アトリエ 籠れ美

絵画制作、展覧会、美術書、趣味、その他日常の出来事について
平成27(2015)年5月4日より

なぜ私は個展をやらないのか

2017-03-10 06:23:58 | 画材、技法、芸術論
 もちろんお金の問題もあります。しかしもし私に潤沢な資金があったとしても、個展はやらないでしょう。かつては私も喉から手が出るほど個展をやりたかった時期がありました。個展をやりたくてやりたくて仕方ない。でもお金がなくて断念しました。まさに断腸の思いでした。

 では改めまして、なぜ私は個展をやらないのか。それはやっても無駄だからです。お金の無駄、時間の無駄です。そんなお金や時間があるなら、絵を描くことや、美術館通い、画材を買うことに使う方が健全です。

 何事も経験ですから、そういう意味では個展をやってみるのも悪くないでしょう。しかしながら一度でも個展をやってしまえば、必ず自分の画歴に載せなければなりません。よく画歴に最初の方にだけ個展をやった記録が2、3回あり、あとは個展をやらなくなっているという、みっともない事例が多いのは、個展をやっても無駄だと気づいたからです。

 個展をやったからといって、世間の注目を集めたり、ましてや自分の絵が売れるなんてことはありません。もちろんアマチュアでなくプロを目指すなら、つまり日曜画家ではなく職業画家、画業で生計を立てたいと考えているなら、当然自分の作品の発表の場は必要です。それには公募美術団体展とそれを主催する公募美術団体の支部展だけで十分です。これで年2回、発表の場を確保することができます。

 皆、個展をやって自分の絵が売れたらいいなと思って始めるのです。でも現実にそんなことが起こるのは皆無です。理由は簡単。その人の絵が魅力的でないからです。だから訪れた人は買わないのです(逆に言えば、魅力的な作品なら値段次第で買っていきます)。

 もしどうしても個展をやりたいなら、グループ展で妥協することを勧めます(ただし自分以外に数名集めないといけませんが)。互いに分担するので、これなら金銭的負担も少なく、また在廊しなければならない、つまり店番、受付をしなければいけないという、拘束時間も、そして肉体的負担も少なくて済みます(長時間の在廊は実はかなり疲れます)。

 いや私は自分の絵を売ろうとして個展をやるのではない、公募美術団体展や支部展、グループ展と違って、会場を自分の作品で埋め尽くしたいだけなのだ、そうした自分だけの展覧会をやってみたいだけなのだと言うなら、つまりひょっとしたら自分の絵が売れるかもという下心が微塵もないと言うなら、それはそれで結構ですが、そんなことのために何十万もお金を使うのはどうなのか、ちょっと冷静になって考えてみることを強く勧めます。

 もちろん、世の中にはお金持ちはたくさんいますから、個展をばりばりやりたいし、やるだけの金銭的余裕もある、という場合もあるでしょう。もしそうなら、個展は一度始めたら必ず定期的に行うことです。年に1回が最善ですが、2年に一度(ビエンナーレ)、または3年に一度(トリエンナーレ)でも構わないと私は考えます。

 もし仮に私がこれから個展を始めるとしたら、つまり私がお金も時間も持て余してる人間だったとしたら、自分の絵の実力を考慮して、年1回は厳しいので、2年に1回の開催を考えます。まだ私の絵の腕前は上達の余地がありますから、そして何事も一気に向上しませんから、2年に一度くらいの頻度で作品を発表するのが、来場者の方々にも自分の上達振りを楽しんでもらえるに違いないと考えるからです。

 今来場者の話をしましたが、個展の場合、身内や友人、知人が訪れる程度に終わることが多いのが現実です。しかも彼らは無理をして時間を作ってお義理で見に来るので、やれやれというわけで、彼らにしてみればいい迷惑なだけです。そして必ずしも絵に興味があるわけではありません。

 私は無理して個展をしてこうした人たちに負担をかけてまで見に来てほしいとは思いませんし、こんなお情け、おこぼれに与るつもりもありません。それでもこちらは会場で丁寧なお礼を述べ、個展終了後には、ご記入いただいた芳名帳を頼りに、ご高覧ありがとうございましたとか何とか、恭しく礼状を出さなければなりません。

 個人的はただの屈辱にしか感じません。ですからもし私が個展をやるなら、こうした人たちに案内状を出すつもりはありません。自覚的に見に来てくれる人だけで結構です。ということはほとんど来場者が見込めないことになりますが、それはそれでいいんじゃないですか。必ず見に来てくれる人がいます。熱心な人もたくさんいます。

 この私のブログにしても、現にこうして多くの人が訪れてくれています。こちらが真剣に取り組んでいれば、時間はかかっても必ずそれに応えてくれる人がいるものです。

 話を戻しましょう。個展をいったん始めたら定期的にやらないといけないと先程書きましたが、定期的にやらないと(たとえそれがビエンナーレやトリエンナーレであっても)、本当に意味がなくなってしまいます。場当たり的に、無計画に行うなら、そんなものにつきあってくれる人はいません(皆、自分の生活があり忙しいのです)。定期的に開催することで、おお、この人は真面目で真剣に取り組んでいるんだな、やっぱりちょっと見に行くか、ということになります。

 私が個展をやらないのは、個展をやっても自分の絵が売れないからです。つまり人に買いたいと思わせるほど魅力的な絵になっていないからです。これは全て私自身の腕前のなさが原因です。私はもしなれるんだったら職業画家になりたいですが、それはなかなか難しいでしょう。

 自分の絵が魅力的だったら、魅力的な作品が描けるんだったら、本当に周りが勝手に騒ぎます。放っておいてくれません。世の中、そういうものです。ですから、それまでは公募美術団体展と支部展で十分なのです。この年2回の発表の場を生かして研鑚を積み、芽が出ればと思っているのです。

 個展をやったからといって世間の注目を集められるわけではありません。全てはその人の作品、実力次第です。ですから金銭的負担も少なく、また多くの人に見てもらえる公募美術団体展の方が、あらゆる意味で個展よりはるかに効率がいいですし、多くの人が見るということは、少しでも良い作品を発表したときに、注目を集めやすいことを意味します。

 要するに個展とは極めて非効率的なものなのです。個展をやるのは職業画家となってからで十分です。つまり自分の絵が売れることがわかっている場合のみ、つまり自分の絵を買ってくれる顧客がいる場合のみ、非常に効率的なもの、つまり元を取れるもの、になるのです。下手な素人がやるのは時間とお金がもったいない。

 もしどうしても個展がやりたいなら、熟慮に熟慮の末、始めること。もしあなたが絵を習い始めて日が浅いにもかかわらず、どうしても無理してでも個展をするなら、いったん始めた以上、トリエンナーレ(3年に一度)で必ず継続しておくこと(これなら財政的にも大丈夫でしょう)。とにかく一度きりで個展をやめてしまうような、みっともないことにならないように。

 付)個展を重ねても絵が売れない状況が続けば、事態は最悪になります。会場を訪れた人が、その人の画歴を見て、こんなに個展をしているのに絵が売れないなんて、やっぱりこの人の絵は駄目なんだな、と思われるのが落ちです。引いてしまったり、内心失笑しているかもしれません。マイナスの印象を相手に与えることになるのです。
 せっかく何十万ものお金を使って個展をしていてもこれでは悪循環です。しかしながら人に見てもらわなければ、そして評価してもらえなければ、絵は売れていきません。ですからそれには公募美術団体展が一番良いのです。経済的負担は少なくて済みますし、最初は誰しも下手ですが、それでも作品は発表したいものですから、一般公募で入選しておくのが無難です。

 注)かく言う私も公募美術団体展と支部展だけですが、合計24回も作品を発表している計算になる(ええっ、そうなの、私)。でも当然、絵が売れているわけではありません。24回も作品を発表していて絵が売れていないなんて、やっぱりこの人の描く絵は駄目なんだと思われても仕方ない。しかしながら個展でもやらない限り、こうした画歴が表に出ることはありません(今回、この記事を書くのに数えてみて驚いちゃった次第)。
 私も画歴を書けばかなり大袈裟になります(実際は大したことないのにね)。自分なりの絵が描けるようになる、つまり自分の画風を確立するには、大体20年かかります。ですから安易に個展などやって画歴だけ立派にしても仕方ありません。

 蛇足)いつか私の画歴を紹介したいと思っているのですが(ついでに私の名前も)、なかなかいい機会がなくて。どこかで一度ちゃんと記事にしておきたいと思っているんですが。


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