アトリエ 籠れ美

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平成27(2015)年5月4日より

大人になってから油絵を始める方法

2017-03-17 06:21:05 | 画材、技法、芸術論
 「油絵を始めるのに年齢は関係ない。むしろ歳を取ってからの方が面白い(味のある)絵が描ける」とは、よく言われることだが、実際に社会人になってから油絵を始めようと思っても、なかなか大変だ。
 若い頃から働き盛りとされる40代までは忙しすぎて思うように時間が取れないし、50代に入って徐々に自由になる時間が増えていき、憧れの油絵を始める人もいるが、実際には退職してからになってしまうことも多いようだ。
 そこで働きながらにせよ、退職してからにせよ、大人になってから油絵を始めて、効率的に上達させる方法を伝授したいと思う。


 ①まず最初に週1回の油絵教室へ通うことである。言い換えると「週に1回、油絵教室へ行く時間を作ること」である。

 日本では何事も独学を珍重する傾向にあるが、それは何の意味もないことで、最初は誰かの手ほどきを受ける方が効率的で、上達への近道でもある。

 ただしそこで問題になることが2つ。1つはできれば自宅から近くの教室へ行くこと。地元の油絵教室に通う方が疲れないし、長続きする。どうしても近場になければ、遠出するしかないが、交通費もかかるし、疲れやすくなる。

 そしてもう1つは、自分に合った油絵教室であること。これがなかなか難しい。ベテラン、つまり教室を長くやっている先生が望ましい。経験の浅い人に教わると、教え方が下手なので、教わる側も苦労することになる。特に良くないのが描くモチーフを生徒自身に用意させる教室である。これは最悪なので通わないこと。

 油絵教室とは油絵具や溶き油などの油絵の道具の扱い方を教えるところなのであって、初心者は何を描いたらいいかわからないし、自分の描きたいものが見つけられるなら(これは巨匠でも苦労するところなので)、すでにその人は初心者どころか上級者なのである(ただ画材の扱い方を知らないだけに過ぎない)。

 先生が生徒の描きやすいモチーフを用意するのは先生の義務である。教材を生徒に用意させてどうする。こういうのを手抜きと言う。実際のところ、こうした教室は、先生の自宅ではなく、どこか場所を借りてやっている場合が多く、単に先生がモチーフを運んだり持ち帰ったりするのを面倒臭がっているだけである。

 それとあまり月謝の高いところはやめましょう。油絵教室なら月謝1万円が普通ですので、そのくらいのところを選びましょう。


 ②油絵教室へ通い始めると同時に、美術館の企画展へ行くこと。

 最初は週に1回、欠かさずに教室通いをし、のんびり、ゆっくり楽しんで描いていていいのだが、と同時に、大事なことは美術館へ通うことである。できるだけ本物を目の前でたくさん見る必要がある。目を肥やさないといけない。

 ただこのときに大事なことは、広く浅く見ることである。つまり最初はルノワール展へ行くのではなく、印象派展へ行くなど、できるだけ多くの巨匠の作品が展示されている企画展を選び、いろんな作品を見ておくのが重要(これは自分の好きな画家を見つけることと関係している)。そうしてさまざまな時代、画家の作品を知っておくことは、自分が油絵を描くときの大いに参考になる。

 これはお金の節約も意味している。油絵を描き始めるとわかるが、結構画材代がかかる。でも美術館へ通わないといけない。それも年間にできるだけ多く通うのが望ましい。そうなると財布と相談しないといけない。だから複数画家の企画展へ行くことで効率よく目を肥やすことができる。

 とはいえ近隣に美術館がなくて行きたくても行けない場合もあるでしょう。その場合は仕方ありませんが、旅行やバスツアーなど、少ない機会があれば逃さずに行きたいところです。


 ③自分の好きな画家を見つけるために、画集を買ってみる。

 教室へ通い、美術館へも行くようになった。でもこれだけでは不十分だ。やはり手元に画集が要る。家でじっくり画集を見ることは当然上達へつながる。まだ自分の好きな画家は見つかっていなくても、本屋へ行って、これなら良さそうという巨匠の画集を買ってみることである。後で実はあまり好きじゃなかった、なんてことは当然あるが、ここで大事なのは自分のお金で買ってみることである。

 やはり身銭を切らないと、勉強にならない。そして画集はいくつあっても無駄にならない。しかも今の時代、印刷技術が上がっているので、安価で高品質の画集を見つけるのは容易だ。新潮芸術文庫やタッシェン、あるいは芸術新潮などの月刊誌、週刊で出版された薄手の画集を古本屋で買うのもいい。

 そうしているうちに、自分のお気に入りの画家が出てくる。それも何人も見つかる。それが大事で、自分の描く油絵、目指す画風を教えてくれる道標となってくれる。これは自分探しでもある。へえーっ、実は自分はこういう絵が好きだったの !? と、自分で自分に驚いたりする。そうした意外な発見から道が開けてくる。


 ④テレビの美術番組を録画、DVDやBDへダビングする。

 画集もいいが、どうしてもお金がかかる。そこでテレビはただで見れるわけで、積極的に活用すべし。美術番組は録画して見るようにする。最初のうちは自分の興味の持てない画家を扱った番組は見る気がしないものだが、それはそれで仕方がないのだが、次第に何でも見るようになる(私もそうでした)。そしてむしろ自分の知らない画家の方を嬉々として見るようになる。自分の美術の知識が増えていけばいくほど、より貪欲になっていくものである。

 そしてできるだけダビングしておくとよい。後で繰り返し見れるし、画集、つまり写真で見るのと、テレビ、つまりカメラを回して見るのとでは、違うのにも気づくでしょう。そうなるとますます美術番組をダビングしておくのが貴重になる。


 ⑤油絵教室をやめて、自分で描く。

 教室にいつまでも通っていては、自分の絵は上達しません。描くモチーフは先生が用意してくれるし、困ったときは先生が手を入れてくれる。最終的には自分の絵を確立しないといけません。いつまでも先生に頼っていては駄目。

 ではどれぐらい通えばいいのか。何年目でやめるのがいいのか。こればっかりは何とも言えませんが(私は6年間地元の美術教室へ通いました)、やはり5年がひとつの目処になるかと思います。もちろん10年通っても構いませんが、いずれ卒業しないと先へ進めません。

 そして教室をやめてみて初めてわかるんですね、じゃあ自分で何か描こうというとき、何を描いたらいいかわからない。どうしよう。何を描いたらいいだろう。つまり独りで油絵を描こうとした瞬間から、その人の本当の画家人生が始まるのです。


 付)そこから先、全て自分で切り開いていくしかありません。自分で考え、判断し、行動するしかありません。誰も教えてくれませんし、誰にも教えられません。

 注)どうしても油絵教室へ通えない場合は独学で始めるしかありませんが、それについては来週の今日、記事を入れます。

 蛇足)この記事内容と同じことをどこかで一度、ごく簡単に触れたと思うんですが、今回ちゃんと題名をつけて詳しく書いてみた次第です。


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1 コメント

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おはようございます (たにむらこうせつ)
2017-03-17 09:40:41
メッセージありがとうございますm(__)m
ありました。間違えてしまいました。
お詫びします。ごめんなさい。

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