読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

「27人のすごい議論」(『日本の論点』編集部編/文藝春秋、2008年)~その1~

2009-06-25 18:08:42 | 本;エッセイ・評論
<目次>
第1章 常識をくつがえす
第2章 本質を見抜く
第3章 変化を読む
第4章 日本を見直す

<文藝春秋|27人のすごい議論(『日本の論点』編集部)>
http://www.bunshun.co.jp/book_db/6/60/63/9784166606399.shtml

社会は何によって動いているのかとふと考えると、それが人間の営みによってであり、そこに生じる問題に対する議論によってであると思い至ります。山奥深く一人で自炊生活をつつがなく送るのであれば、そこには社会は存在しませんから、わずらわしい問題も生じません。そこには自然との共存があるばかりです。

人間が自由を求めて生活の拠点を社会におく以上、そこには協調ばかりではなく、軋轢も生じます。むしろ自分にとっての障碍ばかりが存在するかのようにも見えます。そんな社会には、自然の中で生きるのとは違った、人間関係や社会の中で生き抜く知恵が必要になります。そのような知恵を人生経験数十年のわが身の中で生み出すことは一大事業です。

住いの中で快適に過ごすための一つに借景があるように、自分の暮らしの中で先人先達が積み上げてきた知恵を借りることは、この困難な一大事業に挑戦するための大いなる助けとなります。私たちが生きる現代社会には、誰かが解決しなければならない問題が山積みです。このような現代社会の一員として当事者意識を持って考えるために本書はあります。

本書に登場する27人の知識人、専門家の議論に耳を傾け、自分なりの答えを出す。そしてその答えにそって行動してみる。結果が違ったら、別の方法を考えてみる。個人の行動とは所詮このプロセスの繰り返し。まず行動を起こすための指針として、本書は機能します。

ここでは今日から、目次に分けられた四章を章ごとに四回に分けて取り上げ、識者の議論をまとめておきたいと思いましたが、紙面の都合もあるため各論文の小見出しを記載するに留めます。

それではまず、第1章から始めましょう。本章に取り上げられる議論のテーマは、裁判員制度、生態系、性差、成果主義、リサイクル、産学連携。


第1章 常識をくつがえす

<裁判員に公正な判断は可能か>
~嵐山光三郎・・・量刑判断が素人にできるか。裁判員制度は仕立て屋に手術をさせるようなものである~(2008年)

・裁判官の徴兵制というべき制度
・素人に死刑宣告されて冤罪だったらどうする
・強制的に指名しておいて他言無用がないだろう。
・国会議員は誰でもなれるが裁判官は違う。

<嵐山光三郎 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B5%90%E5%B1%B1%E5%85%89%E4%B8%89%E9%83%8E


~北尾トロ・・・裁判官が法律のプロならこっちは人生のプロ---みんなで法廷へ行こう~(2007年)

・無罪の人間を死刑にしたらどうしよう
・法廷は喜怒哀楽あふれる「人生劇場」だ
・裁判官とふつうの人のズレを修正する役割
・傍聴すれば案外やってみたくなるもの

<北尾トロ - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E5%B0%BE%E3%83%88%E3%83%AD


<自然の生態系をどう守るか>
~池田清彦・・・「外来生物を駆除せよ」は非科学的。生物多様性のためには、交雑はむしろプラスだ。~(2007年)

・「生物多様性の保全」は科学ではなく政治
・根本的に間違っている日本の輸入規制
・イヌやネコ、イチョウやウメも外来生物
・交雑して子孫を作るのは自然の営為

<地球温暖化は怖くない?「環境問題はなぜウソがまかり通るのか(2)」(武田邦彦著)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/feef018587f629cb7585674145cb3f72


<性差はなくすほうがよいか>
~内田 樹・・・ジェンダー概念の功績は大きい。だが、つねに敵を必要とする自己矛盾に陥っている。~(2003年)

・性差別の構造を暴いた新しい概念
・マルクスに回帰するフェニズム
・「正義の戦士」はつねに敵を必要とする
・性差否定論者が自分の性別にこだわる皮肉

<内田樹 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%85%E7%94%B0%E6%A8%B9


<成果主義は日本に根づくか>
~高橋伸夫・・・カネより仕事内容で報いる日本型人事は、成果主義よりはるかに優れている。~(2003年)

・「成果主義をやめたい」が人事担当者の本音
・日本の“年功賃金”には大きな個人差がつく
・高給よりも面白い仕事を望む労働者
・安上がりのうえにやる気の出る日本式人事

<高橋伸夫 (経営学者) - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%A9%8B%E4%BC%B8%E5%A4%AB_(%E7%B5%8C%E5%96%B6%E5%AD%A6%E8%80%85)


<リサイクルは機能しているか>
~武田邦彦・・・リサイクルはかえって資源を浪費し、環境を破壊する~(2001年)

・人間が活動すれば廃棄物が出るのは当たり前
・自然の役割を人間が担当できるのか
・浄化系のないリサイクルは成立しない

<地球温暖化は怖くない?「環境問題はなぜウソがまかり通るのか(2)」(武田邦彦著)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/feef018587f629cb7585674145cb3f72


<産学連携は国益にかなうか>
~藤原正彦・・・産業界が大学に人材製造工場の役割を押しつけるのは、国のためにならない~(2002年)

・教育まで変えろという経済復興
・大学の本領は基礎研究にある
・英語、パソコン、株取引を教える愚
・大学は産業界の人材製造工場ではない

<藤原正彦 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E5%8E%9F%E6%AD%A3%E5%BD%A6


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