マイペースおくやまの進化的考察

進化の研究は楽しい!というわけで、日常の研究生活で考えたこと、感動したこと、あるいは思いつきのネタの備忘録です。

奇跡のシダ植物フロラ図鑑

2009-05-20 10:57:08 | 研究
珍しく立て続けのエントリです。
昨日、素晴らしい本を頂戴しましたので簡単に紹介します。

東海大学出版会 国立科学博物館編 国立科学博物館叢書8:南太平洋のシダ植物図鑑

本書はニューカレドニア、バヌアツ、フィジー、サモアという植物好きなら誰でも一度は行ってみたい(ちなみに私は残念ながらどの島にも行ったことがありません)憧れの島々の、極めて網羅度、完成度の高いシダ植物図鑑です。

本書をざっと読んでまず目を引いたのが、分類体系に基本的に最新の分子系統の知見を反映させていることです。各科の見出し文には、従来の分類体系との違いが述べられていますので、これまでの分類体系に馴染みがあった読者にも、「今はそうなっているのか!」というちょっとした驚きとともに、検索にはそれほど不便を感じることが無い構成になっています。また私も含めそれほど旧分類体系に馴染みの無い初心者ならば、これをシダの多様性を把握するための教科書として用いることが出来ます。南太平洋にはイヌナンカクラン属(科)をはじめとした、陸上植物の多様性を理解する上で重要でありながら日本に分布しないグループも分布するため、まだ見ぬ植物を想像しながら本書を読み込むのも楽しいものです。

次に圧倒されるのが、掲載されているほぼ全種について描かれた精密な線画の数々です。検索表とこの図によって、本書の種同定のための実用性は揺るぎないものとなっています。

このような本が出来上がったのは、ひとえに日本シダの会の個人及び組織のレベルの高さが群を抜いているためなのでしょう。同様の本を種子植物で作るのはかなり困難でしょうが、本書は例えばこれから国内フロラについて図鑑を作成する際にも指針となる重要なマイルストーンだと感じました。

シダを研究材料として用いることがある専門家はもちろん、これから本格的に植物を勉強したい学生にも、本書はお勧めです。タダで入手した立場で言うのもなんですが、8610円は決して高くないです!


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