読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

「自壊する帝国」(佐藤優著/新潮社刊)

2006-07-30 16:28:59 | 本;ノンフィクション一般
序章 「改革」と「自壊」
第一章 インテリジェンス・マスター
第二章 サーシャとの出会い
第三章 情報分析官、佐藤優の誕生
第四章 リガへの旅
第五章 反逆者たち
第六章 怪層ポローシン
第七章 終わりの始まり
第八章 亡国の罠
第九章 運命の朝

『国家の罠』 (新潮社/2005年)、『国家の自縛』 (産経新聞社/2005年、 聞き手:斎藤勉・産経新聞元モスクワ支局長)、『国家の崩壊』 (にんげん出版/2006年、 聞き手:宮崎学(作家) に続く著者の本。

なんとも辣腕の外交官だ。しかも三等書記官時代の回顧録。ソ連崩壊の舞台裏をこれほどに詳述した書物は当の旧ソビエト連邦国にもないのではないかと思う。それは佐藤氏が身体を張って、足で稼いだ情報に裏打ちされているからだ。学ぶところは随所に見られるが、特に著者の「陰徳」、外務省の体質に関する記述が印象的だ。

佐藤氏の陰徳
「普段、良好な人間関係を構築しておけば、クーデターや内乱のような緊急事態が発生したときに、情報は電話でとれるものだ。・・・また、情報源である高官だけでなく、秘書官や電話交換手やタイピストと親しくしておくことが重要だ。私は秘書官や電話交換手の誕生日には必ずシャンペンを届け、高官の事務所の女性職員に対しては三月八日の国際婦人デーに必ずバラの花と口紅を贈った。このように陰徳を積み重ねておくと、いざというときに上司に電話をつないでもらうことができるのだ」。

「第一書記や第二書記の直通電話の番号は公表されてはいないが、ホテルの電話技師と親しくなって、部内使用の電話張を見せてもらい、部屋を年間契約している共産党幹部の電話番号を書き写しておいたのだ。普段ならば、教えられたわけでもないのに要人の直通電話にかえてりしたら不興を買うだけなのでやらないが、今は非常事態だ。背に腹は替えられない」。

外務省の体質
ゴルバチョフとシュワルナッゼの関係についてのメドベージェフ(反体制歴史家)の情報源はKGBなので注意すべきだとセルゲイ・フルシチョフのアドバイスを本省へ打電しようとした佐藤氏に対し、田中兼次総括公使に次のようにストップをかけられる。
「いや、君のクレジビリティーで済む問題じゃないんだ。公電は大使から外務大臣に宛てて打つ。だから大使のクレジビリティーに傷がつく。大使館は新聞社じゃない」

「私はゴルバチョフ派の官僚に、霞ヶ関官僚と同じ臭いを感じていた。権力者の動向や目先の利益には敏感だが、信念がない。言葉と行動が乖離している」。

そういえば、日本と旧ソ連の関係はどうなっていたのだろう。日ソ共同宣言を見ると、「日ソ共同宣言は、正式には日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言(昭和31年12月12日・条約第20号)と言う。1956年10月19日に日本とソビエト連邦がモスクワで署名し、国会承認をへて、同年12月12日に発効した外交文書(条約)のこと。これにより両国の国交が回復したが、国境確定問題は先送りされた。日ソ国交回復共同宣言ともいわれる」。(フリー百科事典)

次に、日露関係の今を見ると「グレンイーグルズ・サミットの際の日露首脳会談」がある。「2005年7月、英国グレンイーグルズで開催されたサミットの際に、小泉総理とプーチン大統領との日露首脳会談が行われた。会談の結果、プーチン大統領が2005年11月20日から22日の日程で訪日することで合意した。両首脳は日露関係が

「日露行動計画」に基づいて幅広い分野で着実に進展していることを歓迎し、この関連でプーチン大統領より、トヨタ自動車のサンクトペテルブルグ進出を高く評価する旨発言があった。また、北方領土問題については、困難な問題ではあるが、両首脳が共に政治的指導力を発揮し、しっかり取り組んでいくことを確認した」。(北方領土学習室)
北方領土問題は一向に前に進まないが、悪くはない関係である。


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