脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

もはや「金星」ではなく -徳島vs北九州-

2011年08月06日 | 脚で語るJリーグ
 震災の影響で延期となっていたJ2の第3節が今週末に行われる(17日に行われる札幌-千葉を除く)。金曜日に先行して行われたポカリスエットスタジアムでの首位・徳島と5位・北九州の試合は、白熱した攻防戦の末に、1点を守り切った北九州が1-0と勝利。勝点を33ポイントに伸ばした。徳島は勝点を稼ぐことができず、土日の試合の行方によっては首位陥落の可能性も出てきた。

 

 台風が近づいている影響もあってか、雨が降ったり止んだりと不安定な天気だった徳島の鳴門。ここで対峙するのは、どちらも直近5試合では1敗しかしていない最近好調の2チームだ。首位の徳島は、6月19日のFC東京戦(@味スタ0-1)で負けて以来黒星知らず。対する北九州もJ参入1年目の昨季はなんと年間1勝しかできなかったチームがここまでで既に9勝。7月は岡山に喫した黒星のみの1敗と非常に好調で、なんと先週30日の試合ではFC東京を相手にホームで1-0と完封勝利を果たしている。
 この日は、徳島が警告累積からDFエリゼウが復帰してベテランの三木とコンビを組み、左右のサイドバックには西嶋、島村、そして中盤でもセンターに斉藤とマーカス、右MFに衛藤という今季から新加入のメンバー。左に柿谷、前線では昨季16得点の津田と3年目の佐藤がコンビを組む。GKには昨季終盤から出場しているオ・スンフン。まだこれに加えて、ベンチには倉貫、島田ら百戦錬磨の選手たちが。そういえば今季の徳島には、榎本や杉本なども加入しており、選手層はすこぶる厚いイメージ。
 北九州は、今季三浦泰年監督を迎えて積極補強を敢行。この日の先発もGK佐藤、DFでセンターを組む宮本、福井、そして中盤の安田、森村、木村と6人が新加入選手。G大阪から加入の安田がトップ下を務めるひし形の中盤構成で、左右のサイドバックに冨士、関、そして1ボランチに桑原。FWは4試合連続得点と絶好調の池元と昨季はDFで一貫して起用されていた長野がコンビを組む。

 
 初来訪、鳴門・大塚スポーツパーク。
 グルメも豊富で雰囲気は良い。

 
 首位に躍り出た徳島。悲願のJ1昇格へ後半戦が始まる。

 
 前日に亡くなった松田直樹に向けて試合前には黙祷が。

 上位同士の攻防戦とあって試合は終始見応えのあるものになった。立ち上がりから徳島がボールを回して果敢に北九州陣内に攻め込む。特にセンターの斉藤とマーカスの今季加入コンビが起点になっている。ここに1列前で攻撃的に前へ仕掛けていける柿谷と衛藤。それを追いかけるようにバイタルエリアに西嶋、島村というかつては攻撃的ポジションだった両サイドバックが絡んでいく。
 しかしながら、今季の北九州もひと味もふた味も違う。5分には相手ボールを奪ってから池元がスピードあるドリブルで徳島陣内へ持ち込むと、最後は長野が勢いあるシュートで徳島ゴールを牽制。徳島が攻めあぐねたところでこのスピードを活かしたカウンターを仕掛ける狙いが北九州にはあっただろう。

 
 今季から中盤を担う徳島・MFマーカス。

 
 仙台から途中加入のMF斉藤はまさかのモヒカンスタイルに。

 
 北九州は池元がここまで6得点と絶好調。速い。

 徳島、北九州もあまりロングボールを使わず、繋いで攻める形が目立った。徳島が中盤のタレント力で北九州のそれを上回るが、なかなか北九州を崩せない。北九州は宮本、福井のコンビが非常に良かった。集中して徳島の攻撃をブロックする。繋ぎの面では1つ前にベテラン・桑原がいる。2006年のニューウェーブ時代の九州リーグから北九州を支えるチームのバンディエラは攻守両面で今だにこのチームのキーマンであった。20分過ぎに北九州が連続でCKを得るチャンスがあった。前半だけで7本のCKを得るが徳島の高さの前にこれを打ち崩せない。ただ、安田、森村とアタッカー陣が積極的にエリア内に攻め入る形が作れており、得点の匂いは感じる。
 徳島も27分にハーフライン付近でボールを受けたFW佐藤が一気に相手DFを背負いながらもスピードで突破。シュートは惜しくもゴール右に逸すという場面があった。平均的に高身長を誇る陣容だけにセットプレーなども活かしたいところだったが、前半は得点を奪えず。特に前半終了間際に島村が右から抜け出して折り返し、津田がシュートに持ち込もうという場面は決めておきたかった。北九州の渾身のカバーリング凄まじい守備が効いており、両チームスコアレスで前半を折り返す。

 
 攻め込む北九州・MF森村と徳島・DF島村のマッチアップ。

 
 
 G大阪では出場機会に恵まれなかった安田。
 北九州ではトップ下として輝きを放つ。ドリブル突破も。

 
 主将を務める柿谷と西嶋の徳島左サイドコンビ。
 2人とも今季はここまで2得点。

 後半に入って、北九州が繋いでチャンスを作る。前がかりになった北九州の隙をついて徳島もカウンターを仕掛けるが、52分に津田が惜しいシュートを決められず。1人で勝負に持ち込んだが、少し距離が遠かった。北九州が攻勢を見せるものの、徳島は三木、エリゼウが決定機の芽を摘んでおり、前線はそれに応えたい。
 しかし、前半以上に調子の良さを感じさせる北九州が先制する。GK佐藤からのロングボールを受けた池元が左サイドライン際からフリーで走り込んだ安田へ。これを安田が遠めながらもシュート。平凡なシュートだったが、これが徳島のDFに当たって若干コースが変わり、ゴール右隅に決まった。

 
 徳島の衛藤はプレスキッカーとしても活躍。
 北九州の桑原は衰え知らずのハードワーク。

 
 
 安田のラッキーな得点で北九州が先制。

 徳島は66分に衛藤に代えて徳重、佐藤に代えてドウグラスを同時投入。ギアを上げる。72分には柿谷のスローインからドウグラスが頭で落としたところを徳重がヘッド。完璧なタイミングだったが、これを北九州GK佐藤のセーブに阻まれる。この直後のCKはエリゼウのヘッドはゴールならず。そして79分には徳重のクロスを島村が頭で合わせるがミートしない。81分には相手のパスミスを拾ったマーカスが強烈なシュートをペナルティアーク付近から放つが、シュートはバーを直撃。85分にはエリゼウのアーリークロスにドウグラスがヘディングシュートを放つもGK佐藤の横っ飛びに阻まれた。チャンスは作れど最後の最後まで1点が遠い徳島。スタジアムのメインスタンドでは応援の手拍子がこのラスト10分の猛攻に対して絶頂を迎える。
 北九州は、相手の運動量がきついこの時間帯にレオナルドを投入。この狡猾な起用法が効く。カウンター時にはまだ池元もスタミナにそれほど衰えがなく、かつこのレオナルドがスペースを狙って徳島の選手の運動量を更に削ぎ落とす。87分にはレオナルドがDF2人を背負いながら1人でシュートへ持ち込むなど厄介な存在としてアピールした。

 
 高さが売りの徳島FWドウグラス。惜しくもゴールならず。

 
 津田は何度もゴールを脅かすが、オフサイドに苦しむ。

 
 徳島の猛攻、北九州の鉄壁。熱いラスト10分。

 
 北九州のレオナルド。途中起用が非常に効く。

 試合は、先制点を死守した北九州に軍配が上がった。本当に昨季ダントツの最下位だったチームとは思えない戦いぶり。ひたすら繋ぐことを前提に皆がサボることなしに勝利へひた走った。タレント力で劣るところはカバーリングの意識で乗り越えた。何とも屈強なチームだなと感じる新生・北九州。なんと先週のFC東京戦ではCKを15本も与えながらの完封勝利だったようである。まさにそのデジャヴともいえる集中した終了間際の守備。これは「金星」ではなく、実力での勝利だといえよう。これで勝点は33ポイント。依然上位陣の中ではまだ上がいる状況であるが、この北九州の好調ぶりは後半戦のJ2の見どころになるだろう。
 一方、ホームで首位固めのための1勝をという徳島だったが、本当に1点の遠い遠い試合だった。厳密に言えば枠内シュートは少なかったので、決定力ということになるのだろうが、リーグ2位の総得点を考えれば、これだけチャンスを作っていたならば勝っておきたい試合だった。昨季16得点の津田はまだ今季ここまで5得点。コンビを組む佐藤の成長著しいとはいえ、タレント陣の充実度を見れば、やはり優勝は十分争えるはず。FC東京、千葉、栃木、北九州と並み居るJ2の強豪に競り負けられないポイント争いがここから熾烈になってくる。
 とにかく今季初見の2チームながら、見応えのある上位争いに相応しい試合だった。

 
 
 見応えたっぷりの試合を見せてくれた両チーム。
 これは今後のJ2が気になってしかたがない。

 
 北九州を率いる三浦監督。
 まぁとにかく身振り手振りが派手で熱い熱い。

ありがとう、松田直樹。

2011年08月04日 | 脚で語るJFL
 早すぎる。
 まさか松田直樹が。
 まさかこんなにも早くサッカーを奪われることになろうとは。
 なんて残酷なのか。
 まだまだサッカーがやりたかったはず。
 本当に安らかに。ご冥福をお祈りします。

 2011年5月3日
 京都府立山城総合運動公園太陽が丘陸上競技場
 JFL前期第9節佐川印刷vs松本山雅FCより。

 これが最後に見た松田直樹の姿。

 忘れない。
 ありがとう。松田直樹。
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 松田直樹
 (1977年3月14日生‐2011年8月4日没)
 1995-2010 横浜F・マリノス
 2011 松本山雅FC
 Jリーグ通算400試合出場18得点
 JFL15試合出場1得点
 国際Aマッチ40試合出場1得点

ヤング京都、光明あり -京都vs鳥取-

2011年08月03日 | 脚で語るJリーグ
 シーズン38試合を戦わなければならないJ2は、第23節を迎えていよいよ中盤戦(延期分未だ未消化の試合あり)だ。7月31日には西京極でホームの18位・京都が今季J参入を果たした14位・鳥取と対戦。後半、セットプレーから秋本が挙げた1点を守り切り、京都が勝利を収めた。

 

 今季、4度目のJ2降格を機に、大木監督と祖母井GMをチームに迎えてチーム一新を図る京都。大幅に主力選手がリファインされ、京都の試合が今季初観戦となるこの試合でも未見の選手が数多くいた。その京都は、GK水谷をはじめ、森下、秋本、酒井の3バックに、アンカーでチョン・ウヨンを置き、トップ下に内藤、左右に安藤、駒井。そして3トップを伊藤、ドゥトラ、中山で組んでいる。この3試合は1勝1分1敗と悪くないだけにある程度このメンバーも固定されている模様。右ウイングの伊藤が出場停止から復帰し、3ポイントをしっかり取って鳥取にポイントに並びたいところ。ベンチにも今季二種登録で活躍する久保をはじめ宮吉、加藤、内野という若手が控え、ディエゴやアライールといった主力外国人選手も今季はまだ活躍できていない。まだ十分中位から上位浮上へのチャンスは残っているだけにここからが勝負か。
 対する鳥取もJ参入以降、序盤戦は好調だったが、中盤戦にかけて黒星が増えてきた。4試合勝ち星に見放された状況から前々節の草津戦では5-0と爆発。前節は徳島に完封負けを喫するなど、健闘はしているものの波はある状態。この試合は草津戦でハットトリックの活躍を果たした美尾が前節に続き欠場し、ジョン、加藤、戸川、奥山の4バックに服部、実信のセントラルMF2人に、小井手、鶴見が左右の両翼、そして前線ではハメドと阿部が2トップを組んだ。

 

 
 ホームとアウェイのサポーター席が入れ替わった西京極。
 なかなか雰囲気が変わっていた。

 前回の対戦時は2-1で鳥取に軍配が上がったこのカード。試合は京都がサイド攻撃を有効に使い鳥取ゴールを脅かす展開に。特に印象に残ったのは、京都の伊藤、駒井のU-18からの昇格コンビとチョン・ウヨンという初見の選手。伊藤はスピードを活かして右サイドを席巻。何度もゴール前にチャンスボールを放り込んだり、ドリブルで切り込んだ。特に12分のドゥトラへのクロスはサイドライン際を鳥取の奥山をぶち抜いてのプレー。最後は惜しくもドゥトラがシュートを外したが、ファーストタッチで自分の形勢を作ってしまう彼のプレーは前半最も大きな決定機に繋がった。駒井はかなり中央に寄ってプレーすることが多かったが、リスタートの速さやセットプレーのこぼれ球など反応が速い。加えてポジショニングが良く、18分には秋本のヘッドのこぼれ球に最も早く反応して相手の守備を置き去りにする場面があった。後述するが後半にも真骨頂というドリブルシュートの場面がみられるなど、伊藤と駒井のドリブルでの仕掛けは京都にとっての大きな武器。そして、それを1列後方で支えるチョンはCKのキッカーとしてチームのチャンスに貢献すると同時に、バイタルエリアまでの潰し役として存在感を発揮していた。

 
 京都・ドゥトラvs鳥取・ジョンのマッチアップ。

 
 京都は今季からこれまで以上に安藤が司令塔として君臨。

 
 安藤と並んで京都の攻撃を組み立てるのは中山。

 前半は0-0で折り返す形になったが、徐々にペースを掌握する京都を相手に鳥取は守備面で集中していた。10番を背負う実信も最終ライン付近まで下がって守備に加わる。なかなか高い位置での守備が効いていなかったこともあり、押し上げられていない時間が多かったが、前半5本に及ぶ京都のCKを許しながらもGK小針を中心に良く守っていた。しかし、攻撃面で阿部やハメドがなかなか良い形でボールを触れず、ハメドがかなりボールを欲してポジションを下げてしまう場面が見受けられた。それだけに32分、ハメドの速いスルーパスが小井手に渡り、クロスを入れて京都の守備を崩したところは得点に結びつけたかったところ。阿部のヘッド、そのこぼれ球に反応した鶴見のシュートが相手にかろうじてブロックされたのは痛かった。

 
 長年、風貌変わらぬ元ユース代表、鳥取の守護神・小針。

 
 小井手は32分に京都の守備をクロスで崩したが…

 
 今だに現役の服部。美尾に代わってプレスキッカーも務めた。

 後半、開始から京都はドゥトラに代えて、ここまでリーグ5得点を挙げている17歳の久保を投入。ドリブルで序盤からチャンスを作った。京都は前半から武器になったCK獲得の数でチャンスを作った。60分にチョンの左CKから安藤が合わせてゴールを肉薄すると、その直後の右CKから今度はチョンのキックにDF秋本が右足で合わせて先制点をもぎ取った。京都はこのCKが8本目。鳥取の守備をなかなか崩せないでいた京都にとってこのCKの数は幸いした。

 
 
 このチョンのボールが落ちてきたところに秋本が合わせる。

 
 秋本は甲府から今季加入。得点力が高い。

 
 京都の最終ラインを担うルーキーの酒井。

 64分には中盤で相手からボールを奪った京都・駒井がドリブルから惜しいシュートを放つ。本当に彼と伊藤の昇格コンビは、昨季まで注目されていた同級生・宮吉の存在が薄くなるほどの強烈なインパクトだ。対して鳥取も65分に梅田、73分には岡野と高さ・スピードを活かした選手を次々と投入するが、京都の守備を崩せない。69分には小井手の絶妙のパスを受けたジョンがわずかにシュートミス。73分には鶴見の左からのシュートが枠を捉えるが、わずかに京都・GK水谷のセーブに阻まれた。
 結局、試合は1-0でホームの京都が辛勝。これで京都は鳥取に勝点19ポイントで並んだ。鳥取は悔しい連敗となった。

 
 
 鳥取、最大の決定機。
 73分、鶴見のシュートはかろうじて水谷のセーブに遭う。

 
 岡野の韋駄天ぶりは健在。
 何度かサイドをぶっちぎった。

 
 鳥取・ハメドが京都・チョンの厳しいマークに苦しむ。

 順位こそ下位争いながら、J2はまだまだこれからが勝負どころ。数試合の勝点の積み重ねで順位は激変する。そういう意味では、伊藤、駒井、久保、宮吉と攻撃的なポイントに17~18歳の将来有望な選手を揃えてじっくり育成している点は興味深いし、今後が非常に楽しみ。また彼らが下部組織出身ということでチームへの忠誠心や愛着も今後彼らの大きな起爆剤になりそう。久々にプレーを見たハウバート・ダンや大卒ルーキーの内藤、酒井といった面子が今後の中心選手になっていく光景が想像できた。
 対する鳥取もJ1年目ながら、昨季までのJFLからそれほどメンバーを変えずに健闘しているといえる。チーム総得点こそ物足りないものの、守備面では総失点数が19下位グループでは突出して奮闘している。かつてG大阪に在籍したドドあたりの活躍(個人的に是非見たい)で得点力を伸ばせば、上位進出も狙えるかもしれない。

盤石の勝ち抜け -アイン食品vs三菱自動車京都-

2011年08月02日 | 脚で語るその他国内
 31日、長居第2陸上競技場で行われた第47回全国社会人サッカー選手権大会出場をかけた関西大会の代表決定戦。第2試合では関西リーグDiv1のアイン食品と京都府1部リーグの三菱自動車京都が対戦。試合はアインが終始試合を支配し、5-0と貫禄勝ちで全社への切符を勝ち取った。

 

 第1試合がPK戦へ突入した影響で、20分押しでキックオフされた第2試合はグループCの代表決定戦。初戦でBIWAKO S.C. HIRA(関西Div2)に2-0で勝利したアイン食品が京都府リーグの強豪・三菱自動車京都を迎え撃った。三菱自動車京都は、この3年で2度関西府県リーグ決勝大会に出場している強豪で、初戦は兵庫県1リーグ首位の龍野FCに4-0と大勝して代表決定戦まで勝ち上がってきたチーム。常に京都府リーグで優勝争いを続ける彼らがアイン相手にどこまでできるかが注目ポイントだった。

 しかし、なかなか関西リーグ勢の壁は厚い。8分、武末のシュートでアインが先制すると、24分に楠本のアーリークロスに井上が頭で合わせて追加点を奪う。試合開始からボール支配で格の違いを見せるアインが攻勢を保つ展開に三菱京都はなかなか相手エリア内までボールを持っていけない。26分に三菱京都が相手のファウルでPKを獲得するが、#22のキックはアインGK畑がストップ。前半を危なげない戦いぶりでリードしたアインが2-0で折り返す。

 

 
 8分、武末のこのシュートで幸先よくアインが先制。

 後半、48分にアインの攻撃、スルーパスに三好が走り込むが、GKと競り合いながらも作った決定機は相手DFがブロック。その1分後にはアインMF定のシュートがポストに弾かれるなど、アインは3点目がなかなか奪えない。これを機に少し三菱京都がボールを回せるようになってきた。アインが運動量を落としてきたところでチャンスを狙いたいところだったが、松本、岡本を軸にしたアインの守備を攻略できない。アインはリードが揺るぎない展開にも関わらず、62分に坂本を投入。エースの投入と三菱京都の疲弊で更にアインの攻撃が加速する。

 
 アインの攻撃を牽引するボランチの井上。

 
 ルネス時代には濱田(SAGAWA SHIGA)と活躍した梅村。
 14試合で61得点(08年)という驚異的な攻撃陣を引っ張った。

 74分にその坂本がシュートを決めてアインがリードを3点に広げると、80分にもその坂本のシュートがバーに当たったこぼれ球を途中出場の藤岡がゲット。試合終了間際には、吉居がFKを直接決めて5-0として試合を終える。順当勝利でアインが全社への出場権を勝ち取った。

 
 ルーキーのDF松本。
 今季のリーグ戦には主力選手として全試合出場している。

 
 三菱京都は、後半持ち直したものの終了10分前に守備が瓦解。

 
 吉居は見事なFKを終了直前に叩き込んだ。

 昨季の全社では2回戦でカマタマーレ讃岐に敗れたアイン。今季はそれ以前にリーグ戦で苦戦しているが、関西屈指の全国大会の常連チーム。インターバルが明けてからきっちりリーグでDiv1残留を果たした上で全社に臨みたいところだ。
 対して三菱京都は、完敗だったが、京都府リーグでは7試合でわずか1敗。FCマキシマと覇権を争っており、決勝ラウンドがあるにせよ、関西府県リーグ決勝大会に出場してくる可能性は高い。これを糧に関西リーグを虎視眈々と狙ってくるだろう。

アップセット、マキシマ -セントラルSCvsFCマキシマ-

2011年08月01日 | 脚で語るその他国内
 第47回全国社会人サッカー選手権大会出場をかけた関西大会の代表決定戦が各地で行われ、長居第2陸上競技場では、グループAのセントラルSC(兵庫県1部)とFCマキシマ(京都府1部)が11:30からの第1試合にて対戦。試合は2点をリードしたセントラルに対してマキシマが後半追いつく展開に。40分ハーフ及び10分ハーフの延長戦でも試合は決着がつかず、PK戦の末にFCマキシマが勝利を収めた。これでFCマキシマが関西代表の1枠として10月に岐阜で行われる本大会に出場することになった。

 

 炎天下の長居第2で対峙したのは、先週関西リーグDiv1首位の奈良クラブに今季の公式戦で初めて土をつけたセントラルSCと、昨季の京都府リーグ2位・FCマキシマ。セントラルは現在兵庫県1部リーグで4位(6/23現在)という戦績ながら、過去には2007年、2008年と関西リーグ昇格を懸けた関西府県リーグ決勝大会に進出しており、2007年には準決勝にまで駒を進めた関西屈指の強豪チーム。一方のマキシマも昨季の府リーグで躍進を遂げ、惜しくも府リーグ決勝ラウンドで3位に甘んじ、関西府県リーグ決勝大会には進めなかったものの、飛躍的に力を付けてきている模様。今季の京都府1部リーグでは三菱自動車京都に次ぐ2位(8/1現在、6試合消化で三菱自動車京都よりも1試合未消化)につけている。かつて関西リーグで戦っていたテクノネット大阪(大阪府1部)を延長の末に破っての代表決定戦進出ということもあり、満を持してこの戦いに臨んだはずだ。

 
 24日に奈良クラブに2-1と勝利したセントラルSC。
 この勢いで関西昇格もなるか。

 
 FCマキシマも今季の府リーグでは6試合無敗。
 今季の関西府県リーグ決勝大会に出てくる可能性は大きい。

 試合は、序盤からマキシマがセントラル陣内に攻め込んだ。12分には#9が右からの折り返しにシュートするもサイドネット。18分には同じく#9が振り向きざまに惜しいシュートを放つがわずかにバーの上。しかし、まずはしっかり守って相手の出かたを窺うセントラル、パスが徐々に回り始め、前半の半分を過ぎた頃から攻勢に転じる。きっかけは、22分の先制点だった。右サイドでボールを受けた#7が1対1になりながらも、エリア左端の角度の厳しいコースからシュートを狙う。すると、これがゴールイン。技ありのシュートでセントラルが先制に成功した。思えばこの#7は先週の試合でも途中出場から良い動きを見せていた選手。先発起用に応える活躍を見せる。

 
 序盤から攻め込んだマキシマ。
 #9が決定的なシュート。

 
 
 
 
 
 セントラル、先制点の場面。
 マキシマDFをかわしてシュートを決めた。

 序盤の攻勢が響いたか、少し前半から運動量に陰りが見え始めていたマキシマ。セントラルへのプレッシャーが心許ない。無理もない。ピッチレベルでは40度近いであろう酷暑のコンディション。スタンドの椅子もタオルを引かなければ日なたでは座れないぐらいの熱さだった。遠方からは長居公園内のプールではしゃぐ子供たちの声と巡視員の注意喚起が聞こえてくる。この状況下でサッカーをやることがつくづく過酷だと思うには十分なコンディション。しかし、暑さが厳しいだけに一層の集中力が試合には必要になっただろう。この先制点以降はセントラルが決定機を量産。33分には#24の左クロスに#9がヘッドでゴールを狙うと、34分には、CKから#27がヘッドをお見舞いし、こぼれたところに#7がシュート。36分、37分にも立て続けに決定機といえるシュートチャンスを作ったセントラル。前半だけ見ると、運動量でペースが落ちなければ、このままセントラルがリードを広げて勝利を手中にするのではと思えた。

 
 セントラルは#24のゲームメイクが秀でていた。
 パス能力の非常に高い選手だった。

 後半、マキシマが締め直してきたと思いきや、52分にセントラル#24のFKをマキシマGKがキャッチした後にこぼしてしまい、セントラル#9が押し込んでリードは2点差に。相手のミスも手伝って盤石の試合展開を見せるセントラルの優位はますます強固になったと思えた。ところがやや気になったのは決定機の多さ相応のリードにできていない点。そういう意味では、数少ないチャンスを得点に結びつけた先週の奈良クラブ戦の方が選手たちは集中できていたのだろう。正直、早い段階でセントラルは試合を決めてしまえるだけのチャンスがあった。

 
 #9が相手GKのミスを突いて狡猾な追加点。

 
 対照的に2失点目を喫してガックリのマキシマ。

 後半も半分を過ぎようという頃、63分にセントラルが選手交代を試みる。先制点を挙げた#7に代わって#3を投入するが、このあたりから急にセントラルがペースダウン。これを見計らってギアを上げたのがマキシマだった。5分後、左からの折り返しに#9がヘッドで決めてマキシマが1点を返すと、その3分後には右からの折り返しをエリア中央で#25が決める。あっという間に同点に追いつくマキシマ、あっという間にマークが緩み、崩れたセントラル。リードの安堵感と後半に入って暑さが効いてきたのか、ペースダウン著しいセントラルは急にミスが目立ち始め、遂には2-2の同点で試合は80分を終えることになった。

 
 決定機の多さが得点に結びつかないセントラル。

 
 マキシマが1点を返す。追い上げムードに。

 
 そしてマキシマ同点に追いつく。

 追いつかれて迎える延長戦。セントラルベンチには明らかに焦りが見え、少し殺伐とした雰囲気になった。それでもGK#15が「ええやん、ええやん。余計に試合できるの楽しいやん。」と一言皆に声をかけていたのが印象的だった。この気持ちは大事だと思う。この意識がある限り、このチームは負けないと思った。対するマキシマは落ち着いていたのか、昂ぶっていたのか、とにかく厳しい10分ハーフの戦いとなった。
 
 
 厳しいコンディションでの延長戦。
 こんな光景が何度も見られた。

 延長戦前半からネジを締め直したセントラルが再度持ち直し、押せ押せムードのマキシマの切り替えの速い攻防戦に。93分にはマキシマ#10のFKをセントラルGK#15がかろうじてセーブ。その直後のCKから#25がヘッドを見舞うなどマキシマがゴールを狙えば、今度はセントラルが95分に#8のシュート、その直後には#10のアーリークロスに#5のヘッドがわずかにゴールを外れるなど死力を尽くした戦い。しかし、この20分間でも決着はつかず、試合はPK戦へと持ち込まれた。

 
 マキシマのこのチャンスは相手GKのファインセーブに遭う。

 
 マキシマも追いついてから積極性が増した。

 PK戦でも互いに両者譲らず、7人目に突入。先攻のマキシマ7人目が決めたのに対して、セントラルは7人目が失敗。この瞬間、FCマキシマがグループAを制し、関西代表の一角として全社に出場することが決まった。

 
 セントラル7人目のキックをマキシマGKがセーブ。
 2失点目のミスを帳消しにする殊勲の活躍。

 今季公式戦負けなしの奈良クラブが初戦で府県リーグ勢に敗れるなど、波乱続きのグループAだったが、最終的にはおそらく4チーム中最も下馬評の低かったであろう(失礼!)FCマキシマの勝ち抜けに終わった。多くの人がこのグループの代表決定戦は奈良クラブ-テクノネット大阪と予想したかもしれない。つくづくサッカーの不確定要素を思い知る結果の連続だった。本当に一発勝負は恐ろしい。そういえば、3年前の全社も同じように奈良クラブが奈良県リーグ勢として初めて全社に出場した。あの時は、初戦でアイン食品を2-1で破り、代表決定戦ではFC加古川を相手に延長戦までもつれ込むなど苦戦しながら本大会出場権を掴んだ。
 関西から唯一の府県リーグ勢の出場となったFCマキシマには本大会での健闘を祈願したい。