小出裕章氏講演@山口県周防大島町
この講演の主催者は、島で農業を営んでいらっしゃる青年だそうで、南へ45キロ下れば愛媛県の伊方原発(プルサーマル)があり、西30キロには上関原発の建設を計画中だという。福島の原発事故をきっかけに、島の人にも原子力発電所について考えてもらうため、超ご多忙の小出先生に来て頂いたそうだ。
いつも小出先生の出演されるyoutube、ustream、たねまきジャーナルやウェブサイトをご覧になっている方には、これまでの復習としてご覧いただけると思う。
★小出裕章氏講演 (1)於山口県周防大島町 2011年5月28日
★小出裕章氏講演 (3) 於周防大島町 2011年5月28日
★小出裕章氏講演 (4) 於周防大島町 2011年5月28日
会場が暗くなって、小出先生登場。(さっきからいらっしゃったけど。)
会場を見渡して、「以前はこんなに人が集まらなかったのですが、喜んでいいのかどうか・・・」とおっしゃいます。
遅過ぎたんですよね、ほんとに。
まずタイトル「原子力の恩恵とリスク」について、一言。
「このタイトルは、わたしが付けたものではなくて、主催者が付けたものです。原子力の恩恵なんていったい何があるんでしょうか?一時はそのようなことが盛んに言われ、わたしも大いに夢を持って原子力に人生を賭けてしまいました」と言うようなことをおっしゃる。
という導入で、「夢のエネルギー『原子力』」の虚構をはぎ取ってゆきます。
まず、石油資源が枯渇する、というウソ。次にウランを燃やして核分裂反応を起こせば無限のエネルギーが取り出せる、というウソ。
ウランを燃やすと核分裂生成物という「死の灰」が産まれます。
広島原爆では、800gのウランが燃えて、広島の街は一瞬に消えてしまい、800gの死の灰がまき散らされました。
100キロワットの発電をする原子力発電所を1年運転すると、1tのウランが燃えて、約1tの死の灰が産まれる。
チェルノブイリの事故の時は、広島原爆の約800倍の死の灰がまき散らされたのだそうです。
毎年日本中の原発で作られる死の灰の量は、広島原爆の5万発分、通算すると、120万発分もの死の灰を溜め込んでいるのだそうです。
それらの死の灰は、きっと、「使用済み核燃料プール」の中とか、今はイギリスにあるセラフィールドの再処理工場とか、将来は建設中だかの「六ヶ所村再処理工場」で「核燃料リサイクル」されて、福島第一の3号機とか、伊方原発とか、玄海とかで、MOX燃料として、燃やされているのでしょう。日本の原発だけで、世界を何度も破壊することができるんですね。ゴジラやモスラやガメラが本当に産まれてもおかしくないですね。
短い時間でしたが、質疑応答がありました。先日の参議院での議員さんの質問よりもよっぽど気の効いた質問が多くて関心しました。(つーか、議員さんの質問って、話が長くて、何が言いたいんだか??全員じゃないけど。)
広島では800gのウランが燃えたと言いましたが、これは空中で爆発して、死の灰の多くは成層圏にまで達して、世界中に飛んで行ったのだそうです。もちろん、広島では黒い雨が降ったけど、そもそものウランの量も原発に比べたら格段に少ないわけです。
しかし、チェルノブイリの場合は、爆発したけど、原爆みたいに爆発したわけではないので、死の灰は風に乗ってフワフワと飛んで行った。しかも、量は800倍。
今回の福島の場合、1~4号機まであるので、いったいどれほどの死の灰が舞っているのか・・・広島や長崎で今でも人が暮しているから、どうこう、という比較にはとてもならない、ということが分かってしまいました。
あぁ、なんてことでしょう。だから、チェルノブイリでは、住民の強制移住があったし、今日のお話の中でも「いずれ福島の人たちも移住しなければならないでしょう」とおっしゃってました。
あぁ。そうなんですね、やっぱりそうなってしまうのですね。
小出先生が、住民の避難の話をする時に大変に辛そうに、言葉に詰りながらお話なさいます。
これは、「福島もその周辺も、もう住んじゃいけないんだよ、でも、それはオレには言えないよ」ってことなのね。
だって、先生はいつも「放射線管理区域」のお話をなさいます。
「放射線管理区域というのは、みなさまご縁がないと思いますが、そこでは、タバコを吸ってはいけない。水を飲んではいけない。ものを食べてもいけない。寝てはいけない。18歳未満の人間を連れ込んではいけない、というところです。わたしのように、放射能を扱って、給料をもらっているような特殊な人間は1年間に20ミリシーベルトまで我慢しなさいよ、ということです。」
ってなお話をいつもなさいます。
そして、チェルノブイリの汚染地図を示して、「水色の地域までが放射線管理区域になりますが、赤の地域の40万人だけ避難させました。でも本当は管理区域に当たる565万人も人は住んではいけない」
というお話をなさいます。
この話を今回の日本の原子力発電所事故に当てはめたら・・・・
それは言葉にすることは出来ないってことではないかしら。
小出先生の絶望の淵をちょっとのぞいてしまったような気がしました。
「今福島では、人類が経験したことがないような出来事が進行中なのです」
「悪夢を見ているような毎日です。これがどうか夢なら覚めて欲しいと思います」
握手とか、ツーショットとか、きっと気楽にお応え下さったと思うけど、そんなことして浮かれてる場合ではありません。
アンケートを出して、とっとと広島へ戻り、山奥のコーヒー屋さんでブレイクして家に戻りました。
うう・・・こうやってまとめていて、胃の中がひっくり返りそうになってます。
今日は本当に行って良かったです。ほとんどの話は、いつもyoutubeやustreamや、たねまきジャーナルなどで見たり聞いたりしているお話だけれど、ナマ小出先生のお話は・・・ものすごく重く怖いお話でした。
いつもいつもおっしゃってるのに、その言葉の意味するところが、今日初めて分かったような気がします。これがわたしの深読みのし過ぎだったらいいのですが、本当に本当に、大変なことになってる、っていうわけです。
もう原発の話は書かないかもしれません。わたしも絶望しそうです。
日本中に200キロのところに原子力発電所が存在しないような場所は・・・多分ない。
八丈島に首都移転ですか?東京都ですが・・・
(以上の解釈は、あくまでもわたしの解釈です。同じお話を聞いてもっと違った解釈があると思うし、わたしの解釈が小出先生がお伝えしていることと違うということも十分に考えられます。みなさん、公開されている小出先生の講演をご自身でお聞きになって判断なさって下さい。)
ペンギンさん、とても詳しい小出先生の講演のご報告ありがとうございました。こうして原発の恐ろしさを肌身で感じて、原発全廃を訴えてくださる方が1人でも増えて下さったらと思います。日本の将来を背負って生きる子供たちのためにも、原発全廃を訴えつづけましょう。