアルゼンチンの方が、レベルが相当上だったと言うこと。だからアルゼンチン戦に1対0で勝ったということは、まあマグレだったということでしょう。それに対して、日本がW杯で苦杯を喫したパラグアイのデータは、日本よりかなりよい。だからパラグアイが勝って当たり前だったのである。まあ本戦で引き分けることが出来ただけでも、日本は良ししなければならないのであろう。
北朝鮮は侵入された回数が68とこの表の中では飛びぬけて多いが、クリア回数は極めて少ない。これはクリアも出来ないほど攻められていたか、一旦自分のボールにしたからには何とかして敵陣に攻め込もうとする意欲の現われではないか。
だから、意欲と技術力が必要なのである。北朝鮮は、負ければ強制労働を課せられるという強迫観念があるから、自分のボールにしたからには必死に攻めようとしたのではないか、などと勘ぐるのである。だから、攻めようとする意志を強く持つことも必要なのである。
そしてベスト4のウルグアイであるが、データはやはり悪い。ウルグアイの戦いを見ていて、何でこんな弱いチームがベスト4なんだ、と思ったものだ。なぜこんなに弱かったのであろうか。分析してみれば、我々のような素人にはわからないが、それなりの理由があったのであろう。
ただこのようにデータにしてみると、弱かったと言う理由がよくわかる。しかしこれは後付の理由である。監督と言うものは、こうならないように何かしなければならないのである。特にW杯では、クリアせずに出来るだけつないでカウンターを仕掛ける、と言う教育をする必要があった。たまたまその前に連敗ばっかしていたので、監督の岡田も切羽詰って守備固め的な布陣を敷いたため、それがたまたまつぼにはまったのである。
それもこの記事で、言及されている。このアルゼンチン戦では「守備」が最も改善したと言っている。
アルゼンチン戦では、常に守備の陣形を崩さずに選手間の距離も一定で、チーム全体がコンパクトに守備を実行していた、と言っている。だからリオネル・メッシにも決定的な働きをさせなかったのですね。
この強い意志とそれを可能にさせる技術力の双方を高めることこそ、監督の仕事なのではないかな、と思うのである。ここら辺りで岡田監督は何をやったのかは、疑問の残るところである。なんと言っても岡田は、「ベスト4」を目指して頑張る、と言ったのではないか。そして全員がそのテーマに向かって協働して行かないと、サッカーと言う団体競技ではゲームが機能しない。
この2つのことがうまく実行できるには、当然守備が機能していなければならない、とも言っている。攻撃力の向上は、すべからく守備を基とすべきことなのである。まあその反対も言えることではあるが、相手から当然攻撃されるわけなので、攻撃も守備も夫々バランスが取れて機能していなければサッカーは負けてしまうのであろう。
このアルゼンチン戦では守備が相当に改善していたために、自陣への進入された回数が増えたにもかかわらず、失点しなかったのであろう。だから、あのリオネル・メッシ選手でも決定的な働きが出来なかったのである。
そして守備が良かったため、攻撃陣はすばやくボールをシュートまで持ってゆくことが出来たのだ。
南アW杯日本 10/8アルゼンチン 10/12韓国
自陣~中盤での縦パス成功率 '55.5% '50.0% '51.9%
Ballゲインから16秒未満のシュート数 1.62 4 1.95
10/12韓国戦の数字は概略のものであるので、念のため。
アルゼンチン戦の数字を見ると、縦パスの成功率は幾分下がっているが、それでもシュート数はかなり上回っている。数字上は、W杯の2.5倍に増えている。しかも世界の一流チームのアルゼンチンに対してだ。だから守備が安定したために、攻撃陣は本来の仕事が出来たのだ。だから16秒未満で相手ゴールに向かってシュートが打てた本数が2.5倍にも増えたのであろう。
要は、ボールを持った時に如何にすばやく攻撃に突き進めるか、と言ったところにポイントがある。守備が安定すれば攻撃陣はそれほど守備に回らなくても良くなり、より攻撃しやすい場所に身をおくことが出来る。そしてすばやくボールを受けてゴールに向かうことが出来る。サッカーの試合を見ると、常に守備と攻撃の繰り返しである。だから守備をうまくやって、ボールを速く奪い攻撃陣へパスして、相手側が防御体制にかっちりと入る前に敵陣に攻め込む、と言うことが必要となる。だから守備から攻撃への切り替えがスムーズにゆけば、得点できる確立は大いに増えるのである。
そしてそれらのことを確実に行えるようにするためには、先ずは個々の技術力の向上が必要であることは言うまでもないが、その上にチームとしてのその時その時にマッチした試合の進め方を、全員で共有することが更に必要となるのである。
これは岡田監督も言っているように、このことは、世界レベルのチームとの試合の経験の積み上げで、習得することが出来ると言うものである。しかし、そのシミュレーションが出来るような訓練を考えることも、監督の仕事なのである。と言うよりもそれこそが、監督の最もやらなければならないことなのであろう。
果たして岡田は、それがどれだけ出来たのであろうか。このように森本美行氏のように考察すれば、自分としてはどれだけそれが出来たのであろうか、何が不足していたのであろうか、何が補えなかったのか、などは自ずと判ろうと言う物である。
アルベルト・ザッケローニ監督の今後を期待したいものである。
(終り)