木村 油彩
日曜クラスのサトルです。今回は木村さんの油絵をご紹介させて頂きます!
煌びやかな灯りに照らされた夜道を犬を連れながら歩く3人の家族の姿から、懐かしさを感じます。僕は子供の頃は夜道を1人で歩けず、必ず家族と手をつなぎながら一緒に歩きましたので、夜道の記憶は大人になっても忘れない思い出の一つです...。沢山の灯りと家族の温もりで、小さな頃に感じた暗い夜道の怖さを包んで消してくれる素敵な作品だと思いました。
散りばめられた灯りが明るく光っているのに対し、空や屋根などにはしっかりと暗さが入っています。かなり明暗の対比が効いていますが、見ているとなんだか穏やかな気持ちになります。
木村さんは薄い絵の具の層を重ねて複雑な色味を作る油絵の達人です!提灯やランプの色を、白いハイライトの上から薄く黄色を重ねる事でぼんやりとした光を表現し、さらには重ねる色を少しずつオレンジに変える事によってハイライトの色調が単調にならないように工夫されていますね。暗い色も完全な黒を使うのではなく、最初は暗い茶色で描写した上から濃い透明色のウルトラマリンを重ねる事で深みのあるグラデーションを作っています。特に夜空の表現は魅力的。下界からの光や月明かり照らされてうっすら明るい夜空と、それを隠す雲の影には絶妙なぼかしが独特の奥行きを生み出しています。
画面右下の寝転がった猫や、看板の下にあるのれんは後から描き足していました。最初に決めた構図に囚われず、臨機応変に描き進める姿勢は今まで積み重ねた経験から来るものなのでしょう。
現在は木村さん、鶏を日本画を描かれています。鶏は古くから日本画で描かれてきた伝統的なモチーフですが、木村さんの様な油絵を長年描かれてきた方が日本画で描いたらどの様な作品になるのでしょう?僕は藝大で日本画を勉強していますが、まだまだ経験不足なので、生徒さんの描かれる作品からも新たな発見があります。日本画だからこうしなきゃいけない!なんてことは考えずに自由な表現をしてください。心から楽しみにしています!